No.158586

真・恋姫✝無双 仙人で御遣い 39話

虎子さん

作者復活・・・かな?
とりあえず、お久しぶりです。
今回は、昴の拠点っぽい話だけです。

2010-07-18 02:29:41 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:3915   閲覧ユーザー数:3347

 

<昴>

 

 

 

『白虎』結成から二月程経ったある日のこと。

夜、『白虎』は荒野に陣を張った。

その陣の中に彼女は居た。

 

姓を太史(たいし)、名を慈(じ)、字を子義(しぎ)、真名を昴(すばる)。

 

彼女の現在の地位は、“天の御遣い”紫堂豪臣(ひでみ)が率いる義勇軍『白虎』の弓部隊の部隊長。

しかし、それは仮初め。偽りの姿だった。

 

 

 

 

今、昴は豪臣殿を含める『白虎』の主立った者たちに気付かれぬ様に陣を抜け出していた。

そして、陣のすぐ傍にあった林の中へと歩みを進める。

静寂の林の中、昴は急に立ち止まる。

すると、木の影から何者かが出て来た。

「お待ちしておりました、部隊長・・・・・・いえ、隊長」

出て来た人物は、白髪混じりの初老の男だった。

姓を程(テイ)、名を普(フ)、字を徳謀(トクボウ)と言い、『白虎』の弓部隊団長(百人

を纏める地位)を務めている。

しかし、その団長である程普は、昴のことを“隊長”と呼んだ。

これは、『白虎』部隊長である昴を指す呼称としては不自然である。

が、昴は笑みを浮かべ

「少し遅れたな、副長」

と言った。

 

部隊長が“隊長”に、団長が“副長”になっている理由。

それは、彼女らが『白虎』ではない何かであることを示している。

 

「それでは、これを頼むぞ、副長」

「お任せを」

昴は、隠し持っていた木簡を程普に手渡す。

「それと、合言葉は“お猫様”だ。忘れるなよ」

「御意」

程普は、余計なことは言わずに受け取り、その木簡(もっかん)を懐に忍ばせ、その場から陣とは反対側へと走り去って行った。

 

 

 

程普が受け取った手紙には、何が書いてあったのか。

それは、『白虎』の規模、練度、将、支援者などの情報だった。

これらの情報を、定期的に彼女らの本当の主人に送り続けることが、本当の目的であった。

 

“天の御遣い”

 

その情報を偶々早期に聞きつけた主人は、昴と、昴の隊の副長をしていた程普と共に義勇兵として送り込んだのだった。

そして、今回程普に渡した木簡はこの任務の初仕事の証である。

 

 

 

程普の後ろ姿を見届けた昴は、無事、自分の“役目”が果たせたと思い大きく息を吐いた。

そんな彼女に、後方から思いもよらない人物から声が掛けられた。

 

「昴、こんなところで何をしているんだ?」

「っ!!」

 

反射的に振り向く昴。

その顔は、目を見開いて驚いていることが丸分かりであった。

「なんて顔してるんだよ。美人が台無しだぞ」

そんな彼女の顔を見て唇を釣り上げたのは豪臣だった。

「ひ、豪臣殿・・・でしたか」

驚きの抜けない昴は、引き攣った愛想笑いを浮かべながら呟く。

そんな彼女に

「何をそんなに焦っているのですか、昴?」

「っ!?・・・さ、朔夜殿も居たのか」

と、後方から、つまり程普が去って行った方向から朔夜が現れていた。

豪臣と朔夜に前後を挟まれた昴。

(豪臣殿に朔夜殿、この二人に挟まれたか・・・これは・・・不味い、な?)

昴はこの状況に、内心舌打ちする。

「さて・・・もう一度訊くけど、何してたんだ?」

そう訊いてくる豪臣の表情から、その内面を読み取ろうと、昴は豪臣の眼を見据える。

(・・・特に敵意などは見られないが・・・さて)

昴は、豪臣の眼からそう読み取り

「たまには森を歩くのも「散歩ですか?」・・・朔夜殿?」

自分の言葉を遮った朔夜を振り返ると

「弓部隊団長の程徳謀(ていとくぼう)と共にですか?」

「なっ!!」

ニヤッ、と笑う朔夜が驚きの言葉を発した。

(クソッ!見られていたのか!)

背中に冷や汗が浮かぶのを感じる昴。

「いや、団長とは「副長の間違いだろ?」っ!!」

今度は、豪臣が口を挿む。

その言葉に、昴の動揺は一気に頂点に達する。

「ど、どこまで知っている?」

 

 

 

最早、背中どころか全身に汗を感じる昴が、豪臣を睨み据えて訊く。

「どこまでも」

(クッ!)

「いつからだ?」

「最初から」

「ッ!?何故気付いた?」

「そうだなぁ、天の知識とでも言っておこうかな」

「巫山戯ているのか!!」

昴は、焦りから余裕が無くなっており、柄にもなく怒鳴り上げる。

「まぁ、自分が何をしていたのかは、分かっているよな?」

という豪臣の言葉に

(くっ!やはり、バレているか!)

内心で舌打ちをする。

昴は、前には豪臣、後ろには朔夜、と先程と変わらず挟まれたまま。

(この二人が相手では逃げ切れない)

そんなことを考えていると

「お待たせいたしました、豪臣様」

「っ!・・・チッ、暗部団長か!?」

今度は右から声が聞こえ、そこに立つ白の忍び装束姿の人物、暗部団長を見つけた。

 

暗部団長、義勇軍『白虎』の中でも、決して敵に回してはならない人物の一人である。気配断ちの術である『消(しょう)』を完璧に使いこなし、朔夜直伝の武術を用いる凄腕。正面からの勝負で勝(まさ)っていても、楽観の出来ない暗闇の絶対強者だ。

 

嫌な顔をする昴の眼に、団長の手に持つ“木簡”が目に入る。

「まさか・・・・・・」

「ああ、これですか?これは、程徳謀が持っていた木簡です。『白虎』の情報が書かれていますので、これだけは回収させて頂きました」

昴の呟きに、団長は律義に答える。

その言葉に、程普の死を確信した昴は、怒りの咆哮を上げながら団長に襲い掛かろうとする。

しかし

「ハイ、ちょい待ち」

「ぐえっ!!」

いつの間にか後ろに回り込んだ豪臣に襟首を掴まれ、蛙が潰されるときの様な声を上げてしまう。

「ご、ゴホッ!な、なにを・・・」

「落ち着け昴。程普は大丈夫だ」

「は?」

豪臣の言葉に、キョトン、と動きを止める昴。

そんな昴の表情に、豪臣と朔夜の顔がニヤつく。

その様子に、自分がからかわれていたことに気が付いた。

(全く・・・暗部の団長まで絡んでいたのか)

「人が悪いですよ、豪臣殿」

「ま、本当は、その一言で済ませられる問題じゃ無かったんだがな」

「・・・は?」

 

 

 

その後、昴は豪臣たちに連れられ鈴花(りんふぁ)の天幕へと移動し、今回の豪臣たちの行動を説明された。

 

「つまり、実際は処刑されるはずであった、と?」

昴は、冷や汗を流しながら尋ねる。

 

 

最初の最初、豪臣が太史慈お名を聞いたときから衛慈こと元(げん)爺に頼んで調査を行って貰っていたのだ。そうすると、出てくる出てくる。暗部を加えてからの調査では、さらに出てくる。これは、星や燈に関しても行われたことではあるが、この二人には後ろ暗いところは無かった。

 

太史慈子義  袁術軍客将・孫堅軍の将。孫策こと雪蓮、周瑜こと冥琳の親友で、雪蓮に勝るとも劣らない武を持ち、冷静さと勇猛さを併せ持つ勇将。それが昴の真の姿だった。

『白虎』へ潜り込んだ目的は“諜報”。

孫堅こと青蓮(しょうれん)の耳に“天の御遣い”の名が入ってことを機に、冥琳が情報収集を開始した。そのとき、冥琳の執務室を訪ねた昴が内部に潜り込んでのスパイ活動を提案し、青蓮がこれを了承したのだった。

そして、自身の隊の副長であった程普と共に行動を開始。

鈴花に接触し、自身の武勇を示した。その結果、星と燈と共に義勇軍の将候補に抜擢されたのだ。

その後、豪臣と出会った。

 

鈴花は、豪臣の指示の下調査を続けこの事実を突き止めた。

そして、昴の公開処刑を進言したのである。

 

 

ただ、鈴花の進言は豪臣に即座に却下された。鈴花は当然の様に次策を提示してきた。

それが今回の悪戯の様な芝居であった。

自身がしたことを後悔させよう、というのがこの芝居の意義であった、が「バラすのが、早過ぎですね」と言うのが朔夜の言であった。

 

 

昴が、鈴花の正論による裏切り行為についての説教で、罪悪感で一杯にさせられて天幕から解放されたのは夜明けの薄明かりが辺りを照らすころだった。

 

昴は、鈴花の説教でゲッソリしていたが、程普の無事や今後も『白虎』の一員として従軍を許可されたこと、情報の一部を青蓮(しょうれん)の元へ送っても良いと許可を貰ったことに安堵していた。

そんなとき

(何故、豪臣殿は我を許したのだ?)

ふと、そんなことを思ってしまった。

それから昴は、豪臣の姿を探して脚を進めた。

 

豪臣を見つけたのは、陣の端の柵だった。

いつも通り、軽い散歩の後の一服のために丁度三日月(喧嘩煙管)に火を点けたところだった。

(全く、裏切り者が出た軍の指揮官って風には見えないな。

 ・・・?そう言えば、何故、我はこれからも従軍出来ることに安堵していたのだろうか?)

昴が少しだけ考え込むと、豪臣が昴の存在に気付き声を掛ける。

昴は、軽く手を上げてそれに答えて側に行く。

 

「で、何が訊きたいんだ?」

豪臣が、隣に来た昴に唐突に尋ねる。

何も考えていない様な顔で紫煙を吹き出す豪臣を見て、昴は軽く呆れながら

「何故、我らを見逃し、剰(あまつさ)へ従軍の許可まで出された?」

(我を目の前にしてもこの態度・・・大物なのか、ただ単に楽観しているだけなのか・・・)

尋ねた。

「何だ、そんなことか・・・」

豪臣は、一瞬、目をパチクリと瞬きするが、すぐに苦笑を返した。

「何、単純なことだ。俺は、お前が嫌いじゃない。

いや、かなり“好き”だ。だから殺す様なことはしなかった。

な?単純だろ?」

臆面も無くそう言ってくる豪臣に

「・・・・・・・・・は?・・・はぁっ///!?」

昴は驚きの声を上げる。

「どうした?」

もちろん、豪臣言った“好き”は、ラブではなくライクの意味である。

(ああ!そう言う意味か!!)

昴が言葉の意味に気付いたとき、自身の親友、雪蓮の言葉を思い出した。

 

『豪臣って、凄く不思議な男なんだよねぇ。私から迫ったのに、ちっとも靡(なび)かないしさ、言葉も飾りっ毛が無いって言うかさ、グッとくるって言うか・・・え?分からない?もお!とにかく、不思議で、だけど一緒に居て欲しくなる男よ///!!―――』

 

(なるほど、確かに我らの周りには、此処まで率直に“好き”などと発言できる男は居なかったな。ま、意味が違うから言えるのかも知れないが・・・・・・雪蓮の言う通り、こんな不思議な男、側に居たくはなる、な・・・)

そこまで考えた昴は、先程の自身の疑問を思い出した。

(ああ、そういうことか。この義勇軍に従軍出来ることでは無く、この男の側に居れることに安堵したのか・・・そうか、そうなんだな)

「くくく、くくっ!」

昴は、自分で気付いたときには、笑っていた。

「どうしたんだ、いきなり?」

昴は、豪臣が驚いていることを気にすることなく笑い続けた。

 

 

 

この事件が切っ掛けに、自身の小さな恋心に気付き、後の豪臣への集団夜這い作戦に参加するまでに、この恋を大きくする昴であった。

 

 

 

あとがき

 

どうも、虎子です。

本当に、お久しぶりです。

まさか、まさかの7週間ぶりの投稿です。

待って頂いていた読者の皆様には非常に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

これからも、頑張って行くので、生温かい眼で見守っていて下さい<m(__)m>

 

では、作品の話です・・・

いや~、今回で拠点を終わらせる予定だったのですが、昴の話があまりにも難産でしたので、別個にすることにしました。

どうしても、昴の裏切り行為を書いて置きたかったのです。

でないと、27話での冥琳が作ったフラグが意味を為さなくなりますので・・・

すみません、自己満でした。

まぁ、残りの鈴花・燈はそんなに長くなる予定では無いですし、おまけの後編はネタですし、次回に詰め込みたいと思います。

 

次回投稿なのですが、まぁ、今月中にもう一回投稿出来たら、と考えております。

 

作品への要望・指摘・質問と共に、誤字脱字等ありましたら、どんどんコメント下さい。

 

最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。お気に入りにご登録して下さった皆様。

本当にありがとうございました。

 

ではでは、虎子でした。

 

 

 


 
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