閑話その一
黄巾の乱が終わり、民達にもようやく落ち着きが見えだした。
そんなある日、俺は朝の軍議である人物を紹介した。
「今日は、皆に新しい仲間を紹介したいんだ。翡翠、入って来て。」
玉座の間の扉が開き、一人の女性が入ってくる。
腰まで伸ばした黒い髪が特徴で、整った顔立ちで職人の造った人形のようだ。
そして慈愛に満ちた頬笑みは、母を思わせるようだ。
「さて、自己紹介してもらえるかな?」
「私は盧植。これからよろしく頼む。」
凛とした声が玉座の間に響いた。
しかし、黙っていた華琳の表情が次第に険しくなっていく。
「一刀。これはどう言う事かしら?」
「必要だと思ったから連れて来たまでだ。」
飄々とした俺の態度に桂花がキレた。
「あんたね、華琳様の陣営に犯罪者を入れてどうするの?」
「なんだと?どう言う事だ、北郷。」
「姉者。落ちつけ。今からその理由を聞くのだろう?」
「一刀。納得できる内容じゃなければ、貴方だろうと罰をくだすわ。」
「分ってる。」
俺は翡翠が宦官から賄賂を要求された事。
部下の食料、武器を買うために要求を無視した事。
それに腹を立てた宦官達に濡れ衣を着せられ牢屋に入れられてた事など簡潔に話した。
それを聞いた華琳達は翡翠に謝罪した。
「もともと翡翠は優秀な軍師で常に最前線で戦ってたんだ。5万の賊を1万強の兵で互角に戦えるほどにね。でも翡翠が捕えられて互角に戦っていた官軍はすぐに敗退、結果的に官軍の弱さが露わになり、黄巾党の被害が拡大した。」
「じゃあ、盧植がいれば被害はもっと抑えられたって事?」
「ああ。」
「宦官の賄賂の一つでこれだけ民の犠牲が増えたって言うの?」
「そうなるな。」
「改めてこの国が嫌になったわ。」
「だから俺達が作るんだろ?平和な国を。新しい未来を。」
俺と華琳のやり取りを見ていた翡翠は、華琳の前に跪いた
「曹操様、この私にも貴方様の天下統一の手伝いさせていただけないでしょうか?」
「ええ。貴方の才に期待してるわ。それと私の事は華琳と呼びなさい。」
「御意。私の事は翡翠とお呼びください。」
「わかったわ。」
「華琳。翡翠は桂花の教育係をお願いしたいんだが、良いか?」
「どうして?」
「桂花には才能があるが、経験が少ない。自分より上手の相手に対して自滅しないように経験を積ませたい。戦術に関しては俺じゃ何もできないからな。」
「そう。翡翠はそれで良いかしら?」
「ええ。そのために来たのですから。」
その後、翡翠の為に宴が開かれた。
和やかな雰囲気の中、華琳の一言で状況が一変する。
「そういえば、洛陽の件まだ聞いてないのだけど。どうやって翡翠の罪を不問にさせたの?」
華琳の言葉を聞き、翡翠の表情が引き攣る。
気まずい空気が周りに伝播する。
ため息をついた俺は、ゆっくりと話し始めた。
時を遡る事数日。洛陽にてー
「張襄さま、天の御使いと言う者がお会いしたいといっておりますが?」
「天の御使い?ああ。許昌の曹操の配下か・・・。」
―今、勢力を伸ばしている曹操か。手駒は多い方が良いかの。
「丁重にもてなしてくれ。粗相のないようにな。」
「御意。」
十常時のいる部屋に、男と女が入ってきた。
男の方は優男で輝く服を着ている。この国の布じゃない事が容易にわかる。
女の方は護衛だろうか狩り用の小さい弓を持っている。
「お目道り、ありがとうございます。この度は急な訪問お許しください。」
「いやいや、遠路遥々ようこそおいで下さいました。」
「恐縮です。」
「それで、今回ここに来た理由を教えてもらえますかな?」
「はい。今回2つお願いがあってまいりました。一つ目は盧植殿の罪を不問にしていただきたい事。もうひとつは、これから曹操軍は南下し始めた黄巾党の本隊の討伐を行います。首領長角を打ち取ったあかつきには、我が主にそれなりの位を差し上げていただきたい。」
「ふむ。曹操はなかなか主想いの家臣を持ったようだな。おぬしの願いじゃが、叶えてやれなくもない。国に忠誠を見せてもらえるかの?」
「御意。」
男はそう言って懐から賄賂ではなく、小さな巻物を渡してきた。
中身を見たわしは、この男の本性を見てしまった。
そして悟った。こいつを敵に回してはいけない。
背筋に嫌な汗を流れるのを感じた。
俺が張襄に渡した巻物にはただ名前が書いてあった。
内容を見た十常時たちが怒りを露わにする。
「霊帝の死が何進に知られてしまい、暗殺を企てた。それは何進暗殺の協力者だろ?」
「貴様。これを一体何処で手に入れた。」
「俺には優秀な部下が居るからね。ちなみにそれはただの模倣品だから。」
「すぐさま本物の血判状返せ!!」
「お前らみたいな豚に返す必要があるのか?」
「ぶ、豚だと?このわしに向かってそのような口を利くとは、死ぬ覚悟はできてるのだろう?」
「自分の立場が解ってるか?俺の気分一つで貴様らは都を追放することもできるんだぞ?言葉。」
「はっ。」
俺が連れて来た女性、名を曹仁と言う。
彼女は窓から矢文を放とうと構えた。
「彼女が弓を放てば、霊帝の死、何進の暗殺計画が明るみに出るぞ?それに劉弁を廃し、劉協を新しい皇帝に即位させようとしている事も。その罪を着せる為に涼州から董卓を呼んだ事も知ってる。もちろんその証拠も押さえてる。」
「くそ。今すぐ殺してやる。」
「俺が夕方までに帰らなかったら、血判状は何進に送られるぞ?」
「うっ。」
「いやならここでお前らを切って、証拠と一緒にさらし首にするが?」
「分かった。分かったから待ってくれ。命だけは。」
そんな彼らを見て俺はいつもの屈託のない笑顔を見せた。
「張襄さまも人が悪い、初めからそう仰って下さればよかったものを。」
おれの態度がいきなり変わったことに十常侍たちが驚く。
そこに侍女たちが入ってくる。俺は侍女に微笑みかけながら
「張襄様達は大調がすぐれないようだからお暇させていいただくよ。張襄様はこの国の重鎮なんですからお体にお気をつけて下さい。失礼いたします。では言葉、帰ろうか。」
「御意。」
俺は屋敷を出た後、飛影に乗って許昌に戻った。
一刀は一時的に、翡翠、言葉を除く魏のメンバーから悪魔と呼ばれた。
オリキャラ紹介
盧植 字 子幹 真名 翡翠(ひすい)
容姿 身長163cm 体重? 胸の大きさは紫苑くらい?
黒髪を腰まで伸ばしている。目は茶色。
歳30代前半 もともと幽州の琢郡で私塾をしていた。
その際、劉備、公孫瓉に学問を教えていた。
その後、軍に入隊。軍師として頭角を現す。
ちなみに一刀、華琳の前では桂花と同じ、もしくはそれ以上のドM。
曹仁 字 子考 真名 言葉(ことのは)
容姿 身長158cm 体重38kg? Cカップ?(本人談)
黒に近い緑でセミロング 目は真っ黒
華琳の従姉妹、夏候家の人間で曹家に養子として来ている。
隠密部隊の現部隊長。一刀の専属であり、今回の血判状を見つけたのも彼女。
甘寧や周泰よりも隠密のスキルは高い。
感情をうまく表せない為、表情が余り変わらない。(本人は変えているようだが)
体中にダガ―が隠されいる
あとがき
最初に言っておきます
やってしまいました。
一刀君ごめんなさい。
こんなことになるなんて、半分以上思っていました。
今回オリキャラの盧植、曹仁の登場です。
盧植は桂花の師として連れてきちゃいました。
そして一刀の秘密兵器、曹仁です。
彼女はオールラウンダ―としてこれから活躍させていこうと思います。
ではまた次回のお話で
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1章の黄巾の乱から2章の虎狼関の戦いの間の話です。
ついに一刀君の言葉の暴力。通所OHANASHIですね。