「うーん、今日もいい天気だなー」
ぽかぽかと暖かい日差しを浴びて伸びをしていると
「うぉらああー!待ちやがれぇええー!」
と真人の叫び声。何事かと声をかけようとするがあ
っという間に走り去ってしまった。
「あいつは今、長年のライバルと張り合っているんだ
よ」
と恭介。
「あっ恭介!どういうこと?長年のライバルって謙吾
のこと?」
「いいや違う。あいつがこれまでの人生で一度たりと
も勝つことができなかった相手だ。」
僕はそんな謙吾以上に真人と張り合える相手を知ら
ない。それって一体……?
「それは……」
「それは……?」
ごくりと唾をのみ、恭介の次の言葉を待った。
「蝶々だ」
「……は?」
僕は一瞬わけがわからなくなり気の抜けた声を出してしまった。なんだって?蝶々?
「あいつはほら、あんな性格だからいつも力技でつかまえようとするんだ。だから今まで
つかまえられた例がない。それがあいつにとっては敗北であり屈辱でもあるんだってよ」
「へー……なるほどね。でもなんかシュールだね、大柄な男が蝶々を追いかける風景なん
て。イメージ的には幼い子供がはしゃぎながら追いかけてるのが普通だと思うけど」
「だから面白いんじゃないか」
恭介がニヤリと笑う。
「まあ、ね。」
そんな話をしているうちに真人がこっちめがけて猛進してきた。
「おりゃあ!そろそろへばってきたんじゃないのか!?観念してこの筋肉ネットにつかまり
やがれーー!」
筋肉ネット?もしかして両手の指を交差させているアレのこと?いろいろ突っ込みどころ
はある気がするけどそれはひとまずおいといて、このままだと僕にぶつか、
ドスッ!! 真人の巨体が覆いかぶさる形で僕に突っ込んできた。
「るよね。やっぱり」
「いてて……おう、理樹じゃねぇか。なにやってんだ?こんなところで」
幸いどちらにもけがらしいけがはないようだ。
「とりあえずその筋肉ネットを頭からどけてもらえる?」
例の筋肉ネットは僕の頭を見事にとらえていた。
「おお、わりーわりー。はっ!あの野郎どこいきやがった!?」
「ねえ、真人。その筋肉ネットを使うのも真人らしいけどさあ、」
「ありがとよ」
ほめているつもりはないのだが。
「らしいけど、本気でつかまえたいんなら普通の虫取り網を使ったほうがいいと思うよ」
「いや、だめだ。それじゃ勝ったことにならねぇ。それより理樹も探すの手伝ってくれ」
何を言っても無駄らしい。恭介もいつの間にかどこかへいなくなってるし。さて、どう
しようか……。そう考えていると後ろから、
「リキーー!なにやってるですか?」
クドの声がした。振り向くと手を振るクドとその頭上に、
「クド!少しじっとしてて!」
「わふっ?」
蝶々がいた。そしてそのままクドの帽子にとまり羽を休めている。
「今、クドの頭の上に蝶々がとまっているんだ。だから少し動かないでくれる?」
「わーお!あ・ばたふらい・おん・まい・へっど!わかりました、リキ!了解です!」
つかまえるとしたら今が絶好のチャンスだ。早くこのことを真人に知らせ、
「そこにいやがったか!クー公!動くんじゃねえぞ!必殺、筋肉ネーーーーット!」
「わふっ!?」
クドは真人の声と鬼のような形相に驚き、身をよじってしまった。当然、真人の筋肉ネ
ットは空振りに終わりまた敗戦の記録を一つ重ねる結果となった。
「くそーー!次こそは!」
一人次なる戦いに闘志を燃やす真人であった。
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リトルバスターズ!短編小説コンテストの一作目です。