No.158467

小毬マックイーン

イツミンさん

小毬マッキントッシュとかも考えました。
PC実習室で、パソコンの隣に正座してるの。
かわいいなぁ。

なんとか5作かけました。

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2010-07-17 19:45:04 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1607   閲覧ユーザー数:1567

「今日からキミは小毬マックイーンだ!なお、今日一

日ハリウッドを意識した行動を心がけるように!!」

「うん!わかったよ!唯ちゃん!」

 という会話があったことを、僕は全く知らなかった

のである。だから僕、直枝理樹は、唐突に二人のへん

てこなゲームに巻き込まれたのであった。

「……小毬さん、なにやってるの?」

 廊下の窓際に、小毬さんがきょどきょどと周りに視

線をばら撒きながらしゃがみこんでいる。

「理樹くん!しっ!今私はハリウッド俳優なの!」

 ……いったいなにを言ってるんだろう、この人は。

「見つけたぞ!小毬マックイーン!」

 ずんずんと、廊下の向こうから来ヶ谷さんが大股で

歩いてやってくる。ハッと小毬さんは目を見開き、立

ち上がった。そして廊下の窓に向かってダイブ!……

しようとしたんだろうけど、ずるっと滑って顔面から

どべっと小毬さんは廊下に着地した。

「……」

 無言で涙目で立ち上がって、小毬さんは窓を開けてゆっくりと片足ずつ外に出て、窓

をそっと閉めて庭に出て走り去っていった。多分小毬さんは、アクション映画のように

窓に飛び込み、ガッシャーンと外に飛び出したかったに違いない。……いやいや、そん

なことしたら怪我するから!

「くそう!逃がさないぞ!小毬マックイーン!」

 僕のところまでやってきた来ヶ谷さんが、こぶしを握り締め、憎々しげに、だけどど

こか楽しそうに言った。ああ、なるほど、アクション映画に見立てた追いかけっこか。

ていうか多分、この人は小毬さんをけしかけて遊んでいるだけなんだろうな。……小毬

マックイーン?

「理樹君。容疑者と親しげに話していたな?なるほど、共犯者ということか」

 あ、小毬さんは逃亡者なんだ。

「……ふぇ?共犯?」

「逮捕する!」

「ちょ!来ヶ谷さん!!」

 慌てふためき逃げようとする僕の手に、がしゃりと手錠がかけられた。こ、こんなも

のまで用意していたのかこの人は!

「違うよ来ヶ谷さん!僕は……フガッ」

 反論しようとするも、ガムテープが口に貼り付けられ、言葉は封じられてしまう。さ

らにアイマスクがかぶせられ、視覚まで遮られてしまった。って、来ヶ谷さん警察側だ

よね?これむしろ犯罪者側がやりそうなことなんだけど……。

「よし、薄暗い密室で苦痛が快感に変わるまで取調べをしてやろう」

 言って、来ヶ谷さんはずりずりと僕を引きずっていく。やめてと言おうとするが、口

が封じられてるので何も喋れず、むーむーと唸るだけだ。そもそも、目的が変わってる

じゃないか!イタズラするつもりじゃないか!

 助けて!小毬マックイーン!!

 心の中で、頼りにならなさそうなヒーローの名前を叫ぶ。その姿は空高く、雲の向こ

うに幻想的に浮かんでいて、ああ……殉職済みみたいじゃないか、それは……。

「理樹くん!こんなことに巻き込んでしまって、本当にすまなかったと思うっ!!」

 どれくらい時間がたっただろう?2時間か、3時間か……。いや、身動きと視覚を奪

われていたから長く感じただけで、ひょっとして数十分程度のことだったかもしれない。

小毬さんはどうやら、予想に反して僕を助けに来られたようだ。……小毬さんのハリウ

ッド知識って凄く浅いな。 小毬さんは僕の口に張り付いたガムテープをはがし、アイ

マスクを取ってくれた。

「ありがとう、小毬さ……」

 ああ、なるほど、そういうことか。どうやら小毬さんは、助けに来られたのではなく、

フリーパスで助け放題だったみたいだ。なぜならそこには、来ヶ谷さんの姿がないのだ

から。薄暗い部屋には僕と小毬さんしかいなく、窓とドアが開け放たれている。窓にヒ

ビが入っているところを見ると、小毬さんは一応アクション映画っぽく飛び込もうと試

みたみたいだ。やっぱり失敗して、来ヶ谷さんに中から開けてもらったみたいだけれど。

 手錠も外され、部屋を出て僕と小毬さんは廊下をとぼとぼと歩く。ウサミミバニーと

化し、巨大なニンジンを抱え、おでこを腫らした小毬さんと、女子の制服に着替えさせ

られ、パンツまで履き替えさせられた僕は、とぼとぼと歩く。そりゃ来ヶ谷さんは帰る

だろう。これだけイタズラを施せば、満足してテカテカした顔で帰るだろう。

「理樹くん……。小毬マックイーンって、なんだかちょっとかっこいいよね」

 照れたように小毬さんは笑った。なにをこの人はちょっと喜んでるんだろう……。て

いうか早く着替えたいんだけど……。

 僕らの背中を西日が照らして、ああ、やっぱり結構時間はたっていたんだなぁ……。

 いつか来ヶ谷さんをどうにかしてやろう。こっそり僕らは復讐を誓った。

 けれど翌日「禁断の愛」と題された写真が学校中に張り出され、僕らは結局涙を飲む

ことになったのだった。

 


 
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