敵連合軍からの銅鑼の音が鳴り、蜀軍と呉軍の兵が樊城の城壁目指して動き出した。
この城は少し窪んだ地に築かれている。築城奉行として築城の現場に携わった桂花曰く『この窪みこそがこの城の最大の特徴なのよ』とのことである。
そんな事を思い出した曹仁は苦笑した。確かにこの城は窪地に築かれた名城と言ってもいいかもしれない。
「ただ、防備を完璧にすると逃げられぬのが難点じゃのう」
この城の最大の防備機能は諸刃の剣。切り札は最後に切るべきだ。
蜀軍の指揮を執る諸葛亮は樊城の守りの堅さに内心舌を巻いていた。城壁は石を積み上げた物で、上に向かうにつれて反り返って侵入者を阻む造りになっている。さらに東西南北の城壁の四隅には櫓が組まれており、敵兵は狙いを定めてこちらを射落としにかかってくる。
「さすがは曹子孝・・・守戦の名手の名は伊達ではないですね」
魏軍本隊の動き以上に気になるのはこの地の天気だ。この地に住む老人に聞いたところ、ここ数年この時期は大雨が一度は降っているという。
「一応、手を打っておきましょう」
樊城の近くには大きな川がある。そして城が築かれているのは窪地―――。水計を恐れた諸葛亮は周喩と図り、堤防を破壊されることを防ぐべく監視の兵を派遣した。
「ふむ。敵も中々考えよるわい」
爆薬を以って堤防の破壊を考えていた曹仁は、水計の実行を半ば諦めて城の防備を頼った籠城戦を覚悟した。
しかし―――中華史上屈指の頭脳を持つ軍師達を持ってしても、自然の力の前には無力・・・樊城の楼閣で惨状を見守っていた曹仁は苦笑するほかなかった。
「さてさて・・・予想外の展開よの」
大雨が降り、堤防が決壊した樊城は湖に浮かぶ孤島の様相を呈していた。対する敵連合軍は―――
「申し上げます!敵軍、船を以って城攻めを開始する模様です!」
湖の孤島と化した樊城めがけて、敵部隊が船で攻めかかった―――
「さて・・・それにしても急いで城を落とさねばならんな」
周喩は周泰から受けた報告に、内心焦っていた。荊州国境を監視していた彼女からの報告は以下の様なものだった。
―――『魏軍主力、樊城に向かい移動中。数日中には到着する見込み』
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バイト疲れの作者がお送りする赤壁合戦編第2話です。最近雨ばっかりで嫌になりますね・・・
遅くなりましたが、アンケートに答えてくださった方々に御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました!