No.159847

真・恋姫†無双 董卓軍√ おまけ物語其の三

アボリアさん

董卓軍√おまけ物語其の三です
萌将伝が明日発売というタイミングでの投稿は正直誰得と言うものではありますが書きあがったので投稿させてもらいますw
今回はネタ物語前編、月さん、詠さん、ネタ物語後編です
それと余談ですが、次回の作品を持っておまけ物語は終了の予定です
更新は日曜日の予定でございますので、よかったら萌将伝の合間にでも見てもらえたら幸いです

続きを表示

2010-07-22 20:53:57 投稿 / 全16ページ    総閲覧数:10464   閲覧ユーザー数:8072

おまけ物語3前編

 

 

「只今より……将棋大会、五国大戦を開催します!!」

 

月が高らかにそう宣言をすると、ワッと五国の代表選手達から歓声が上がる

……何故、この大会が再び開催される事になったかといえば、理由は前日へと遡ることになる

 

 

 

 

 

 

 

「せっかく五国の首脳陣が集まっているって言うのに、話し合いばかりと言うのもつまらないわね」

 

月が謹慎から戻って初めての五国首脳会議、その最中にそう発言したのは華琳だった

ちなみに首脳会議は朔で行なわれており、蜀からは朱里と雛里(今回の会議の折、真名を許してもらった)、魏は華琳と稟、呉は蓮華が来れないとのことで穏と亞莎、あと涼州と幽州からは翠と白蓮が訪れて話し合いを行なっていた

 

「つまらないって……。別にお祭りって訳じゃないんだし別にいいんじゃないか?」

 

華琳の発言に突っ込む俺

平和記念のお祭りで皆が集まる際には色々な企画を催す予定だったが、今回は政務の方針、各国の貿易や国交について話し合う場であるため、特にこれ、といった催しがあるわけではなかった

 

「とはいっても、別に話し合うほどの問題があるわけでも無いでしょう?何か娯楽の一つでも無いの?」

 

そういって不満そうな顔をする華琳

 

「そうはいってもなぁ……」

 

明らかな無茶ぶりに悩む俺

首脳陣が集まってるからこそできることで、楽しくて、今すぐできるもの……何があるだろうか?

 

「あ、それなら将棋大会はどうでしょうか?」

 

そうやって悩んでいると、月が名案とばかりに発言する

 

「将棋……ですか?」

 

月の発言に首を傾げて聞き返す朱里

 

「はい。前に私達の内輪で大会をしたんですけど、結構盛り上がったんです」

 

「興味深いわね。それで、優勝は誰だったの?冥琳か、もしくは詠かしら」

 

興味がわいたのか、華琳が話に乗ってくる

 

「いえ、優勝は恋さんだったんですよ。準優勝はねねちゃんです」

 

「……へぇ、意外な結果ね」

 

優勝、準優勝が予測と全く違う事に驚く華琳

 

「将棋は案外、奥が深いですからねぇ~。一概に頭が良い方が有利と言うわけでもないんでしょう~」

 

そう発言したのは穏

なんだかんだいって皆結構興味があるみたいだ

 

「そう……。そうなると、五国の中で誰が一番優れた打ち手なのかは興味が湧くわね。白蓮の所には翠が入れば各国とも二人ずつになるし、恋とねねを交えて一席設けましょうか」

 

その華琳の発言により、五国対抗将棋大会の幕が開いたのだった

「はい、それじゃあ選手の紹介をするわよ。ちなみに、今回は僕、賈文和こと詠が司会を務めるわ」

 

そういって詠が場を仕切り始める

 

「蜀代表、臥龍こと諸葛亮、朱里!!それと鳳雛こと龐統、雛里!!」

 

「はわわ、頑張りましゅ!!」

 

「あわわ……」

 

 

 

「続いて魏代表、国主の曹操、華琳!!神算と名高い軍師、郭嘉こと稟!!」

 

「楽しませてもらうわ」

 

「まあ、やるからには手は抜きません」

 

 

 

「呉代表、美周郎の懐刀、陸遜こと穏!!次期大都督と目される、呂蒙こと亞莎!!」

 

「頑張りますぅ。……けど、霞さんは、いないですよね?」

 

「わ、私なんかが代表なんておこがましいです。でも、できる限り頑張ります!!」

 

 

 

「涼州と幽州組は各国一人ずつよ。涼州は錦の武将、馬超こと翠!!幽州は白馬長史こと公孫瓚、白蓮!!」

 

「ま、やるからには全力でやるぜ!!」

 

「……代表といっても、私しか居なかっただけだけどな」

 

 

 

「そして僕達の朔からは前回の大会の優勝者、飛将軍こと呂布、恋!!あと……ねね、以上」

 

「……ん」

 

「ちょっと待つです!!なんでねねだけ適当な紹介なのですか!?」

 

そういって各国の代表を発表する詠……ただ一部、物凄く私情を挟んでいたが

まだ、前回ねねに負けたことを根に持っているようだ

 

「は~い、一部五月蝿いのが居るけど気にせずいくわよ。では、今回の大会の概要だけど……」

 

ねねの突込みを完璧に無視しつつ、詠が続ける

 

「出場者八名による勝ち抜き戦よ。まずは乙、甲組に分かれて四人で勝ち抜き戦、代表を決めて、最後にそれぞれの代表が決勝戦。そこで勝った人が優勝よ」

 

「優勝者には賞金が出ますので、皆さん頑張ってください」

 

詠の説明を月が継ぐ

そして抽選の結果、甲組第一回戦はねね対翠、朱里対稟、シードは亞莎で朱里たちの勝ったほうとの対戦

 

乙組は華琳対雛里、恋対穏さん、シードは白蓮で恋達の勝った方と対戦に決まったのだった

 

 

「さぁ、時間も無いしさっさといくわよ。第一回戦はねね対翠!!」

 

「ねねの扱いがぞんざいな気がするですが……やるからには優勝を目指すです!!」

 

「へっ、涼州騎馬隊仕込みの用兵術見せてやるぜ!!」

 

そういって第一回戦が始まる……のだが

 

 

 

 

「はい、これで本陣制圧なのです」

 

「あっれぇ~?おかしいな」

 

……開始数分も経たない内に勝負が決まっていた

翠は全く守りを考えずに突っ込んでいき、そのうちに回り込んだねねの伏兵により本陣を落とされるという典型的な猪だった

 

「はい、次~」

 

これには詠も呆れたのかぞんざいな感じに流す

 

「第二回戦は、稟対朱里よ。それで連戦になっちゃうけど勝った方には続けて亞莎と戦ってもらうわ」

 

「臥龍殿ですか……本気で行かせて貰いますよ」

 

「はわわ、お、お手柔らかにお願いしましゅ!!」

 

そうして第二回戦の火蓋が切って落とされた

 

 

 

開始早々さっきの戦いとは比べ物にならないほどの高レベルな戦いが展開されていた

 

「兵の動きは把握しました。あとは私の掌の上で踊るだけです」

 

「そうは行きません!!策士孔明の名は伊達では無いことを証明して見せます!!」

 

そういって二人は一進一退の攻防が繰り広げられる、が

 

 

「……何故ここで本陣を手薄に?……一旦、様子を見て」

 

そういって一手責めあぐねる稟

その手を見て、ふっ、と勝ち誇った笑みを浮かべ朱里が叫ぶ

 

「かかりましたね。これで決まりです!!」

 

そういって自信満々に駒を打つ……それを見て稟の顔が驚愕の色に染まる

 

「……参りました。まさか将棋で空城計を試みてくるとは……!!」

 

こうしてこの激戦は朱里が制したのだった

 

そうして連戦となった対亞莎との戦いでも貫禄の勝利を飾り、二回戦は朱里が勝ち抜けとなったのだった

 

「……私だけ、描写も無しですか……」

「第三回戦!!華琳対雛里!!」

 

「かの鳳雛と戦えるとはね。楽しませてもらうわ」

 

「あ、あわわ……よ、宜しくお願いします……」

 

 

 

三回戦は序盤から猛攻を繰り出す華琳と、それを臨機応変な手段で凌ぐ雛里という戦いとなった

 

「やるわね。さすが鳳雛といった所かしら」

 

「……ここから、私も攻勢に移らせてもらいます」

 

そういって駒を進める雛里

そこからは序盤と打って変って雛里の攻勢を華琳が凌ぐといった情勢になってくる

 

「臨機応変な守り、そして一転、苛烈なる攻め……どちらも素晴らしいわ。でも、出過ぎよ!!自重なさい!!」

 

そういって華琳が迂回していた弓兵部隊を進め、大将の駒を狙う

 

「え!?あわわ」

 

雛里は何とかそれを防ごうとするのだが、一手間に合わず華琳の弓兵駒によって討たれてしまうのだった

 

「勝者、華琳!!」

 

第三回戦は華琳の勝ちに決まったのだった

 

 

 

 

第四回戦の恋対穏さんの戦いは序盤から一方的だった

 

「え、それじゃあこっちに……」

 

「……ん」

 

パチン

 

「え!?じゃあこの駒を動かして……。でもそうするとこっちが手薄に……」

 

「ん」

 

パチン

 

「う~、では、これで……」

 

「ん、勝った」

 

パチン

 

「……うう、私、良いとこなしですかぁ~」

 

こうして恋が勝ち抜ける

 

その後の恋と白蓮の戦いは、恋の圧勝

……と誰もが思っていたのだが、そこで大きな番狂わせが起きた

「よし、じゃあこれで」

 

「…………ん」

そういって互いが駒を進めるのだが、いつものように恋が相手のペースを崩すという戦い方が出来ずに居た

 

「あれはどうなっているんだ?」

 

それを見て、疑問に思った俺は詠に聞いてみる

 

「……恋の戦い方は、基本通りのものなの。本陣を守って隙を突いて攻める、それだけのことなの。ただあの子が強いのは、敵の作戦に一つも乗らず、ただただ無心で攻めるからなの」

 

「じゃあ何で……」

 

「相手が悪すぎるのよ。白蓮は、恋以上に基本通りの攻めをして、更に全く隙が無いの。その上、変な策も講じないから隙も生まれない……恋にとって一番やりにくい相手よ」

 

その後、お互い何手か打ち合うのだが詠のいった様に攻め入る隙が無い白蓮の攻勢に徐々に追い詰められていく恋

 

そして……

 

 

 

「……負けた」

 

「よっしゃ!!」

 

前回優勝の恋が敗退というまさかの展開となるのだった

 

〔後半へ続く〕

月 おまけ物語

 

 

「ふう~、お茶がうまいなぁ~」

 

昼の暖かな日差しを浴びながらお茶を飲み、呟く……なんか爺くさい気もするが

けれど、もと居た世界ではお茶なんて大して好きではなかったものの、この世界に来てからはお茶の美味しさに目覚めてしまったのだから仕方ないと思う

 

「本当、美味しいですね~」

 

対面に座り、一緒にお茶を飲んでいた月が答える

こうして月と一緒にお茶を飲むのはいつもの事だし、ここまでなら今までのお茶会とかわらない

だけど、今回はいつもと決定的に違う事があった

それは……

 

「本当!?よかった~。美味しく出来たか不安だったんだ~」

 

俺と月の飲んでいるお茶を淹れたのが目の前に立っているメイド服を着た女性……桃香だということだ

 

「人にお茶を淹れてもらうなんて久しぶりです。でも、わざわざ桃香さんに淹れて貰うなんてなんだか悪いですね」

 

お茶を飲み、顔を綻ばせていた月が、一転申し訳なさそうな顔をしながら言う

だが桃香はといえば、そんな月に笑いながら答える

 

「悪くなんて無いよ。だって私は侍女も兼任してるんだし、こうしてお茶を人に振舞うなんて久しぶりで楽しいし」

 

そういってからからと笑う桃香

 

「久しぶりって言うと、昔は人に振舞ってたりしたのか?」

 

疑問、と言うほどでは無かったが気になったので聞いてみる

 

「あ、うん。昔、まだ私が筵売りしてた頃なんだけど、その時にお金貯めてお母さんにお茶を淹れてあげてたことがあったんだ」

 

「へ~、そうなんだ」

 

この時代、お茶と言えど結構な値段がする

それを庶人の頃に母親に飲ませてあげるなんて親孝行だったんだな

「お母さんの為に練習したからこんなに淹れるのが上手いのか。いや、本当美味しいよ」

 

そういって淹れてもらったお茶を飲み干す

 

「……むぅ」

 

そんな俺を見ながらさっきとは一転、なんだか月が不満そうな顔をしてこちらを見ていた……どうしたんだ?一体

 

「あ、今新しいの淹れるね」

 

桃香がそういって俺の湯飲みに新しいお茶を淹れてくれようとするのだが、その寸前、月が声を上げる

 

「あ、あの!!もしよかったら、次は私が淹れましょうか?」

 

「え?月がか?」

 

突然の発言に少し驚く俺だったが、構わず立ち上がる月

 

「はい。桃香さんにばかり淹れてもらってたら悪いですし!!」

 

そうして茶器に手を伸ばそうとするのだが……

 

「……やっぱり、私の淹れたお茶じゃ満足してもらえなかった?」

 

そんな月の行動を見て、何か勘違いしたのか桃香は落ち込んでしまったのだった

 

「え、いえ!!そんなことは無いです!!無いんですけど……」

 

落ち込む桃香を見て慌てて否定する月

 

「月。折角淹れてくれてるんだし、今回はお言葉に甘えたらどうだ?いつもは淹れるばっかりだからたまにはいいだろ?」

 

二人を見かねて口を挟む俺

多分、月も親切心から言っているんだろうけど、桃香の様子じゃあ別に嫌がってないようだし、それどころか楽しんでいたみたいだ

それなら任せたほうがいいんじゃないかと思い、そう口にする

「へぅ……、そうですよね……」

 

「……えーと、どうしましょうか?」

 

心なしか残念そうにしている月を窺いながら桃香が聞いてくる

 

「じゃあ、桃香さん。お願いできますか?」

 

「う、うん。それじゃあ淹れるね」

 

月にそういわれ、桃香が俺達にお茶を淹れてくれる

 

「はい、どうぞ~」

 

そういって俺達にお茶を差し出してくれる桃香

差し出すときには必然と前屈みになる為、桃香の至宝ともいえる立派な胸が強調され、自然と目線がそっちへと向かって……

 

「むぅーー」

 

しまうのを何とか自制し、唸りを上げてこちらを睨んでいる月の視線から逃れるように作り笑いを浮かべる俺

……でも、男である以上、あんな至宝を前にして意識するなというのが無茶だと思う

 

「……あんなの、ただの脂肪の塊で……でも、やっぱり無いよりはあったほうがいいんでしょうか……」

 

そんな俺への睨みを解くとボソボソと何かを呟く月

何をいっているのかは聞こえなかったので胸を見ていた事に気付かれたかどうかは分からなかったが、とりあえず危険は回避できたようだ

 

「ほえ?どうかした?」

 

一方、桃香はといえばそんなやりとりに全く気付かなかったのか、意味が分からないといった風に首をかしげていた

「い、いや、なんでもないよ!?それにしても本当に美味しいなぁ!!毎日でも飲みたいくらいだよ」

 

俺は誤魔化そうとやや大きな声になりながらもお茶を褒める事にする

まあ実際美味しいお茶だったので嘘ではないのだが

 

「ホント!?ありがと~」

そういうと俺の腕にムギュっと抱きついてくる桃香

ってか、そんな風に抱きつくと、腕に柔らかな感触が……!!

その感触に、図らずとも口元が緩んで……

 

 

 

 

 

「か・ず・と・さん?」

 

 

 

 

 

「ヒィ!?」

 

俺は前方より放たれる物凄いプレッシャーを感じ、恐々とそちらを振り向く

するとそこには、

 

「そろそろ、仕事に戻らないといけませんね?」

 

満面の笑顔でそう言う月の姿があった

……なぜか笑みの裏にドス黒いオーラが見えたが

 

「あ、もう戻るんですか?」

 

桃香にはそのオーラが見えないのか、暢気な声で聞く

 

「はい。桃香さん、今日は美味しいお茶、本当にありがとうございました。……さ、行きましょうか一刀さん」

 

月は礼を述べながら俺の腕をガッと掴むとそのままズルズルと俺を引きずりながら歩き出す

 

「痛い痛い!!月、自分で歩けるからちょっと待って!?と言うか何処にそんな力が!?」

 

そんな俺の抗議を全く無視しつつ歩く月だったが、ふと立ち止まると振り返り

 

 

 

「桃香さん!!貴女には負けませんから!!お茶だって、それに魅力だって!!絶対に負けません!!」

 

 

 

半泣きになりながらもそう叫び、再び俺を引きずりながら城内へと戻っていく月

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?何の事?」

 

一人中庭に残された桃香は、そういって首を傾げるのだった

詠 おまけ物語

 

 

「はぁ~」

 

ある日の事、僕、賈文和こと詠は執務中だというのに溜息を吐いていた

それというのも

 

「最近、一刀とまともに会えて無い……」

 

いや、仕事の上ではちょくちょくと顔を合わすし、前の涼州騒ぎの時だってそうなのだが如何せん仕事が無いときに話す機会がなかなか作れないのだ

 

「前の休みの時はねねに先を越されるし……」

 

あの日は僕も休みだったのだが、一刀の部屋を訪ねると最早もぬけの殻だった

聞いた所によれば朝早くにねねと出かけたとのことで、その日は一日帰ってこなかった為会う機会は作れずじまいだった

 

「……いえ、こうして腐ってても仕方ないわよね」

 

僕は頭を振り、暗鬱な気持ちを振り払う

そう、こんな風にウジウジ悩んでるなんて僕らしくない

機会が無いというのなら、作れば良いだけの事だ

 

「こうなったら」

 

そういって執務机に山積みになっている書簡に目をやる

 

これを急いで終わらせ時間を作り、政務のことでも口実に一刀の部屋を訪ねてやればいい

 

「よし!!やってやろうじゃない!!」

 

そういって僕は迅速かつ正確に、書簡の山を片付けていくのだった

「ふう、そろそろ先が見えてきたわね」

 

手に持った筆では政務を続行しつつ、一息吐く

山積みになっていた書簡はもう数えるばかりになっていた

外を見ると、まだ昼になるかどうかという日の高い時間であり、十分すぎるほどの速度で終わるであろうと思い少し気が楽になるのだが……

 

コンッコンッ

 

「入っていいわよ」

 

扉をのっくする音に僕が答える

 

「はっ、失礼します」

 

そういって部屋に入ってきたのは、僕の副官でもある李儒だった

 

「どうしたの?」

 

僕は李儒にそう問いかける

 

「はっ、実は蜀国より使いが参り、この政務案について意見を頂きたいとのことです」

 

そういって李儒は書簡を机に置くのだが……その量は先ほどまでとはいかないものの、十分山積みと言える量だった

 

「ちょっ、なんなのこの量は!?」

 

「はぁ。使いの話によれば、一刀様の天の知識を取り入れた政務を行うに当たり、問題となるであろう部分について諸葛亮殿、龐統殿が纏めた所このような量になったと」

 

淡々と語る李儒のに軽く眩暈を憶える僕

 

「確かに天の知識を政務に取り入れることを勧めたのは僕だけど、この量は無いんじゃない?」

 

そうはいいつつも、諸葛亮と龐統……朱里と雛里の能力の高さは知っているから疑問点と言っても本当に運用について重要なことばかりだろうし、勧めた手前しっかりと答えないといけない

 

「……分かった。やっておくからそこに置いておいて頂戴」

 

「はっ、では私はこれにて」

 

そういって部屋を後にする李儒

 

「はぁ……。まあ、急いでやれば何とかなるかしら」

 

そういって僕は書簡に手を伸ばす

ただ、この時点で僕は重要な事に気付いてなかった

こういうときに限って発動する、自分自身の、運の悪さに……

「文和様!!涼州の馬騰殿が先日の一件の礼をしたい為、後日会見を望むと書状が届いています!!」

 

「日取りについてはまた連絡するって伝えて頂戴!!あと、蚕は絶対に要らないとも書いておいて!!」

 

 

 

 

「魏の曹操殿より、次回の五国会議について書簡が届いております!!」

 

「急ぎ目を通すからそこに置いておきなさい!!」

 

 

 

 

「呉の孫権殿が長江の灌漑工事について意見を求めてきております!!あと、姉が迷惑をかけていないか、とも聞いてくれとの事です!!」

 

「それについては冥琳に回しなさい!!あとあんたの姉は自由すぎるって伝えて頂戴!!」

 

 

 

 

「公孫瓚殿より、〔最近、私の影薄くないか?〕と手紙が届いていますが……」

 

「そんなの、僕が知るかあぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「はあ、はあ、はあ……やっと、終わったわ……」

 

机に突っ伏しながら僕が言う

もう日も暮れ、だいぶ遅い時間になってしまったが飛び入りの仕事も含め全ての仕事を終えることが出来た

 

「遅くなっちゃったけど、まだ就寝する時間って程じゃないし、急げばまだ……」

 

そういって立ち上がろうとするのだが、何故か体に力が入らない

 

「あ、れ……?」

 

そうして再び机に倒れこんでしまう

そこで、僕の意識は途切れてしまうのだった……

「う……ん?」

 

気がつくと僕は寝床の上に居た

 

「あ、れ?なん、で……」

 

頭がボーっとして何も考えられない

そうして僕が体を起こそうとすると、後ろから聞きなれた声が聞こえる

 

「よっ!!詠。調子はどうだ?」

 

その声に驚いてバッっと後ろを向くと、そこには一刀の姿があった

 

「なっ!!一刀!?何であんたが此処に居るのよ!!」

 

「様子を見に来たんだよ。……もしかして憶えてないのか?」

 

「へ?憶えてないって……?」

 

まじめな顔をして聞いてくる一刀に、なんだか間抜けな返しになってしまう

 

「その様子だとホントに覚えてないみたいだな。お前、昨日仕事机のところで倒れてたんだぞ?」

 

一刀から聞いた話によると、あの後僕は机で気を失ってしまい見回りにきた侍女が僕を発見、寝床まで運んでくれたらしい

 

「まさか僕が仕事なんかで気を失っちゃうなんて……」

 

そう僕が落ち込んでいると、一刀が話しかけてくる

 

「仕事なんかって。李儒さんから聞いたぞ?昨日はかなり無茶したみたいじゃないか。それだけやれば倒れるって」

 

「うっ……」

 

正論を言う一刀に僕は口ごもってしまう

 

「月も、詠は仕事しすぎだから今日一日ぐらい休め、ってさ」

 

「うう、分かったわよ」

 

そういって体を横たえる僕……と、気になったことがあったので一刀に聞いてみることにする

 

「あんた、仕事はどうしたのよ」

 

外を見ればもう大分日が高くなってきており、仕事を始めるにしても遅すぎる時間だった

 

「俺は今日は非番。だから、詠の面倒でも見てやろうと思ってな」

 

「……へ?」

 

一刀の言葉に間抜けな声が出てしまう

 

「ま、俺じゃあ不服かもしれないけどな」

 

そういっておどけた態度を取る一刀

僕はといえば、その事実が物凄く嬉しくて、でも素直にこいつにそれを伝えるのも癪だったので

 

「ふ、ふん!!まあ、あんたでも居ないよりはいいわよ!!そ、それじゃあ話し相手にでもなってもらおうかしら」

 

そう、強がって言ってみる

 

「寝なくても大丈夫なのか?」

 

「ええ、大分寝たし大丈夫よ。そんな事はいいからなんか面白い話でもしなさいよ」

 

「面白い話ってまたハードル高いな……」

 

そういって苦笑する一刀

 

 

 

(仕事を頑張った、甲斐があった……)

 

 

 

それから半日の間、僕はとても楽しく、充実した時間を過ごすのだった……

おまけ物語3後編

 

 

「甲組代表決定戦はねね対朱里!!乙組代表決定戦は華琳対白蓮!!時間が無いから同時進行でやって頂戴!!」

 

詠が高らかに叫ぶ

 

「恋殿の仇をとるため、ねねは負けられないのです!!」

 

「はわわ、私だって負けません!!」

 

「まさか恋じゃなく貴女がくるとはね……。本当に先が読めないわ」

 

「悪かったな恋じゃ無くて。でも、せっかく目立つ好機なんだ。全力で行かせて貰うぞ!!」

 

両組共、両者がにらみ合う

 

「それでは、試合開始!!」

 

その合図とともに戦いが始まったのだった

 

 

 

 

 

「なるほど、そうして左翼に睨みを利かせてきますか……。それならこちらから行かせて貰います!!」

 

「なっ!!やるですな朱里。でも、ここからが本番なのです!!」

 

ねね対朱里の戦いは手に汗握る、文字通り熱戦となっていた

現状は定石通り駒を進める朱里が優勢であり、それをねねが奇策で凌ぐといった感じの試合運びだった

 

「どんなに策を重ねても無駄ですよ。そのくらいで私は崩せません!!」

 

そういってじわじわと兵を進めていく朱里

 

「うう、そ、それではこれでどうですか!!」

 

その攻めに狼狽した風なねねが一手を放つ

すると朱里はニヤッと笑って言い放つ

 

「とうとう手を仕損じましたね?」

 

そういって自信満々といった風に駒を打つ朱里

その両者の様子から、誰もが勝敗は決したと思った

だが、

 

「……ふふふっ!!その手を待っていたのです!!隙を突くために、駒を突出させたこの手を!!」

 

そういってねねはまるで勝ち誇るかのように駒を打つ

 

「え!?で、でもここまでくれば、奇策は意味を成さないはず……!!」

 

「朱里、お前は軍師としてはねねが敵わないほどの腕前です。でも、これは所詮将棋。兵の士気も、兵糧もない遊戯ではお前の得意な軍略も、戦略も必要ないのです!!」

 

そういって一気に攻勢に出るねね

先ほどまで圧倒的に有利だったはずの朱里は徐々に追い詰められていってしまう

 

「将棋において、真に必要なのは戦術なのです!!これで、決まりなのです!!」

 

バシッという駒の音が響き渡り、数秒の静寂が流れる

 

「……ありません」

 

「やったーーー!!なのです!!」

 

こうして、ねねの歓声をもって、甲組の代表が決定したのだった

 

一方、乙組

 

「こ、これでどうだ!!」

 

「……貴女、本当に恋に勝ったの?はい、これで終わりよ」

 

白蓮が焦りながらも一手を打つのだが、無情な宣告とともに華琳が打ち返す

 

 

 

「……やっぱ、私が目立つのは無理なのか~~!!」

 

 

 

こうしてたいした山場も無く、華琳が決勝へと進むのだった

「いよいよ決勝戦よ。甲組代表、ねね!!乙組代表、華琳!!」

 

「朱里ではなく、貴女が勝ち残ってくるとはね……。ふふっ、今日はとことん予想を覆されるわ」

 

「うう、恋殿の仇をこの手で取りたかったです。ですが、代わりにお前を倒してねねが優勝して見せるのです!!」

 

二人の視線がぶつかり合い、いよいよ決勝戦の火蓋が切って落とされたのだった

 

 

 

 

しかし、試合内容は序盤から一方的な展開だった

 

「む、むむぅ……」

 

「……こんな風にまで期待を裏切られるのは嬉しく無いわね」

 

華琳が嘆息するように言う

 

ねねは先ほどの朱里との戦いの疲れからか、少しづつ戦い方に粗が出るようになってきていた

それを見逃す華琳ではなく、ねねが隙を見せるたびに駒を斬り込ませていき、徐々に華琳優勢となっていったのだ

 

「精彩を欠く貴女に勝っても嬉しくは無いし……そうね」

 

そういって何か思いついたのか華琳が悪い笑みを浮かべ、ねねのほうへと近づき顔を寄せる

 

 

 

「私が勝ったら、褒美として月に一刀を魏へと貸すように上奏するわ。天の知識を必要とする政務の為といえば断れないでしょうから」

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

華琳が何か耳打ちすると、ねねはピクッっと体を振るわせ華琳を睨みつける

 

「それが嫌なら、力ずくで阻止して見せなさい。……さあ、再開しましょう」

 

そういって余裕の笑みを浮かべる華琳

「……お前だけには負けないのです!!絶対、勝って見せるのです!!」

 

そう叫ぶねねの目は、先ほどまでと打って変って闘志が漲っていた

 

「ふふふっ!!そう来なくてはね!!」

 

そうして再び打ち合いが再開される

 

 

 

展開としては序盤のリードを活かし攻め立てる華琳が押してはいたが、ねねがしぶとく粘り、徐々に劣勢を覆していく

 

「さすが臥龍を下しただけはあるわね。ならこれでどう!?」

 

その勢いに押され、華琳が誘いの一手を打つ

 

「右翼なんかくれてやるです!!このまま押し切るです!!」

 

だが、ねねはそれすら無視して一気呵成に攻め立てる

 

 

そして、結果は

 

「……久々に楽しませてもらったわ。私の負けよ」

 

そういって駒を置く華琳

その光景を見て、一瞬止まるねねだったが

 

 

「う、うわーーーん、やったのですぞーーー!!!」

 

 

そういって叫ぶと俺の方へと走ってきて思いっきり抱きついてくる

 

 

「すげぇ!!凄いぞねね!!」

 

 

「よかった、よかったのです!!」

 

 

そういって抱き合いながら喜ぶ俺達

こうして五国対抗将棋大会は朔国代表、ねねの優勝で幕を閉じるのだった……

 

 

 

 

 

 

余談ではあるが、大会の賞金は恋と、恋の家族への食費で一ヶ月と持たず全て消えてしまったと言う……


 
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