SIDE 白装束の二人組
広がるのは見渡す限りの荒野、はるか地平線には山々が見える。
そこには二人の青年がいた。
??「干吉…、俺たちは、なぜここにいる」
??「……何故って、師匠の命令でしょう?
天の御使いが降ってくるらしいですよ」
髪の短い青年『左慈』は傍らにいるメガネをかけた青年『干吉』に問いかける。
左慈が問いたかったのは『ここにいる理由』ではなく、『到着して三日が経っている理由』である。
左慈たちがいるのは人里から離れた荒野のど真ん中。久方ぶりの下山、偶には普通の食事がしたい。詰る所、左慈は仙薬だけの食事に飽きたのだ。
そんな左慈に干吉はやれやれと言わんばかりに両手を上げる。
干吉を睨んでいると空に二筋の線が入った。
干吉「ふむ、二筋……ですか」
左慈「丁度いい
干吉、二手に分かれるぞ」
左慈は干吉の返事を聞かず足早にその場を跡にする。
離れていくの背を眺めながら干吉はつぶやく…
干吉「天の御使いですか……、果たしてどのような人物なのやら……興味が絶えませんね」
干吉は考えていた。
この時世、食うに困って子を捨てる親も少なくない。
左慈も干吉も親に捨てられた子の一人だ。
捨てられた子供は徒党を組み、生きてきた。
しかし、所詮は子供。働くこともできず、働けたとしても碌に賃金がもらえない。
出た結論は単純なものだった。
ないなら盗めばいい。
だが運がいいのか悪いのか、罪を犯す前に師匠に(肉体言語で)説得された。
今では師匠の下で仙道として修行をしている。
だがそれも運がよかっただけ。
世界は今も最悪なまま…
果たして天の御使いはこの世界を救えるのだろうか…
そんなことを考えながら干吉は二手に分かれず左慈の後を着けていった。
SIDE OUT
SIDE ビキニパンツの漢女
時を同じくして、はるか上空で飛来しようとしている片割れ。
??「まぁっててぇぇぇ!!ご主人さま!!」
獣の咆哮を思わせる野太い声、全身を覆う筋肉の鎧。
彼女(?)の名は『貂蝉』。異なる『外史』から『天の御使い』の手助けをするために追いかけてきたのだ。
貂蝉「ぶぅるあぁぁぁぁ!!!!熱うぅいぃいぃ!!」
鋼の肉体をもつ彼女(?)であっても生身での大気圏突入は熱かったらしい。
SIDE OUT
SIDE 白い褌の漢女
??「大陸か……懐かしい……果たしていつ以来となるか……」
時間をさかのぼること数日前、海を渡り一人の『漢女(おとめ)』が上陸していた。
白く輝く褌と胸当て、そして髭。
名を『卑弥呼』といい、『漢女道』亜細亜方面『前』継承者である。
彼女(?)がこの地を訪れたのも『現』継承者に合うためである。
現継承者は彼女(?)の弟子であり、久方ぶりに語らおうと思って遥々海を泳いできたのである。
卑弥呼「……ぬうぅぅぅぅ!!」
彼女は周囲を見回し、何もないのを確認すると気合を溜める。
勢い良くしゃがむとその反動で大地にひびが入る。
そして……
卑弥呼「ふんっ!!」
勢いよく叫び、『漢女』は『飛んだ』。
SIDE OUT
SIDE 赤毛の青年
??「さ、これで大丈夫だぞ
まだ痛いか?」
赤い癖のある髪をした青年は少女に問いかける。
青年の名は華佗、流れの医者で、五斗米道(ゴットヴェイドォー)の継承者である。
璃々「だいじょうぶ!璃々、全然痛くないよ!」
少年「ありがとう!『おじちゃん』!」
子どもたちの元気な返事に華佗は苦笑いを浮かべる。
華佗「おじ……っ!はっ、はは…まぁ、お前たちからすると俺もおじちゃんだよなぁ
……まだ若いんだけど」
最後に小さく言ったため子供たちには聞こえなかったようだが、やはり年寄り扱いされたのは堪えた様だ。
璃々「ありがとう!『おにいちゃん』!」
けがをした女の子が改めてお礼を言ってくる。
華佗の内心が伝わったのか『おにいちゃん』の部分が若干強調されているようだった。
華佗「ははは、君はいい子だな」
璃々「あのね、お礼にこれ……あげる!」
少女の言葉に素直に喜ぶが、少女がやや残念そうに手に持った木の実を華佗の前に出す。
華佗「木の実……?けどお前たち、これを探しにこんな森の奥まで来たんじゃないのか?」
子どもたちにけがをした理由を聞いた時、少女は木の実を探しに森に来て転んだのだと、説明していた。
つまり彼女の手にあるものが探していた木の実であるはずである。
璃々「そうだけど……でも、助けてもらったら、ちゃんとお礼をしろってお母さんが言ってたから……」
少女の健気さとその母親のしっかりした教育に華佗は内心感動していた。
華佗「……そっか、いいお母さんだな」
璃々「うん!すごくいいお母さんだよ!」
華佗の言葉に即座に反応を返す少女。その言葉がすぐに帰ってくることから親子の絆の深さを感じる。
華佗「なら、俺へのお礼はその言葉だけで十分だよ
そろそろ日も沈むし、早く家に帰ってお母さんたち安心させてあげな」
華佗の言葉にきょとんとした顔になる少女。
璃々「いいの?」
華佗「もちろんさ!」
華佗の返事に少女の顔は笑顔になる。
璃々「ありがと……ホントはね、この木の実、お母さんの大好物だったの……」
華佗「そっか、なら、なおのこと持って帰ってあげるといい
お母さんも喜ぶよ」
璃々「うん
そうするよ!本当にありがとう!『おにいちゃん』!」
そう言って子供たちは走っていこうとする。
華佗「おーう!今度は転んで怪我なんかするんじゃないぞー!」
璃々「うん!気をつけるよー!」
少年「ばいばーい!ほんとうにありがとー!『おじちゃーん』!」
華佗「ぐっ!」
弱く、しかし確実に華佗の心を突き刺す言葉の暴力。
璃々「こらっ!あのくらいの男の人は『びみょうなおとしごろ』なんだから、『気を使って』『おにいちゃん』って言ってあげないとだめなの!」
少女の気遣う言葉が余計に胸を刺す。
彼が『微妙なお年頃』なため、『気を使って』『おにいちゃん』と呼んだのだと……
つまり、『おにいちゃん』は不適当だと言っているようなものである。
少年「そうなんだー
なら、ありがとー!『おにいちゃん』な『おじちゃーん』!」
華佗「あ、ああ
……気をつけて…帰るんだぞ………」
子供たちを見送る華佗の目じりにはうっすら涙が浮かんでいた。
華佗「まだ、若いよな、俺……
まだ若いよな……そうさ、若いさ……」
誰かにではなく自分自身に言い聞かせる。
虚しさが胸を満たし、広大な空は自分の小ささを嘲笑っているようだった。
が…
華佗「…………ん?なんだ…?」
華佗は視界の隅に何か見えた気がした。改めてその方角を見てみると…
華佗「…白く輝く……」
その姿は天より舞い降りる
華佗「…流星………?」
『二つ』の光の柱だった。
華佗「近くに落ちたな……
もし誰かが巻き込まれてたたりしたら、あの子たち程度の怪我じゃ済まないぞ
……一応、見に行ってみるか」
華佗は近くに落ちた流星のほうに走っていく。
この後の出会いが華佗にとってどういった未来へ導くのか、まだ誰にもわからなかった。
SIDE OUT
あとがき
皆様、はじめまして。
大鷲と申します。
プロローグと言うことで主な登場人物の紹介的なものでしたが、どうでしたでしょうか?
読みは『しん・おとこルート』なので名の通り登場人物は男ばっかりです。
ですが、恋姫無双ですから当然女の子たちも出てきますのでご安心ください。
ヒロインだってちゃんといます。
ネタ的なBL発言等はありますが、男同士でくっつくなんて不毛なことはありません。
未登場ですが、主人公は当然北郷君です……が、「なんだかキャラが違う」「○○はこんなじゃないだろ!」等は私の未熟ゆえ、そういうモノだと割り切っていただけると幸いです。
何かしら思う所がありましたらコメントをいただけるとうれしいです。
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読む専門でしたが、皆さんの作品を見るうちに書きたくなって書いちゃいました。
せめて完結まで書いていきたいと思うので、誤字脱字、このようにしたら良いのでは?と言うときは是非コメントにお願いします。