抜けるような青空の中を、綿菓子みたいな雲が漂っ
ている。屋上は今日もいい風だ。
「理樹君、とっても美味しかったね」
僕と小毬さん。
今日も二人で肩を寄せ合って屋上でお弁当。
「お弁当も食べ終わったし……」
小毬さんが僕と自分の分のお弁当箱を包み込み、袋
にしまった。それと同時に小毬さんがゴソゴソ。
「では、お待ちかねのチョコた~いむっ」
「お弁当にワッフルを食べたのに食べるの?」
「のんのんのん。お菓子はね、別腹なのです」
ワッフルはお菓子の内には入らないのだろうか。
「今日はね、変わった食べ方しようと思うんだ~」
「変わった食べ方?」
僕が首を捻っていると、隣に座っている小毬さんが
両手で僕の左手を抱きしめてきた。
「ふわぁ……理樹君ほわほわ~」
しかも体をよじりながら僕の腕に押し付けてくるし!
「ふえぇ、準備おっけ~だよ」
「いやいや、オッケーって言われても」
小毬さんの両手は僕の腕に回されている。どうやってお菓子を食べるのだろう?
「えへへ、理樹君あのね……あ~~~んっ」
まるでひな鳥が親鳥にえさをねだるように、小毬さんがパクパクと口を開けていた。
「もしかして、僕が食べさせてあげればいいの?」
「うん。あ~~~ん」
本当にひな鳥みたいだ。
「はぁ、もう……しょうがないなぁ」
こんなに嬉しそうにしてるのに、断るなんてできないよね。
「はい、小毬さん」
「ぱくっ……もぐもぐ、こくん。えへへ、ありがと~理樹君」
幸せそうな顔で僕の二の腕に頬をスリスリとしている小毬さん。ついつい僕の手はそん
な小毬さんの頭を撫でてしまう。
「じゃあね……次は理樹君の番だよ」
「えええーっ、僕もやるの!?」
「当前なのです。はい、私の腕にぎゅ~って」
「そこからっ!? って、勝手に僕の手を回さないでよーっ」
「はやく~」
付き合いはじめてから、小毬さんがどんどんワガママになっていく気がするけど……。
ついつい許しちゃうんだよね。
そんなことをしている間に、始業ベル10分前になった。
「小毬さん、そろそろ教室に戻らないと」
「ふえぇ?」
なぜそこでキョトンとするのかがわからない。
「教室に戻らなきゃ」
「ちゅ~」
突然、よくわからない返答が帰って来た。
「まだね、ちゅーしてないもん。ちゅ~」
「まさか……ちゅーしないと戻らない、ってこと?」
コクコクと小毬さん。
「あ、あのさ、ここは学校だしそういうことは……」
「ちゅ~、理樹君、ちゅ~、ちゅ~」
口を尖らせて僕を待ってるしっ!!
「いや……ほら、ワガママ言わないで行こうよ」
「う……うわぁ~~~んっ、理樹君がちゅ~してくれない~っ」
ジタバタジタバターっと小毬さんがダダをこね始めたっ!
「いやいやいやっ、駄々をこねてもダメだからっ!」
「理樹君がちゅ~してくれないと勉強に身がはいらないのに~っ!」
ジタバタジタッ……ちらっ……ジタバタバターっ……ちらっ、ちらっ。
「うわぁ~んっ、理樹君パワーがないと一歩も動けない~っ、ちゅ~したい~っ!」
めちゃくちゃ僕の様子を伺いながらジタバタしていた。
「はぁ……わかったよ」
そう言った瞬間、ピタリ止まる動き。
「ほんとう?」
小毬さんの顔が最高級デザートを見たかのように輝きを放っている。
目からなんて本当にお星様が飛びそうだ。
「うわ~いっ! 理樹君~」
「小毬さん、とっても可愛いよ」
嬉しそうに口を向ける小毬さんに僕は優しく、待たせた分だけ長めのキッスをした。
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リトルバスターズ!のSSです。お昼休み、お付き合いしている理樹と小毬の屋上でのひと時の甘い時間。