No.159810

作語†無双 

あのさん

荒れた大地を潤す雨

それは

山西さんの脇腹から

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2010-07-22 19:07:19 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:1575   閲覧ユーザー数:1453

 

 

 

怒りの業火が世を焼き尽さんばかりに

天空を赤々と染め上げていく下

 

 

城内広場にて

 

 

かつて魏呉蜀の三国及び、周辺諸国を壊滅状態に陥れた

 

 

天の御使い 

 

北郷一刀の首が晒された

 

 

 

 

 

―――3日前

 

「親愛なる華琳へ

少し小腹が空いたので、

ちょっとそこまで出掛けてきます。

夕飯までには必ず戻ります。

北郷一刀。」

 

・・・・俺は書き置きを残し天竺へと旅立った。

 

 

―――現在

 

 

魏からの使者と名乗ったら、何かあっさり玉座の間まで通されたんだが。

 

しかし・・・・・・・・・誰もいないな。

警備兵レベル2の気配すらないぞ。

 

「どっこいしょういち。」

 

特に何もすることがなく、仕方なく玉座に座る。

 

 

ちっ・・・・・・遅いな。

こうまで待たされるってことたぁ、俺にうみゃい棒丼を食せと申すかと・・・。

 

「ちっ、胃に詰まった杏仁豆腐がモコモコ膨れ上がってくる☆ゼ。」

 

 

「とぅーーーーーすっ!!」

 

ハッズババンッ!!

 

空中で、一気に制服を脱ぎ去り、スッポンポンの全裸に変身する。

 

クルクルと回転しながら玉座に着地し、同時に「ふんっもっふ」と勢いよくかがむ。

 

蜀国全ての頂点を

2割のコゲ茶色と8割のやさしさのハーモニーで彩り添える。

 

「さけぱっぱっぱっぱっ。」

 

我ながらその完成度の高さに恍惚な笑みを浮かべていると、

コツコツと扉の外からの足音が耳に入ってきたので、

俺は逆立ちでゆっくりと元の定位置へと戻る。

 

案の定、ギギッと扉が開き、中から蜀国王の劉備と一歩後ろに従う関羽が現れる。

俺の流麗な全裸スタイルに一瞬たじろいだが、すぐに微笑みを返してきた。

それに対し俺は高速ブリッジで応える。

 

 

しかし、玉座に近づくと二人はこと異変に気付いたらしく、

関羽は憤怒を無理やり冷静さで上書きしたような眼で俺を捕らえる。

 

 

・・・なんか照れるな、てへゅ!

 

 

 

「・・・北郷殿、これは一体どういうことか?」

 

俺はエコバックからイカフライの袋を取り出しながら、

嫉妬に狂った美少女幼馴染キャラで答える。

 

「はて、拙僧がここへ通された頃には、すでにこの惨状となっておりましたが。」

 

あっ、と俺は思い出したようにイカフライの袋に手を突っ込む。

 

「そういえば・・・小柄な金髪の女子が「はわわ~、はわわ~」と唱えながら、

玉座に腰を掛けていたのをこの眼で見ましたぞ。

バイト先の店長に誓って、違いはありません。」

 

ばりっばりっばりっ!!

 

「なっ、あの朱里が!?あっあの、申し訳ありませんでした、北郷殿。

魏の臣下の方にも関わらず、真っ先に疑いの目を向けるようなことをして。」

 

ばりっばりっばりっ!!

 

「ふぉっふぉっふぉ、なぁに間違いは誰にでもありますよ。」

両手にイカフライを構え、精一杯鼻血を吹きながら、俺との格の違いを見せつける。

 

ばりっばりっばりっ!!

 

「しかし、そうは言っても、これはもうただの戯れで済むことではありません。

最悪、極刑も視野に入れることとなるでしょう。」

 

ばr・・・・・・・・・・えっ!?

おいおい、それなんてマジすか?

 

たかがウンチ一切れじゃないか、二切れじゃあないんだぞ。

しかもそいつの場合完璧に冤罪だしよ。

 

玉座の惨禍に、やっと脳の処理速度が追いついた蜀王がついに口を開く。

 

「・・・ねえ、愛紗ちゃん。ここには私達3人しかいないよね?」

 

 

「ええ、そうですが。それが一体なんです?」

 

それを聞くなり劉備は玉座の前に赴き、そして

 

―――――――座った。

 

苦悶や怪訝な表情すら微塵も滲ませず、むしろ自愛に満ちた聖母のような瞳で。

 

「とっ桃香様、なにを!?」

 

「なぁに、愛紗ちゃん。私は普通にイスに座っただけだよ。」

 

こっ、この女!最初からここには何も存在しなかった、とでも言いたいのか!!?

そのために自ら進んで汚物の餌食になるとは、

・・・・・・・なんて器のでかさだ。

もはやクリリンやヤムチャの戦闘能力すら比較対照にならない。

 

俺は天井に遮られた天空を仰ぎ見ながら悟る。

ああ、俺はなんて最低なことをしたのだろう、もう俺の良心がぺッタンコに潰れかねない。

 

「う、あ・・・す、すみません、俺、お二人に嘘をついていました。

実は、玉座に直腸を仕向けた犯人はその「はわわ」ではなく、

真犯人は赤毛で小柄で蛇矛を背に担いだ・・・張飛という者です。」

 

ばりっばりっばりっ!!

 

「えっ、鈴々が!?でも、どういうことです?」

 

ばりっばりっばりっ!!

 

「彼女は偶然にして現場を目撃してしまった私を、その刃をもって脅してきたのです。

・・・ですが、私は先ほど劉備様の大海の如く壮大な御心に触れ、自身の過ちと愚かさに気付かされました。」

 

ばりっばりっばりっ!!

 

「例え悪鬼羅刹のような醜悪な所業にも、深淵のように真っ暗で胸を引き裂かんばかりの悲痛な想いが必ずあるはずです。

故に、なにとぞ、なにとぞ御寛大な処置をお願い申し上げます。」

 

ばりっばりっばりっ!!

 

その後、犯人無きこの事件が公に周知されることはなく、一部の人間の耳にのみ収まった。

だが、寛大な処置の下でもさすがに無罰にとはいかず、というか義姉である関羽が頑なにそれを許さず。

翌日、張飛は長期謹慎と地下深くで鞭打ちの刑に処された。

 

 

 

地下で背中を鞭で叩かれている間、「うっ、ちがう、鈴々は全く知らないのだッ」

なんて苦痛で顔を歪ませ泣き叫びながら、充血した眼で俺を必死に睨んできたけど、

俺はポップコーンを口にほお張りながらに華麗に観戦する。

 

それからの日々というもの

俺は日付も過ぎた頃に就寝し、昼近くに起床するという生活スタイルが定着し、

街に全裸で繰り出せば、ぬらりひょんの如く無銭飲食を行い颯爽と店を出る。

 

そして時には、絶賛謹慎中の張飛をぎゃはっはと冷やかしにも行った。

しかし、話をしてみるとこれが意外にいい奴で、明るく裏表の無い真っ直ぐな印象を受けた。

今では真名を教えてもらうまでに仲良くなっている。

けど、あの地下でのことを気にしているのか、時折憂いた顔を浮かべるので、

俺はいたたまれなくなり

霊長類の代表として

 

・・・そっと真実を教えてあげた。

 

お前をその罠に嵌めた真犯人・・・それはあの諸葛亮だと。

 

一瞬眼が土色に曇ったような気もしたけど、気のせいだろう。

きっと、憑き物が取れて明日への希望に心が満ち溢れたのだ。

 

 

――2年後

 

 

俺は、冥界の王ジェシウスとの死闘により・・・・・華琳を始めとする魏国での記憶を失った。

 

その夜の帰り道、毎日通ってる馴染みのラーメン店で

 

「・・・なあ、店主は

トースト派か?ご飯派か?」

 

なんて、いつも通りにしょーもない話をネタとして振ってみてのだが

 

―――この時、普段は温厚で知られる店主が何故かマジギレ

 

俺も大剣クレイモアで本気で応戦するものの、

店主の鋼の拳から繰り出す圧倒的な暴力に、散々に打ち負かされた。

 

 

・・・しっかし、今日はクリスマス!

俺は聖夜の奇跡により記憶を取り戻す。

 

―――そして何故かさっきの店主の記憶も俺の中に入ってきた!

 

 

 

 

・・・さも当然の如く、俺は吐き気を催し

清澄なる川辺で気分を落ち着かせようと、一旦城の外に出る

 

 

 

 

 

・・・・・・・だが

 

 

 

何故か、背後には道を埋め尽くさんばかりの人

そして数え切れぬほどの慟哭の嵐

 

「ほんごう様ー、行かないでくだせぇ!!」

「ああ、神よ!あの真の英雄、北郷一刀様にご加護を。」

「うわちゃ~~~~めっそ!!!」

「一刀よ、貴様はこの冥界の王であるジェシウスと唯一、拳で互角に渡り合った好敵手だ。

どこかで野たれ死ぬことは、我が矜持に懸けて許さん。」

 

 

「えっ、何これ・・・・・・・・・俺出て行かなきゃダメなの?」

 

後の史書「北郷伝説!」によると、この日蜀における生きとし生けるもの全ての存在が

北郷との別れに涙したと記されている。

北郷一刀自身も大粒の涙を流しながら泣く泣く他の地を目指したという。

 

これより10日後

突然、蜀は何の前触れもなく五胡に対し大規模の侵攻作戦を開始する。

 

さらに3日後

冥界の王ジェシウスと店主の一方的な活躍により、五胡の全ての領土を平定する。

 

 

 

三国の均衡が今ここに崩れる!

 

 

あとがき

 

―――この物語は

 

蜀の地を舞台に

大陸を越えた

遥か西方の勇士たちが

地を埋め尽くし

大地を駆け

剣で魂を穿ち

槍で地を爆ぜ

弓で熱を還し

眼からビームを出し

母ちゃんが帰ってくる前に

急いで引き出しに隠す

 

・・・・・・・そんな物語

 

 

 


 
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