No.155935

剣帝✝夢想 第十七話

お久しぶりです、へたれ雷電です。

ようやく更新できました。そしてもう少しで萌将伝の発売日ですね、とても楽しみです。

2010-07-07 17:57:07 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:4798   閲覧ユーザー数:4148

朝早く、本来ならまだ眠っているであろう時間に、レーヴェは蜀の武将たちに囲まれていた。

 

「…こい」

 

レーヴェは辺りの気配を探りつつ口を開く。その声と同時にレーヴェを囲む人の中から小柄な影が一つ飛び出した。

 

「うりゃりゃりゃりゃ~!!」

 

鈴々は素早い突きをレーヴェに向かって突き出す。レーヴェはそれを紙一重でかわしつつ、周りの様子を窺っている。そして、周りからまた人影が飛び出してくる。今度はその数は二つだった。その二つの影は、鈴々の動きに合わせて、左右からレーヴェを挟撃する。

 

「もらった!」

 

「主様、もらいましたぞ!」

 

突きだされる青龍刀と槍を剣で払い、前から突き出される矛を、身を軽く捻って躱す。そしてその間隙を縫うようにして放たれた矢を拳で叩き落とした。そして背後に大きく跳躍し、三人から距離を取る。そして、それを追いかけるように放たれたパイルバンカーを斬り落とす。そしてそのパイルバンカーのすぐ後ろから迫ってきていた翠の槍を、一歩斜め前に踏み出すことによって回避、そして軽く翠の体を押して、こちらに突進しようとして来ていた蒲公英の進路を阻害する。そして、その動きをよんでいたのか、レーヴェが姿を現していた先に戦斧と戟を振り下ろしてきた華苑と恋の一撃を剣で同時に受け止め、弾き飛ばす。そして背後から振り下ろされる槌を返す剣でうち払い、軌道をずらす。そしてなおも放たれる矢とパイルバンカーを斬りおとす。

 

そんな動作を小一時間続け、先に根を上げたのは武将たちのほうだった。

 

「あ~、もうだめ!もう蒲公英動けない~!」

 

蒲公英はそう言って地面に座り込んだ。その額…といわず、全身に汗をかいている。周りの武将も同じような出で立ちで普段の鍛錬でも疲れた様子を見せない恋でさえ、疲れた様子を見せていた。空を見れば、日もそれなりに昇っており、もう少しすれば朝議の時間だった。

 

「みんなお疲れ~!」

 

「はい、お茶です」

 

そんな声と同時に桃香と月、詠たち文官組がやってくる。彼女たちの手には、お茶を載せた盆があった。武将たちはそれに礼をいってからそれを手に取り口をつける。そして、ほっ、と息をついた。レーヴェはそれを目の橋で捕えながら、剣を振るう。脳裏で、幾度かその目で見た剣聖と言われた人間の太刀筋、そしてその弟子である男の太刀筋を描きながら。

「ご主人様、どうぞ」

 

他の武将に配り終えたのだろう。こちらが剣を振るのを止めるのを待ってから、月が声をかけてくる。本来なら、主であるレーヴェに、真っ先に持ってくるのが普通というか、当然なのだが、レーヴェは先に自分に付き合ってくれている他の武将たちから渡すようにと言っていた。

 

「ああ、すまない」

 

レーヴェは軽く月の頭を撫でてから、お茶に手を伸ばす。

 

「へう」

 

月は恥ずかしそうに顔を赤らめ、その小柄な体をさらに小さくした。そして飲み干した湯呑を返すと、剣を鞘に納め、付き合ってくれた武将たちに礼を言った。

 

「…主様。私はこの目で見たわけではないですから実感がないのですが、ここまでしなければならないほどの相手なのですか?そのまくすうぇるとかいう相手は」

 

星が近寄ってきて、ほんとに疑問に思っている顔で尋ねてくる。それにレーヴェは本当に悪いと思いながらも正直な気持ちを言った。

 

「星たちには悪いが、これでもまだ足りない。マクスウェルは星たちの想像もつかない高みにいる。そうだな、彼こそ武の神に愛されているというのだろうな。今のオレではよくて五分に持ち込むのがせいぜいだ」

 

マクスウェルからいえばレーヴェこそ武の神に愛されている、といいたいのだが、それはどちらも伝わらない。マクスウェルからしてみれば、今の若さで自分に追随できる、自分と並ぶことのできるほどの才能をもつレーヴェは稀有な存在だった。だが、それをレーヴェが知る由もなかった。

 

「そこまでなのですか」

 

星は驚いている。恋を簡単に退けたレーヴェこそ最強と思い、彼が重傷を負って戻ってきたときには驚いたが、彼にここまで言わせるということで、更に驚きを深くした。

 

「ああ。彼は規格外だ。この世界ではオレしかまともに剣を合わせることのできる人間はいないだろう。いや、元の世界でも彼と正面から打ち合える人間がどれほどいることか。恋と鈴々もその目で見ているから分かるだろう?」

 

「…あいつ、強い」

 

「くやしいけどそうなのだ」

 

恋は少し顔を険しくして、鈴々は本当に悔しそうに肯定する。

 

「まぁ、しばらくは姿を見せないだろう。彼は物事を無駄にややこしくするようなことはしない。あのときは、オレに対する顔見せのつもりと、オレの力を図るために出てきたのだろう。…そろそろ朝議か。今日は重要な話がある。少し休んだら来てくれ」

 

レーヴェはそう言ってその場を立ち去っていった。

朝議の時間、いつもよりやや遅れて集まった愛紗たちは玉座にレーヴェと桃香を置いて言葉を待っていた。

 

「それでは今日の朝議を始める。先日、五胡に大打撃を与えて撃退し、南蛮は大した戦闘もなく向こうが撤退した。恐らく、五胡はしばらく攻めてはこないだろう。そこで、後顧の憂いを断つために南蛮を平定しておきたい」

 

「そう…ですね。五胡はご主人様を始めとして皆さんが予想以上の戦果を上げてくれましたから、立て直すのには随分と時間がかかるでしょう」

 

レーヴェの言葉を聞いて、朱里がその小さな手を顎に当てて考えながら言葉を紡ぐ。

 

「しかし、南蛮に至っては本格的な交戦がなかった分、敵に損害はありません。それに今は曹操さんも孫策さんもこちらに対して戦いを仕掛けてくる気配はありませんし、孫策さんは影さんが上手くやってくれていれば、呉に関して心配することはなくなります」

 

朱里の言葉を引き継いで、雛里が帽子を押さえながら口を開く。影には、同盟を結ぶために呉へと向かってもらっている。魏の曹操は現状ではどことも同盟など結ばないだろう。曹操に言うことを聞かせたくば、まずは、その力を削がなければ、話も出来ない。

 

「それでは、今のうちに南蛮を平定するということでよろしいのですね?」

 

愛紗の言葉にレーヴェは頷いた。しかし、条件をつける。

 

「今回の南蛮平定には、オレは出ない。桃香、お前が指揮を取れ。オレの部隊も連れていって構わない」

 

「ええ!?わ、私だけで!?」

 

「ああ。桃香もこの国の君主の一人だ。それなのにオレにおんぶにだっこでは駄目だ。オレはこの先、いつ倒れるかもわからない。そうなったとき、桃香がこの国を引っ張っていかなければならない。そのためには、一人で物事を見極め、判断することが必要になる。朱里や愛紗も道を示してくれるだろう。だが、それにただ頷いてついていくだけの人間をオレは王とは認めない」

 

レーヴェは淡々と、鋭い視線で桃香を見据える。はじめて、いや、二度目か、レーヴェにそんな視線を向けられた桃香はびくり、と体を震わせるが、それでも視線はそらさずに頷いた。

 

「朱里、雛里、そういうわけだ。今回オレはついていかず、この城で待機している。兵は最低限この街を守りきれる戦力を置いていってくれたので構わない。あまり口を出しすぎないように、桃香を補佐してやってくれ。そうだ、南蛮の水を飲むときは最低限、火にかけて沸騰させてから飲むようにしてくれ。朱里や雛里には以前説明したが、水の中に含まれている微生物や細菌は体にいいものではないからな。ろ過装置も作っておけばよかったんだが、流石に間に合わないからな」

 

「「わかりました」」

 

「レーヴェ様、私は残りますぞ。愛紗や恋、星たちが行くのであれば私は行かずとも大丈夫でしょう。それにレーヴェ様一人では流石に心配です」

 

「そうか。ならば華苑とその部隊はここで待機としよう。それを念頭に軍を編成してくれ。それでは、次の議題に入ろう。朱里、後の進行を頼む」

 

華苑の言葉に頷いて、朱里と雛里にその旨を改めて告げる。そして、朱里にこれからの進行を引き継いだ。

 

「はい。それでは、まず民から寄せられている問題なのですが…」

 

進行を引き継いだ朱里が朝議の進行を受け持ち、それからしばらく、朝議は続いた。

二日後、桃香たちは南蛮平定のために出陣していった。向こうの象兵と呼ばれる部隊に対する対抗策は朱里と雛里に伝えておいたのでそう問題はないだろう。地平線に消えていく桃香たちを、レーヴェは城壁の上で華苑とともに見送った。

 

「さて、行ったか。それではオレたちはオレたちですることをしようか。華苑、兵士たちに戦闘の準備をさせておいてくれ」

 

「それはどうしてか訊いてもよろしいでしょうか?」

 

レーヴェの言葉に華苑は訝しげな表情で訊き返した。

 

「ああ、成都を平定するにあたって、汚職に手を貸していた人物、不当な税を課していた人物を断罪、追放しただろう?その残党が野党になり下がる、または野党と手を組み、良からぬことを企てているという報告を受け取っている」

 

「…なるほど。今回の遠征でそやつらをいぶり出し、一網打尽にするということですな。しかし、レーヴェ様がいるのが分かっていて出てくるものでしょうか?」

 

華苑の言葉に、レーヴェは軽く笑みを浮かべた。

 

「この城は最低限の戦力を残し、主要な武将は全て出払っているという情報を流させた。明日明後日には、この街に襲撃をかけてくるだろう。それまでは適度に訓練をさせて、あとはゆっくり休ませてやれ」

 

「御意。しかし、レーヴェ様の部隊も残しておいたほうがよかったのでは?」

 

「あいつらなら半分は残っているぞ?鎧は一般兵のものに着替えさせてある。それに桃香についていったオレの隊の半分は新兵だ。オレの隊で最前線を経験させて、皆の隊に組み込んでいく」

 

「そうでしたか。それでは、私は兵の調練の方を進めておきます」

 

「ああ。それでは、オレは政務に戻る後は頼んだぞ?」

 

レーヴェはそう言い残すと、執務室へと戻っていった。華苑はそれを見送ると、兵の調練場へと足を向けた。

桃香たちが出陣してから二日後、城から出ずに、自分の存在を隠していたレーヴェの下に細作から報告が入っていた。とうとう賊どもがこの街を襲撃しようと迫ってきていたのだった。

 

しかし、愚かにもほどがあるだろう。恐らくは、以前のわがまま通し放題の生活を奪われたという自分勝手な逆恨みとこれ以降のことを考えてはいないからの暴挙なのだろうが、レーヴェたちの本拠地を襲うということを考えるなどまずありえない。襲撃が成功したとしても、そのあとはどうするのだろうか?普通に考えて戻ってきた桃香たちに鎮圧されるのがオチだろう。街の人間を人質に取ったところで、朱里や雛里が打開策を考えつくだろう。というか、こちらが流した情報だが、ここまであっさりと引っかかるというのも問題がありすぎるだろう。

 

「ともかく、ここで後の災いとなりえるものは完全に絶っておくべきだな」

 

レーヴェは軽く溜め息をつきながら執務室を後にした。

 

 

 

 

「レーヴェ様、報告によれば賊どもはあと一刻ほどでこちらへと到達するようです」

 

城壁の上に上がると、そこにはすでに華苑が待機していた。レーヴェは、城門の前に配置された兵を見下ろしながら、華苑の隣に並んだ。

 

「兵の展開は?」

 

「もう少しで完了します。念のため、今は私とレーヴェ様の旗は下げさせていますがいかがしましょうか?」

 

「いい判断だ。オレと華苑の存在を今まで隠し続けてきたのは相手を油断させるためだからな。直前まで油断していてもらおう。華苑、オレはしばらくここにいる。先にいっていろ」

 

「御意」

 

レーヴェは城壁の上からはるか先を見下ろしていた。まだ賊の姿は見えないが感じる。邪まな感覚を、淀みきった気配を。そしてしばらくして一頭の馬が走りこんできて、城門近くになると、何かを空に打ち上げた。打ち上げられたものから上がる煙は赤と黒。レーヴェが緊急時の報告を簡潔に済ますために、接敵状況とどれほどの距離かを色の組み合わせで報告できるように考案したものだった。オーブメント技術もないこの世界では無線のようなものは存在しない。そこで考案したものだった。簡単な銃の開発も行ってはいるが、まだ実用化の目処は立っていない。

 

それはともかく、先の報告の意味は接敵間近、残り十五分ほどというところだった。そしてレーヴェのいる城壁から、賊どもらしき団体が見えていていた。それを確認して、レーヴェは城壁から飛び降りた。驚く新参の兵士たちをしり目に、レーヴェは兵士たちの先頭に立った。レオンハルト隊の人間はもうそんなレーヴェの非常識極まりない行動にも慣れているので、沈黙を保ったまま、直立不動の姿勢を崩していなかった。

 

そして、兵士たちの目にも賊の姿が確認できるほどの距離になるとレーヴェは口を開いた。

 

「これより、後の災いを絶つために賊を根絶やしにする!旗を上げろ!」

 

その言葉と同時にレーヴェの牙門旗と華雄の旗が一斉に掲げられた。真紅の生地に銀色の糸で獅子の紋章が刻まれた旗と漆黒の華一文字を見て賊たちの進軍速度が明らかに鈍った。

それもそうだろう。レーヴェたちがいないという情報を得たからこそ襲撃をかけたのだが、その大前提が覆された。しかも、確実に南蛮平定に出陣していると思われる人物、蜀の王の一人、レオンハルトが残っているというのは大問題だった。

 

「敵の動きが鈍った。殲滅戦を開始する。全軍抜刀!」

 

華苑が敵の動きを見て即座に号令をかけ、レーヴェへと視線を向ける。そして、レーヴェが頷いたのを確認すると、再び声を上げた。

 

「敵は訓練も受けていない烏合の衆だ!正規の訓練を受け、ここまで残ったお前たちの敵ではない!賊どもを根絶やしにせよ!全軍、突撃いいいいいいっ!」

 

一般兵たちは雄叫びをあげ、レオンハルト隊の兵士は無言で突撃を開始する。動揺で足並みのそろわない賊へと接近し、両者が激突する。だが、動揺さめやらぬ賊の先頭はその勢いに呑みこまれ、押し込まれた。

 

 

 

 

「もっと手ごたえのあるやつはいないのか!」

 

華苑はその戦斧で複数の賊を叩き斬りながら叫んだ。だが、その声にこたえるものはおらず、周りにいるものは腰がひけた状態で武器を構えて華苑を取り囲むだけだった。所詮は取らぬ狸の皮算用、まったく確実性のない話に踊らされた愚か者たち。実力もなければ覚悟もないものたちだけだった。そんなものたちが華苑に一太刀入れることすらできるはずもなかった。離れた場所では敵の悲鳴が一際大きく聞こえてくる場所があった。

そこでは、レーヴェが敵を駆逐しているところだった。だが、レーヴェはその場に留まることなく、敵を斬り倒しながら、徐々に奥へ奥へと向かっていた。レーヴェが目指すその先には、恐らく今回の首謀者がいるのだろう。そして、レーヴェはそれを断罪しにいっている。そこまで考えたところで、華苑は戦斧をしっかりと握り直した。

 

「レーヴェ様の元へは行かせんぞ。貴様らはここで朽ち果てていけ。はぁぁぁぁっ!」

 

華苑は取り囲むだけで近寄ってこない敵へと向かい、突進する。レーヴェに敗北し、レーヴェの下に降ってから華苑は自分を鍛え直した。敗北したのももちろん堪えたのだが、自分の一撃が軽い、と言われたのが最も堪えた。

だからこそ、華苑は自分を見つめ直した。戦う理由を、自分の力を奮う理由を。そして、レーヴェの下にいて気づいたことがあった。レーヴェはそう愛想のいい人間でもないが、不思議と人が集まっていた。それは本当に老若男女問わずだ。そして、レーヴェを中心に、城の人間が、街に人々が笑っている光景を見ていると、なんだか穏やかな気分になった。そして、その光景をずっと見ていたくもなった。

 

だから守るのだ。その光景を、自分の意志で、自分の力で。未だにレーヴェとまともに打ち合うことはできないが、自分の実力が上がっているということは理解できた。そう、以前とは比べ物にならないほどに。だからこそ…

 

「あの光景を脅かすお前たちを許してはおけん。我が武の前に散れ!」

 

華苑は敵を両断し、咆哮を上げた。

「ひ、ひぃっ!?ど、どうして、どうしてあの男がここに残っている!?情報では主な武将は全て遠征に出ているはずなのに!?」

 

賊軍の後方で一人の男が側近に囲まれながら、焦った声を上げている。すでに味方は総崩れ、こちらの武将(というにはあまりにも実力不足でお粗末だが)はすでに大半が討ち取られ、残りも時間の問題だった。

 

「て、撤退だ!このままでは、このままでは!?」

 

「逃がすと思うか?」

 

「ひっ!?」

 

撤退の指示を出した瞬間、冷たい声が浴びせられた。そこには銀髪…アッシュブロンドの髪で大剣を片手で軽々と構えている男がいた。

 

「し、親衛隊はどうした!?」

 

「親衛隊?…ああ、途中にいた部隊か。それならすでに殲滅した。残りはお前たちだけだ」

 

そう言ってレーヴェは剣の切っ先を向けた。男は脂汗を流しながら、命乞いを始めるだが、レーヴェの答えは一つだった。

 

「…オレが言える義理ではないが、自分の私欲で多くの人々の生活を脅かしたことは看過できない。その命、この剣帝が刈り取らせてもらう」

 

「ちょ、まっ…」

 

次の瞬間、側近の人間も含めて首謀者グループの頸が飛んだ。そしてそれからほどなくして戦闘は終了した。賊は首謀者含め全滅。完全な勝利に終わった。

 

 

「レーヴェ様、ご無事で」

 

「あの程度の輩に後れを取るはずがない。被害は?」

 

「街への被害は皆無。兵のほうは僅かに死傷者が出ましたが、多くはありません」

 

「そうか。戦死者の家族にはあとで顔を出す。まずはしっかりと弔い、そして、その家族が生活に困らないだけの手当金を出してやってくれ。それと、賊たちの死体はどこかへ穴を掘り、そこに集め、焼いたあとに埋めろ。放置していては疫病が発生する」

 

「御意。おい、聞いていたな!すぐに行動に移れ!」

 

華苑の声に、近くでそれを聞いていた兵士たちはすぐにレーヴェの言っていたことを行動に移す。最初は半信半疑だったのだが、今までは大きな戦の後に、その戦場の近辺で疫病が発生していたのだが、レーヴェの言う通りにするとそれがなくなった。おまけに腐敗した死体が放つ悪臭にも困ることがなくなった。なので、現在では、特に異論もなく、事後処理が行われるようになっていた。

 

「よし、では帰投する。事後処理を行う部隊以外は城に戻り、交代で警戒を。華苑の部隊は悪いが辺りの偵察を頼む。敵が潜んでいる可能性もあるからな。一通り探ったあとは帰投して休息を取ってくれ」

 

「御意。華雄隊は私についてこい。最後の仕上げにかかる!疲れているところ悪いがもう少し付き合ってもらうぞ!」

 

「はっ!」

 

華苑は隊を引き連れてその場を離れる。レーヴェはそれを見送ることなく、軍を纏め、城へと戻っていった。

 

 

 

その後、敵が潜んでいる気配もなく、偵察を終えた華苑が戻ってきて、レーヴェはそれを労い、それをもってようやく通常の状態に城は戻ることになった。

 


 
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