No.157248

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 第十九話~

狭乃 狼さん

刀香譚、第十九話です。

虎豹騎との戦いのさなか、

川に転落した一刀と桃香。

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2010-07-12 20:06:44 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:18392   閲覧ユーザー数:15854

 

 パチパチと。

 

 火花の飛び散る音だけが、静かにしていた。

 

 赤々と燃える焚き火をはさみ、背を向けて座る二人の男女。

 

 一刀と桃香である。

 

 先の戦で川に落ちた二人は、かなり下流の方まで流された。

 

 先に目を覚ましたのは桃香だった。

 

 そして、すぐそばに倒れていた兄を見つけ、近くにあった洞穴に運び込んだ。

 

 洞穴の中に散乱していた木片を使って、どうにかこうにか火をおこし、濡れた衣服を脱ぎ、腰紐を使って乾した。

 

 ・・・少々ためらったが、仕方なく兄の服も脱がせようと、手にかけたその時、

 

 「う・・・。・・・とう・・・か?」

 

 「あ」

 

 目を覚ました兄と目が合った。

 

 「おまっ!な、なんではだ・・・!!」

 

 「きゃあああっっっっ!!!見ないでぇっっっっ!!」

 

 バッチーーーーーン!!

 

 思わずひっぱたいた桃香だった。

 

 

 

 どれほど時が立ったろうか。

 

 焚き火をはさんで背を向けたまま、何もしゃべらない二人。

 

 「・・・・・・・・・」

 

 「・・・・・・・・・」

 

 

 さらに続く沈黙の時間。

 

 やがて、桃香が口を開く。

 

 「・・・ね、お兄ちゃん。二人っきりになるのって、なんだかずいぶん久しぶりだよね」

 

 「そう、だな。・・・まあ、二人ともこんな格好だけどな」

 

 苦笑する一刀と、顔を赤らめる桃香。

 

 「・・・あれから、どうなったのかな」

 

 「さあな。・・・みんな、無事だといいけど」

 

 「無事に決まってるよ、みんな」

 

 「・・・だな」

 

 ・・・・・・・・・・

 

 再び訪れる沈黙。

 

 しばらくして、

 

 「・・・あの人、強かったね」

 

 「ああ」

 

 一刀は先に戦った、貂蝉と名乗った女性を思い出す。

 

 ・・・実力差は、大人と子供。

 

 それが、一刀自身の素直な感想だった。

 

 「・・・次は、勝てそう?」

 

 「・・・無理だろな。・・・”あれ”を使えば話は別だけど」

 

 「!!でもあれは・・・!!」

 

 一刀の発言に、思わず振り向く桃香。

 

 「わかってるよ。”あれ”は負担が大きすぎる。下手をしたら、再起不能にだってなりかねない」

 

 一刀は自身の靖王伝家を、じっと見つめる。

 

 「無理はしちゃだめだよ。・・・おにいちゃんに何かあったら、あたしは・・・」

 

 桃香の言葉に、なにも答えない一刀。

 

 

 

 「・・・ね、お兄ちゃん。昔話したあたしの夢、覚えてる?」

 

 「・・・大陸に住む人すべてが、笑顔で暮らせるようにしたい、だろ」

 

 うつむいて、首を振る桃香。

 

 「そっちじゃないよ。もっと小さいころに言った、あの夢」

 

 「・・・」

 

 やはり答えない一刀。

 

 桃香は意を決し、

 

 「あたしの将来の夢は、お兄ちゃんのおよ」

 

 「言うな!!」

 

 「・・・っ!!」

 

 桃香の言葉をさえぎる一刀。

 

 「・・・言っちゃ駄目だ。・・・俺たちは、実の、兄妹なんだ」

 

 立ち上がり、乾してあった服に手をかける一刀。

 

 「・・・服、もう乾いてる。ここを出たら、みんなを探して合流しよう」

 

 衣服を身に着け、桃香の方は見ないように、出口へと歩き出す一刀。

 

 と、

 

 ポフ。

 

 「!!」

 

 その背に桃香が抱きつく。

 

 「・・・なんで、あたしたち兄妹なんだろ。・・・なんで、兄妹として生まれてきたんだろ?」

 

 その声が震え、いつしか、涙を浮かべる桃香。

 

 「兄妹じゃなかったら、こんな苦しい想い、しなくてすんだのに、なんで、一刀はあたしのお兄ちゃんなの?」

 

 嗚咽を漏らしながら、想いのたけを口にする桃香。

 

 「桃香・・・」

 

 「・・・え?」

 

 突然、体を桃香の方に向け、抱きしめる一刀。

 

 「おにい、ちゃん・・・?」

 

 「・・・桃香。お前は俺が絶対に守る。・・・何があっても、何をしても、だ。・・・今は、これで勘弁してくれ。・・・な?」

 

 桃香の顔を見て言う一刀。

 

 「・・・うん」

 

 一刀の胸に顔をうずめる、桃香。

 

 「だからとりあえず、服を着て外に出よう。・・・目のやり場に困るから」

 

 「ほえ?」

 

 自分が、裸で一刀に抱きついていることを、ようやく思い出す桃香。

 

 「き、きゃあ!!あっち!あっち向いてて!!」

 

 「あ、ああ!!」

 

 顔を真っ赤にして、慌てて振り向く一刀であった。

 

 

 

 それからしばらくして、洞穴から外へ出た二人。

 

 「さて、まずは現在位置の確認だな。川に落ちたのが、あのあたりだろ」

 

 はるか上流のほうを見やる一刀。

 

 「ずいぶん流されたね。・・・え~~~と、汝南・・・ん~、荊州に入っちゃってるかな?」

 

 「多分な。・・・我ながら、よく生きてたもんだ。・・・ん?」

 

 「お兄ちゃん?」

 

 川を挟んだ、反対側の森を見つめる一刀。

 

 「・・・誰か、来る」

 

 「え?」

 

 「・・・あれ?この感じ・・・。この気は・・・」

 

 がさがさ。

 

 木々が揺れ、そして、

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・一刀?」

 

 「「恋(ちゃん)!?」」

 

 思わぬ場所で、思わぬ人物との再会。

 

 そこに現れたのは、真紅の髪の少女。

 

 恋こと、呂布奉先であった。

 

 


 
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