No.154965

真・恋姫†無双~神の意志を継ぐ者~ 第三幕

ユウイさん

今回から本格的に物語は動いていきます。今回は公孫賛と出会うまでのお話です。

2010-07-03 13:18:17 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2781   閲覧ユーザー数:2302

 ※この物語は『北郷 一刀』に対し、オリジナルの設定を含んでいます。

 

 

 

 

 

 

 

 基本的に蜀ルートです。

 

 

 

 

 

 

 

 それでも大丈夫という方のみ、どうぞ。

 

 

 公孫賛の治める街にやって来た一刀達。

 

 一通りの情報収集を終え、彼等は通りを歩きながらどうやって公孫賛に会うのか話し合っていた。

 

「え? 普通に会いに行っちゃ駄目なの?」

 

「桃香様・・・」

 

 桃香の天然な台詞に、愛紗は肩を落とす。

 

 いくら同門で昔の知り合いとはいえ、そう易々と会いに行ける相手ではない。

 

 公孫賛はこの幽州を治める太守。

 

 一方のこちらは何の地位も名声もない武芸者のみ。

 

 とても簡単に会いに行ける相手ではない。

 

 名乗った所で精々、門前払いされるのがオチだろう。

 

「えぇ? だ、駄目なの・・・」

 

「会う前に追い返されるな・・・」

 

「そうなんだ・・・」

 

「じゃあ、どうするのだ?」

 

 鈴々に聞かれて一刀は少し考える。

 

「さっき街の人に聞いたが、この辺に巣食う盗賊の規模は、ざっと五千人ぐらいらしいな。それに対して公孫賛の兵は三千人。相手が盗賊とはいえ、数の差は、やっぱり大きいだろ」

 

「はい。公孫賛殿の兵といっても、大半は農民の次男や三男などですからね。兵の質としても五分五分」

 

 故に兵の数、そして兵を率いる者の資質が重要になってくると一刀は言う。

 

「つまり公孫賛は兵力が欲しい・・・」

 

「じゃあ鈴々達が兵隊を連れて行けば会えるのだ!」

 

「正解。義勇兵を集めて城に行けば会わせてくれるだろ」

 

「それは解りますが・・・・ですが、どうやって?」

 

「方法は主に三通り」

 

 一刀は指を三本立てて、それぞれ説明する。

 

「街で大々的に仲間をなってくれる奴を募集する。金で雇う。腕相撲とかで相手を負かして手下にする・・・だな」

 

「腕相撲なら負けないのだ!」

 

「だろうな。でも、この三つともやる気ないんだよな」

 

 一刀がポンと鈴々の頭を撫でて言った言葉に、三人は目を丸くする。

 

 折角、兵を集められる事を一刀自身が「やる気ない」と言われれば当然だった。

 

「どうしてなのだ?」

 

「まず募集は公孫賛もやってるだろうから、腕自慢は皆、全部そっちに行ってるだろうな。それに無償で一緒に戦ってくれっていう奴が、この街に何人いると思う?」

 

「う・・・」

 

 つまり三つのどの案も絶対的に無理だという事だった。

 

「けどまぁ正直、兵を集める資金ぐらいは簡単に得られると思う」

 

 一刀はポケットに手を入れて、たまたま持っていたボールペンを見る。

 

 何の変哲もないボールペンだが、この時代は主に墨を磨って字を書く。

 

 そんな必要の無いボールペンなら割と高く売れて、兵隊ぐらい雇えるだろう。

 

「何故ですか?」

 

「ん~・・・どうせなら有利な立場に立っておいた方が良いだろ」

 

 たとえ兵隊を連れて行き、単純に戦力の一端に組み込まれるよりも、これから名を挙げる桃香達にとって出来る限り公孫賛に近い立場でいる方が今後、楽になる。

 

「ではどうすれば・・・」

 

「愛紗達、もう何度か盗賊退治とかしてるんだろ?」

 

「え? あ、はい・・・それはまぁ・・・」

 

「五千人の盗賊といっても、常に五千人全員が固まってる訳じゃない。十人程度なら倒せるだろ?」

 

「あ! なるほど!」

 

 愛紗は理解した様子で笑顔になる。

 

 一方の桃香と鈴々は今も良く解っていない様子で眉を寄せている。

 

「つまりだ・・・俺達だけで点在してる盗賊の拠点の一箇所を潰して、そいつ等を生け捕りにする。そして、そいつ等を公孫賛に引き渡せば、公孫賛に会える。ついでに実力を買われて一兵から客将扱いにされるかもしれない。それに他の盗賊の情報を得られるかもしれない。一石三鳥だ」

 

「「おぉ~!」」

 

 桃香と鈴々は揃って納得の声を上げる。

 

「確かに・・・それなら我等の名声も上がりますね」

 

「でも、どうやって盗賊の拠点を探すのだ?」

 

 相手は隠れ住んでいるので闇雲に探していても見つからない。

 

 鈴々の指摘に一刀は、「そうだな・・・」と呟いて後ろ頭を掻きながら辺りを見る。

 

 そこで彼は、ある店の奥に置かれているボロボロの大きな葛篭を見つけ、その店に近付いた。

 

「な、おじさん」

 

「? 何でい?」

 

「その葛篭、ちょっとだけ貸してくれないかな?」

 

 そう言って一刀が葛篭を指差すと、店主は渋面を浮かべた。

 

「あんなもん、どうすんだ? もう藁が擦り切れまくって、余りモノも入らないもんだぞ」

 

 近い内に処分するつもりだったと言う店主に、一刀は「構わない」と頷いて、その葛篭を借りた。

 

 

「ふむ・・・中々に面白い御仁だな」

 

 そんな一刀達の様子を街の陰から、こっそりと窺う人物がいた。

 

 

 一刀は大きな葛篭を背負い、街外れ森の中を歩く。

 

 無論、葛篭の中には何もない。

 

 その途中、桃香が尋ねて来た。

 

「ねぇご主人様。そんな葛篭借りてどうするの?」

 

「盗賊に出て来てもらう」

 

「ふぇ!?」

 

「なるほど。傍目には何か大量の物品を持っているように見えますね」

 

 愛紗の言葉に一刀は頷く。

 

 葛篭はボロでも、大きさが大きさだ。

 

 となれば、遠目から見た盗賊達には、金目のものが大量に入っていると思うだろう。

 

「でも、そんなに上手く引っ掛かるのか~?」

 

「割と高い可能性でかかると思うぞ」

 

 この近辺で盗賊が荒らしている事は住民の殆どが知っている。

 

 と、なると当然ながら住民側も警戒し、外を出歩かなくなる。

 

 行商人も余りこの近辺を通らない。

 

 そうなれば、今の一刀達は盗賊達にとっては格好の的だった。

 

 五千人規模の集団となれば、あちこちに散策を放っているだろう。

 

「拠点を見つけられないなら、向こうから出て来て貰うだけだ」

 

 これなら相手は確実に少数でより生け捕りにし易い。

 

 それが一刀の狙いだった。

 

「いやはや、ご主人様の知謀には畏れ入ります」

 

「本当だよね~。私達じゃ、絶対に思い付かなかったよ」

 

「そうか?」

 

 こんなの誰でも思いつくと考えている一刀は眉を寄せる。

 

「はい。流石は天の・・・」

 

 と、そこで愛紗は言葉を止め、眼光を鋭くさせて背後を振り返る。

 

「どうしたの、愛紗ちゃん?」

 

「鈴々、気付いたか?」

 

「とーぜんなのだ♪」

 

 愛紗、鈴々がそれぞれ青龍偃月刀と蛇矛を構える。

 

「そこの者! こそこそ隠れてないで出て来い!」

 

 愛紗がそう言って背後の木に向かって叫ぶ。

 

 一刀と桃香も盗賊かと思って身構える。

 

 すると木の陰から女性が一人、スッと姿を現す。

 

 白い服に身を包み、青緑がかった髪に赤い切れ長の瞳をした若い女性で、二又の赤い槍を携えている。

 

「貴様・・・賊か?」

 

 愛紗が得物の切っ先を突きつけて問うと、女性はフッと笑う。

 

「いやいや、誤解めされるな。我が名は常山の趙子龍と申す者だ」

 

(ん?)

 

 女性の名前を聞いて、一刀は目を細める。

 

「街でお主達の話を聞いていてな・・・私も盗賊退治をしようと思っていたので、こっそり後を尾けて来たのだ」

 

「本当か?」

 

「嘘を言ってどうする? それに、こんな見目麗しい盗賊が世にいると思うか?」

 

 自分で言う趙子龍と名乗った女性に、愛紗は怪訝な表情になる。

 

 が、彼女の袖を鈴々がクイクイッと引っ張った。

 

「愛紗。このお姉ちゃん、嘘は言って無いと思うのだ」

 

「うんうん、愛紗ちゃん。この人も盗賊をやっつけるって言ってるんだし、きっと良い人だよ」

 

「鈴々・・・桃香様・・・」

 

「俺もそう思うぞ。良い人かどうかはともかくな」

 

「ご主人様・・・」

 

「ほう?」

 

 愛紗が一刀を「ご主人様」と呼ぶと、趙子龍は興味深そうに彼の方を見る。

 

「貴殿が、この者達の主・・・と?」

 

「ま、一応は」

 

「そうだよ! ご主人様は、この乱世を終わらせる為にやって来た天の御遣い様なんだよ!」

 

「ほうほう。天の御遣い・・・」

 

 ジ~ッと一刀を頭の天辺から爪先まで見る。

 

「なるほど。そう言われてみれば、そこはかとなく後光のようなものが・・・」

 

「嘘だろ?」

 

「はい、嘘です」

 

 ニコッと笑って肯定する趙子龍に一刀は溜息を吐き、踵を返す。

 

「ま、目的は同じみたいだしこれからよろしくな、趙雲さん」

 

「っ!」

 

 そう言って歩き出す一刀を“趙雲”は驚く顔で見る。

 

 名まで名乗っていなかった自分の名を知っている一刀に驚いているのだ。

 

 趙雲は笑みを浮かべる。

 

(天の御遣い・・・か)

 

 

「時に子龍」

 

「趙雲で構わぬよ、関羽殿」

 

 森の中を進む五人。

 

 その途中で、愛紗が趙雲に話しかけた。

 

「では、趙雲。お主、一人で盗賊退治をするつもりだったそうだが、腕は立つのか?」

 

「ふ・・・一流の武人は一流の武人を見抜くと言うが、違うか? 関羽殿?」

 

「・・・・・・確かにな」

 

 そう言われて愛紗は納得する。

 

 この趙雲という女性、自分や鈴々に匹敵する武を誇るであろう事は直感していた。

 

 と、その時、周囲の茂みがガサガサッと動き、愛紗、鈴々、趙雲は足を止めた。

 

 そして愛紗は前を歩く一刀と桃香に言う。

 

「ご主人様、桃香様。お止まりください」

 

「? どうしたの、愛紗ちゃん?」

 

「・・・・・・来たか?」

 

 一刀の問いに答えるように愛紗が青龍偃月刀を構える。

 

 直後、茂みから複数の男達が姿を現した。

 

 汚れた服に悪い人相。

 

 手には、それぞれ剣や槍を持っている。

 

 どう見ても盗賊だった。

 

「へへへ。おい、兄ちゃん。その荷物、こっちに寄越しな」

 

 リーダー格と思われる中年のヒゲの男が一刀に向かって言う。

 

 だが、一刀と桃香を守るように愛紗、鈴々、趙雲が立つ。

 

「へっ・・・やっちまえ!」

 

 ヒゲの男の合図で、他の盗賊達が一斉に飛びかかる。

 

「行くぞ!!」

 

 愛紗の掛け声で鈴々と趙雲が迎撃に入る。

 

 最初にかかってきた盗賊を愛紗は偃月刀を回し、刃ではなく柄尻で鳩尾を突いて気絶させる。

 

 更に回転させ、他の盗賊の脳天を偃月刀の腹で叩き伏せる。

 

 続いて鈴々は、身の丈を遥かに上回る長さの蛇矛を激しく頭上で回転させ盗賊達を怯ませると、その隙を突いて殺さないように敵を叩き潰す。

 

 そして趙雲は向かって来た盗賊をヒョイッとかわし、背後から一撃入れて気絶させる。

 

「な・・・」

 

 ヒゲの男は、仲間達が女三人にあっという間にやられた事に動揺する。

 

 残ったのはチビとデク、そしてヒゲの三人だった。

 

「く・・・こうなったら、あの弱そうな奴を・・・チビ!」

 

「へい!」

 

 チビが、その体格とすばしっこさを活かし、一刀と桃香の許へ走る。

 

「しまった! ご主人様! 桃香様!」

 

「にゃ!?」

 

「ちっ」

 

 二人から離れていた愛紗、鈴々、趙雲は急いで助けに向かおうとするが、その前にデクが立ちはだかった。

 

「くっ! どけぇ!!」

 

 愛紗は吼えて偃月刀を振るった。

 

 一方、桃香は迫るチビに怯えながら剣を抜こうとする。

 

 しかし、彼女の前に一刀が立ち、チビを迎え撃とうとする。

 

「ご主人様、どいて!」

 

「大丈夫だ」

 

 一言だけ言って、一刀は短刀を突き出して来たチビの手を下から掴み、更に上から手を押し当てそのまま両手を交差させるように回転させる。

 

「へ?」

 

 チビはいつの間にか自分が宙を舞っている事に気付き、そのまま頭から地面に落下して気絶した。

 

 ヒゲは一刀にまでやられた事が信じられず、後ずさる。

 

「ば、馬鹿な・・・はっ!?」

 

 しかし、背後から恐ろしい気配がするので振り返ると、そこには三人の悪魔がいた。

 

「ひえええええええ!!!!!!」

 

「ご主人様、大丈夫!? 怪我とかしてない!?」

 

「別にしてねーよ」

 

 盗賊の一人をやっつけた後、桃香があちこち自分の体を触って来るので一刀は肩を竦めて答える。

 

 そこへ倒した盗賊達を縄で縛り付けた後、愛紗がやって来て言った。

 

「しかし今の動きはお見事でした。ご主人様は武術の経験もおありだったのですね」

 

「あ~・・・経験というか、単に身に付いてしまったというか・・・」

 

「?」

 

 不思議そうに首を傾げる愛紗に対し、一刀は顔を青褪めさせて頭を掻く。

 

 アレは剣道をやめた後、義姉が運動不足を嘆き、無理やり稽古に付き合わされた時だった。

 

 義姉の強さはハッキリ言って化け物染みていた。

 

 今、目の前に関羽、張飛、趙雲という三国志を代表する武人がいるが、義姉の強さは恐らくこの三人を合わせて二乗しても敵わないと思うぐらい理不尽に強かった。

 

 そんなのとやりあってる内に、自然とああいう強さは身に付いてしまったのだ。

 

「さて、お主達」

 

 ふと趙雲が話し掛けて来て四人は彼女の方を見る。

 

「こやつ等を公孫賛殿に引き渡すのだろう? 私が話を通して最優先で会わせよう」

 

 彼女のその言葉に、桃香、愛紗、鈴々の三人はキョトンとなり、一刀は肩を竦めた。

 

「ちょ、ちょっと待て趙雲! 何でお前が公孫賛殿に・・・」

 

「ん? そりゃ私は公孫賛殿の客将だからな。それぐらい出来る」

 

「な、何ーーーー!?」

 

「聞いてないのだ!」

 

「言ってないからな」

 

「お、お前も盗賊退治をしようとしていたのではないのか!?」

 

「公孫賛殿の当面の仕事はソレだからな。当然、私の仕事も盗賊退治だ」

 

「貴様ーーー!!」

 

「そう目くじらを立てるな」

 

 今にも斬りかかってきそうな愛紗を趙雲が宥める。

 

 そして彼女は、意味ありげな笑みを浮かべて一刀の方を見る。

 

「それに北郷殿は、とっくに気付いておられたのだろう?」

 

「「え?」」

 

 そう言われて桃香と愛紗は驚いた顔を一刀に向ける。

 

「これからよろしく・・・というのはそういう意味なのだろう?」

 

「まぁな」

 

 三国志で趙雲が公孫賛に仕えていた事を知っていた一刀は、彼女が名乗った時点でその事に気付いていた。

 

「で? 愛紗や鈴々の実力は解っただろ?」

 

「ええ、勿論。公孫賛殿にはしっかりと伝えておきましょう。『我が武に匹敵する勇将二名と、その主、そして天の御遣いが参られた』、と」

 

 そう言って趙雲は踵を返し一足先に街へ戻って行った。

 

 すると鈴々が両手を頭の後ろで組んで感心した風に言った。

 

「にゃ~・・・お兄ちゃん、全部知ってたのか~」

 

「まぁな」

 

「ならそう言ってくだされば良いのに・・・」

 

「ホントだよ~」

 

「どうせ公孫賛の客将になるっていうなら実力を示す必要があったんだ。趙雲がいてもいなくてもやる事は変わらないさ」

 

「でもでも~」

 

「ほら、さっさとこいつ等連れて街に戻るぞ・・・鈴々にも極上メンマ丼作ってやる約束だしな」

 

「にゃ!? そうなのだ! 早く戻るのだ!」

 

 グイグイと一刀の手を引いて急かす鈴々。

 

 その後を桃香と愛紗は苦笑しながらも付いて行った。


 
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