東方不敗×恋姫
第九話「再び現れしキングオブハートの紋章!そして大陸に降り立ったかつてのシャッフル同盟と蘇りし闇!?後編3」
―――徐州・とある山村・邑の墓地
ピンクの髪を頭の上で短く二つに結んだ女の子がお墓の周りを掃除しながら墓石に語りかけている。
???「お父さん、お母さん今日は良い天気になったよ。だから流琉と一緒に会いに来たよ!こっちはいつも流琉と二人で山で山菜を採ったり、川で魚を捕まえて村長さんに他の食べ物とかお金に換えてもらって生活しているんだ。お父さん達は天国で仲良くしてるかな。こっちは流琉と二人で楽しく頑張っているから心配しないでねっ!じゃあね!また会いに来るからね!」
流琉「季衣!そっちはお掃除終わった?終わったら山で山菜を採ってから村長さんの所で米かお金に換えてもらおうっか?」
薄い緑色の髪をショートカットにして頭に紺色の大きなリボンをした少女がピンクの髪の少女に声を掛けた。
季衣「うんっ!こっちは綺麗に掃除したよ!流琉の方こそ綺麗に掃除した?」
流琉「もちろん!掃除も終わったし日が暮れる前に山菜をたくさん採って村長さんをびっくりさせちゃお?」
二人は背中に大きな籠を背負うと山に向かって走り出した。
――邑の近くの山
……グルルゥ……
流琉「…ふう。………あれ?」
流琉は山菜の入った籠を背負い直しながら額の汗を拭い周囲を見渡した。何か獣の唸り声のような音が聞こえて来た。
流琉「ねえ季衣〜っ!今何か動物の声が聞こえなかった〜っ!?」
流琉が近くに居る筈の季衣に問い掛けた。しかし、季衣からの返事は無く流琉は不思議に思いながらも周囲を探す事にした。
流琉「もう!季衣ったらすぐサボるんだから!一体何処にいるのよ!」
その時流琉の前方の竹薮から何かが走って来る音が聞こえてきた!……そして!
―がああーっ!!―
季衣「流琉〜っ!!逃げて〜っ!!」
季衣がもの凄い勢いで流琉のいる所に走って来た!そしてその後ろから季衣の三倍もの大きさの虎が季衣を追いかけているではないか!
流琉「季衣!おうりゃーーっ!!」
―――頑!―――
流琉は咄嗟に自分の得物の伝磁葉々(でんじようよう)を虎目掛けて放った!
しかし伝磁葉々の重さに身体がついていかずに狙いが定まらず虎は軽々と避けてしまった!
季衣「お願い!これで止まって!ちょうりゃーーーっ!!」
―――頑!―――
季衣も自分の得物である岩打武反魔(がんだむはんま))を振り回し虎に打ち掛かった!……が。
やはり身体が武器の重さについていかず狙いが外れ虎を倒すには至らなかった。
季衣「流琉!ぼくが囮になるからその隙に逃げて!!」
流琉「季衣!あんなに大きい虎に一人で向かうなんて無理だよ!此処は二人で力を合わせて戦おうよ!」
季衣「………うんっ!じゃあ二人同時に行くよ!せーの!ちょうりゃーーーっ!!」
流琉「おうりゃーーっ!!」
―――頑!頑!―――
しかし二人共自らの得物の重さにより狙いが外れ虎の近くに着弾してしまった!
そして虎は流琉に飛び掛かって行く。
―がああーっ!!―
流琉はその時今までの記憶を色々と思い出していた。
流琉(嗚呼これが走馬灯なんだ。……季衣必ず生き延びてね。)
???「少女よ諦めるな!アトラスチェーン!!」
―――蛇罹罹罹罹罹―――
何処からか白銀の鎖が延びて流琉に襲い掛かっていた虎をがんじがらめにしていた!
季衣「だ誰なの!」
???「早く逃げなさい!」
いつの間にか漆黒の衣を纏った妙齢の女性が鎖で縛り上げた虎の上に立っていた。
流琉「貴女が助けてくれたんですか?」
???「そんな事は良いから早く逃げなさい。」
季衣が気まずそうに女性に話し掛けた。
季衣「あ、あの…出来ればその虎を殺さないで欲しいんだけど。」
流琉「季衣ったら何言ってんの!?」
季衣「流琉あの虎の後ろを見てよ。」
流琉が虎の後方を見るとあの虎の子供だろうか三匹の子虎が必死に威嚇しているつもりなのか一生懸命ガウガウと吠えていた。
流琉「……あの虎…まさか…あの子達の…お母さん……なの?」
季衣「うんっ!さっきあの子達と遊んでたらね。お母さん虎が怒っちゃって、それで追っかけられてたんだ!」
???「ならばこの虎に罪はないと貴女は言うのですか?先程は殺されていたかも知れないのですよ!」
季衣「う〜んぼくはお父さんもお母さんも流行り病で死んじゃったから、お母さんがいない寂しさはすごくわかるんだ。……だからあの子達にそんな思いさせたくないよ!」
???「良いでしょう。しかしこの虎は今だにその怒りに飲み込まれています。それをどう静める積もりです?」
季衣はゆっくりと縛り上げられている母親の虎に 語りかけた。
季衣「ごめんなさい。……ただ自分の子供達を守りたかったんだよね?びっくりさせてごめんね?」
そう語りかけながら右手でそっと虎の頭を撫で始めた。すると季衣の右手からうっすらと光が浮き上がり今まで噛み殺さんばかりに睨み付けていた虎から少しづつ殺気が消えて行くのだった。
そして流琉は母親虎の目の前に先程一生懸命吠えていた子虎達を両手に抱えて連れて来ると季衣の小さな右手に自分の右手を重ねて語りかけた。
流琉「私も季衣もお母さんとお父さんがいないの…。だからこの子達がすごく羨ましい。だって貴女みたいな強くて優しいお母さんがいるから…。貴女の子供達に何か悪い事する積もりなんて全然考えてない。だからこれでも食べて怒りを静めて……。」
そう言うと流琉は自分の荷物から夕食の為に用意していた干し肉を虎に差し出していた。
虎「……グルル…。」
虎は少し逡巡した後、その干し肉を少しかじり飲み込んでから残りを子虎達に鼻先で押しやった。
子虎壱「ガウ!」
子虎弐「ガウ?」
子虎参「……がう」
子虎達はひとしきり臭いを嗅いでから
三匹で仲良く干し肉を食べはじめた。
その様子を見ていた女性は季衣と流琉の右手からうっすらと放たれる光に注目していた。
???(この子達が……の後継者。)
女性が鎖を緩めると虎は三匹の子虎を護るように近くに寝そべった。
流琉「あ、あの危ない所を助けてもらってありがとうございます。あ、私の名前は典韋です!ほら季衣もお礼を言いなさい!」
季衣「あ、ありがとうございました!あ、あのぼくの名前は許緒って言います!」
???「ふふふ、私の名前はトリス・スルゲイノフ。でも貴女達さっきから別の名前で呼び合っていたみたいだけど何か意味が在るのかしら?」
季衣「あ、あの真名を知らないのですか?」
トリス「真名?」
流琉「はいっ!真名という名前は親が子に付ける名前でその人の生き様を示す神聖な名前でその人の許可なく勝手に呼んだら殺されても文句が言えないんです。」
季衣「はいっ!でもトリスさんはぼく達を助けてくれた命の恩人だからぼくの真名を預けます!ぼくの真名は季衣です!これからは季衣って呼んでください!」
流琉「もう!季衣ったら勝手に決めて!!」
季衣「流琉は嫌なの?」
流琉「そんな訳ないでしょ!あ、私の真名は流琉と言います。季衣と同じく真名で呼んでください。」
トリス「生憎私には真名と呼べる名前はないわ。強いて云うならトリスと云う名前が貴女達の真名に当たるわね。」
季衣「えっ?そうなんですか!流琉〜っどうしようぼく真名で呼んでたよう!!」
流琉「季衣〜っ!?どうしようって!?あ、あのすいませんでしたっ!勝手に真名で呼んでしまってごめんなさいっ!」
季衣「ごめんなさいっ!」
トリス「あのトリスと云う名前は真名じゃないからそんなに慌てなくても良いから。はい、落ち着いて深呼吸して。はいー吸ってー吐いてー、はいー吸ってー吐いてー。」
季衣「すーっはーっすーっはーっ。」
流琉「すーっはーっすーっはーっ。」
子虎壱弐参「「「すーっはーっすーっはーっ」」」
何故か子虎達も深呼吸していたのは御愛敬であった。
トリス「それでこんな山奥にどうして二人だけで来たのかしら?」
季衣「此処いらは山菜が沢山採れるんだ!だから流琉と二人でよく採りに来るんだよね?流琉。」
流琉「そうなんです。それに近くには邑が有りますからそんなに山奥じゃないんです。」
季衣「トリスさんは何処から来たんですか?」
トリス「私?私は…そうね此処からずっと北の国から来たわ。」
季衣「へ〜っ凄い遠い国から来たんですね!」
流琉「季衣?貴女意味解ってて言ってんの?」
季衣「流琉〜っ!!それってどう云う意味…「しっ!静かにっ!」トリスさん?」
トリス「二人共こっちに…」
見ると虎の親子も茂みの奥に向かって唸り声を上げていた。
虎「グルル。」
虎壱弐参「「「ぐるるぅ」」」
トリス「何かが………来る!」
―怒怒怒怒怒怒怒怒―
季衣・流琉「「あ、あれは!」」
一匹の牛がもの凄い勢いで突っ込んで来た!その大きさはなんと母親虎よりも一回り大きい身体をしていたのだった!
トリス「みんな避けなさい!」
季衣と流琉はすぐに進路から離脱したが子虎達はその勢いに恐れを為し動けなかった。
すると母親虎は我が子を護るように子虎達をその身体で覆い隠した。
それを見た季衣は………。
季衣「だめ〜っ!!」
なんと虎達の前に両手を拡げ立ち上がったのだっ!
流琉「季衣〜っ!!」
流琉は季衣を助けようと伝磁葉々を取り出そうとしたが、とても間に合いそうになかった!
トリス「…暴れ牛風情が調子に乗るな。」
その時、何時移動したのか季衣の前にトリスが立っていた。
トリス「…見ているが良い!これこそ祖国ロシアの猛吹雪の中で見つけた必殺の技!!」
そう叫ぶやトリスの身体から凄まじい闘気が溢れ出たのだっ!
トリス「爆砕!アトラスハンマー!!」
―――怒牙牙牙牙牙!―――
トリスの振るうチェーンが螺旋を描きながら暴れ牛に当たると凄い衝撃が牛に襲い掛かった!
牛(………俺、この戦いが終わったらあの子と結婚するんだ。)
…………………そして
牛は茂みの立ち木を何本もへし折ってやっと止まったのだった!
牛(………哀しいけどこれって戦争なのよね。)
―――ガクッ―――
トリス「季衣!大丈夫だったか!怪我はないなっ!」
トリスが季衣の方を振り向くと季衣は顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしてトリスに抱き着いて来た。
季衣「こ怖かったよ〜っ!トリスさんとっても怖かったよ〜っ!!」
流琉「季衣〜っ!!大丈夫!?泣かないでよ〜っ!ぐすっ」
季衣「だって〜っ!とっても怖かったんだよ〜っ!うわ〜ん!」
流琉「わ私だってとっても怖かったんだから〜っ!!ぐすっ!うわ〜ん!」
トリス「…ふ……二人共落ち着け!な!ああ〜っもう!!」
焦ったトリスは泣き出した二人をギュッと抱き締めるとその背中をゆっくり撫で始めた。
季衣(あ…お母さんの匂いと同じ匂いだ……。)
流琉(………お母さん…………。)
しばらく撫でつづけると二人は落ち着いたのかやっと静かになった。
トリス「やっと静かになったか?コラ季衣?あんな事したら危ないだろう!」
季衣「ご、ごめんなさいっ!」
トリス「なに、お前が無事だったらそれで良い!怪我はなかったな?」
季衣「はいっ!ありがとうございます!///」
流琉「ト、トリスさんっ!良かったら私達の邑に来ませんか?お礼もしたいし!!///」
トリス「それは構わないが良いのか?」
季衣・流琉「「はいっ!///」」
トリス「それではお邪魔させてもらおう。」
…………………とりあえず
第12代目ブラック・ジョーカー=トリス・スルゲイノフ満を持して降臨!!
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今回は皆様の予想通りブラック・ジョーカーのお話です。それでは皆様恋姫ファイトッ!レディーッ!GO〜っ!!