No.157319

真・恋姫†無双‐天遣伝‐(12)

沢山の人が読んで感想をくれる御蔭で、創作意欲が加速してもう書き上がりました。

これもみな単に、読んで下さる皆様の御蔭です(土下座)。

2010-07-13 00:07:58 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:13720   閲覧ユーザー数:9358

 

 

・Caution!!・

 

この作品は、真・恋姫†無双の二次創作小説です。

 

オリジナルキャラにオリジナル設定が大量に出てくる上、ネタやパロディも多分に含む予定です。

 

また、投稿者本人が余り恋姫をやりこんでいない事もあり、原作崩壊や、キャラ崩壊を引き起こしている可能性があります。

 

ですので、そういった事が許容できない方々は、大変申し訳ございませんが、ブラウザのバックボタンを押して戻って下さい。

 

それでは、初めます。

 

 

 

 

天遣・北郷一刀が周知のものとなって早三日が経った。

 

その間、一番混乱したのは無論宦官であった。

十常侍を始めとする宦官達は、予兆無しにいきなり現れた『天の御遣い』という存在に対し危機感以外を抱けない。

一応、彼は偽物である、的な噂を流しもしたのだが、彼の人柄がそれを打ち消した。

 

何より諸侯が集まり、彼の人となりを目にしてしまったというのが、最大のネック。

何故ならば、流言飛語が通じる距離では無いからだ。

どんなに悪い噂が諸侯の耳に入ろうと、目前に存在する御遣いの徳の方を信じる。

百聞は一見に如かず、とはよく言ったものである。

 

おまけに、それ以外で一刀を見下せる要因が殆ど存在しない。

もしも、天の御遣いが兵の後方で踏ん反り返って、各諸侯に勝手に命令している、とかだったらまだ何とか追い落としできただろうが、一刀に至ってはそうはいかない。

だって、一刀は実質この連合の総大将にも係わらず、誰よりも真っ先に前線でその武を揮うのだから。

それで何進大将軍等がハラハラしているというマイナスはあるが、この行動は諸侯等にとても好評なのである。

それも当然。

先陣の功は確かに大きい。

だが、それと同じ位しくじった時の責は重いのだ。

それを自ら請け負ってくれるというのは、余り傷付きたくなく、それでいてそこそこの戦勲が欲しいと思っている諸侯には、渡りに船だったのだ。

 

しかし、その分のツケは確実に一刀達に回って来ている訳で。

 

 

「一刀様、部隊人数が確保出来ません」

 

「円、そいつは違うね。

正しくは、数だけはいるけど殆どの奴が初陣で、ビビりまくってる所為で碌に戦える奴がちっともいない。

・・・ってのが、正しい。

くそう・・・あいつ等、せめて使いモノになる兵を寄越せっての」

 

「・・・・・・風、後何人位は確実に必要?」

 

「最低四百人は、【使える兵隊】が私達の手勢として欲しいですねー」

 

「後、使いモノになる将が二人位、でしょうか。

朱儁将軍は先日の戦いで敵将波才の手によって重傷を負わされて、後方支援に回さざるを得ませんでしたし・・・」

 

 

卓を囲む一刀と美里と円、そして風と稟は、揃って重い溜息を吐く。

因みに、一刀の所属は今では官軍本隊に移っている。

そこに走り込んで来る伝令兵。

 

 

「何事だい!?」

 

「はっ! ここより南西六里に、戦塵と思われるものを確認したとの事!」

 

「南西・・・? それなら孫堅さんか曹操さんの方じゃないですか~?」

 

「いえ、緑地に黒抜きの『劉』の一字が刻まれた旗が確認され、数も千に満たぬとの事です!」

 

「何故、そんな小さな勢力がこの激戦区に・・・”ガタッ”・・・一刀殿?」

 

「皆、すぐにその人達の救援に向かおう!」

 

 

その言葉に驚く全員。

無理も無い。

そんな弱小勢力ならば、わざわざ総大将本人が行く必要も無い、というのが皆の認識だったのだから。

 

 

「俺の予想が正しければ、もしかしたら兵の問題と将の問題、両方一辺に解決できるかもしれない!!」

 

『はい!?』

 

「・・・ああ、成程そう言う事ですかー」

 

「大将の事だから、女がいたら落としそうだよな」

 

「宝譿、それは笑えないのですよ」

 

「普通にこええんだけどよ!?」

 

 

 

 

真・恋姫†無双

―天遣伝―

第十一話「激戦」

 

 

「鈴々ちゃんの隊は下がって、愛紗さんの隊と交代して下さい!」

 

「星さんの隊は、鈴々ちゃんの隊の交代に合わせて敵部隊の鼻先に矢を射って下さーい!」

 

「分かったのだー!!」

 

「応!!」

 

「やれやれ、あんな可愛いなりをしていても、戦場ではしっかとした軍師なのだな・・・諸君、矢の準備だ!」

 

 

そこはある種の異様さを漂わせていた。

左右を切り立った崖で挟まれた間。

二人の少女が崖の上から大声で、眼下で戦う部隊に指示を飛ばしている。

しかもその指示が飛ぶ度に、黄巾党の隊は足並みを崩され、此方側への被害を少ないままに、相手への被害ばかりを増させていく。

 

黄巾党約一万に対し、劉家軍約千。

数で言えば絶望以外の何物でも無い。

だが、崖の上から指示を出す軍師の少女二人は、勝てると言う。

彼女達は二人の言う事を信じ、必死に己を奮い立たせているのだ。

そんな皆を見ながら、両の拳をしっかと握り締めて祈る少女が一人。

 

劉玄徳、桃香である。

彼女とて、戦おうと言う気概は持っている。

実際に彼女自身幾度か盗賊等とも戦い、これ等の命を奪った経験もある。

だが、それでも彼女は彼女が命を奪った人達が悪いとは思わない。

彼女は、あくまでこの世が悪いと考えている。

こんな世の中なのだから、盗賊達は「したくもない悪行を行った」という考えを崩さない。

だが、だからこそ愛紗達は彼女を戦場に直接関わらない場所に置いたのである。

彼女は本来心を許すべきではない相手にも、あっさり騙されてしまいかねないからだ。

最も、だからこそ彼女達は、桃香に仕えたいと思ったのだが。

 

戦況に変化が生じる。

数と疲労に押され、少しずつ前線が崩れ始める。

だが、軍師の少女達が求める「機」は、まだ生まれていない。

だと言うのに、状況がまずくなってきている。

愛紗も鈴々も星も獅子奮迅の働きをしているが、流石に三人で一万近い兵を押さえる事等不可能だ。

 

 

「ぐっ、まだか、まだなのか? 朱里! 雛里!」

 

「ま、まだです、まだ耐えて下さい!」

 

「う~、流石の鈴々も疲れて来たのだぁ~」

 

「だらしないな二人共、私は未だに余裕綽々だぞ?」

 

「ぐぬっ・・・ええい、誰が限界等と言ったぁ!」

 

「ははは、その意気だ。

(とは言ったものの流石に不味いな・・・ここはやはりこれを・・・いや駄目だ! こんな所で「変身」しては、正体が公になってしまう!!)」

 

 

気合一声を上げ、再び前線を無理矢理に押し戻す。

が、やはり一時凌ぎにしかならない。

 

 

「愛紗ちゃん! 鈴々ちゃん! 星ちゃん! 頑張って!!」

 

 

桃香の応援も、最早半ば以上届かない状況で、必死に前線維持に努める三人。

兵達も、一人も逃げだす事無く死力を振り絞って戦うが、次第に一人ずつ確実に討ち取られていく。

次第に、戦況はより悪くなっていくばかりである。

 

 

 

 

「くっ、甘いわ!」

 

"ビュン!”

 

 

もう何度目になるかも分からない回避を行った愛紗の死角に、偶然黄巾の群の中から飛び出した矢が迫る。

それは、確実に愛紗の命を断つ軌道を描いていた。

 

 

「! いかん! 愛紗、避けろ!!」

 

「なっ!?」

 

「愛紗ちゃんっ!!!」

 

 

星の声も、桃香の絶叫も間に合わない。

愛紗の視界を、漆黒が覆った。

 

だが、痛みが襲って来ない。

恐る恐る目を開けて自身を確認し、それでも尚、愛紗は自身の状況が信じられなかった、先程まで何処にも何もいなかった筈なのに。

 

 

「ふむ、どうやら間に合った様だな」

 

 

この金髪の女性は一体何処から現れた!?

その様な感想しか出て来なかった。

それ程までに衝撃的だった。

飛来した矢に気付いた時は、最早回避も叶わない状況だったにも関わらず、この盾を持った女性は自分を救ってみせたのだ。

 

 

「さて、と」”ジャキン”

 

 

呆けて腰を地面に下ろしてしまっている愛紗の前で、女性―華蘭は右腕に装着した盾『天魔』を一度だけ鳴らした。

と、崖の間に続々と剣と盾を持つ兵が走り込んで来る。

華蘭はそれを一度見渡した上で、傲然と笑いながら黄巾党を睨む。

その気に圧され、少し最前線の兵が下がってしまったのが運の尽き。

 

次の瞬間。

その兵の頸が既に地に落ちていた。

何が起こったのかも分からない内に、華蘭は追い打ちをかける。

 

 

「我が名は曹子孝!

主君に仇名すもの須らく廃する『曹家の盾』なり!

黄巾共よ! 我が盾の後ろに行きたくば、屍と成り果てる覚悟をせよ!!」

 

 

その名乗りと共に、黄巾党は怖れを思い出した。

反撃が始まる。

 

 

 

 

「つぁっ!!」

 

“ズグリッ”

 

「ぎあああああああああああああああああ!!!」

 

 

華蘭が更に一人を天魔の杭で貫いた。

そのまま屍を放り捨て、背後より襲い掛かって来る二人の黄巾を、左後ろ回し蹴りで同時に顎を蹴り砕く。

激痛と、脳髄を揺らされて昏倒した二人の始末を部下に任せ、華蘭は更に敵を殴り蹴り砕いていく。

 

次の目標は、他よりも一際身体のサイズが巨大な男。

下品な笑い方をしながら、巨大な牛刀を振り回して華蘭を殺しに来るが、唯大雑把なだけな巨撃に華蘭が当たる訳も無く。

縦に振り抜かれた牛刀が地面に当たり、クレーターを形成するが、そこにある筈だと思っていた華蘭の死体が無い事に男は首を傾げる。

 

 

「愚か者が。

一刀の麗しい剣閃に比べ、何と粗雑で・・・・・・醜い。

見るに堪えんよ」

 

 

頭の上に振り上げた牛刀を見て驚愕する男。

華蘭は、牛刀の横にいた。

天魔の杭を牛刀の刃に突き刺して。

 

 

「・・・はぁっ!!」

 

 

杭を引き抜くと同時に牛刀を蹴って加速。

男の頭部を、天魔の盾部分で思い切り薙ぎ払う。

 

 

"ゾシュッ”

 

「げはっ」”ズズゥン・・・”

 

 

男の眼から上を斬り飛ばし、肩を再度足場として跳躍。

地面に今度こそ着地する。

そこで、周りにガンを飛ばす。

辺りの黄巾達は逡巡の躊躇を見せてから、揃って此方を襲って来る。

だが、その逡巡のみで充分。

 

 

「ぎゃっ」

 

「あぐっ」

 

 

矢を放つ華蘭の隊の兵。

華蘭は其方に目をくれる事も無く、その場で待機。

彼女の目的は、あくまでも護る事。

ここに突入するまでに、自身がやるべき事は十二分に理解している。

劉家軍の軍師が言っていた、「時」を待つ事。

そして、その為の時間を稼ぐ事。

華蘭の隊の人員は五百程度しかいないが、これ程狭い場所ではその程度の数でも増えれば脅威だ。

 

この状態で、更にこの場に援軍が来れば?

士気の面で逆転を起こす。

そして。

 

 

「やはり、来るのはお前だと思っていたよ・・・一刀」

 

「・・・・・・いきなりだな、華蘭」

 

「ああ、そんな目で私を見ないでくれ、幸せの余り気を失ってしまいそうだ」

 

「じゃあ、そっちは見ないよ」

 

 

白澤と共に宙空から飛び降りてきた愛しい男なら、必ずそうするとも確信していた。

 

 

 

 

「我は『天の御遣い』北郷一刀なり!

逆賊黄巾よ! 直ちに戦を止め、武器を捨て、此処より立ち去るのであれば、貴様等の責は問わぬ!

但し! それでも尚戦うと言うのであれば・・・その命、天に還すが良い!!」

 

 

そう叫ぶとともに、腰の暁を抜き放つ。

一方の黄巾は、驚愕と混乱に包まれた。

無理も無い。

白馬と共に日光を纏いながら空から降ってきた(彼等にはこう見えた)、神秘的な男が『天の御遣い』だと言う。

自分達にこそ天の加護があると信じていた、黄巾党の者達には衝撃的過ぎる。

だからこそ、多大な混乱が生まれていた。

だが、その中でも血気にはやる髭男が一人。

 

 

「バカ野郎! テメェ等シャンとしやがれぇ!

俺達が信じるのは、天和ちゃんと、地和ちゃんと、人和ちゃんだけだろうが!

あんな似非野郎、俺が片付けてやる!!」

 

 

馬に乗っている事から、武将格と分かる。

だが、此方としてはそう言う相手が出て来てくれるのは、寧ろ有難かった。

 

 

「一騎討ち、か。

やっぱり俺が出るべきだろうな」

 

「そうした方がいいだろう。

それに、あの程度の相手なら、眠りでもしない限り一刀の負けはありえん」

 

「ありがとな」

 

「何、気にする事は無い」

 

 

白澤と共に前に出る一刀。

相手の髭面も前に出てきた。

しかし、馬のサイズ違いの所為で、実際の図体はヒゲの方が大きいのに、一刀が見下ろす図式になっていた。

これに髭は憤った。

 

 

「俺様の名は程遠志、覚えなくていいぜ」

 

「そりゃ何でだ?」

 

 

聞かなくても答えは予想できる一刀だったが、ここはわざと答えを求めた。

 

 

「どうせすぐ死ぬんだ、覚えてても意味ねぇだろ?」

 

「(うわーお、予想通り過ぎて感動すら覚えるわ)」

 

 

黄巾の側から大声で哄笑が上がる。

一刀は無視して暁を構えた。

そして、程遠志はまたしても嘲笑う様な顔になる。

 

 

「だっはっはっはっは!!

そんな細い棒切れで俺様のこの剣に勝てると思ってんのか!?」

 

 

程遠志が持ち出したのは、斬馬刀とか呼ばれる類の巨大な剣。

片手で軽々と振り回して怪力を自慢しているが、それは一刀の耳には届いていなかった。

何故なら怒っていたからである。

外には表していないだけで、憤怒と言っていい程に怒っていた。

暁は、一刀が彼の祖父から剣を習い始めた時からずっと一緒だった、一心同体の相棒なのである。

それを棒切れ呼ばわりされた瞬間、一刀の堪忍袋は切れた、否爆発した。

 

一刀は無言で白澤を走らせる。

程遠志も、自分の馬を走らせながら、自分が勝つビジョンを疑いもせず、その後をも含めた妄想をし始める。

 

―――あの細っこい剣を圧し折ってこの男を殺し、此処にいる奴等を皆殺しにするか捕えるかして、女共は俺と手下達の慰みものにして、天和ちゃんと、地和ちゃんと、人和ちゃんに囲まれて接吻され―――そこで現実に戻った。

 

 

「はれっ?」

 

 

程遠志が最期に見た光景は、半ばから断ち切られ宙を舞う自分の剣。

馬と共に走り去って行く自分の胴体。

そして、何の感情も籠らない目で暁を振り切った、無傷の一刀の姿だった。

 

 

 

 

戦場は先程までの激情を伴った喧騒が嘘のように静まり返っていた。

そこで響く音は二つ。

白澤の蹄の音。

そして、首無死体となった程遠志の胴体を乗せて走る馬の蹄の音のみ。

 

劉家軍の将達は、眼前で起こった事実を未だに受け入れられずにいた。

傍から見ても、細い暁と、太い剣の間にある圧倒的な差と言う物は明らかであったというのに、一刀はその常識をいとも容易く覆してみせたのだ。

 

刀と剣がぶつかり合った瞬間、この戦場にいる者の殆どの脳裏を過ぎったのは無残に折られる暁。

されど、実際には逆。

剣に接触した刀は折れず、かと言って弾かれもせず、そのまま剣に沈み込んだ。

そしてそのまま剣を両断し、程遠志の頸を刎ねたのだ。

 

シン、と静まり返っていた戦場の空気を解凍したのは、程遠志の胴体が地面にドサリと倒れて音を立てて落ち、馬が走り去り。

 

 

「敵将程遠志、天の御遣い北郷一刀が討ち取った!!」

 

 

宙を舞っていた程遠志の頸を掴んで掲げた一刀が、そう声を上げた瞬間だった。

 

黄巾達は目に見えてうろたえ壊走を始めるが、それを見逃す程甘い人間はここにはいない。

そして。

 

 

「風・・・? フッ、成程。

あの小さな軍師達はこれを待っていたか」

 

 

無風であった筈の戦場に、確かに風が吹き始めた。

しかも、追い風だ。

 

天の御遣いが現れて敵将を討ち取った。

急に吹き始めた追い風。

この二つは、一つずつでも大いに士気を煽る効果があった。

しかし、今回はこの二つがコンボで起こったのである。

当然。

 

 

「天の加護は我等にあり! 諸君、この機に乗じ一息に賊を殲滅せよ!!」

 

『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!』

 

 

士気の上がり様は半端では無く。

壊走を始める仲間を引き止め、あくまでも交戦の意を示す者達の心すら折れる程に波に乗った味方が、黄巾に襲い掛かった。

 

そこからは最早蹂躙と言うのが正しいだろう。

一刀と共に現れた官軍は、劉家軍の軍師二人の意を察した風と稟の策通りに黄巾の退路を塞ぐ様に展開した官軍に身動きを封じられ、そこを劉家軍の主要な将である関羽、張飛、趙雲という悪夢の様な三連星の突撃を受けて薙ぎ払われる。

一か八か両軍の脇を抜けて逃げようとする者達は、一人残らず華蘭率いる隊の者達に討ち取られていく。

次々と降伏を申し出る黄巾が出れば、それを美里と円が望み通り捕える。

最後には、降伏した黄巾を縛る縄が足りぬ程の投降者が出る始末であった。

 

 

「勝った、のか・・・・・・」

 

「感慨にふけるには早いぞ、愛紗」

 

「分かっておるわ!」

 

 

一息つきそうになった愛紗に忠告する星。

口ではそう言ったものの、実際には気を抜きそうになっていた愛紗である。

心中では星に礼を言いつつ、愛紗は一刀の元へと向かった。

一刀に近付くにつれて、白澤に跨った一刀より放たれる圧にややながら眉を顰めつつも、愛紗は漸く白澤の傍までやって来た。

 

 

『ブルルルルルルルル!!!』

 

「うわぁっ!?」

 

 

そして白澤に威嚇された。

その為に、見落とした。

一刀の目に宿った涙を。

 

 

 

 

「お目にかかれて光栄です、天の御遣い様!

私の名前は劉備、字は玄徳と申します!」

 

 

そう、少しテンパった様子で、90度近くのお辞儀をかます桃香。

一方の一刀は少し困惑していた。

もう史実武将等の史実との乖離は気にしないと決めていた筈なのに、どうにもやはり衝撃を受けずにはいられないのだ。

 

 

「ああ、別にそこまで畏まらなくてもいいんだけど・・・・・・」

 

「・・・・・・すいません」

 

 

目元を潤ませる桃香には、かなりグラリとクるものがあるのだが、奥歯をしっかと噛み締めて耐える。

気にしてはいけないのだ。

先程から腕を顎の下に持っていく度にギュッと左右から挟まれて強調されるのとか!

腕を腰に回してモジモジする度に左右にユサユサ揺れるのとか!

桃香の顔から眼を逸らす度に目に入るからと言って、決して気にしてはいけないのだ!!

 

華蘭がいるから当然いる華琳はそんな一刀の内面を見透かしたかのように、人を殺せそうな目付きで一刀の事を睨んでいる。

因みに、さっきまでちみっ子軍師二人にこの地形の事を質問していた。

 

どうにも会話が進まず難儀していると、美里から助け船が入る。

 

 

「あんた等、幽州啄郡から来たらしいけど、糧食とかの宛てはあるの?」

 

「いえ・・・何分、洛陽に着いてから考えるとの事でしたので」

 

「呆れましたね、どうにも」

 

「自殺行為としか思えないのですよ。

風だったら見捨ててしまいますねー」

 

「む・・・」

 

 

美里の質問に答え、稟と風の言葉に渋面をする愛紗だが。

言い返せないあたり、自身も少なからずそう思っていたらしい。

一刀は、美里から送られた目配せの意味をしっかと理解し、桃香に話し掛ける。

 

 

「劉備さん、良かったら俺達と一緒に戦ってくれないか?」

 

「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」

 

「糧食や装備は此方で用意するから、力を貸してもらいたいんだ。

形式的には君達を俺の部下とする事になるだろうけど、今は少しでも力のある仲間が欲しいんだ、頼む!

この通りだ!」

 

「あ、あの、その・・・」

 

 

頭を深く下げる一刀。

その真剣な頼みに押され、思わずしどろもどろになってしまう。

その顔が真っ赤になっているのは、日の光の所為では当然無い。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・"チラッ"」

 

 

脇に助けを求める様に視線を動かすが。

周りの皆は、とっくに桃香に最終決定権を譲っていた。

 

 

「私達でよければ、喜んで・・・」

 

 

そうニッコリ笑いながら肯定の意を示す桃香。

次の瞬間、満面の笑顔を浮かべながら顔を起こした一刀を真正面から視界に捉えてしまい、顔中真っ赤にして俯く事になってしまったが。

 

因みに。

風は始終ジェラシービームを放ちまくっていた。

 

 

 

 

第十一話:了

 

 

 

 

後書きの様なもの

 

今回は、何とか超展開は避けれたかな・・・?

 

と言う訳で、劉家軍参戦です。

一刀争奪戦&黄巾の乱的な意味で。

 

レス返し

 

 

はりまえ様:実は、既に伏線を張ってます(ニヤリ)。 気になったら、第九話の咲さんのキャラ紹介を読むと幸せになれるかもです。

 

赤字様:ぐ・・・大変心苦しいのですが、明言しちゃうとネタバレになっちゃうんです。 ごめんなさい(土下座)。

 

mighty様:今回無双しました。

 

FALANDIA様:恋姫が輝くには、主人公に恋をする事・・・分かりますね?(ニヤリ)

 

うたまる様:予想もつかせぬ展開を目指しております!

 

poyy様:苦労人キャラは苦労してこそ! まだまだ咲さんは苦労将です。

 

2828様:何気に一刀君に会ってから時間が経ってますんで、まだ強くなりますよ。 今の華雄さんは、まだ漢女一人を相手にして最終的には負ける程度ですから。

 

瓜月様:大丈夫ですよ! もっと末期な人は幾らでもいますから! 妹を作る位、なんて事無いですって! 因みに、咲さんは方向性が違えど、七乃以上の美羽LOVE!ですよ。

 

睦月ひとし様:どうやら一話で巻き返してしまった感が・・・

 

砂のお城様:全てはこれから、ですよ。

 

 

では、今回はこれにて、です。

見てくれる人がまた増えてくれている様で、意欲ブーストに火が付きそうです。

ではまた次回で会いましょう! ノシ

 

 


 
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