No.158391

にゃんこワールド

掘江弘己さん

ネコじゃらしで遊ぶ女の子。にゃんにゃんとじゃれるネコたち。そこへ、理樹がやってきた。

2010-07-17 13:37:04 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1314   閲覧ユーザー数:1280

「にゃー」

「にゃんにゃん」

「にゃにゃっ」

「ふしゃっ」

 

 ネコとたわむれる女の子が、ひとり。ネコじゃらし

を持って、ピョンピョンジャンプさせている。

 子ネコたちの、かわいいダンス。

「にゃーにゃー」

 ふりふり、ふりふり。ぴんとはったしっぽが地面を

たたいて、まっくろ子ネコがとびあがった。女の子は

にっこり笑って、もうちょっとだけネコじゃらしを高

くする。

「んー、にゃっ!」

 お次は、そのとなりにいたぶちネコ。まっくろ子ネ

コよりちょっとだけちっちゃな体で、一生けんめいぴ

ょんぴょんして――つかまえた!

「えらい、えらい」

 まっくろ子ネコもぶちネコも、いっしょになでなでしてあげる。

 にゃーにゃ、にゃーにゃの大合唱。いっぴきずつ、順番だよ。

 ふりふり、ひょいひょい、ぴょんぴょん、しゅたっ。タンゴ? ワルツ? それともジ

ルバ?

「おいで。だっこしてあげる」

 女の子が両手を広げると、にゃんこがいっぱい飛びついてきた。ふさふさ、もふもふの

毛なみがくすぐったくて、女の子は笑った。

「きゃはは、ははははっ」

 寝転がって、にゃんこたちに囲まれちゃった女の子。あははと空を見上げて……

「ふあぁ……」

 おおきなあくび。でも、だれもいないし、いいかな?

 そこに、かさかさと草の音。新しいネコかなとそっちを見た女の子は、

「あれ、佳奈多さん……?」

 見慣れた顔がそこにあって、固まっちゃった。

「な、直枝!?」

 ふにゃりと折れたネコじゃらしに、たくさんのネコたちがにゃーにゃーじゃれあって、

ちょっとしたお祭り。

「か、可愛いね」

 理樹があちこち、目をそらしてる。いつもなら、ぜったい見せない顔だもの。

 あわあわ、あせあせ、飛びあがって、顔をまっかっかにした。でも、考えなおしてまた

座る。

「……よ」

「え?」

「ヒミツよ。私と直枝だけの。葉留佳にも言っちゃダメよ?」

 きっと、理樹ならだいじょうぶ。そんな気がした。

「ヒミツだね。うん、分かったよ」

 ニッコリと笑った理樹。いっしょに横になって、近くに生えていたネコじゃらしをぬき

とった。ふりふりと理樹がゆらしてみると、みんなすぐにとびかかっていく。

「あはは、楽しいね、これ」

 みんながみんな、楽しくジャンプ。ふたりでそのままにゃんこと遊んでいると、あっと

いうまに時間はすぎていった。

「もう、日が暮れちゃうね」

「そうね……帰りましょうか」

 オレンジ色の夕日がお互いの顔をまっ赤にしてる。

 理樹と佳奈多は、それぞれの部屋に帰ろうとした──そこで、白ネコが佳奈多の肩に、

ひょいと乗っちゃった。

「気に入られたみたいだね」

「もう、寮内はペット禁止なのに……まぁ、今日だけよ?」

「にゃっ」

 バイバイと理樹に手をふって、おわかれ。

 でも、肩のにゃんこだけはずっとにゃーにゃー鳴いてて、おわかれはもうちょっと先み

たい。


 
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