No.157524

真・恋姫無双 ~古の存在~ 第四話「覇王の片鱗」

東方武神さん

第四話目です。
この作品は一応ベースは蜀ですが、オリジナルルートとして進めて行きたいと思っています。

2010-07-13 23:35:32 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:5604   閲覧ユーザー数:4509

・・・困った。

 

桃香達と別れて四日目。俺は危機に瀕していた。

 

「・・・ここ、どこなんだ?」

 

それもそのはず、帝都への道が書いてある地図は全て中国語?みたいで、全く読めなかったのだ。

 

なのにそうとは知らずにずっと馬を走らせ続けたものだから、来た道を戻ろうにも戻れない。

 

(そういえばここって日本じゃないみたいだしなぁ・・・)

 

俺は一人溜息をつくと、その場に腰を下ろした。

 

(これじゃあ、まるで桃香達と会う前に戻ったみたいだ・・・。どうにかしないとな。)

 

俺がしばらく空を見上げていると、遠くの方で何かが聞こえてきた。

 

その方角を見ると、なにやら村人らしき人々が数十人の黄巾党に追われているようだった。

 

(またあいつ等か。まぁ時代が時代だし、仕方ないのかもしれないけど・・・)

 

だとしても、見逃すわけにはいかないな。

 

俺は『紅蓮』と『蒼天』を握り締めると、その方向へと走り出した。

 

「きゃあっ!!」

 

「ヘッヘッヘ、もうこれでどこにも逃げられないぜぇ?」

 

 

黄巾党達は村人達を取り囲むと、それぞれが持っていた武器を彼らに突きつけた。

 

村人達は倒れた小さい女の子を守るように自分たちの体をくっつけあった。

 

「大人しくお前達が持っている金目の物を置いていってもらおうか。」

 

「私達はそんなもの持ってはいないっ!!」

 

「惚けたこと言ってんじゃねぇぞおっさん?そのガキが首からぶら下げている物はなんだ?あぁ

ん?」

 

「ック!!」

 

リーダーらしき黄巾党の一人が前に出てきた。

 

「抵抗するんならしょうがねぇ、痛い目に遭ってもらうしかねぇ・・・なぁ!!」

 

男は村人に対して剣を振り上げた。

 

その刃が村人の頭に当たろうかという時、誰かが後ろから男の頭に石を投げつけた。

 

「・・・誰だ、今俺に石をぶつけてきたヤツぁ?」

 

男がギロリと睨むと、そこには一刀が石を投げた姿でその視線を受け止めていた。

 

(間に合って良かった・・・)

 

俺はほっと胸を撫で下ろすと、村人達に声をかけた。

 

「そこの人たち、怪我とかはないですか?」

 

「あ、ああ。私達は大丈夫だが・・・」

 

「そうですか、それは良かった。」

 

その時、目の前の黄巾党が話しかけてきた。

 

「テメェ、俺達に何のようだ?」

 

「いや、あんた等がそこの人たちを傷つけようとしていたから、止めただけさ。」

 

「・・・俺達に歯向かうとどうなるか分かってるんだろうな?」

 

リーダーらしき男はゆっくりと剣を此方に向けた。

 

(話し合う余地は無し・・・か。仕方ないな。)

 

俺は『紅蓮』だけを引き抜くと上段の構えを取った。

 

他の連中も俺が構えたので完全に敵だと思ったようだ。俺の周りを囲み始めた。

 

(囲まれるのは厄介だな・・・。ここは一気に行くか。)

 

俺は腰を低くしていった。

 

「野郎共っ!!殺っちまえ!!」

 

リーダー格の男が叫ぶと、一斉に掛かって来た。

 

「・・・甘い。」

 

俺は後ろから切りかかってきた男の攻撃を避けると、そいつを前の方に蹴り倒した。

 

次に左右同時に攻撃してきたやつ等の攻撃を避けず、剣の軌道を逸らしてお互いを斬りつけさせ

た。

 

斬りつけ合った男達はそれぞれ腕や腿等といったところに傷ができ、剣を落とした。

 

他の黄巾党達は、今の光景を見て腰が引けたのか襲い掛かっては来なかった。

 

(これはチャンスだ・・・)

 

俺は『紅蓮』を横に振ると、近くにいた男の剣を弾き飛ばした。

 

『ガキンッ!!』

 

という音と共に剣は真っ二つに折れてしまった。

 

きっと手入れをちゃんとしておかなかったんだろうな・・・

 

俺は男の鳩尾を峰で打つと、すぐさま別の男に取り掛かった。

 

そんなことをしていると、何時の間にかリーダー格だけが残っていた。

 

「ば、化け物か・・・?」

 

「ひどい言われようだな。でも、悪事を働くヤツに言われたくはないな。」

 

俺はそういうと、素早く男の後ろに周り、首筋を強く打った。

 

男が気絶したのを確認した後、その男達を縛り上げた。

 

「ふぅ~、何とか傷つけずに片付いたな。」

 

「あ、あの、襲われたところを助けていただき、本当にありがとうございます。」

 

村人の代表みたいな人が畏まって挨拶してきた。

 

「いやぁ、いいですよそんなこと。困った時はお互い様ですし。」

 

「・・・何かお困りなのですか?」

 

「・・・実は、俺は帝都を目指しているんだけど、どこら辺にあるのかな~って。」

 

「あぁ、それでしたら私達も帝都を目指していたのです。もし良かったら、そこまでご案内しまし

ょうか?」

 

「本当に?助かるよ。」

 

「もうじきここに迎えの馬車が通るはずなのですが・・・」

 

「それじゃあ、馬車を待っている時にあいつ等が?」

 

はい、っと村人が言った。

 

「・・・あぁ、来たようですね。」

 

俺は蹄の音がする方へと目を向けた。

 

そこには、金髪をクルクルにした少女を先頭にした一団が走ってくるのが見えた・・・

 

俺が助けたのは単なる村人ではなく、朝廷の大臣の娘とその世話係だったみたいだ。

 

田舎で自然と戯れながら静養を取っていたが、無事に体調も回復したので帝都にある屋敷に戻る途中だったのだそうだ。

 

そこで一人が馬車を呼んでいる間に、黄巾党が現れたみたいだ。

 

(まぁ、何はともあれなんともなくて良かったな・・・)

 

あの後、世話係の人(村人の代表みたいな人)から感謝の言葉を頂いたのだが・・・

 

『この人数をたった一人で?・・・少し話を聞かせてもらえるかしら?』

 

と、あの金髪少女に尋問されて、今は帝都の検問所(現代で言う警察署)に連れて来させられた所だ。

 

「それで?貴方は一体何者なのかしら?」

 

金髪少女が俺に聞いてきた。

 

「俺は北郷一刀。この国を旅して周るただの男さ。」

 

流石に桃香達のことは言えないし・・・

 

「そう。では一刀、貴方があの黄巾党達を気絶させたのね?」

 

「ああ、そうだ。できれば話し合いで解決したかったんだが、仕方なくあの人たちを守るためにあの方法を取った。殺しはあまり好きじゃないしね。」

 

「あの人数をたった一人でかっ!?お前中々やるなぁ!!」

 

横から大きな声を出されて、俺は少しびっくりした。

 

「姉者・・・今は尋問中なのだぞ?少し静かにしてくれ・・・。」

 

「う・・・、むぅ・・・」

 

少し顔を赤くして黙った女の子を一瞥してから、また金髪少女が聞いてきた。

 

「へぇ、そこら辺の男よりは腕が立つみたいね?誰かに仕えたこととかあるのかしら?」

 

「いや、俺はまだ誰にも仕えたことがないって言うか、なんと言うか・・・。」

 

ていうか、俺が住んでたところはそういうの無かったし。

 

俺が曖昧な答え方をすると、金髪少女はふーんと訝しげに言った。

 

「ところで、こっちは名乗ったんだからそっちも名乗るのが礼儀なんじゃないのか?」

 

「・・・そうね。折角だから名乗りましょうか。春蘭、秋蘭、いいわね?」

 

「分かりました。ではまず私から。我が名は夏候淵、字は妙才だ。」

 

「私の名は夏候惇。字は元譲だ。」

 

「そして私の名は曹操、字は孟徳よ。覚えたかしら?」

 

・・・まさかここでも女の子なのか。

 

しかもよりによって探していた人物が俺の目の前にいるのか・・・

 

(運がいいのか悪いのか・・・)

 

俺が無反応だった為か、曹操は少し気に入らなかったみたいで、

 

「・・・少しは何か反応しなさいよ。このブ男。」

 

「誰がブ男だ、誰が!!」

 

なんだかまだ化け物の方がいい様に思えるのは俺だけか?

 

「ともかく、今回の件はこれで終わりにするわ。だけど、貴方に一つ聞いておきたいことがあるの

だけれど、いいかしら?」

 

「ああ、もちろん。」

 

「最近、『天の御使い』という噂が流行っているのを聞いたことがあるかしら?」

 

「いや?聞いたことが無いな。なんだそれは?」

 

俺は知らない振りをしてみた。

 

曹操はそれに目を細めると、説明をし始めた。

 

「どうやら、あの『管路』って言う占い師がこの乱世を鎮めるに必要な人物はその『天の御使い』だと言っているというのよ。その人物と共に行動すれば、自ずと乱世は収まるということらしいわ。」

 

またあの占い師か。

 

桃香達もそんなことを言っていたし、何者なんだろうな・・・

 

「その噂と俺に何の関係が?」

 

「その『天の御使い』は二本の剣を持っていて、この世には無い服装をしていると言われているわ。・・・あら、貴方も確か剣を二本持っていたわよね?しかも何故かその外套を外そうとはしないし。どうしてかしら?」

 

「・・・・・・。」

 

もしかして、バレてるとか?

 

ていうかその人ホントに占い師なのか!?

 

「・・・曹操、アンタ俺をどうするつもりだ?」

 

「どうするもこうするも、折角かかってくれた大物ですもの。逃がすわけには行かないでしょう?」

 

「やっぱそうなるのか・・・。」

 

俺はガックリと肩を落とした。

 

「でも、俺はもう他の人と協力する約束をしちゃったんだ。今更他のヤツとなんてできる

訳・・・」

 

「あら?誰が貴方の力を必要といったのかしら?」

 

「へ?」

 

曹操があまりにもおかしなことを言うので俺は間抜けな声を出してしまった。

 

「私はただ『逃がさない』としか言ってないだけであって、何も協力をして欲しいとは言ってはい

ないわ。」

 

「・・・それじゃあ、『逃がさない』の意味は?」

 

「それはまだ秘密よ。だけど必ず貴方は私の元に来ることになるでしょうね。」

 

あーここでもまためんどくさくなりそうだな・・・

 

「それじゃあ、私の真名を預けようかと思います。春蘭、秋蘭、貴女達もいいわね?」

 

「えぇ~!!華琳様、私の意志は無いのですかぁ~・・・」

 

「無駄だ姉者。私達の意志は華琳様と同じものなのだからな。」

 

「それはそうだが・・・」

 

夏候惇はハァ、と溜息をついたかと思うと此方に向き直り、

 

「私の真名は春蘭だ。」

 

とぶっきらぼうに言ってきた。

 

続いて夏候淵が、

 

「私の真名は秋蘭だ。よろしく頼む。」

 

と言ってきた。そして最後に、

 

「私の真名は華琳よ。よろしく、一刀。」

 

笑いながら俺に向かって言ってきた・・・

 

帝都を出ようとすると、

 

「一刀、次はどこに行くつもりなの?」

 

と華琳が聞いてきた。

 

「うーん、とりあえず建業辺りまで行ってみようかなって思ってるけど、その前に少しここら近辺

でも見ようかなって思ってる。」

 

相変わらず地図が読めないため、華琳に簡単な地図を書いてもらった。

 

「そう。まぁ、一刀の事だから大丈夫だとは思うけど、気をつけて行ってらっしゃい。」

 

「ありがとう、そういってもらえると嬉しいよ。」

 

俺は笑いながら華琳を見た。

 

すると、華琳はすぐにそっぽを向いて、

 

「分かったから早く行きなさい、このブ男!!」

 

と言ってきた。

 

「はいはい、言われなくても・・・っと。」

 

俺は馬に乗るとそのまま一度も振り返ることなく、馬を走らせた。

 

次の目的地は建業だが、ここからだとかなり距離があるな。

 

まぁ途中途中で休憩を挟みながら行くとするか・・・

 


 
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