No.155325

真恋姫無双~風の行くまま雲は流れて~第41話

第41話です

はやく梅雨明けしないかな

2010-07-04 22:14:11 投稿 / 全21ページ    総閲覧数:5628   閲覧ユーザー数:5174

はじめに

 

この作品はオリジナルキャラが主役の恋姫もどきな作品です

 

原作重視、歴史改変反対の方、ご注意下さい。

 

比呂には守りたいものがあるんじゃないかな?

 

その日

 

俺は人に向けて弓を引くことを決意した

それが

それこそが

他愛のない

それでいて大切な

今日を守ることに繋がると思ったから

 

麗羽…そう呼びなさい、私の真名を貴方に授けますわ

 

あの日

 

彼女の物となると同時に

彼女を自分の物にした

 

彼女がそれを望み

自分もそれを望んだから

 

彼女に望まれながらに

彼女の思いすら利用すると

 

 

どうしてあの人を抱いたの?

 

あの日

 

桂花と袂を分かつ決意をした

俺も

アイツも

もう元には戻れないと知ったから

 

月です、私の真名、どうか受け取ってください

 

あの日

 

戦場で

初めて目の前の人を守ろうとした

まるで戦場に似つかわしくない彼女を

 

救うことで

 

戦場では弓を引き

剣を振るい

血で汚れていくだけの自分自身が

 

救われる気がした

 

 

比呂!うちに来ない!?

 

あの日

 

改めて自分の居場所を確認した

 

自分の守りたいものを

揺れた心に楔を打つものを

俺は

友を

友の最期を

見届けなくてはいけないと

 

 

見届けなくてはいけないのか?

俺は

先のない友の為

 

何ができるというわけでもないのに

 

 

俺は比呂の味方であるが故に…ですよ

 

友は言った

俺が守りたいものは

一筋縄ではないと

簡単に

友が

口を出す物ではないと

 

 

あんな迷いのある戦い方じゃ、この先躓くんじゃないかしら?

自分のしたいこと、思い通りに動けば良いんじゃない?

 

彼女は言った

迷いは

自分自身を曇らせると

全部

自分が背負うて

言うたんや

献帝も洛陽も責任も

全部自分が守るて

 

かつて戦場で震えていたはずの彼女は

いつしか

 

俺のずっと先を行っていた

どんなに高く登り詰めても

私には何も出来ません

 

ただ

其処にいるしか出来ないんです

貴女を守れたなら

貴女を救えたなら

 

俺は自分も救える気がした

貴女に救われる気がした

 

俺は

 

いつしか

 

貴女の目の前にいながら

「貴女の言葉にすら耳を塞いでいた」

 

霧掛かる森の中

東の空が朝日の色に染まり

朝日の光が木々の間から漏れる森の中

 

比呂は立ち尽くしていた

 

辺りには血の匂いが充満し

骸と化した獣が横たわり

凄惨な光景にありながら

 

彼女は

 

ただ彼を見つめていた

 

夜通し歩きつくした足はいくつもの切り傷が出来ていた

何度も転んだのだろう

服も髪も顔も泥だらけだった

 

一晩中泣き通した為に瞼は赤く腫れ

彼の名を叫び続けた咽も枯れ

 

満身創痍になりながら

彼の元へと歩み寄っていく

 

「貴女の傍にいることで無力な自分が救われる気がした」

 

そっと月の手が比呂の顔に伸びていき

比呂の瞳から流れ落ちる雫を掬う

 

「貴女の傍にいながら貴女から目を背けていました」

 

涙で視界が歪み

嗚咽交じりの声が辺りに響く

 

「俺は…弱い」

 

抱きとめられるがままに彼女の胸に自分の顔を沈める比呂

 

「そう…貴方は弱い」

 

比呂の頭を撫でる月の瞳からも涙が流れる

 

そして私も

 

 

貴方を救いたいと思った

 

貴女を救いたいと思った

 

 

 

貴女に救われたいと願った

 

貴方に救われたいと願った

 

貴方の心は疾うに病んでいたというのに

 

貴方の心は自分自身への思いからから押しつぶされそうにあったというのに

 

「私は、貴方に縋り付いて」

 

貴方の心の重りになって

 

「貴方への思いから、貴方を拒絶しました」

 

あの日

 

貴方が「人形」を差し出したあの日

私が受け取るべきだったのは

「人形」ではなく

 

あの日

 

貴方が「人形」を差し出したあの日

私が受け止めるべきだったのは

貴方の弱さ

 

 

比呂の両頬に手をあて

 

比呂の瞳を見据える月

 

「比呂さん…私の声が聞こえますか?」

 

昨日までの彼女の声とはまるで違う

しゃがれた声に頷く比呂

 

「比呂さん…私の姿が見えますか?」

 

自身の涙で視界は歪んでいても

目の前の彼女をしっかりと見据えて頷く比呂

 

「比呂さん…劉協は…此処にはいません」

 

彼女の声も嗚咽交じりになり

 

「比呂さん…『コレ』は劉協じゃありません」

 

それでも

ずっと大事に抱えていた『ソレ』には汚れ一つ無く

 

「…会いたいです」

 

彼女の声にただただ頷く比呂

 

もう一人で物に掴って立てるようになっただろうか

もう言葉を発するようになっただろうか

 

比呂が「人形」に見続けた姿を

毎晩思い描いていた

 

毎晩思い描いては

現実に枕を濡らしていた

 

此処にいては会えない

 

「行きましょう…会いに」

 

比呂の声に今度は月が頷く

 

お互いを支えるように立ち上がり

歩き出す

 

…のはいいが

 

「此処…どこなんでしょう?」

 

見覚えのあるような…ないような

 

狼に追われながら我武者羅に走り

行き着いた此処は果たして森のどこなんだろうと

 

二人は辺りをキョロキョロと見渡す

 

 

そして

 

 

なんとなしに

 

 

『それ』が視界に入る

 

 

 

うっさいわねえ、狼に出くわしてあんた達が私を置いて逃げちゃった時の保険よ

 

 

思わず込み上げる笑み

 

「比呂さん?」

 

不思議そうに見上げてくる月を

 

「へう!?」

 

その背におぶさり

 

「ひ、比呂さん!?大丈夫です!ちゃんと歩けますから!」

 

傷の深さでいえば遥かにボロボロなのは比呂の方だというのに

 

「いいんです…これで」

 

そういってずんずんと歩き出す

 

もはや迷いも曇りもない

 

この重みが

 

この重みこそが

 

俺の力の元なのだから

 

 

 

湯を被せ

 

泥を拭い

 

彼女の体についた傷の上から

 

丹念に

 

丹念に

 

舌を這わす

 

足に

 

腰に

 

背中に

 

肩に

 

上気した彼女の頬に

 

自分の事を思い

 

自分の為につけてしまった

 

その傷の上から

 

自分の思いを

 

丹念に上塗りしていく

 

ああ

 

なんと愛おしいのだろう

 

ああ

 

なんと綺麗なのだろう

 

桜色に染まっていく彼女の身体

 

自分が染め上げていく彼女の身体

 

「月…殿」

 

「殿は…余計です」

 

背中に回される彼女の腕の

 

背中に突き立てられる爪の痛みすら心地良い

 

「だって…昨日まで…そう呼んでくれていたじゃないですか」

 

互いの額をすり合わせ目を閉じてゆく

 

「比呂さん…貴方が…貴方の事が好きです」

 

まずいな

 

今更ながらに恥ずかしくて彼女の顔も見れん

 

 

 

此処までお読み頂きありがとう御座います

 

ねこじゃらしです

 

…イチャコラしてないでさっさと悠助けに行けよ

 

それでは次の講釈で

 

 


 
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