No.156108 恋姫のなにか 17くらげさん 2010-07-08 02:02:12 投稿 / 全16ページ 総閲覧数:15618 閲覧ユーザー数:8355 |
なんかもう謝る事すら許されなくなってきました。それでも謝ります、すいませんでした。
「いま・・・なんて?」
『・・・・・・ですから、明日は都合が付かなくなったと言っているんです』
「なんで?」
『私が聞きたいですっ!!あーもう全く!!なんでこんな日に予定なんて入るんですか?!』
ブツブツギャーギャーと恨み言を溢す友人の言葉は、雪蓮の耳には全く入ってこなかった。
月というお邪魔虫はいるものの、明日は待ちに待った一刀との久々の買い物。月をどうやって巻こうかとひたすら考えていた所にこの一報である。
『雪蓮!?聞いてるんですか?!』
「な、なに?」
『ですから、明日くれぐれも一刀さんに謝っておいてください。あと、後日是非とも付き合って戴きたいので連絡お待ちしておりますと』
「あー、うん。なんで自分で連絡とらないのか、聞いていい?」
『・・・仕方ないとはいえ、どうして私からお断りしなきゃならないんですか。
微妙な乙女心というヤツです、雪蓮には到底縁のない言葉でしょうけど!』
「へー」
心此処に在らず。月の深い深い溜息は雪蓮に届かず宙を待った。
『それと、言っておきますけどね。いくら二人きりだと言っても、これは決してデートじゃないんですからね?!』
「あ、ごっめ~ん。用事思い出した」
『雪蓮?!ちょっとま「じゃ~ね~」
返答を聞く事無く通話を終えると、雪蓮はケータイの電源を落として妹の部屋へ吶喊した。
狙うは美容液と、顔面パックである。
「なー、飯食ってこーぜー。この辺りあんま来ねぇし、開拓もこめてよー」
「えー、無理」
「なんで?」
夜の繁華街で、缶コーヒーを片手にカラオケ屋の前にあるベンチに座る青年が二人。互いに大人びているとは言い難く、顔つきを見れば学生である事は明白だ。
片方の眼鏡をかけた青年、于吉の服装は模範的とは言い難く、もう片方の青年、一刀と比べれば非常に浮いている。
穿ってみれば不良に良い様に使われる真面目君。といった所だったが、両者に流れる雰囲気は柔らかいモノだった。
「バイト代もうねーんだよ」
「なんで?!カズめっちゃバイトしてんじゃん!俺より小遣いあんじゃねーの?」
「苦学生舐めんな」
多種多様にバイトを(隠れて)やっている一刀だったが、通帳の大本は姉達に握られている。
一人なら何とでも言い包める自信が無い訳では無かったが、五人係りで雁首付き合わせて金の動きを考えられては敵わない。
これでも人並みに遊びたい欲もあれば、将来の夢もある一刀。無駄遣いは敵との考えは持ってはいるが中々実行できないのが凡人というものである。
「んじゃ奢るから行こうぜ?こないだ勝ったから金あんしよ」
「うきっちゃんマジで退学になんぜ?」
「カズに言われたかねーよ」
「違いないわ」
だっはっはと笑いあう二人だったが、一刀の腹が鳴って微妙な空気になる。
「腹鳴ってんじゃんよ。マジ気にすんなって、今更飯ぐらいでよ?」
「んー、やっぱやめとくわ。明日用事あるし」
「なんの?」
「聞いて驚け、デートだ」
「ふーん」
「んだよ!驚けよ!」
親友を脅かす一報だと自信を持っていたのか、あまりにもそっけない于吉の返事に不貞腐れる一刀。
于吉にしてみれば【何を今更】な用件だったのだが、あまりにも女泣かせな目の前の親友に言って聞かせる程無駄な事は無いとわかってもいた。
「誰と?」
「えーと、雪蓮先輩」
「ぶっ!!」
ゲホゲホと咳き込む于吉の背を撫でながら、何でこんな対応なのかを問い詰めたい一刀だった。
「お前、諦めたんじゃなかったの?」
「いや、ぶっちゃけ色々あったのよ」
「色々って何」
かくかくしかじか。
「それは荷物持ちって言うんじゃね?もしくはその華琳さんって人に対する僻み」
「言うな、夢がなくなんだろ」
「まぁ、お前が良いなら何も言わねーけどよぉ」
残り少ないコーヒーを飲み干すと、近くにあったゴミ箱に投げ入れる于吉。
見事に綺麗な放物線を描いてゴミ箱の中に入った空き缶を見届けた後、于吉は言葉を続けた。
「良い様に使われんなよ?」
「例えば?」
「飯奢らされるとか、物せびられるとか、色々あんだろーがよ」
「雪蓮先輩はンな事しないって」
「そりゃ雪蓮先輩はそうでも、その友達とやらはそうじゃねーかもだろ」
「・・・そりゃ、あんま深くは知らないけどさ」
「おりゃ修羅場に巻き込まれんのはゴメンだぜ?そっからお前ぶっこ抜くぐらいはやるけどよ」
(やだ、良い男)
「一刀?こんな時間に何をしてるんだ?」
聞き覚えのある声がして二人が振り向いた先には、見覚えのある人物が不審そうな顔で立っていた。
「秋蘭?」「ちっす」
「あぁ、秋蘭だ。 それで、何をしているんだ?」
于吉に軽く片手を上げて応えると、もう用は無いと言わんばかりに一刀に向き直る。
「遊んでた帰りだけど」
「ほぉ?」
真意を問いかけるかのような秋蘭の目線に、于吉は唾を飲み込みながらコクリと頷く。
誓って悪い遊びに誘ってはいないし、面倒事に巻き込まれてもいない。
中々信じて貰えないのか目付きは段々と鋭くなってくるが、仕方ない事と割り切って目線だけは決して逸らさない。
「秋蘭は何してんの?」
「飲み会の帰りだ。どうにも断れなくてな、顔だけ出してばっくれてきた」
「時間的に始まったばっかとかじゃねーんすか?」
「だから、顔だけ出したと言ったろ?」
本当に行くだけ行って、オーダーされた物が届く前に引き上げてきたのだろう。
「しかしまぁ良い所で良い時間に会った。飯でもどうだ?」
「あー・・・金ねぇから、悪ぃけど。そだ、うきっちゃんと行ってくれば?」
一刀に悪気は決して無いのだろう、先ほどの会話を思い出して自分を御飯に誘った両者をくっ付けようとする。
悪意なき悪意がどれほどまでに厄介な代物なのかを春蘭から嫌というほど学んでいる筈の一刀だが、同時に幾許かの能天気さも受け継いだらしい。
「との事だが?」
「すんません、用事思い出したんで。急ぎなんで帰ります」
先ほどとはうって変わって、決して秋蘭とは眼を合わせない様に明後日の方向を向いて丁重にお断りを入れる于吉。
クールビューティーな秋蘭の眼光が鋭くなったとて何時もの事なので、于吉を追い払うかのような秋蘭のメンチを一刀は気にしなかった。
「あ、うきっちゃん!」
「わりぃ!またメールすっから! あと、明日頑張れよ!」
石橋を叩いて叩いて、渡らぬぐらいが丁度良い。それが于吉の秋蘭達に対する処世術だった。
「行ってしまったな?」
「おーい・・・・・・」
取り残された一刀は唖然としたまま于吉の背を見送るしかなかった。
「で、どうするんだ?食べに行くも良し、作るならそれも良し」
「家何にもないんだけど」
「ふむ。ならチェックがてらお前の家に寄るとしようか?」
甘いようで厳しく、厳しいようで甘い秋蘭の自宅チェックに、姉からのお小言をこの時点で覚悟した一刀だった。
「ねーおかーさーん。雪蓮おねえちゃんはー?」
「まだ風呂じゃ」
所変わって孫家のリビング。ビール片手にスルメを齧りながらテレビを見ている祭は、えー!と言う末娘の声を聞き流しながらビールを呷った。
「蓮華~母様はビールが欲しいぞ~」
「もう、飲みすぎですよ?」
いち早く風呂から上がり、髪を梳かしながらケータイを弄っている蓮華に声を掛けると、ブツクサ言いながらも冷蔵庫まで歩く蓮華。
「雪蓮お姉ちゃん、もう二時間ぐらい入ってない?」
「さっきは私の部屋荒らすだけ荒らしてたわよ。その間にお風呂貰ったんだけどね」
「一刀絡みじゃろ。どーせ上手くいかんのじゃから、好きにやらせとけぃ」
プシュッ!!とタブを引いて喉を鳴らしながらビールを飲む祭。
やれやれ。と溜息を溢しながら飲み終わった空き缶を濯ぎに流しまで向かう蓮華。
むーと唸りながらソファーに腰掛けてチャンネルを弄る小蓮。
「シャオ、勉強したの?」
「もう終わってますよーだ!」
「なら良いんだけど。何か飲む?」
「アイスティーがいいなー♪」
時折風呂場から聞こえる鼻歌と笑い声。三人の耳には届いていないのか、それとももう何時もの事として扱われているのか。それが問題だ。
「ねーねー、明日雪蓮お姉ちゃんが一刀さんと進展できるかどうか掛けない?」
「シャオ、誰が上手く行く方に掛けるんじゃ?」「蓮華お姉ちゃんギャンブラーだし、お願い♪」
「大損ぶっこくの丸見えじゃない。またお小遣い全部使ったのね?」
「えへへ~♪ ねーお姉ちゃ~ん♪ちょっとだけでイイから貸して?」
「だーめ!この前の分もまだ返して貰ってないわよ」
「そういや小遣い前借しとったの。来月は慎ましく生きるんじゃぞ」
「えーー?!お願いだからカンパしてよー!!」
眼に涙を溜めて縋りつく妹に、私も甘いなぁと思いながらも少しだけカンパしたげようと蓮華が口を開こうとした瞬間―――
「話は聞かせてもらったわ!!」
リビングの扉をバン!と開けてバスタオルを一枚纏わせただけの雪蓮が現れた。
「シャオ、お姉ちゃんがかしたげるわ」
「「「・・・・・・・・・え?」」」
「可愛い妹の為だもの、仕方ないわ」
「蓮華、チャンネル」
「天気予報ですね、分かります」
「明日雪になるのかなぁ。異常気象って怖いよねー」
「ぶっとばすわよ」
だって、槍振ったって可笑しくないんだもん。三人の心は一致した。
「まぁ良いわ。それでシャオ、どーすんの?今ならアタシのアロエヨーグルト全部食べたの許したげる」
「非常に裏が怖いので、お姉ちゃんの要求を全部聞いてからにしたいと思います」
強かなり、小蓮。まぁあの桃香と交流している時点で善意というモノを信じられなくなって当然と言えば当然なのだが。
なんだか話からあぶれてしまった祭と蓮華はビールとお茶を啜りながら事の成り行きを見守っていた。
(どっちに掛ける、蓮華?)
(シャオが得して姉様が損するに二千円)
(手堅いのぅ。ならワシはその逆に五千じゃ)
全然見守ってなかった。寧ろ賭け事の対象にしていた。
「ん~?簡単簡単♪ちょっちケータイ貸してくれればそれでいいからさ♪」
多分今頃自分のケータイには不在着信と呪詛のメールが山の様に届いている頃だろう。
「な、なにするの?」
「だーから大丈夫だって。ちょ~~~~~っと一刀と電話するだけ♪」
「今月ピンチなんだから、ホントにちょっとだけだよ?」
「分かってる分かってる♪」
シャオが不信な顔つきで差し出したケータイを操作すると、フンフン♪と鼻歌を歌いながらケータイを顔の横に当て―――
『はいはーい、一刀のケータイですよ~♪シャオちゃん何かにゃ~♪』
「・・・・・・・・・」
『おろ?おーいシャオちゃ~ん?あ、誰だかわかんない?華琳だよ~ん♪』
「・・・・・・華琳?」
『? シャオちゃん声変わったー?怖い方のお姉ちゃんソックリだよ~』
「あーら、ごめんあさーせ。その怖いお姉ちゃんだったりしますわー」
『うえ?!な、なんで雪蓮が・・・』
「コッチのセリフだってのよ・・・アンタが何で・・・」
『ん?今一刀お風呂入ってるから代理ー♪』
ピ。と雪蓮は無表情で通話を終えた。
暫く右手で妹のケータイを弄んでいると、スッと目を細めてシャオにケータイを返す。
「シャオ、ありがとう。おかげでとても助かったわ」
「い、いえ・・・どーいたしまして・・・」
「母さん、ちょっと出かけてくるからアリバイは宜しく」
「う、うむ」
「蓮華ー、鍵掛けちゃっていいからねー」
「は、はい」
以上を、口元だけを歪めて雪蓮は家族に伝えると、殺す。とだけ呟いて足音を立てぬまま自室へと向かった。
「ん?お前の部屋、明かりが点いてないか?」
「あ、ホントだ」
二人で大きめのスーパーに寄って食材諸々を買った後、大きめの袋を一刀が、小さめの袋を秋蘭がそれぞれ持って一刀のアパート前まで差し掛かった頃。
二階にある一刀が借りている部屋から、明かりが漏れているのが見てとれた。
「おい、落ち着いているが泥棒だったらどうするつもりだ」
「大丈夫だって。心当たりあるからさ」
行くよーと言って気負わずに部屋に向かう一刀を慌てて追いかけながら、于吉以外にもあまり素行が宜しくない者との付き合いがあるのだろうかと悩む秋蘭。
(うーむ、あまり口煩くするのが得策とも思えんが、それでも言わなければならん事もあるしな。
しかし友人というのは宝であるし、式に招待する人数も多いに越した事は無いし・・・悩み所だ・・・
あまりに素行が宜しくないのであれば、私が内々に処理すれば良いだけの話だし、まずは見定める所から始めよう。内助の功というヤツだな、うん。)
「あ、開いてる」
「あー、おかっかえり~♪」
「ただいま~。鍵は掛けといてっつったじゃん」
「うぇ?!掛けてなかった?!」
「フツーに開いてた」
「ご、ごめんよぉ・・・ウチオートロックだから・・・」
「一刀、まずは荷物を置こう。そしてその後話という名の説教をするから正座して待っていろ」
扉の中から現れた金髪ツインテールの美少女と、気安く話しながら自室に上がる一刀。
その光景を新手のスタンドの攻撃だと信じて疑わなかった秋蘭は、目の前のツインテールを締め上げる為の布石を打った。
「えっと・・・・・・お客様?」
「あー、俺の幼馴染。秋蘭っていうんだ」
「どうも初めまして。いつも一刀がお世話になっている様で」
秋蘭としては初めましてではないのだが、面と向かって会話をしたのはコレが始めてである。
「いえいえ!あ、私華琳と申します!私の方こそ大変お世話になっちゃってます!」
「説教は勘弁だけど、まぁ上がってよ」
「あー・・・・・・私お邪魔だったかな~・・・」
「なんで?」
「そんな事はないですよ華琳さん。そうだ、丁度良かった。今日は一刀がキチンと自炊や家事をやっているかどうか見に来たんですが、貴女の知っている事があれば是非とも聞かせて戴きたい。
もしダメなようであれば包み隠さずお義姉さん達に報告しなければなりませんので」
「は、はい私でよければ!」
キレーな人だなぁ、おしとやかだし。と自分とは対照的なスタイルや顔付きなどに溜息が零れそうになる華琳。
まさか自分が値踏みされているとは露にも思わず、スリッパスリッパ!と玄関脇に備え付けられたスリッパを用意する。
「さて一刀。自分が遊び回っている間に掃除はおろか飯の支度までさせている事に関しての申し開きはあるか」
「ないです」
「宜しい。では確認するが、お前は華琳さんに、家族である霞さん達にも渡していない合鍵を渡しているという事で良いんだな」
「それについては弁明というか、言い訳というか・・・」
「あ、あの~・・・」
卓袱台に並べられた料理を置いたまま、正座した三人がそれぞれ向かい合う。
まず何故華琳が鍵の掛かった一刀の家に入れたのかを聞いた秋蘭だったが、まさか「合鍵渡してます」などという答えが帰って来るとは思わず、思わずプッツンしかけたのだが鉄の理性で我慢した。
「何か?」
「あ、あの~それについては私が悪いと言うか、我儘言いまして・・・だから」
「結構。華琳さんの言い分は理解しました。それで、一刀。それでいいのか?」
「渡したの俺だから、俺の責任」
うむ。と頷く秋蘭に華琳は気が気でないが、これで一刀が華琳に賛同していよう物なら問答無用で実家行きの電車に放り込む所である。
「まぁお前の言い分もあるだろうからそれは後で聞く。が、この事は流石に報告させてもらうぞ」
「・・・・・・出来るだけ穏便にしてくんないかなぁ?」
「はっはっはっ!今なら素手でヒグマの首取れそうな私にそれは出来ない相談だ。
さて、まだ聞きたい事はあるが、とりあえずお前は風呂にでも入って来い。お前の生活態度は御飯のオカズにさせて貰おう」
暗に華琳に聞きたい事があるのだと言っているのだが、そんな言葉の裏を読み取る力はまだない一刀である。
うーん・・・と唸りながら華琳を見れば、コク。と頷いてくれたのでそれならと腰を上げて浴室に消えた。
「・・・さて華琳さん。一応言っておきますが、あれでも一刀は男で、君は立派なレディだ。この意味が分かりますね?」
「は、はい・・・反省している次第であります・・・」
「此処にはどれほどの頻度で?」
「よ、夜道が怖い時は寄らせて貰ってます・・・」
「つまり、それなりの頻度。と」
お腹痛い・・・と思わずお腹を擦る華琳だったが、睨む様な視線に居住まいを正す。
「まぁ同じ女同士、夜道を一人で歩く事に恐怖を覚えるのも分からんではありません」
(秋蘭さんと同じスペック扱いされるとか私涙目なんですけど・・・)
「しかし、いわば弟とも言うべき掛け替えの無い存在を便利君扱いされるのは、少々業腹物なんですが?」
「い、いえそれは!!」
違う。と続けようとした華琳の言葉は、ケータイの着メロに遮られた。
そのケータイの持ち主は現在風呂に入っており、華琳は秋蘭の顔色を伺いながら一刀のケータイを手に取ると、表示された名前を見てん?と顔を歪める。
「シャオちゃん・・・?なんだろ、こんな時間に」
「・・・・・・急用だといけないし、かといって私が出る訳にもいけないし。どうぞ。お知り合いの様だ」
「え、えっと・・・」
流石に他人のケータイに出るのは気が引けるが、重苦しい雰囲気に呑まれたまま時を過ごすのもゴメン被る。
どうにでもな~れ~!(AA と華琳は通話ボタンを押すと、重苦しい空気をぶち殺す!!と言わんばかりのハイテンションで口を開いた。
「はいはーい、一刀のケータイですよ~♪シャオちゃん何かにゃ~♪」
『・・・・・・・・・』
通話口の向こうも、目の前の秋蘭も無言で華琳を見守っていたがこうなったらヤケクソである。
「おろ?おーいシャオちゃ~ん?あ、誰だかわかんない?華琳だよ~ん♪」
『・・・・・・華琳?』
(二重人格か・・・?いや、初対面という建前上猫被っていただけか。まぁ分からん話ではない)
「? シャオちゃん声変わったー?怖い方のお姉ちゃんソックリだよ~」
『あーら、ごめんあさーせ。その怖いお姉ちゃんだったりしますわー』
「うえ?!な、なんで雪蓮が・・・」
(雪蓮、というと・・・あぁ、蓮華の姉か。怖いお姉ちゃんとは言ったものだ)
『コッチのセリフだってのよ・・・アンタが何で・・・』
「ん?今一刀お風呂入ってるから代理ー♪」
(宜しくない、それは全く持って宜しくないなぁ華琳さん。マイナス一億点だ)
自分の鞄から手帳を取り出すと、華琳の項目に【泣かす】と完結に記した後、パタンと手帳を閉じる。
(今日の会話は・・・と。うん、一言一句忘れていない。流石私)
「んで・・・あれ、おーい?雪蓮ー?」
プーップーッと、通話を終えた時になるアレを聞きながら、首を傾げて電源ボタンを押す華琳。
どうやら、また地雷原に足を踏み入れた事には何時も通り気がついていないようである。
「一刀になんて言おう・・・」
「ま、ありのままを語れば良いのでは? それより、随分と奮発しましたね?」
秋蘭がテーブルに並べられた料理の数々を見ながら言うと、あやや・・・と恥ずかしげに頭をポリポリ掻きながら照れる華琳。
「これだけの料理を用意するのは大変だったでしょう?時間も掛かりそうだ」
「いえいえ、楽しかったですよ~。それに一刀は美味しいとか不味いとかハッキリ言ってくれるから、挑戦のし甲斐がありますし」
女同士の腹の探りあいが始まったなどと夢にも思わない華琳は思ったままを喋るのだが、それが目の前のお姉さんの逆鱗に触れている事には気付けない。
「しかし、それで帰る時間が遅くなっては本末転倒でしょう?」
「あー・・・そう言われると何とも・・・あ、でもでも、あんまり遅くなったら送ったりしてくれてますし、平気です」
「・・・・・・ほぉ」
「それに、チョクチョク泊まってますし。 あ!勿論迷惑にならないように歯ブラシとかの生活用品はちゃんとスタンばってます!」
「 」
華琳もうやめて!秋蘭の忍耐はとっくにゼロよ!
(なんでこうなった、どうしてこうなった、いつから違えたのだ、俺の道は)
「あ、秋蘭さんのソレポン!」
「鳴き打ちは運が下がるわよ、華琳」
「ま、人其々好きな打ち方をすれば良い。 小手で場を流し続けられるのはゴメン被るが―――悪いな華琳、それだと三倍満だ」
「うえ~~!!??」
一刀が風呂から上がって、明らかにホッとした表情になった華琳と不気味なぐらい透き通った瞳で華琳を見つめる秋蘭と共に、さぁ飯食おうとした一刀だったが、来客が訪れ出迎えてみると明日会う約束をしている雪蓮が「やほ♪」と片手を上げつつ立っていた。
あまりにもカオスな状況に一刀が考えるのをやめ、気がついたらテーブルの上の料理は片付けられていて、変わりに麻雀セットが置かれていた。
ちなみに、カオスは秋蘭と華琳が鉢合わせた瞬間から始まっていた事ではあるが、それをこのほほん男に解れと言うのは無理な話である。
(腹は膨れてるし、飯は食ったんだろうけどなぁ・・・)
「高めで数えだったが、まぁ仕方ない。どの道これで私が逆転トップだしな」
「あーあ、残念。純正緑一色張ってたのになー」
ジャラジャラと点棒の入った箱を鳴らしながら、たった今上がった三倍満を惜しげもなく崩して牌をかき混ぜる秋蘭。
パタン。と手配を手前に倒して惜しげもなく崩す雪蓮。二人ともバケモンだと自分のゴミ手をシゲシゲと眺める一刀。
「えー!ってことはアタシが買出しですかー!?」
「華琳、アタシカフェラテね。パックじゃなくてプラスティックの容器に入ってるのがいいわ」
「私は焼酎。当然芋だ」
「ちょ!アタシの背丈でお酒買うとか補導コースですよ?!」
「ならばよし」「平気よ、アンタ成人してるんだし」
「不幸だー!」
その頃とある寮の一室で、とある女の子がへっくしとクシャミをして鼻を啜っていたが、それはこの話になんら影響を及ぼさない。
「いや、秋蘭も先輩も。遅いし俺が買ってくるよ」
「そうか、なら頼もうか」
「んー、付いていくって言っても、お断りされそうね。お願いね、一刀くん♪」
「・・・負け分を肩代わりされるのはぎゃんぶらーの恥!アタシも行く!」
「いや、だから危ないって」
「行くったら行く!どーせ次も負けるんだし罰ゲームの前借!」
半チャン五回打って雪蓮と秋蘭の異常な巧さは身に染みて分かった。変則三面待ちを見切るとかありえない。
ズイズイと玄関に向かう華琳を見て、何言っても無駄かと腰を上げて財布をポケットに入れようとする一刀に、秋蘭は自分の財布を投げて渡した。
「・・・いいの?」
「奢りだとは言ってないだろう? どうやら私は年長者のようだしな、お前のタメなら安いモンだ」
「あははー・・・なんだか打ちのめされた気分・・・」
「なんで私の待ちは筒抜けなんだろ・・・」
めっきり幼馴染同士でつるむ事が無くなって忘れていたが、元々気風は良かったなと思い出した一刀。
歪んでいる。と羽織った上着の襟を秋蘭に正してもらった後、「んじゃ行ってくる」と自分の財布も持って部屋を出て行った。
「全く、自分の財布は置いていけというのに」
「秋蘭さんでしたっけ、随分気前良いんですね」
「ん? まぁ長く深い付き合いですし。ついつい財布の紐も緩んでしまうというものです」
風牌を四種類無造作に取って、適当にかき混ぜながらチラッと雪蓮の顔を盗み見る。
(成る程、姉妹だな。嫉妬する眼が良く似ている)
「そう言えば、こうやってお話をするのは久しぶりですね、秋蘭さん」
「そうですね、その時は今の様な堅苦しい喋り方では無かったと記憶していますが」
順番に東、南、北、西と捲り上げる秋蘭。その出来に満足したのかはたまた別の理由か、顔に笑みを浮かべて雪蓮を見る。
「・・・どうやら、遠慮はいらないって訳ね」
「ははは!どうやら、一度被った猫の剥ぎ時を逸したとみえる」
楽しげに言う秋蘭。眼光鋭く睨む雪蓮。
「で、態々ここに来た目的は何かな?」
「ちょ~っと躾けのなってない泥棒猫の矯正に」
「成る程、その一点だけ見れば、手も組めそうなモノだが――」
「はっ!冗談でしょ!」
「あぁ、無論冗談だ。 矮小と蔑まれても構いはしないが、敵と分かっている人物と笑顔で握手出来る性質ではないのでな」
「上等。 単刀直入に聞くわ、アンタも、アタシの敵ね?」
「ふはは! 敵?私が?お前の? 自惚れるなよ。アイツはな、一刀はとっくの昔に私のなんだよ」
「潰す」
「やってみろ、と喧嘩を買うのは吝かじゃあないんだが、一つ面白いモノをお聞かせしよう」
そういって秋蘭がバックから取り出すのは変な機械。文明とは此処まで進む物なのか。
「何よそれ」
「聞けばわかる。ポチッとな」
と、雪蓮と秋蘭が何やらやっている頃。
「あしふぁいふふぉ?」
「食いながら喋るなって、聞き取れねーから」
モグモグととりあえず寄った最寄のコンビニで買ったシュークリームを食べながら、手を繋いで歩く華琳と一刀。
ゴックンと飲み干して、空いた手で繋いでいる腕を抱き締める様にして擦り寄る華琳だったが、一刀に動揺は最早無い。
「そっかー雪蓮も覚悟決めたかー」
「あー、なんか男にやらしい眼で見られるの嫌いそうだよなぁ先輩」
プライド高そうだし。と続けた一刀にホントにぶちんだなぁと思いながらも言うだけ無駄なのでソーダネと棒読みで返す華琳。
「紳士一刀はどのようなエロ水着を着せるつもりですかぁ~?」
「歩けば零れそうなヤツ」
「ドスケベ!」
ガン!とそこそこ強く脛を蹴ったので流石に一刀が立ち止まる。
「超痛いんだけど」
「言っとくけど、プールの日に雪蓮が逮捕されたら怨むからね」
「ねーよ、どんだけ信用ないんだよ」
「えっちな本の片付けしてるの、誰だか言ってみ?」
ん?と詰め寄られた一刀はすっと視線をずらす。あれがアルタイルデネブベガ。
「えーっと、どの店にすっかなー」
「あー!話そらしたー!」
「近所迷惑だろ、ボリューム落とせって」
「この!この!」
ついつい力を込めてしまった先ほどとは違い、正しく恋人同士がじゃれあって歩いている様な雰囲気で歩く一刀と華琳。
何時の間にか開けた道に出ていたようで、周りを歩く人たちからやっかみの視線を受ける。
「華琳はいっつも元気だねぇ」
「華琳は強い子泣かない子!! あ、あのお店入ってみない?」
「おひめさまー今罰ゲームの真っ最中ですよー」
「・・・・・・今日ちょびっとだけ傷ついた」
「何で?」
だって、と俯きながら華琳は毒を吐く。
「あんな綺麗な幼馴染がいるとか知らなかった」
「まぁ秋蘭が綺麗ってのは同意するけど、二人の時に別の女の話すんなっつったの華琳だろ」
「そーれーでーもー!」
「どうすりゃいいんだよ」
「んー。キスしてくれたら機嫌直るかもよー?」
「この辺り歩けなくなるわ」
「けちんぼー!」
プイッとソッポを向きながら、それでも繋いだ腕は離さずに。
何歩か歩けばさっきまでの不機嫌が嘘だったかの様な笑顔で一刀にじゃれ付く華琳。
案外華琳とかの方が上手く行くのかもなぁ。と自分が躾けられている事に全く気が付いてない一刀は、そんな事を考えながら一緒に歩いていた。
「えーっと、ゴミ袋はっと。あ、ここね。 って、全部透明じゃないの」
「さて、ここらの地理には明るくないんだが、人目に付かない静かな場所はどこにあったか」
一刀と華琳の会話の一部始終を聞いていた雪蓮と秋蘭は、一刀の家を家捜ししていた。
雪蓮は透明のビニール袋しかない事に眉を顰め、この時間に真っ黒なゴミ袋を売っている店を脳内で検索しはじめた。
一報秋蘭はケータイの地図で地理を確認しながら、ベットの下を空けたり、時計を外してまた戻したりと忙しない。
その間にも妙な機械からは一刀と華琳の会話が聞こえ、時折知らぬ人の声が聞こえたりもする。
またその声というのが、二人を恋人同士だと勘違いしたり、それにテレる華琳の幸せそうな声だったりと精神を刺激する事この上ないモノだった。
『にへへ~やっぱりお似合いに見えちゃうのかにゃ~♪』
「なーんか人をグーで殴りたくなってきちゃったな~」ベキベキ。バキバキ。
『どうするかずと~♪お似合いのカップルだって~♪』
「さて、仕込みはこんなモノで十分だろう。しかし何だか妙に拳に力が入るなぁ」ゴキッ、ゴキッ。
『ちゅ、ちゅーしろとかそんな・・・・・・にへへ♪しちゃう?』
「「なんだこのドス黒い感情。あぁそうか、コレが殺意か」」
華琳逃げて!!そのままお家に帰って何の意味もないけど鍵きっちり閉めて!!
言い訳
Q:( ´_ゝ`)凄まじく遅かったじゃねえか
A:書いたつもりでデータ消去を二回やらかした挙句三国志○戦がバーUP。速攻で○融引けたのがあまりに嬉しくてSSの存在すら忘れる。
思い出して急いで書こうとしたのはいいけど、悪乗りが過ぎて書いても書いても泥沼に入り込む始末。
某動画UPサイトでの某ゲームプレイ動画見て「メト○イド面白そう」と思って今までプレイしてました。
うん、死ねばいいのにね、俺。
この話も匙加減間違えて、華琳VS雪蓮VS秋蘭の凄惨な戦いが繰り広げられる一歩手前まで来てました。
流石にそこまでやると三人の内いずれかのルートに入らなきゃならんと適当な所で捻じ曲げて何とか完成。才能なくてすいません。
何とか言い訳しようと外伝的なもの(ばんがいのアレ)を書いたものの、少しばかり今の作風に飽きてきたので一計を案じてみると凄いことになりました。
同時投稿しておりますが、流石に一般公開する勇気はなかったので限定公開にさせてもらいます。
色々すいませんでした。
お礼返信。見放さずコメントくださった皆様有難う御座います。
Will-Co21様 引っ込み思案なツリ目美人とか萌え要素の塊だと思います。
風の旅人様 やってる事はかわりませんが、ネット弁慶というのを付け足してみました。
詳しく説明してないですが、キャラ説明読んで下さると「あー・・・」とか思っていただけると思います。
Kito様 全ては思春のタメに始まったこのSS。一番最初に思いついたのが今の思春なので。
にゃものり様 義理の妹とか桃香様発狂フラグです。
zero様 そういや星とかホントに名前だけですね。翠?妄想は常にしてますよ、妄想だけですが。
桃香のおっぱいは100%弟を愛でる妄想で出来ております。
asf様 詠ちゃんは何気に華琳様に次ぐスペックの持ち主です。無論今考えた設定ですが。
jackry様 ほんま、思春の可愛さは三国に響き渡るでぇ・・・
水上桜花様 祭さんが出るまでは、恋姫†無双のキャラの中で(見た目が)一番のお気に入りでした。
風籟様 愛紗は連コ厨なのでコンティニューしまくりますよ、多分。
みっちー様 思春好きになっていただけたら嬉しいです。
元から好きでしたら嫌いにならないであげて!コレ私の妄想の産物だから!
happy envrem様 作者のアホさ加減が知れ渡った瞬間である。
ご指摘ありがとうございました、何故か姉を一人増やしてました。
比良坂様 一刀のためなら頑張れる。そんな犬ちっくな愛紗がだいすきです。
かもくん様 また良い目みさせてあげようと思います。いじってばかりでごめんよ・・・
悠なるかな様 今回は別方向で責めてみました。
好きな人のケータイに出られたらイラッとするかなぁとか妄想しちゃったので。
t-chan様 詠の立ち回りの上手さは半ば生存本能みたいなもんです。合コン・・・か・・・
tyoromoko様 ツッコミいないと成立しないアニメとかありますしね。
叢 剣様 ナカーマ。いや、比べるのもおこがましいとは存じてますがね。
葉巻様 百合ちっくな雰囲気をかもし出さずに仲良くなれそうです。
kurei様 分かってくれる人がいるというのは嬉しいものです。書いて良かった、妄想してよかった。
ロンギヌス様 気に障ったようで申し訳ありませんでした。
これからは悪乗りしないよう注意し、どうしても必要な場合前置きをすることにします。
tanpopo様 ドラゴン○ール集めるのをオススメしましょう。主に詠辺りに。
ちきゅさん様 もう桃香をどう扱っていいのかわかりません。自分で書いたのに・・・
Ocean様 秋蘭は良妻賢母という言葉がしっくり来ると思います。愛紗は・・・うん、良い子だよね?
カズト様 何処に行っても貧乏籤。それでも頑張れ我等が詠ちゃん。
よーぜふ様 霞と詠の組み合わせだと、一生喧嘩する事はないと思います。
mighty様 秋蘭は超合金で出来てるともっぱらの噂です。だから平気なんじゃないかなぁ。
武中様 本編でもなにやら戦うみたいなので、別作品で争ってもらいました。
リョウ流様 この思春には是非とも幸せになってもらいたい。私の匙加減一つなのは分かっちゃいるんです・・・
達様 暴虐の上に道を作るコンビになると思います。全く笑えない。
ルーデル様 まおう、めいおう、とうかさま。
poyy様 それは いかん! しんこきゅう を して、すぐに もえしょうでん を よやく するんだ!!
aruto様 心逝くまで熟女組みのドロドロした足の引っ張り合いを書きたくなるコメントありがとうございます。
コメントありがとうございました。怠け者で申し訳ないです、見捨てず待って下さっていた皆様に感謝しております。
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作者ー情熱=腐ってやがる・・・
久々の投稿になりました、怖い。