第十五章「前日」
「曹操様、袁紹様がお呼びです。至急天幕にお越しください」
「ようやくね、わかったわ。一刀と桂花は私と一緒に来なさい。春蘭達は兵をお願い」
「「「御意」」」
華琳は一刀と桂花を連れて天幕を後にした。
「お~っほっほっほ。お久しぶりですわね、華琳さん」
「相変わらずね、麗羽。さっさと軍議を始めましょう」
「それも、そうですわね。皆さん今回はこの私袁紹の集いに参加して頂いて感謝しますわ。皆さんの手でにっくき董卓さんをやっつけてしまいましょう」
「「「はぁ~~」」」
「七乃。わらわは帰ってもええか」
「もう、美羽様たら~。後で蜂蜜水あげますから待っていてください」
「う~~」
「それでは、まずは自己紹介から行きましょう」
「わらわは、名家の一人袁術じゃ。こっちが軍師の張勲じゃ」
「孫策伯符よ。今は袁術の客将をしているわ。それでこっちが軍師の」
「周瑜だ」
「啄県から来ました、劉備玄徳です。この子は軍師の」
「諸葛孔明です」
「陳宮の曹孟徳よ。こっちが軍師の苟彧と将の北郷一刀よ」
一刀の名前が出てきたとたんに周りがざわめいた。
「へ~~。あれが天の御遣いと言われる子ね。なかなか良い顔しているじゃない」
「北郷さんって間近で見るとかっこいいね。朱里ちゃん」
「はわわ。どうして私に振るのですか桃香様」
「だって本当にかっこいいもの」
「あなたが天の御遣い~なんて呼ばれている北郷さんですの」
「まぁ、そうですけど」
「否定はしないのですのですね」
「否定したて仕方がないでしょう」
「きぃぃぃ、華琳さん。あなたに汜水関の先鋒を差し上げますわ」
「総大将は貴女じゃないでしょう、麗羽」
「この中で名門は私と美羽さんだけでしょう。そうなると自然的に総大将と副将は決まるものですわよ。ご不満でもありまして」
「・・・」
「ないでしょう。なら総大将が命じます、華琳さん貴女は即刻、汜水関に向かいなさい」
「はぁ~。はいはい」
「それと戦い方は雄々しく可憐に前進し、
美しく敵を粉砕ですわ」
「「「・・・」」」
軍議は袁紹の暴走で幕を閉じた。
「まったく、あなたって人は」
「別に俺は悪くないだろう」
「しかし、袁紹の馬鹿振りには呆れます」
「桂花。あなたも言うわね。・・一刀、あなたにお客みたいよ」
「みたいだな」
華琳達の目の前に孫策と周瑜が現れた。
「何か用かな、孫策さん」
「あなたに話があってきたの」
「話?」
「そう。だから曹操には悪いだけど外してくれる」
「あなた。華琳様に向かってなんて事を」
「桂花、行くわよ」
「しかし、華琳様」
「一刀、先に陣に帰っているわよ」
「わかった」
華琳は叫ぶ桂花を連れて陣に帰った。
「それでお話とは」
「単刀直入に言うと、あなた呉に亡命しない」
「・・・」
「もちろん。今まで以上の褒章と地位は差し上げる事を約束しよう。どうだ、悪くない話だと思うが」
「お断りします」
「即答ね。どうして?」
「俺は華琳を天下人にすると決めました。それを破ることは出来ません」
「そう、なら」
「俺を殺しますか」
一刀は全身から殺気を出した。
・・・すごいわね。私が脅えるなんてお母様以来かしら
「どうします、孫策さん。まだやりますか?」
「・・そうね。今回はやめとくは、でもね、私達は何時でもあなたを殺せるってことは覚えといてね」
孫策が片目を閉じた。
「それは、この子がいるからですか」
「「!?」」
「椿!」
ドサッ
「キャッ!」
一刀の呼びかけに椿は女の子を一人放り出した。
「言われた通り捕まえておきましたぞ、主」
「ありがとう、椿。この子は最近俺の事を嗅ぎ回っていたので、軍議が始まる前に部下に頼んで捕まえて起きました。この子があなた達の仲間では」
一刀はその子を孫策と周瑜の前に出して質問した。
「「・・・」」
「違うのでしたら。この子は後で拷問して雇い主を聞き出すまでです」
椿はその子を抱き上げてその場を去ろうとする。
「ま・まて」
「ちょっと、冥林」
「すまない、雪蓮。しかし、今は孫呉の将をみすみす手渡す訳にはいかないだ。・・北郷殿の言うとおり。その子は我々の将の周泰だ」
周瑜の本音を聞くと一刀は椿にその子を放すよう合図を送った。
「冥林様、申し訳ございません。この周泰、一生の不覚です」
「いいんだ、明命。それで北郷殿すまぬがこの事は他言無用でお願いしたい」
「わかりました。しかし、次はないですよ」
一刀と椿は陣へと帰っていった。
「失敗ね」
「あぁ、そうだな」
「申し訳ございません。私が捕まらなければ」
「明命は悪くないわ。誤るのだったら私の方だもの。私はあなたを見捨てようとした。ごめんなさい」
孫策は周泰に頭を下げた。
「そ・そんな。もとはといえば私が悪いのですから雪蓮様は悪ありません」
「それにしても、厄介だな」
「そうね。まさか明命以上の隠密が曹操軍の中にいるなんて。明命、あなた彼女の存在に気づいていた」
「いえ、捕まるまで全く気が付きませんでした。しかし、彼女は常に北郷一刀と一緒にいます」
「彼女の主は北郷一刀と言うことか」
「はい。後軍師が三名。武人が彼女入れて三名です」
「そんなにいるのか」
「まるで、曹操軍じゃなくて北郷軍ね。あ~~よけいに欲しくなったじゃない」
「いいかげんにしろ。危うく明命が殺されるところだったのだぞ」
「も~~う。わかっているって」
孫策の我侭に、怒る周瑜を一生懸命なだめる周泰。しかし、孫策らを椿が見ていた事は、彼女達は知ることはなかった。
「主。今戻りました」
椿が一刀の天幕に入ってくる。
「お疲れ様。それでどうだった」
「はい。孫策は当分の間は主の所に勘者を送らないと思います」
「そう。ならよかった」
「一刀いる?」
「いるよ。華琳」
華琳が一人で一刀の天幕に入ってきた。
「なんだい、華琳」
「その・・一刀。あなた孫策と」
「大丈夫だよ、華琳。俺はもう華琳や春蘭達をおいて何所にも行かないから」
「ならいいのよ。それより一刀」
「な・なに」
「汜水関はあなたのせいで戦いのだから、あなたが先鋒をしなさい」
「そ・そんな~、華琳。俺は一度も城攻めなんてやった事ないぞ」
「うるさい。これは命令よ、わかった。・・・それと私を心配させた罰よ」
「華琳。最後の方が聞き取れなかったんだけど」
「うるさい。莫迦」
華琳は逃げるように一刀の天幕を去って行った。
「なんだったんだ」
「主も罪なお方ですな」
「何か言ったか、椿」
「いえ。なにも」
不思議がる一刀を見つめる椿は一刀の鈍感さに呆れていた。
夜。一刀の天幕では、いつもの通り一刀と一刀の部下だけで会議がおこなわれていた。
「つまり、明日の汜水関攻めは一刀様が先鋒なのですね」
「ごめん」
「別に、一刀様が悪いわけではありません」
「それに、これを気にお兄さんの強さが噂ではなかったと見せつけにもなりますしね~」
「俺じゃなくて華琳をあげて欲しいのだけど」
「一刀様の名があがれば、自然と華琳さんの名もあがるので、そこは心配ないと思います」
「それで、汜水関は誰が守っているの?」
「華雄と張遼です」
「霞か」
「えぇ。それと華雄ですけど、結構な猪武者のようなので少し煽れば出てくると思います」
「・・・」
「なにを考えているのですか、主」
「実は、華雄の相手には焔耶にやって貰おうかな~て」
「え!」
「ほら。最近、焔耶も頑張っているからそろそろ試す機会かなと思って。・・迷惑だった」
「迷惑なんてとんでもないです」
「なら、華雄とは一騎打ちしてもらうよ」
「わかりました。それで一つお館にお願いがあります」
「なに?」
「お館にはワタシの傍にいて欲しいのです」
「魏延殿。それがどう結う事かわかって言っているのですか。もし一刀様に何か合ったらどう責任を取るのです」
「わかっている、それがどれだけ危険な事も。でも、ワタシがどれだけ強くなったかお館に見てもらいたいんだ。世界を知らなかったワタシに世界を見せてくれて、強くなる方法まで教えてくれたお館に」
焔耶の真剣な眼差しに稟の心を動かした。
「わかりました。でも、一刀様の横には椿殿をつけますよ。それが条件です」
「あぁ。それでも構わない」
「それでは、華雄の事頼みましたよ、焔耶殿」
・・・稟。今さっき焔耶の事真名で呼んだよな。やっと認めたか
「それじゃ、会議はここまで。焔耶、明日は頼んだと」
「はっ」
稟と椿以外の人が天幕から出て行った。
「本当に宜しかったのですか、主」
「なにが?」
「この戦で一番大事な仕事を焔耶に任せて、確かに今の焔耶には昔の面影は一つもありませんが・・・」
「不安?」
「少しは」
「今の焔耶は変わろうとしている。それを良い方向に手助けするのが俺の役目だと思っているよ」
「しかし、今回の件は事の重要差が違います。下手したら焔耶殿は帰ってきませんよ」
「大丈夫、今の焔耶は強いから。それに俺達が焔耶を信じなかったら誰が焔耶を信じるんだい」
「それは・・そうですが」
「稟殿。もう諦めたらどうですか、主がお決めになった事です」
「・・・わかりました。私も彼女を信じましょう」
「あぁ。焔耶はきっと勝つよ」
「それも、天の知識ですか」
「いや。男の勘かな」
「そうですか」
稟は納得した様な顔で天幕を去った。
「主。その内、閨に行きますので」
「え!」
「フフ・・・」
椿は爆弾発言を言って天幕を出た。
「ハ・ハ・ハ。どうしよう」
第十五章 完
「第十五章終了。皆さんお久しぶりです」
「本当久しぶりだな」
「合宿も中々楽しかったですよ」
「何所いったんだよ」
「秘密ですよ。ひ・み・つ」
「そうですか」
「あと、風さんこれ頼まれていたお饅頭」
「どうもです~~」
「おい。俺のは」
「ありません」
「私のは」
「稟にはこれをどうぞ」
「これは」
「レバーです。鉄分豊富の」
「私には無いのかしら、黒竜」
「華琳さんにはこれをどうぞ」
「これは」
「十字架です。白いほうを華琳さんが、黒いほうを一刀が持っていたらペアルックみたいでいいでしょう」
「えぇ」
「俺は黒かよ」
「いいじゃん。常に華琳が傍にいるのと同じなんだから。それともいらない」
「!?」
「!?。いります」
「ならよかった。はい、どうぞ」
「あ、ありがとう」
「サンキュウ」
「それでは、今回はこれまで。BY]
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汜水関攻略の前日。連合軍は総大将を袁紹となり曹操軍が先鋒となった華琳達はどう難攻不落の汜水関を攻略するのか