No.155327

真・恋姫無双呉√アフター第六話 燐音

米野陸広さん

ちゃんと投稿できて何よりですね。
初めて戦闘パートを描いてみました。
少し理屈っぽいしあまり、動きがないですが緊迫感が出ていれば幸いです。
参考になるような小説があれば教えてください。

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2010-07-04 22:28:33 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:6856   閲覧ユーザー数:6011

どうも、ただいま鬼武者2のラストダンジョンに突入した米野です。

そんなことより小説書けってか?

まぁ、夏休みになったら頑張りますよ。

……独り言です。

今回思い切ったのでヒロインがわかりやすいキャラクターになったかなと思います。

後、蜀さんをちょっと出してみました。で、今後の展開というか、どういう方針で次世代につなげるかの道しるべの布石みたいにしております。

正直、蜀に一刀の血は入らないのが、作者的には悩みどころなんですが、なんとか頑張ろうと思います。

これもひとえに読んでくださる皆様のコメントありきです。

ちなみにあまり気にしていなかったのですが、読みにくかったらコメントしてください。

行間だの何だの考えていないので、基本的に地続きですので。

さてそれでは、本編どうぞ。

 

第六話 燐音

最近巷で評判なのは、呉の七姫についてである。

建業も豊かになり、住む人たちの暮らしが向上してくると、人々が始めるのは噂話である。

その噂は商人達によって色々な所へと運ばれていった。

もちろん同盟国蜀の都成都でも、話題になっていた。

「へぇ~、呉は既に次世代の台頭が始まってるってことだね、愛紗ちゃん」

「桃香様、他人事のように仰らないでください。呉の世継ぎはもう七人も候補がいるというのに、我が国は世継ぎがいないという有様ですよ」

「だって~、男の人って少し怖いじゃない」

「何を言っているのですか!!」

「曹操さんだって、閨には女の子しかよばなかったって言うし、女の子同士でも大丈夫だよ、きっと」

「そんなわけないじゃないですか!!」

蜀王の一室ではそんなやり取りがここの所続いている。

「にゃははは、お姉ちゃん達はそろそろいい年なんだから、いい加減結婚したほうがいいのだ」

「鈴鈴ちゃん、それは言いすぎだよ~、私たちは永遠の17歳なんだから」

「そうだぞ鈴鈴、我々が年を取ることなんてありえないんだからな」

義理の契りを交わした三姉妹は今日も和やかな日々をすごしていた。

しかし、世継ぎの問題というのに、実は一刀が絡んでいるのが問題なのである。

「はぁ、私だってさ、御遣い様くらいの男性が現れたら、結婚するよ。その人の子供産もうと思うよ。でもいないんだもん」

「……」

「……ほんとにお姉ちゃんはいくつになっても変わらないのだ」

「それは鈴鈴ちゃんの身体もでしょ~!」

「放っておいてほしいのだ。愛紗だけ一人でずるいのだ。立派な養子をさりげなくもらって、しかももう鈴鈴よりおっぱいが大きいってどういうことなのだ!!」

「む、胸は関係ないだろう!! それより桃香様、今日だってこんなにお見合いの写真が送られてきたのですよ」

そういって執務机の上に今日の分と持ってきたお見合いの書簡を持ってくる。

「……愛紗ちゃんのお眼鏡にかなうのは?」

「……この方などいかがでしょう?」

「……結構お金持ちなのだ」

「でも、それだけだね。他は? 似たり寄ったり?」

「は、まぁ。大体は裕福な家のもののですから」

このような感じで、蜀では婿になるものが見つからず、また劉備が一刀に惚れてしまっているため、男を見る目が厳しくなっているのである。また、蜀の重鎮達は皆、一刀と遭うたびに、そのこの世のものとは思えない微笑み、通称「天の微笑」を受けるので大概の者達が心酔しきっているのである。

「あぁあ、私も愛紗ちゃんみたいに養子貰っちゃおうかな」

「御遣いのお兄ちゃんは、呉でもべったりみたいだから、お姉ちゃんはきっと結婚できないのだ」

「むむむ、鈴鈴ちゃん、それは私に魅力がないってことかな?」

張飛の言葉にどす黒いオーラを浮かべる劉備。それを張飛は必死で弁解した。

「ち、違うのだ。今話題になっている御遣いのお兄ちゃんの娘の一人がすっごいお兄ちゃんにべったりって噂なのだ」

「どういうことだ、鈴鈴? 娘なら別に、親に甘えてもおかしくは……」

「鈴鈴が聴いた限りでは焔耶と同じくらいなのだ」

「確かにそれは病気に近いな」

「そんな二人とも、焔耶ちゃんはそんなに酷くは……」

「桃香様!!」

そんな三人の下へ噂の張本人が飛び込んできた。

「お見合いなんて嘘ですよね、しないですよね、身の上もわからない男の下へなど嫁いだりなどしませんよね」

「病気なのだ」

「だな」

「ははは……」

蜀の未来は大丈夫か? しかし、それはまた別のお話。

噂の呉のお姫様はというと、今日もわが道を突っ走る絶好調さを見せていた。

学校の運動場にて、

「一組、二組、総大将めがけて突撃開始。同時に三組はそれぞれわかれて遊撃に対処。四組は私と一緒に陣を移動しますよ!」

「いっくぞ、お前ら! 今日こそはあの小生意気な姉者の首を取って晒し者にしてやるのじゃ!」

宴こと黄柄と燐音こと呂琮が模擬演習をしていた。武器を使うわけではないが、毎回怪我人が続出する競技ではあった。

大将に戴かれるのは主に呉の姫君たち。血統なのかそれぞれ軍師として力を発揮するものや武将として力を発揮するものが多く、模擬演習の時間では学級の中でそれぞれ大将に選ばれている。

今日は、というか今日もその大将は宴と燐音であった。

他の姫たちは皆母親の手伝いにいっているのである。では何故、宴と燐音がいつもこうして模擬演習をしているのかというと、原因はやっぱり一刀である。

どちらか今日一刀を独占することができるかを賭けて勝負しているのである。巻き込まれたほうはたまったものではないが、両者ともカリスマ性を持った人間であるがゆえに、人が自然とついてきてしまうのだ。既にこの若さから二人ともリーダーとしての第一条件を持っているとも言える。

そんなことを模擬線の審判となった一刀は二人を見ながら思っていた。

(二人ともいい見本がいるからか、将としての器はあっという間に完成していくだろう。でも、……まだその将を自分の手足のように使える存在がいない。いや俺の姫様たちの傍で仕える者がいないといったところか)

漢を打ち建てた劉邦も、蜀を建国した劉備も、武と智ともに平々凡々であるといっていいい。しかしそれでも稀代の英雄となれたのは、人を使いこなす能力、そして人を動かす魅力が備わっていたからに他ならない。

一刀の心配していることは、これからの呉を動かす次世代が互いの個性をぶつけ合うだけで、国の志向性を見出せない集団になってしまうことだった。

その頃戦場、もとい運動場ではいつものように将同士の一騎打ちとなっていた。

つまりこの試合は宴が優位にことを進めていたということだ。

といっても、宴の戦いは潔いほどにまっすぐである。

「突撃突撃突撃じゃぁ!!」

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

宴は恐ろしい速度で相手の遊撃を打ち倒しながら、燐音の首をねらっていた。

(今日こそは親父殿に撫で撫でしてもらうのじゃ)

対して燐音はその猪突猛進の宴の戦法に辟易しながら、自らの味方を班に分け、伏兵、遊撃、といったように宴の軍を少しずつそぎ落としていくことを狙っていた。完全に知力勝負である。

何度も何度も戦ってきたもの同士である。お互いの戦い方はある意味丸見えである。しかしその戦法は日に日に進化していた。

「伏兵部隊は後続を分断するように、遊撃は本陣を狙ってくる宴以外を各個撃破、特殊班はあの馬鹿猪を止めるように工作を仕掛けて」

(父上の見ている前で負けるわけには行かない!)

武と智、どちらが優れているのか? 長いことテーマにされてはいるが、その結論はいまだに出ない。だが互いに依存関係にあるのはまた事実だ。優れた武があれば、智でそれを生かすこともできる。優れた智があれば、劣る武を生かすことができる。これを越えていく武や智というものはそうそう現れない。

武でいえば呂布のように、智でいえば諸葛亮のようにあらゆる武と智を凌駕する武と智というものは生まれてこない。

ましてや戦乱の時代は終わったのだ。その才を伸ばす必要性も今となってはない。

宴と燐音互いの軍は死力を尽くし、残す所文字通り二人となっていた。他はその一対一を見守るように遠巻きに見守っている。

「相変わらず姑息な手段が好きじゃの、燐姉ぇ」

「あんたより頭を使ってるだけよ、宴」

軽口を叩き合っているが二人とも一歩はいればそれは既に死合う間合い。

宴の武器は鉈を模した木刀、対し燐音は徒手空拳。互いに一歩間違えば死もありえるが、今まで大きなダメージになる前に一人の武将が必ず止めにはいっていた。

もちろん一刀ではない。

円を描くように対峙しあう二人。

宴は地べたを一歩一歩ふみ占めながら、燐音は細かいステップを左右に踏み続けている。

(姑息とはいったものの、さすがに亞莎様の娘。隙がない)

(戦術的には猪の癖に一対一になると、私だと五分、もしくは上をいかれている。妹の癖に生意気な)

二人の集中力が高まり、自然と互いの呼吸だけが意識されるようなる。

周囲の応援や、自然の息吹は段々と自らの景色、相手の景色に溶け込み一つの間合いなるものを作り上げていた。

身体の大きさのある分、姉の燐音は少しばかり宴よりも間合いが広い。

しかし、宴はその分リーチでカバーでき、燐音に向けた木刀の切っ先は十分に燐音への牽制になっていた。

(今まで宴に勝っていたのは、私の智の部分において、間合いを制することを論理的に把握していたからだ。しかし今日の宴はいつもと違って、しっかり自分の間合いを持っている。なら、セオリー通りに間合いを崩してかからなきゃいけない)

(……)

 

先に動いたのは、燐音だった。

燐音の武術は何が何でも論理的である。言ってしまえば詰め将棋。全てが布石の上で成り立ち、相手を攻めているようで挑発し、相手に押されているようで追い詰めている。

その戦い方が燐音の心根を表しているとも言えた。

宴の視界から逃れるように、燐音は宴を中心に追い込むようにサイドステップで右手に回り始める。

利き手が右手の宴は自然とその動きに対し、まっすぐ突きつけた刀を斜めに構えなおす。

(さて、いつまでじっとしていられる?)

(……)

燐音の作戦は非常に単純なものだった。

サイドステップで緩急を付け間合いをぼかしながら、だんだんと円の間合いを小さくしていく。

宴の刀の振りよりも早いうちに身体を中に入れられれば、燐音の拳が宴のみぞおちに入る。

まだまだ姉の威厳というものを妹に教えてやらなければならないと、ひそかに燐音は微笑んだ。

そのとき宴が急に目を瞑った。それは瞬きというにはあまりにも長すぎる時間。燐音がそれを見逃すはずもなかった。

右手へのサイドステップから自然な流れでの突進。最短距離で宴の身体に拳を叩き込む。

 

「勝負あり」

燐音は自分の勝利を確信した後、照りつける日差しの中意識を失った。

一刀の言葉はもちろん自分のものと疑わなかったのだ。

暖かい、暖かい思い出の中にいた。

燐音は一刀が大好きで、子供の頃から小蓮に対抗して自分が一刀の嫁になるのだと言って回っていた。

しかしある日、実の父と娘は結婚できないと知った日、燐音は持っていたレンゲを落としてしまうまでに絶望したのだった。

それでも、結婚できないとわかっていながらも愛してくれている一刀のことを、父としてまた男として好きなのだろう、と燐音は思っていた。

燐音は恋を知らない。

愛があまりにも廃れている時代。

一刀の引率の下姉妹そろって色々な村を訪れたことがあった。

戦火で滅んだ村。飢餓で植えている村。流行り病から立ち直り始めた村。色々な村があったが、一刀はいつもそこで皆に言い聞かせていた。

「この村は父であり、天の御遣いである北郷一刀が助けられなかった村、その血を引いてしまうお前たちは、こうした村を出さないために将来の呉を背負っていかなければいけない。ごめんな」

一刀は呉を愛していた。それ以上にその娘である自分達を愛していた。

そう思う燐音が一刀の愛を至上のものと考えてしまうのは仕方がないことでもある。

だからこそ、その愛に応える娘になりたいと燐音は思っていた。

しかし、負けてしまった。

「……父上、ごめんなさい」

気付けば燐音は涙を流しながら目を覚ましていた。

かすんだ天井が目にはいると同時に、慣れ親しんだ香りが燐音の傍にあった。

「大丈夫か、燐音」

「ち、ちち、うえ?」

「ん。そうだよ」

医務室に燐音は寝かされていることを知る。背中にわずかな痛みが走った。

「っ……」

「痛むか?」

「いえ、大丈夫です」

「そんな顔して大丈夫といわれてもな、燐音背中を出せ。薬を塗ってやるから」

「ひゅぇえええええ!」

「大声を出さない。背中に響くだろう?」

「……はい」

燐音は穴が合ったら入りたい心境で、寝返りを打ち背中を一刀に見せた。

柔らかく白いきめ細やかな肌。しかしその一部に打ち身のように紫色のあざが残っていた。

「ちょっと痛いかも知れないけど、我慢していた」

燐音にとっては我慢どころの話ではない。

風呂に一緒に入ったのはもう何年も前の話である。素肌を見せるのは実の父とはいえ少しばかり恥ずかしい。

軟膏を塗ってくれる一刀の手が背中を往復するたび、思わず吐息がこぼれそうになっていた。

「何を謝っていたんだ?」

軟膏を塗りながら一刀が燐音にたずねる。

「え?」

「さっき起きるときにごめんなさい、といっただろう?」

「あっ、はい……」

(父上はお怒りになるだろうか? 不甲斐ない私を。智においても武においても中途半端な私を)

愛しているからこそ、燐音は怖かった。何か一つのことでもいいから一刀に誉められる所がなければならなかった。

そうでないと、自分の価値が見出せなかったから。

智では優におとり、武では今日、宴にすら劣ってしまった。

「私は、す、す、す、……いえ、何でもありません」

(捨てられてしまうのでしょうか、なんて聞けるはずもない)

一刀の顔が恐れている表情に変わることが怖くて、思わず燐音は目をつぶった。しかし、脳裏に浮かぶ一刀の顔がどうしても浮かんでしまう。

一刀が軟膏を塗るのをやめる。

燐音の心拍数が極度に跳ね上がった。

もう自分がどうなってしまうのか考えるだけの余力がなかった。

……が、燐音を包み込んだのは一刀の優しさだった。

髪を梳くようになでる一刀。燐音の閉じたまぶたの合間から再び、涙がこぼれだした。

「ちち、うえ、ちちうえ、ち、ち、うえええええええええ」

決壊が壊れるように燐音の声が、身体が、直接一刀のひざにすがり付いてきた。

「わっ、わたし、っを、どうか、すて、ないで……さい」

「燐音……」

「わたし、は、父上、が、大、好き、なんです。父上にだけは、きらわれたく、ない、のぉ」

涙だけでなくもう顔面がいつもの大人びた表情から幼子のものへと変わってしまった燐音を、一刀は強く抱きしめた。

「ごめん、な。燐音がそこまで思い悩んでるとは思わなかったよ……。大丈夫だ。燐音。父は絶対に娘を見捨てない。……違う、な」

「え?」

「北郷一刀は琮を愛しているよ」

「ちちうえ……」

優しく笑い一刀が名を呼んでくれた。このことがとても燐音にとってこのとき嬉しかった。

名はとてもとても大事なもの。ましてや、燐音が母のことを蒙と呼ぶことが許されないまでに、国の伝統として、真名とは別に大切なものだ。

この日、陽が暮れ泣き疲れて眠っても、燐音は一刀の身体を抱きしめていた。

その頃別室では、

「なんで、勝った宴がこうして母上の晩酌の手伝いをしなければならないのじゃ」

「宴? どういう意味だ?」

「母上も何か考えてくだしゃれ」

「……こういうのはどうだ?」

今日の勝負、宴は見事な勝利を収めた。視界を外しながら相手の行動を誘い、武器を捨てながら相手の身体を交わし、裏拳を燐音の背に叩きつけ呼吸を一瞬止めたのである。

そして首筋に強烈な手刀が決まり燐音の意識は断ち切られたのだ。

しかし、その後独占権を得たはずの宴は、結局一刀がその日燐音に付っきりだったため、一日独占することができなかったばかりか、母の祭に反省会と称して陽が暮れるまで手合わせをさせられたのである。

燐音よりも宴のほうが圧倒的に傷の数が多かった。

「……母上もなかなか悪ですよのぉ」

「ワシだってたまには旦那様と一緒に夜をすごしたいと思うだけじゃ。それでは宴、頼むぞ」

「お任せくだしゃれ、今日の分もしっかりと親父殿には払っていただきましょう」

「たのしみにしておるぞ」

と、黄家には悪巧みの香りが漂っていた。

しかしそれはまた別のお話。

あとがき

今回、コミュニケーションタイムを思い切って一ページにしてみました。

正直スクロールが面倒だったらごめんなさい。

それにしても、電撃G'sマガジンが手に入りません。

というか、初日に完売ってどうした。

おかしいだろ、毎号かって倒れの楽しみを奪ったのはどいつだ、とここの所友人達に愚痴をこぼしすぎていて若干ひかれています。

とりあえずネットでしかもう手段が見当たらないので、あたってみますか。

ご意見ご感想とともに、最新号の目撃情報があれば教えてください。

 

次回のヒロインは…半分オリキャラになりますかね。

ファミ通文庫で初登場太史慈さんにご足労願います。

ではでは、ごきげんよう!


 
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