No.157083 真・恋姫†無双 頑張れ一刀くん改 その12010-07-11 23:52:11 投稿 / 全10ページ 総閲覧数:17122 閲覧ユーザー数:12624 |
「……流れ星? 不吉ね……」
太陽が輝く青い空に一筋の流星。
それを偶然見てしまった金髪の少女。
「……様! 出立の準備が整いました!」
「……様? どうかなさいましたか?」
そこに黒髪と水色の髪の女性が現れる。
「今、流れ星が見えたのよ」
見たままに内容を伝える。
「流れ星、ですか? こんな昼間に」
「あまり吉兆とは思えませんね。出立を伸ばしましょうか?」
水色の髪の女性は心配しているようだが金髪の少女は毅然として答える。
「吉と取るか凶と取るかは己次第でしょう。予定通り出立するわ」
「承知いたしました」
「総員、騎乗! 騎乗っ!」
黒髪の女性の号令で兵士たちが馬に乗る。
「無知な悪党どもに奪われた貴重な遺産、何としても取り戻すわよ! ……出撃!」
その一声で一斉に兵たちが走り出す。
「…………痛てて……」
その少年は全身を包む痛みに顔をしかめた。
そしてなぜこうなったのか思い返してみるが、突然目の前が真っ暗になったことしか覚えていない。
「お、俺は……」
声は出るし、手足の感覚はある。
なんとなく違和感があるような気がするがとりあえず五体満足ということに安心する少年。
「俺は北郷一刀……聖フランチェスカの二年生で、所属クラブは剣道部……」
自分についての生い立ちなどを口に出して記憶が確かな事を確認する。
そして今日の行動について思い出すと、授業の途中からの記憶がなかったのだ。
ここにいたる前後以外の記憶があることに安心しつつ一刀はゆっくり目を開けた。
「なんじゃこりゃーーーーーーーーーーーー!」
盛大に叫んだ。
教室にいたはずが目の前の景色は果てしない青空に白い雲、地平線が確認できないほどの果てない荒野と針のような山々。
「ど、どこだここ……!」
とりあえず叫ぶが返事は返ってこない。
目の前の景色は見たことなどなかったが、日本ではないということは分かった。
携帯電話を確認しても圏外で、おまけに電池も切れる。
とりあえず人を探すためになんとなく南に向かうことにした。
「おうガキ。珍しいモン持ってるじゃねえか」
独り言以外の声が聞こえた一刀はその方向を見る。
そこには三人の男が立っていた。
一刀が普段見ないような服装をしている三人のことをコスプレ好きかと思いつつもとりあえず助けを求める一刀。
しかし、
「言葉は通じてるんだよな? なら、テメェの持ってる金、全部置いていきな。ついでにそのキラキラした服もだ」
頬に剣を当てられていた。
冷たい鉄の感触からして本物だと分かった。
「え、あ、は、はい……っ! お金は……すいません、これだけしかないですけど?」
身の危険を感じた一刀はポケットから小銭を取り出し、一番小さい男に渡した。
一刀はその小さい男が自分より目線が高い事に気付いていなかった。
「…………なんだこりゃ」
「何って、お金だけど」
日本ではなくユーロやドルなのかと思ったがそうでもないらしい。
「ワケ分かんねえこと言ってんじゃねえよ!」
「ぐぅっ!」
いきなり腹にもの凄い衝撃を受けて、一刀は地面の上を転がる。
一刀を蹴飛ばした事を何も悪いとは思っていない三人。
そのことが一刀に衝撃を与える。
そして、三人が自分を殺そうとしていることに気付く。
抜き身の剣を構えた男たちが近寄ってくる。
「だ、誰か……」
絞り出すように出す声。
「こんな所に誰も来ないっつの! おい、コイツの口、とっとと塞いじまいな!
「んだ」
一刀はもうダメだと思い目を閉じた。
「待てぃ!」
「っ!」
「だ、誰だっ!」
そこに現れたのは刀身が赤い槍を持った白い着物のような服を着ている女性。
「たった一人の幼子相手に、三人掛かりで襲いかかるとは……その所業、言語道断! そんな外道の貴様らに名乗る名前など、ない!」
その女性が動いた瞬間、デクとチビの二人は地に伏せていた。
あまりにも速い槍捌きを目でとらえることが出来なかったのだ。
「なんだなんだ。所詮は弱者をいたぶることしか出来ない三下か?」
女性は不敵な笑みを浮かべアニキを見る。
「くっ……おい、お前ら! 逃げるぞっ!」
「へ、へえ……」
「だ、だな……」
三人は馬に乗り、必死で逃げ出した。
「逃がすものか!」
女性も三人を追いかけて行ってしまう。
「あ、あの……」
置いて行かれる一刀だった。
「大丈夫ですかー?」
「……え?」
目の前に居るのは太陽の塔のようなオブジェを頭に乗せた金髪の少女。
「傷は……大したことは無いな。立てるか?」
「あ、ああ……大丈夫……」
その少女の隣に居たのは眼鏡をかけた利発そうな女性。
「風、包帯は?」
「もうないですよー。こないだ、稟ちゃんが全部使っちゃったじゃないですかー」
「……そうだったっけ?」
金髪の少女は風と呼ばれていて、眼鏡の女性は稟というらしい。
一刀は包帯はいらないとやんわりと断る。
そこに先程の女性が帰って来た。
「やれやれ。すまん、逃げられた」
さすがに馬には勝てなかったようだ。
三人が言うにはここは比較的盗賊が少ないところらしい。
日本ではまずそんな場所などは無い。
「あの……風、さん?」
「……ひへっ!?」
一刀が風の名前を呼んだ瞬間に空気が変わる。
「貴様……っ!」
次の瞬間、白い服の女性に槍を突きつけられていた。
「な……何……っ!?」
「おぬし、どこの世間知らずの貴族かは知らんが……いきなり人の真名を呼ぶなど、どういう了見だ! 子供とて許されんぞ!」
一刀がこの初見殺しの設定を知るはずもなく、ただただ槍に怯えていた。
「せ、星ちゃん! ちょっと待ってください!」
「何故だ!?」
「相手は子供ですし、知らないと言う可能性があります。なのでちょっと待ってくださいー」
「風がそういうなら」
すると星は槍を引く。
「あー、びっくりしたー!」
「もしかして君は真名を知らないのですかー?」
「えっ、うん。もしかして呼んじゃいけない名前とか……?」
ホッとする一刀。
「真名とは、その者の本質を表す名。家族や親しい者以外が呼んでは頸を刎ねられても文句は言えません」
「え……」
それを聞いた一刀の顔は真っ青に染まる。
「ごめんなさい! 俺、そんな大事なものだとは知らなくて……」
謝って許されるとは思わないが、最低限の事はしておきたかった。
「知らないのなら仕方ありませんねー。風は程立と言いますー」
「お、俺は北郷一刀です」
許されたことに驚きつつも自己紹介をする一刀。
「姓が北で名が郷、字が一刀でいいのか?」
「いや、姓が北郷で名が一刀。字ってのはない」
字と聞いて、一刀は三国志を思い出していた。
「我が名は趙子龍と申す。先程は幼子相手に槍を突きつけて済まなかった一刀くん」
星は少し冷静になったのか、一刀に謝る。
「あ、いや。知らないとはいえ俺が悪かったんだから…………って趙雲!?」
言葉を紡いでいるうちに歴史上の有名人と名前が一緒だということに気付く一刀。
「おや? 私は名を名乗ったか?」
「いえー、星ちゃんは趙子龍としか名乗ってませんよー」
「確かに。なぜ知っているのですか?」
「えっ、そりゃあ趙雲と言えば三国志でもかなり有名な武将だし」
一刀の説明がいまいち分からない三人。
「星ちゃん、稟ちゃん、最近この大陸で流れている噂をしっていますかー?」
「確か『天から舞い降りた流星は、この大陸を平和に導く天の御遣いの乗り物』というものでした」
「おお、それなら聞いたことがあるな」
そして三人は一刀を見る。
「な、なに?」
見つめられて恥ずかしいのか、一刀は顔を赤らめて俯く。
「こ、これは……」
「おぉ! 何やら風は新たな扉を開いたのですよー」
「プハッ!」
「えぇー!? 鼻血!?」
三人は一刀の可愛さにやられてしまったのである。
「一刀くんはどうしてこんなところにいたのだ?」
「えっと、気付いたらここにいまして……」
「一刀くんは星ちゃん以外に風と稟ちゃんの事もわかりますかー?」
「えっとそっちの人の名前は?」
「戯……いえ、郭嘉と申します一刀くん」
(程立は確か程昱に改名するんだっけ? それと郭嘉は早死にするんだよな確か)
「うん。どっちも名軍師として有名だよ」
「これはもう確実ですねー」
「うむ。まだ無名の我らがここまで知られているとなると疑いようがないな」
「天の御遣いがこのような可愛らしいお方だと思いませんでしたね」
一刀は先程から気になっていることを聞いてみた。
「ねえ、さっきから子供だとか幼いとか言うけど一応俺十七歳だからね?」
『ええ!?』
ここまで驚かれるとは思わなかった一刀。
そこでなにやら違和感に気付く。
(なんかさっきから上を見上げて喋ってるよな……。それに手足も小さい気がするし、声も高い気がする。……まさかね?)
「ねえ、俺って何歳くらいに見える?」
「うむ。私から見ると五つほどかな?」
「風もそれくらいかとー」
「私も同意見ですね」
「ま、まじかよ……」
一刀は愕然とする。
「なんでちっちゃくなってるんだーーーーーーー!?」
「ふむ。それでは一刀くんはこの世界に来た時に小さくなったのだな?」
「うん。それしか考えられないと思う……。信じたくないけど」
「天の国の妖術なのですかね?」
「そんなものは使えないんだけどなー」
「まあいいじゃないですかー。もし一刀くんが元の姿だったなら星ちゃんに頸を飛ばされていたかもしれませんからねー」
「こわっ! ちっちゃくてよかった!」
一刀は小さくなったことに感謝した。
「しかし、このままこのいるのはまずいですね」
「確かに。陳留の刺史殿がもうじきここに辿り着くだろう」
「そうですねー。もう旗も見えて来ましたし」
風の指した方向には『曹』とかかれた牙門旗が見える。
「ふむ。ここで一刀くんに出会ったのも何かの運命」
「ここで官にかかわると下手すれば一刀くんが捕まっちゃいますからねー」
「ならばすぐに出発しましょう」
「つ、連れて行ってくれるの?」
身寄りのないこの世界ではこの三人だけが頼りなのだ。
「我々としてもこのように可愛らしい子を官などに預けたくないのでな」
「風もそう思うのですよー」
「私も天の御遣いに興味がありますし」
「あ、ありがとう!」
少し涙を浮かべながら感謝する一刀。
『はぅっ!』
一刀くんの笑顔は三人には眩し過ぎた。
「我が真名は星」
「風と呼んでくださいー」
「稟と申します」
「い、いいの?」
真名を預けてくれることに驚きつつも嬉しくなる一刀。
「ふふ。一刀くんになら呼んでもらいたくてな」
「そういうことですよ」
「二人に同意見です」
一刀はありがたく真名を預かることにした。
「よろしくね、星お姉ちゃん! 風お姉ちゃん! 稟お姉ちゃん!」
『プハッ!』
陥落すること呼吸の如く。
<おまけ>
「どうやら無駄足だったようね……」
先程まで一刀たちがいた場所にたどりついた金髪の少女――曹操。
「華琳様、どうしますか?」
水色の髪の夏候淵――秋蘭は華琳に尋ねる。
「一応、この辺りを捜索させなさい」
「分かりました!」
夏侯惇――春蘭は兵たちに指示を出す。
「なにかとてつもなく惜しいことをした気がするわ」
華琳はそう呟いた。
完。
華琳様無駄足w
きっと続きませんwww
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なにやら電波を受信した|ω・`)