No.156135

雲の向こう、君に会いに-魏伝- 十二章

月千一夜さん

今回はまた、ガチシリアスです
華琳の覇王としてではなく、少女としての部分
張三姉妹の夢
そして・・・一刀の伝えたいこととは

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2010-07-08 08:58:22 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:36208   閲覧ユーザー数:29309

「いよいよだねぇ・・・」

 

 

出来上がった舞台を見つめながら、珍しく感慨深げな表情で天和姉さんが呟いた

 

その呟きに、隣にいた地和姉さんが頷く

 

 

「うん、いよいよちぃ達の夢が叶うんだね」

 

 

言って、姉さん達は笑った

 

私も、少しだけ笑みがこぼれる

 

 

 

私達の夢・・・『大陸一の歌姫』

 

それが今日、叶おうとしている

 

感慨深くもなるというものだ

 

 

思えば・・・

 

 

「いろいろあったわね・・・」

 

 

 

 

黄巾党の首魁として利用され

 

国の人たちから命を狙われ

 

あの頃は、ただ恐くて・・・もう夢を叶えることなんてできないんじゃないかって、思ったこともあった

 

 

だけど・・・

 

 

 

 

「一刀さんと出会えて・・・また、夢に向かって進めるようになった」

 

 

 

天の御遣い・・・北郷一刀

 

 

一刀さんのおかげで、ここまでこれた

 

ここまで、頑張っていられた

 

 

 

 

 

「よ~し、今日は頑張ろうね♪」

 

 

バッと両手をあげ、天和姉さんが言う

 

微かに、頬を赤く染めながら・・・

 

 

「そして、一刀に褒めてもらってそのまま・・・えへへ」

 

「ちぃだって、頑張るんだから!

そして、一刀に・・・むふふ」

 

 

 

 

・・・ものすごく不純な理由だった

 

 

 

「ふふ・・・」

 

 

 

けどたまには、そういうのも悪くないかもしれない

 

 

私も・・・

 

 

 

 

「私も、頑張ろう

私達のために、一刀さんのために・・・頑張ろう」

 

 

 

 

そう呟き、見上げた空

 

気持ちの良い空に、思わず笑みがこぼれる

 

「さぁ姉さん達、早速打ち合わせをしましょう」

 

「「お~!」」

 

 

掲げた手

 

歩き出す私達

 

夢の舞台に向けて・・・大好きな人に見てもらうために、私達は歩き出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青空の向こう側に、見える黒い雲

 

 

それに、気づくことなく・・・

 

 

 

《雲の向こう、君に会いに-魏伝-》

十二章 君を見守り、歌を謳う

 

 

 

 

「では続いて、今後の対策案についてですが・・・」

 

 

淡々と進んでいく会議

 

乱世が終わったとはいえやはりまだ問題は山積みのようで、各国の軍師陣からは数々の問題があげられていく

それを皆で吟味、対策をたてるということを繰り返す

 

 

「それだと、少しお金がかかりすぎちゃいますね~」

 

「そうですね

もっと、他に何かないでしょうか・・・」

 

 

一見、皆が皆真剣に会議に参加しているように見える

 

 

だが・・・そのうちの何人か

 

 

私達魏国の何人かの様子が、少しおかしい気がした

 

 

まずは凪

先ほどからずっと、ソワソワとしているのだ

彼女はおそらく、真桜と一刀のことが心配なのだろう

真桜は朝から見つからず、一刀は体調不良

親友と敬愛する者の身に何かあったのだ・・・心配にもなる

 

 

次に・・・稟

彼女は先ほどから淡々と会議に参加し、一見すると普段どおりに見える

だが、微かに・・・いつもの『キレ』がない気がした

 

 

 

 

最後に・・・風

会議には一応参加しているが、その目は私達のことを見ていない

たまに視線を彷徨わせては、窓の向こう・・・空を見上げているのだ

果てしない青空を・・・ただ黙って

 

何があったのか、なんて聞くまでもない

 

彼女は知っているのだから

 

 

『真実』を・・・

 

 

「っ・・・」

 

 

クシャリ・・・握り締めた『ソレ』が、静かに音をたてる

気づいたときにはソレを握り締めている

 

 

なんとも言えない感情が、私の中で渦巻く

 

 

見る勇気もないくせに・・・私はそれを、無意識のうちに握り締めているのだ

 

 

 

 

「は・・・はは」

 

 

思わずこぼれた、乾いた笑い

 

これが笑わずにいられようか?

 

この曹孟徳が、覇王とまで言われたこの私が

 

 

たった二枚の紙切れを相手に、ここまで怯えているなんて

 

 

 

なんて・・・情けない

 

 

 

「か・・・華琳様?」

 

ふと、かけられた声に・・・私は我にかえる

声の主である桂花が、心配そうな表情で私を見ているのだ

 

 

しまった・・・そう思った時には、もう遅かった

 

 

気づけば周りの者達の視線が、すべて私に集まっている

 

 

 

「ちょっと華琳・・・どうしたのよ?」

 

そんな中、雪蓮がそう聞いてくる

小さく溜め息をつきながら・・・

 

「なんでもないわ・・・少し、考えごとをしていただけよ」

 

「考えごと?

こんな大事な会議中に?」

 

 

「そうよ・・・皆も悪かったわね

さぁ、話を続けましょう」

 

 

パンと私が手を叩くと、渋々といった様子で雪蓮が頷く

それに続くように、再び話が再開される

 

だが・・・

 

 

「・・・」

 

 

彼女・・・風だけは、ただ無言で私のことを見つめていたのだ

 

 

 

 

何かを言うわけでもなく、ただじっと・・・私を見続けていたのだ

 

 

 

「・・・よ」

 

 

 

何よ

 

何なのよ?

 

 

私に何か言いたいことでもあるの?

 

 

臆病者とでも言いたいの?

 

 

 

 

 

 

 

ズキン・・・!!

 

 

 

 

 

 

 

「っ・・・」

 

 

 

痛い

 

頭が・・・痛い

 

 

 

 

 

 

 

 

『さようなら・・・さび・・の・・・・こ』

 

 

 

 

 

 

 

「ぅ・・・」

 

 

 

痛む頭

 

響くのは・・・聞き覚えのある声

 

 

かず・・・と?

 

 

 

 

痛む頭・・・震える体

 

 

私はただ、自分の体を抱きしめることしかできなかった・・・

 

 

 

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「華琳様の様子がおかしい」

 

ふと・・・隣から聞こえた、姉者の声

それに従い、見てみた先に・・・頭をおさえる華琳様の姿があった

 

その表情は普段とは違い、どこか辛そうに見える

 

 

 

「むぅ・・・確かに、姉者の言うとおりだ」

 

「どこか、具合でも悪いのだろうか?」

 

 

 

その姉者の言葉に、私は腕を組み考え込む

 

 

言われてみれば確かに、今日は朝から様子がおかしかった気がする

 

先ほどだって、いきなり笑い出したりなど普段からは想像もつかないお姿を見たばかりだ

 

 

どうか・・・したのだろうか?

 

 

 

 

 

「ん・・・?」

 

 

ふいに・・・気づく

 

私は今の華琳様のような感じと、同じような感じのものを・・・見たことがなかったか?

同じような感覚を・・・感じたことがなかったか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ちょっと・・・風邪引いたのかな?

ははは、なんか体もだるくなってきた

それに・・・』

 

 

 

『留守番してるよ・・・皆にうつしたら大変だからな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「北郷・・・」

 

 

そうだ、北郷だ

北郷が時折見せる表情から、同じようなものを感じたのだ

 

 

「だが・・・ならばこれは、なんだというのだ?」

 

わからない

この『感覚』の正体がわからない

 

 

 

「秋蘭?」

 

 

ハッと・・・姉者の声に、私は我にかえる

姉者の方を向けば、先ほど華琳様に向けたものと同じ・・・心配したような表情の姉者がいた

 

いかん、考えるのに夢中になっていたようだ

 

 

「どうかしたのか?

もしかして・・・お前も具合が悪いのか?」

 

「大丈夫だ姉者

少し・・・考えごとをしていてな」

 

「そうか

ならばいいが」

 

そう言って、少し安心したように笑う姉者

それにつられ、私も少し笑う

 

姉者はそれから再び会議の光景に視線を向け、無邪気な笑みを浮かべていた

 

「さぁ、退屈な話はそろそろ終わりだ

もうすぐ北郷の話だぞ」

 

「ふふふ、姉者は北郷の話を楽しみにしていたのだな」

 

「な、ちち違うぞ!?

私はあれだ、同じ魏国の者として応援しているだけであってな・・・」

 

 

ああ・・・姉者は可愛いなぁ

 

 

「そうだな、同じ国の者として応援せねばな」

 

「う、うむ

その通りだ」

 

 

言って、私も視線を向ける

 

もうすぐ・・・北郷の番だ

 

 

姉者と同じで、私も楽しみにしていた

北郷がどんな話をするのか、ずっと気になっていた

 

そのはずなのに・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故こんなにも・・・胸が苦しいのだろうか?

 

 

 

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華琳様は先ほどからずっと・・・風の渡したあの紙を、力強く握り締めていました

あの様子を見る限り、華琳様はきっと

 

あの紙を見ることができなかったのでしょうね

 

 

「仕方ないことです・・・」

 

 

そう・・・仕方ない

 

風だって、あのことを知ったのは本当に偶然のことでした

昨日みたいに渡され、すぐに見ることなど・・・恐らくはできなかったでしょう

 

 

真実を知るのが恐いからです

 

 

でも・・・

 

 

 

 

「それじゃぁ、駄目なのですよ」

 

 

 

 

もう、時間がないんです

 

終わりはもう、すぐそこまで迫ってきているんです

 

ですから、華琳様・・・

 

 

 

 

「そこから、踏み出してください」

 

 

 

 

風は小さく呟き、華琳様を見つめます

華琳様は頭をおさえたまま・・・何かを口ずさんでいました

相変わらず、あの紙を握り締めたままです

 

 

「華琳様・・・」

 

 

あの紙に書いてあることは、お兄さんが知っている真実とは遠いものなのかもしれない

 

それでも・・・お兄さんを知ることはできるんです

 

風にとっては、それが真実なんです

 

 

だからこそ・・・華琳様に、皆に気づいてほしいのですよ

 

 

全てが終わってしまう前に・・・

 

 

 

 

 

「続いて・・・天の御遣い【北郷一刀】による、天界施設の説明です」

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな風の考えをあざ笑うかのように、時は・・・無情にも流れていきます

 

 

 

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「一刀・・・」

 

稟の言葉に、私は痛む頭をおさえたままに・・・視線を広間の中央に向ける

 

 

 

そこには、彼がいた

 

 

 

 

車輪のついた椅子に座り、いつものように笑う彼が・・・北郷一刀が、そこにいたのだ

 

 

 

「一刀・・・貴方、それ」

 

「ああ、ごめんな

ちょっと体調が悪くてさ・・・悪いけど、このまま話をしてもいいかな?」

 

苦笑しながら、彼は自身が座る椅子を指差した

 

 

 

体調が悪い・・・?

 

あの椅子を見る限り、今一刀は自力では歩けないということなの?

 

ただの風邪が、ここまで悪化したとでもいうの?

 

 

私がそのようなことを考えているうちに、一刀の座る椅子を赤が押し・・・一刀の姿が、皆に見えやすいよう移動させた

 

 

「ありがとう赤さん」

 

「構いません」

 

 

それから一刀は赤にお礼を言うと、静かに目を閉じる

 

そのまま、黙る彼

 

周りの者達の視線が一刀に集まる

 

 

 

「今日は・・・」

 

 

やがて・・・ゆっくりと口を開いた彼

 

その瞳には、何か・・・『決意』のようなものを感じた

 

 

 

 

 

 

「今日は・・・皆に伝えたいことがあるんだ」

 

 

 

 

 

静かに・・・だがしっかりと響いたその言葉に、何人かが息をのんだ

 

 

 

「本来ならここで、『学校』についての説明をするはずだったんだけど・・・ね

今回は許して欲しいな、なんて」

 

 

 

 

そう言って笑う一刀

普段ならこんな状況のなったら真っ先に一刀に噛み付くはずの桂花も、今回は何も言わなかった

 

いや、言えなかったのだろう

 

一刀の表情が・・・言葉が

 

その全てが、とても真剣なものだったから

 

 

 

 

「それよりもさ・・・俺はまず、言わなくちゃいけないことがあるんだ」

 

 

言わなくちゃいけないこと?

 

 

 

 

「一刀、貴方何を言って・・・」

 

 

 

「乱世は終わった!!」

 

 

 

 

私の言葉を遮るよう、彼は叫んだ

突然のことに、何人かが驚いて声をあげる

 

だが、彼はそのまま続けた

 

 

 

 

「これからは、皆が助け合い平和を守っていく時代だ」

 

 

心に響く

 

彼の言葉が、深く・・・響いていく

 

 

 

 

 

「手を取り合い、共に生きていく時代だ」

 

 

 

 

胸が・・・締め付けられたように苦しい

 

なぜ?

 

はは、そんなのわかってる

 

 

 

 

「もう一度言うよ・・・乱世は終わったんだ!」

 

 

 

 

一刀の言葉

 

これでは、まるで・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう・・・天の御遣いの役目は終わりだ

あとは皆が、この大陸の人々が皆一丸となって・・・この平和を守り続けて欲しい」

 

 

 

 

まるで・・・

 

 

 

 

「それが、俺の・・・天の御遣いの、最後の願いだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで・・・貴方がここから、いなくなってしまうみたいじゃない

 

 

 

 

「ちょっと短いけど、これで・・・俺の話はお終いだ」

 

そう言って、彼は静かに笑った

 

その笑みを、私は直視することができなかった

 

 

「っと・・・ちょっと、疲れちゃったな

華琳、悪いけどもう部屋に戻るよ

この後、天和達の舞台もあるしね」

 

「え、ええ・・・」

 

 

一刀の言葉に、なんとか返事を返す

それを聞き、赤が再びあの椅子を押し一刀の部屋へと向かい歩き出した

 

 

 

 

 

 

 

残された私達の中に・・・妙な空気が流れる

 

 

 

「ねぇ今のって・・・どういうこと、かな?」

 

そんな中口を開いたのは、桃香だった

彼女は恐る恐る・・・皆の顔を見つめそう言ったのだ

 

だが彼女も、内心ではわかっているはずだ

 

 

それに頷き返すのは雪蓮

彼女もまた、さっきの話で何かを悟ったのだろう

表情に、いつもの明るさがない

 

 

「そうね

いきなりあんなこと話し出すんだもの・・・驚いちゃったわ」

 

 

その言葉に、皆が頷いたことだろう

 

あの言葉に、皆が同じことを考えたのだろう

 

 

 

 

天の御遣いの役目は終わった

 

 

 

それは、つまり・・・

 

 

 

 

 

 

 

「御遣い殿は・・・天へと帰るとでもいうのか?」

 

 

 

 

 

 

関羽が・・・呟く

 

その言葉に、皆が目を伏せた

 

 

そういうことなのだろうと・・・私もそう解釈している

 

 

 

だけど・・・何故?

 

 

 

誓ったはずなのに

 

一緒にいると・・・ずっと傍にいると

 

そう誓ったはずだ

 

 

 

 

 

だったら、なんで・・・

 

 

 

 

 

「あ・・・」

 

 

 

カサリと・・・握り締めたソレが、音をたてた

 

 

あるじゃないか

 

私はずっと、持っていたじゃないか

 

 

 

真実を知る・・・そのための手段を

 

 

 

 

「は・・・はは」

 

 

 

そして、気づいた

 

さっきの風の視線・・・その意味を

 

 

風は、私を馬鹿にしていたのではない

 

 

ただ、ずっと・・・私の背中を押していてくれたんじゃないかと

 

そう思った

 

 

「ありがとう・・・風」

 

 

 

 

だったら私は

 

 

私のすべきことは・・・

 

 

 

 

 

「皆、少し・・・いいかしら?」

 

「華琳様・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとつしかない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆に・・・見てもらいたいものがあるの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後悔だけは・・・したくないから

 

 

 

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「あ~!一刀だぁ!!」

 

舞台脇・・・外の様子を窺っていた天和姉さんが、嬉しそうに声をあげる

それに反応し、地和姉さんも外の様子を見つめていた

 

「ほんとだ! やっぱり見にきてくれたんだ♪」

 

嬉しそうにはしゃぐ二人に続き、私もこっそりと様子を窺う

 

 

 

客席の丁度真ん中・・・中央のあたり

 

そこに一刀さんはいた

 

だけど・・・あんな目立たない場所にいるのに

 

周りはたくさんの観客に囲まれているのに、何故・・・こんなにも早く一刀さんの姿を見つけることが出来たのか

 

自分でも、よくわからなかった

 

 

ただ・・・漠然と『そこにいるんじゃないか』と、そう思ったのだ

 

 

 

「なんだろう・・・」

 

 

 

少しだけ、嫌な予感がした

 

一刀さんの姿を見ていると、何だか妙な胸騒ぎがした

 

だけど・・・それと同時に

 

 

 

「姉さんたち・・・そろそろいきましょう」

 

「うん、頑張るよ~!」

 

「一刀、見てなさいよ~!」

 

 

 

今日のこの舞台で、私達の全てを・・・彼に聴かせてあげたい

 

 

そう思ったから

 

 

だから私は、私達は歩き出したんだ

 

 

 

 

この夢にまで見た舞台を・・・成功させるために

 

 

大好きな人のために・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一刀さん・・・見ていてくださいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は・・・精一杯に歌うだけだ

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな~~~~!!

今日は私達の歌を聴きに来てくれてありがと~~~~~!!」

 

「「「「ほわああぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~!!!!」」」」

 

 

 

 

さぁ、はじめよう

 

私達にできる、最高の『舞台』を・・・!!

 

 

 

 

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ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『それじゃ、いくよ~~~~~~!!!!』

 

 

「「「「ほわあああぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!」」」」

 

「ぬぅ・・・」

 

 

響く、観客達の声

 

それに、彼女は・・・赤は不快そうに唸った

 

 

「ちと煩いのう・・・」

 

「はは、仕方ないさ」

 

 

そう言って笑うのは、北郷一刀だ

彼は車椅子に座ったまま、ただ笑顔で・・・舞台の上、楽しそうに歌う三人の姿を見つめていた

 

 

「よかったな・・・三人とも

ようやく、夢が叶ったんだよな」

 

 

そして、続いて空を見上げる

優しく・・・微笑みながら

 

 

「赤さん・・・今日は、星が綺麗だよ」

 

「っ・・・あぁ、そうじゃな」

 

 

その言葉に、赤は空を見上げ・・・小さく体を震わした

車椅子を押さえる手に、無意識のうちに力が入る

 

 

「俺・・・ほんと幸せ者だよ」

 

「・・・なんでじゃ?」

 

「だってさ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー最期に聴けたのが彼女達の歌だったなんて・・・最高に幸せだよー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほん・・・ごう?」

 

返事はない

彼はただ黙って、微笑みながら空を見上げている

 

無視?

 

 

いや・・・違う

 

 

彼には、北郷一刀にはもう・・・届かないのだ

 

 

それに気づいた赤は・・・深い、深い溜め息をついた

 

それから、彼の頭を優しく撫でる

 

 

だが彼は、それにすら気づかない

 

 

気づけない

 

 

 

 

「これすらも、ぬしはもう気づかんのじゃな・・・」

 

 

 

小さく、こぼれた声

 

 

その声は、微かに震えていた

 

 

 

「まったく・・・辛い、ものじゃのう」

 

 

 

そう言って、赤は再び空を見上げた

 

 

 

 

 

 

 

今にも雨が降り出しそうなほどに、黒く不気味な空を・・・

 

 

 

★あとがき★

 

また・・・だいぶ遅くなってしまいました

最近、妙に忙しいんですよね

 

そのせいか、予告とはけっこう違う展開に・・・すいませんっした!!

 

 

次回はもっと早く投稿できそうです

 

 

「ウチが大活躍やで♪」

 

 

ちょww出てくんなww

 

 

というわけで、今回はここまで

 

またお会いしましょうww

 

 

 

 

 

 

 

「あら? 私の出番はどこにいったのかしら?」

 

 

姫ーーーーーーーーーー!!!!!wwwwwww

 

 

 


 
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