「ざざぜざざざざみ、勝負だ」
「っ~~~~!! 何度も言いますけれど、笹瀬川佐々
美ですわ! そもそも勝負って、一体何の勝負をする
んですの?」
「うぅ~、よくわからんが勝負だ!」
「で・す・か・ら、何の勝負をするのかと聞いている
んです!」
「そ、それはだな……」
発端はレノンの尻尾に巻きついていた指令だ。もう
来ることはないと思っていたけれど、今日休み時間に
ねこのたまり場へいくと尻尾に紙を結ばれレノンがい
た。鈴と僕は思わず目を合わせ、その紙を広げると、
そこにはこう書かれていた。
「笹瀬川佐々美と勝負をすること」
どう考えても怪しい。怪しいけれども、これはひょっとして鈴が笹瀬川さんと友達になれるチャンスなんじゃないか? そう思ったのだ。
「鈴、これ……や ら な い か」
隣で悩んでいる鈴に勢いこんで助言してみた。しかし
「なぁ理樹、笹瀬川佐々美って誰だ?」
「悩んでいたのってそこなのっ?!」
やるかやらないかで悩んでいたんじゃなかったのか……。ガッカリしつつも、笹瀬川さんについて説明をしてあげる。
「えーっと、ソフト部のキャプテンで紫の髪をしたツインテールの、ほら、よくミッション中に寮ですれ違う…」
「あぁ!ざざみのことか!」
「うん、その人。でもざざみじゃなくてささみさんだからね」
「ん、よくわからん」
……不安になってきた。
そして放課後、何で勝負をするのか決められないまま、笹瀬川さんを見つけてしまった。
「用件がないのでしたら失礼しますわ。あなた方と違って部活がございますので」
これじゃあ、ミッション失敗だ。一体どうしたら……。あ、真人だ。こうなったら真人でもいいから何とかしてもらうしかない。ありがたいことに真人の方から近づいてきた。
「おぅ理樹、何やってんだ、こんなとこで」
「さっき話してた勝負だよ。まだ何をするのか決まってないんだけど」
「なんだそりゃ。だったら筋肉ダンスでいいんじゃね。さっき謙吾とやってきたしな」
「み、宮沢さまがっ!?」
謙吾がこんなことをするのが想像できないのだろう。笹瀬川さんは考え込んでしまった。
「あぁ。だが俺の方が上だな。筋肉♪筋肉♪の動きがアイツはまだ固いぜ」
さすがに自分を捨て切れなかったんだろうなぁ。
「じゃぁ俺は行くぜ。筋肉が呼んでいるからな」
いつも一緒じゃないかとツッコむ前に真人は去っていった。視線を戻すと笹瀬川さんが震えていた。無理もない。同情しつつ、今日はもう帰るしかないかと思ったのだが
「……やります」
「えっ?」
「わ、わたくし、その、き、筋肉ダンスの勝負、ううう受けて立ちますわ!」
「えぇぇっ?!」
「き、き、き、きんにくきんにく~」
うわぁ、ほんとにやったよこの人。僕と鈴は呆気にとられて見守るしかなかった。ものすごくぎこちない動きだが、それを指摘するわけにもいかず、実は見ている方にも結構なダメージがあることに気付いたところで、げんなりした顔の謙吾がやってきた。練習が……と言いかけて、笹瀬川さんの動きに気付いたらしく
「お前らも真人に付き合わされたのか」
顔を赤くしつつも何故か誇らしげに踊る笹瀬川さんは、ようやく謙吾の存在に気付いたようで、一瞬固まった後
「ッ~~~~~~!!!!!!」
脱兎のごとくかけていった。笹瀬川さんの今日の部活に支障が出ないことを祈ろう。
勝負はうやむやになったが、一応尋ねてみる。
「で、鈴は…やらないの?」
「やるかっ、ぼけぇ!」
結果は次回に持ち越しのようだ。
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永遠のライバル? 鈴と佐々美、ついに決着か?