No.154142

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 第十三・五話 

狭乃 狼さん

刀香譚の拠点をお送りします。

白蓮と鈴々による孤児院騒動。

オリキャラも一人登場です。

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2010-06-29 14:35:27 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:24001   閲覧ユーザー数:20619

 「ここか、もと孤児院だった建物は」

 

 「何か出そうなのだ」

 

 白蓮と鈴々は、洛陽にある一軒の建物の前に来ていた。

 

 先日の茶会の席で、孤児院を作ると宣言した白蓮は、たまたまその場に訪れた劉弁から、直接許可をもらい、幽州へ戻る前に、下見のために以前あった孤児院の跡地を訪れた。

 

 「ずいぶん寂れているな。・・・ふむ。前の持ち主が亡くなった後、誰も管理を引き継ぐものもおらず、そのまま放置された、か」

 

 「とりあえずなかも見てみるのだ」

 

 「そうだな」

 

 鈴々に促がされ、敷地内へと足を踏み入れる二人。

 

 その時だった。

 

 「まて!貴様ら!!誰の許しを得てここに立ち入ろうとする!!」

 

 突如、女の声が辺りに響く。

 

 「だ、だれだ!?」

 

 「ゆ、ゆーれいさんなのか!?」

 

 周囲を見渡す二人。

 

 「この屋敷は誰にも渡さん!!おとなしく帰れ!!」

 

 「私たちはここに、もう一度孤児院を再建したくて来たのだ。誰かは知らんが、邪魔をしようというなら、この公孫伯珪が相手をしくれる!!」

 

 「そーだ!!鈴々の邪魔をしないでほしいのだ!!」

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・本当か?」

 

 突然、声が二人の後ろからする。

 

 あわてて二人が振り向くと、そこに一人の女性が立っていた。

 

 「そなたは?」

 

 「あたしの名は孟達、字は子慶。ここの持ち主だ」

 

 そう答える女性。

 

 「ちょっと待て!!ここの前の持ち主は確かに、孟子慶となっている。だが、すでに五年も前に死んだとも書いてあるのだぞ!!」

 

 「ほ、ほんとーにゆーれいさんなのか?!」

 

 震える二人。が、

 

 「ああ、それ。死んだのはあたしの姉貴だ。けどおかしいな、ちゃんと引継ぎの申請はしといたはずなんだが」

 

 「・・・じゃ、なんでこんなに屋敷が荒れてるんだ。引き継いだんならきちんと手入れぐらい、していて当然だろうが」

 

 白蓮が孟達に問う。

 

 

 

 「姉貴が死んだあと、あたしは暫くこの地を離れざるを得なくなったんだ。だから申請の書類だけ提出しておいて、益州に向かった。久しぶりに暇がもらえたんで、掃除のためにここに帰ってきたんだが、ここまで荒れてるとは思わなかった」

 

 建物を見ながら孟達が寂しそうにいう。

 

 「・・・前の持ち主・・・あんたの姉さんか?その人が亡くなった後、ここにいた孤児たちは別の場所に引き取られていったそうだ。それ以来、ここは閉鎖されて久しいそうだ」

 

 白蓮が孟達にそう説明する。

 

 「それで、あんたたちがここを再建することになったってことか。そうとは知らず、驚かせてすまなかった。このとおりだ」

 

 二人に頭を下げる孟達。

 

 「そういうことなら仕方ないさ。となると困ったな。ちゃんとした持ち主がいるんなら、ここは諦めるしかないな。いこうか、鈴々」

 

 そう、鈴々を促がし、立ち去ろうとする白蓮。

 

 「待ってくれ。もしあんたたちがここを再建してくれるというなら、あたしはここをあんたたちに譲ってもいい」

 

 「本当か?」

 

 「ああ。見たところ、あんたたち、結構な身分の人のようだが、差し支えなければ教えてもらえないだろうか」

 

 「ああ、これはすまない。私は幽州にて牧を務めさせてもらってる、公孫賛、字は伯珪だ。こっちが」

 

 「鈴々は張飛、字は翼徳なのだ!」

 

 「ほう、幽州の・・・。それで、どのくらいでここを再建できそうなのだ?」

 

 「そうだな。庭も荒れ放題だし、建物もかなり傷んでそうだしな。私も後五日もしたらここを離れねばならんし、職人を雇って、建物の補修の手はずを済ませて、子供たちを世話するものを雇って、と。・・・実際に孤児たちを受け入れられるのは、半年後くらいといったところか」

 

 「そうか。・・・なら、わたしもそのころにもう一度くるとしよう。公孫賛どの、権利譲渡の手続きはそちらで行って頂けるだろうか。もう今日の昼には、ここを立たねばいけないのでな」

 

 白蓮の説明を聞いた孟達が、懐から印を取り出して白蓮に渡す。

 

 「わかった。・・・道中気をつけてな」

 

 「ああ。では、また半年後に」

 

 「おねーちゃん、元気で、なのだ!」

 

 二人に見送られ、その場を去る孟達。

 

 それから白蓮は役所へ顔を出して、所有権の移譲の手続きを行い、屋敷の手入れと補修を行う職人たちを募集する手配を済ませた。

 

 孤児院で働くものたちの手配も済ませたところで、白蓮は幽州へ帰還の途についた。

 

 

 それから半年後、白蓮は孤児院の準備が整った知らせを受け、洛陽へと足を運んだ。

 

 そこには鈴々も来ていた。

 

 そして、孟達の姿も。

 

 「子慶殿、お久しぶりだ。元気そうで何より」

 

 「おねーちゃん、久しぶりなのだ!!」

 

 孟達に挨拶をする二人。が、

 

 「・・・どちらさまで?」

 

 「「・・・は?」」

 

 「当孤児院に何か御用でしょうか?」

 

 「いや、その、孟子慶どの・・・ですよね?」

 

 「はい。確かに私は孟達子慶にございますが。・・・あ、もしや、あなた方が公孫伯珪殿と、張翼徳殿で?」

 

 会話がかみ合わない。

 

 確かに二人の前に立つのは、あの日に出会った孟達本人だ。

 

 だが、なぜか彼女はこちらと初対面のような風である。

 

 「・・・このたびは姉が運営していた孤児院を再建していただき、ありがとうございます。亡き姉が夢で言っていたのは本当だったようですね」

 

 「亡き姉が・・・夢で?」

 

 冷や汗が二人の背中を伝う。

 

 「えっと。おねーちゃんは、洛陽に来た事あるの・・・だ?」

 

 「いえ?私は姉と幼いころに別れてから、益州を一度も出たことはありませんが?」

 

 「・・・・・・・・・そ、それじゃ、あの日ここで会ったのは・・・・」

 

 懐から印を取り出し、顔を真っ青にする、白蓮。

 

 「あら?それは姉の印では?なぜあなたがそれを・・・」

 

 「「・・・・・・・・・・・・・」」

 

 その場にぺたりと座り込む。そして、屋根の上に、二人はそれを見た。・・・見てしまった。

 

 屋根の上に座る、あの日、孟達と名乗った、女性の姿を。

 

 (ふたりとも、ありがとな。あたしもこれで、気兼ねなく逝けるよ。こっちにきたら酒でも飲もうな)

 

 にこりと微笑み、そして、すう、と。消え去る女性の姿。

 

 ぱた。

 

 と、白目をむいて倒れる白蓮。

 

 「・・・ゆーれいさんて、ほんとにいるのだな・・・」

 

 


 
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