No.157965

真・恋姫無双 ~古の存在~ 第五話「眠りし太古の亡霊」

東方武神さん

第五話目です。
あと八日で萌将伝が発売ですね。思えば予約開始と同時に待ち続けて3ヶ月・・・。
早いものだなぁと思う今日この頃です。

2010-07-15 21:47:58 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:5395   閲覧ユーザー数:4232

一方、一刀が帝都を出発したのと同時刻・・・

 

「はぁ・・・、ご主人様大丈夫かなぁ?」

 

私は泊まっている部屋の窓から月を見上げながら呟いた。

 

あの後別れてからまず最初にやったことは、あの『ぼーるぺん』というのを売りに行ったことだ。

 

(でも驚いたぁ~。あんなものがこんな大金になるなんて思わなかったもの。)

 

私はすぐ脇にある少し大きめの袋を見た。

 

中にはかなりの量のお金が入っていて、節約すれば半年ぐらい持ちそうな位だった。

 

昼間、『ぼーるぺん』を街中で実況販売していると、いかにも珍しい物に目が無いといった人が声

をかけて来たのだ。

 

「その道具・・・見たことが一度も無いのだが、一体どういう風に使うのかね?」

 

「これですか?これは墨をつけずとも書ける筆、その名も『ぼーるぺん』!!」

 

「ほぉ・・・、『ぼーるぺん』ですか。聞いたことも無い筆だ。」

 

男の人が興味を惹かれたように食いついてきた。

 

それを見ていた愛紗ちゃんが、間に入って、

 

「ほらこの通り、筆よりも線は短く、それでいて墨をつけずともこの黒さ。これならば旅先や外にいるときなどにちょっとしたことを書きたいとき、面倒な手間が入らず、ささっと書けるのです。」

 

「なるほど、これは確かに便利だ・・・。」

 

なんだか男の人の目がキラキラとしてきた・・・

 

そして、ここぞとばかりに鈴々ちゃんが言った。

 

「それだけじゃないのだ!!これは、あの『天の御使い』が持っていた物なのだ!!つまり、これ

は天の国で作られたものに違いないのだ!!」

 

「なんと・・・あの噂は本当だったのか!?しかも『天の御使い』が持っていたものだとすると・・・。これは是非とも欲しいな・・・。」

 

男の人はしばらく黙り込むと、意を決したように言った。

 

「お嬢さん達、その『ぼーるぺん』なるものを私に譲ってはくれないか?金ならそちらの言い値でいい。」

 

「・・・今なんと?」

 

「金ならいくらでも出すといったのだ。だから頼むっ!!どうか譲ってくれ!!」

 

流石の愛紗ちゃんもこれには驚いたみたいで、しばらく呆然としていた。

 

・・・もちろん私と鈴々ちゃんもだけど。

 

そして、私達が出したお金の額を言うと、男の人は「分かった、用意しよう。」と言って一旦自宅

に戻っていった。夜になった後、再び此方にやって来てその金額をキッチリと持ってきてくれたのだ。

 

「愛紗ちゃんと鈴々ちゃんとでかなり悩んだ挙句、何なら思いつく額を言ってみようという決断を

したんだけどなぁ。まさか本当にいいだなんて言われるとは思わなかったよ・・・。」

 

改めて今の現状に私は驚きを隠せないでいる。

 

あの管路って言う占い師にご主人様の事を聞いてから、なんだか運気が向いてきたように思う。

 

今まで私達三人でこの国を何とかしようと考えても、具体的に何をすればいいかなんて分からなか

ったけど、ご主人様と一緒なら、この先大丈夫な気がしてきた。

 

「桃香様、そろそろ下に下りて夕食にしませんか?」

 

「あぁ、分かったよ。今行くから!!」

 

「うにゃ~、お腹ペコペコなのだ~・・・」

 

だから早く帰ってきてね、ご主人様・・・

 

その頃、一刀を見送った華琳達はというと・・・

 

「華琳様、本当に釈放しても宜しかったのですか?あのまま捕まえておけば、いずれ我らの同士に・・・。」

 

秋蘭が一刀が走り去った方角を見ながら言った。

 

「秋蘭、貴女は気付いているかも知れないけど、今はまだ『その時』ではないわ。焦らず時が来る

のを待てば、必ずその『時期』が来る。後はその流れに乗ってしまえば、自然と物事が上手くいくものよ。」

 

私が城門の方へと踵を返すと、秋蘭も付いて来た。

 

「そういうもの・・・でしょうか・・・。」

 

「それに、あの男とはまた会える気がするのよ。」

 

「それは貴女様の天命なのでしょうか?」

 

「さぁ?それは私にも分からないわね。唯一つ言える事は・・・」

 

私は秋蘭の顔を見ながら、呟いた。

 

「この先、良くも悪くもあの男しだいで私の目指す道は良くも悪くもなるかもしれないということね。あの男には、そう感じさせる何かがあったわ・・・。」

 

そうして、城門の扉はゆっくりと閉まっていった。

 

そして、場所は変わり・・・

 

ある森の深く行ったところに、開けた土地とその中央に広い湖が広がっていた。

 

そこはどこか厳かでいて、しかし妙に心が休まる場所だった。

 

湖は夜空に広がる幾千の星と光り輝く月に照らされ、美しく幻想的な雰囲気を醸し出していた。

 

そこに三人の男がやってきた。

 

「ったく、あの男のせいで散々な目に遭ったぜ・・・。」

 

「まさかあそこまで腕が立つとは思えなかったッスからねぇ。」

 

「アイツ、強すぎる・・・。」

 

頭に黄色のスカーフを巻いたヒョロ男達だった。

 

「おかげで頬に傷が出来るとこだったしな・・・。あぁ~何度考えてもムカついてくるぜ!!」

 

「アニキ、落ち着いてくださいよぉ~。今度はもっと弱そうなヤツ見つけてガツンとやりましょうよ。」

 

「アニキ、俺頑張る。」

 

「お前ら・・・。まぁ、そうだな。そうすっか。」

 

三人がそんなことを話していると、なにやらチビが何かを見つけたらしく、大声を出した。

 

「アニキ!!あれ見てくださいよ!!」

 

「あぁん?」

 

振り向くと、そこにはいくつかの石を積み上げられて出来た簡単な墓石らしきものが幾つか立って

いた。

 

大きさが随分違う石で作られたのにもかかわらず、不思議とバランスを取っていて崩れ落ちることはなさそうだった。

 

その墓石の前には、誰かがお供えしたであろうお握りや飲み物が置いてあった。

 

三人はそれを見ると我先にとそこに殺到した。

 

「デクっ!!お前それを俺に寄越せ!!それはリーダーの俺が食う権利があるんだっ!!」

 

「アニキ、それはないッスよ!!ここは一番最初に見つけた俺が・・・。」

 

「腹減っただな~」

 

三人がそれぞれ騒いでいるせいで、段々と積まれていた石がグラグラと揺れ始めた。

 

「俺が食うんだっ!!」

 

「いや俺ッス!!」

 

「俺なんだな~!!」

 

そして勢い良く三人は墓石に飛び込んだ。

 

そこで奪い合っていると、遂に耐え切れなくなったのか石が崩れた。

 

気付けばさっきまで雲一つ無い満天の星空だったのに、今ではどこから現れたのか、空を黒い雲が

覆うようにしてかかっていた。

 

「アニキ、今気付いたんですけど、これって罰当たりじゃないッスか?」

 

「・・・・・・。」

 

三人はお互いの顔を見合い、そして次に同じことを言った。

 

『よし、今すぐここから立ち去ろう。』

 

次の瞬間、三人は情けない声を出しながらその場から立ち去っていった。

 

・・・三人が逃げた後、空は満天の星空に戻り、湖には月明かりが反射していた。

 

だが、さっきとは違うことがあった。

 

「・・・折角人が気持ちよく寝ていたのに。誰だ?俺を叩き起こしたヤツは?」

 

「まぁまぁ、そう怒らない怒らない。久しぶりにあそこから出られたんだし、いいじゃない?」

 

「そうはいってもなぁ・・・」

 

そこには、それぞれ武器を持った人が墓石の前に立っていた。

 

殆どが少女だったが、一人だけ少年がいた。

 

「ここにいたって仕方ないし、とりあえずどこからか体でも借りてこようか?」

 

「そうね。でもなるべく自分に似ている人の方がいいでしょうから、ここで一旦解散しましょ

う。」

 

「そうだな、運良く近くで見つけられれば良いんだけどなぁ~。」

 

やがて、彼らの姿が薄れ始めた。

 

「では、体が見つかり次第ここに来ることでいいか?」

 

口々に合意の返事が返ってくる。

 

少年はそれに頷くと、良く響く声で言った。

 

「それでは・・・散!!」

 

次の瞬間、そこには誰もいなかった。

 

まるで最初から誰もいなかったかのように。

 

あるのは崩れた墓石らしき物と、その目の前に錆付いた武器が転がっているだけだった・・・

 

俺は馬に乗りながら月に照らされている長江を眺めた。

 

(いよいよあそこを渡れば建業か・・・。結構時間がかかったけど、無事に着いてよかっ

た・・・。)

 

額に浮いていた汗を拭きながら、俺は馬を下りた。

 

ここに来る先々にいろんなことがあって(山賊に襲われたり、熊に出くわしたり)、帝都から出発してから三日ぐらいたったが、おかげで何日もかかる道をこの速さで来れたことはありがたかった。

 

(華琳は感謝しないとな・・・。でもその分、まともなメシにありつけてないけどね・・・。)

 

途中の熊を除いては。

 

(今日はもう遅いし、明日に備えて少し休もうかな・・・。)

 

俺は手綱を木に絡ませた後、少し離れた場所で横になった。

 

(・・・うぅ、体全体が・・・重・・・たくて・・仕方・・ない・・・や・・・。)

 

そして俺は意識が遠くなるのを感じながら目を瞑った。


 
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