No.153631

真・恋姫†無双~神の意志を継ぐ者~ 始点

ユウイさん

真・恋姫の二次創作です。色んな伏線(バレバレ)を散りばめてますが、基本的に誰でも楽しめるような展開を心がけております。

2010-06-27 07:56:08 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:4993   閲覧ユーザー数:4025

 

 ※この物語は『北郷 一刀』に対し、オリジナルの設定を含んでいます。

 

 基本的に蜀ルートです。

 

 それでも大丈夫という方のみ、どうぞ。

 

 幼い頃、北郷 一刀は皆から呼ばれていた。

 

 『天才』だと。

 

 小学生の時には、既に高校レベルの問題が解けていた彼は『神童』とすら呼ばれた。

 

 運動も、芸術も、彼は本当に天に愛された男だった。

 

 しかし今の彼にとって、それは過去の栄光だった。

 

 彼は知ってしまった。

 

 決して超えられない壁というものを・・・。

 

 

 一刀を『天に愛された男』とするなら、十以上の歳の離れた彼の兄――北郷 来刀(ほんごう らいと)は『神』と形容されるだろう。

 

 天才と呼ばれた一刀が半年かけて出来た事を、彼は三日でやってしまう。

 

 エジソンやアインシュタインが半生かけて費やすような発明や発見を、彼は一年足らずでやってのけるだろう。

 

 一刀にとって、来刀は決して超える事の出来ない壁だった。

 

 当初、一刀は来刀を尊敬し、兄のようになりたい、兄を超えたいと希望を持っていた。

 

 しかし、一刀のその希望が絶望に変わるニつの出来事が起きた。

 

 一つは、一刀が好きだった亡くなった祖父に教え込まれていた剣道を、全く知らないルールを覚えただけの初心者だった来刀に完敗してしまった事。

 

 そしてもう一つは・・・初恋だった女性が来刀と結婚した事だった。

 

 一刀は悟った。

 

 自分は兄の残りカスにしか過ぎないという事を。

 

 決して超える事の出来ない存在を知った彼は、剣道を辞め、全てを放り出す生活を送るようになった。

 

 未来を渇望された少年は、自身の望む未来は無いと知ったのだった。

 

 彼は『天才』と呼ばれていた。

 

 故に彼は、自らの未来に蓋をしてしまったのだった。

 

 

 

「か~ずぴ~♪」

 

「・・・・・・・何?」

 

 下校中、同級生の及川に呼ばれて気だるげに返事をする一刀。

 

「デートせーへん? ごふっ!!」

 

 及川に蹴りを一発入れて一刀はその場を去ろうとする。

 

 が、その前に及川が一刀の肩を掴み、引き止めた。

 

「ちょ、ちょい待ち! 何か勘違いしとらんか!?」

 

「俺にそんな趣味は無いぞ」

 

「俺かて無いわい!! デートっちゅ~のはアレや。ダブルデートや」

 

「ダブルデート?」

 

「そや」

 

 笑顔で頷く及川。

 

 彼が言うには、現在自分がアプローチをかけている女子の友人の娘が、一刀に好意を抱いているらしい。

 

 その情報から、及川はダブルデートという普通のデートと違って多人数で遊びに行くという名目で、目当ての女子をゲットしようという魂胆だった。

 

「それで? 俺に、もう一人の娘を相手しろってのか?」

 

 そして隙を見て、二人っきりになれと一刀が問うと、及川はグッと親指を立てた。

 

「イエス!」

 

「そうか。じゃあ頑張れ」

 

「だから待てい!!」

 

 帰ろうとする一刀を再び引き止める及川。

 

 一刀は凄くウザそうに振り返る。

 

「何?」

 

「かずぴー、ワイの話聞いてた!? ダブルデートやで! だ・ぶ・る! お前がおらな話ならへんねん!!」

 

「俺、興味ないし」

 

「そんな言うなやー! 友達やないか!」

 

「友達?」

 

「そこで首傾げんなや!」

 

 及川は怒鳴った後、一刀の肩に手を置いたままハーと溜息を吐いた。

 

「なぁ、かずぴー。かずぴー、知らんと思うけど結構モテてんねんで。それやのに彼女作ろうとか思わんの?」

 

「興味ない」

 

「せやんな~。あんな綺麗なお姉さんと一緒に暮らしとるねんもんな~」

 

 及川の何気ない言葉に一刀の体がほんの僅かだが強張る。

 

 が、それを及川に気付かれないよう彼は溜息を吐いた。

 

「義姉さんは関係ない」

 

「それやったらかずぴー。どんな女の子とやったら付き合うん?」

 

「・・・・・・」

 

 問われて一刀は少し考える。

 

 ここで『長い黒髪で凛とした女性』などと答えると義姉ストライクで、何となく兄の勝ち誇った顔が浮かぶのでやめた。

 

「とりあえず・・・『元気な娘』で」

 

「また抽象的やの~。もっとこう無いんか? 具体的に『胸が大きくてウエストが引き締まって尻は安産型』とか・・・ってかずぴー!? 帰らんといて~!」

 

 後ろで叫ぶ及川を無視して、一刀は家に帰った。

 

 

 

 

 一刀が家に帰ると、庭で花に水をやっている女性がいた。

 

 長く綺麗な黒髪の女性で、一刀の姿を見ると優しく微笑みかける。

 

「ああ、おかえりなさい、一刀君」

 

「・・・・・・ただいま、愛義姉さん」

 

 一刀は義姉である愛に返事をすると、そのまま家に入ろうとするが彼女が声をかけて来た。

 

「一刀君、旦那様が話があると・・・」

 

「兄貴が?」

 

「一刀~~~!!!!」

 

 旦那様、と聞いて一刀が訝しげな表情をすると同時に、家の玄関が開いて男性が一人、飛び出す。

 

 驚く一刀に男性は抱き付いて来て、頬擦りした。

 

「うう・・・か、一刀~! ひっぐ! えっぐ!」

 

「な、何泣いてんだよ?」

 

 ぶっちゃけ三十路過ぎた男に抱きつかれるのは気色悪い事この上ない。

 

 だが、兄の来刀は、ご近所の方の目を気にせず咽び泣いた。

 

「お、お前! わ、わた、私の大切なコレクションをどうした~!?」

 

「? 兄貴のコレクション? 押入れに隠してたエロゲーなら知らないぞ」

 

「馬鹿! そんな事言う・・・」

 

「ああ、旦那様。押入れの中に入っていたブツなら、私が燃やしましたが?」

 

「「!?」」

 

 一刀と来刀はビクッと驚いて、恐る恐る声の方へ振り返る。

 

 その先には愛が、何故か物干し竿を片手にとても素敵な笑顔で仁王立ちしていた。

 

「『ロリっ子倶楽部』、『ハヂメてはお・ニ・ィ・ちゃん』、『触手と幼女』・・・若さですか? 若い娘が良いんですか?」

 

「ま、待て愛! 誤解だ! 私は熟女もいける!」

 

「兄貴、それ墓穴だから」

 

「旦那様~~!!!!」

 

 笑顔から一転。

 

 悪鬼羅刹のような形相で愛は物干し竿を振り上げて来刀を吹き飛ばす。

 

 綺麗に弧を描いて宙を舞い、グシャッと地面に落ちる。

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 学校から帰るなり、夫婦漫才を見せ付けられて一刀はフゥと溜息を零す。

 

 一見、馬鹿でスケベで変態で奇妙な兄ではあるが、出来ない事は無いと言えるほど完璧な人間だった。

 

 望めば何でも叶う。

 

 それが北郷 来刀という人間だった。

 

 事実、平日なのに家にいるが、仕事はしている。

 

 本人曰く『適当に株で遊べば大金が手に入るんだよな~』と言って、実際にパソコンの前に座って翌日には、大金を手にしていた事もある。

 

 99%の努力と1%の才能だと、どこかの偉人が言っていた気がするが、来刀には努力など必要ないのだ。

 

「アホくさ・・・」

 

 ポツリと呟き、一刀は家に入って行った。

 

 その姿を愛は怪訝な表情をして見つめていた。

 

「うんうん。私好みに捻くれて育ってるな」

 

 すると地面に寝転んだままの状態で、来刀が楽しそうに言って来た。

 

「旦那様、そっちの趣味あったんですか?」

 

「とんでもない。アレぐらい性格に難がある方がこれから先、過酷な運命に堪えられないと思ってるだけだ」

 

「これから先・・・ですか」

 

「うむ。いやはや、どういう選択をするのだろうな、アイツは」

 

「・・・・・・旦那様」

 

「ん?」

 

「ついでに本棚の裏の隠し金庫に入っていた無修正モノのDVDについて説明してくれませんか?」

 

「・・・・・・・てへ♪」

 

 可愛く舌を出して笑う来刀。

 

 直後、地獄の底からのような悲鳴が轟いた。

 

 

 

 アー、とかいう悲鳴と何か殴打する音が庭から聞こえた。

 

 多分、いや確実に兄が余計な事をして、義姉にしばかれているのだろう。

 

 嫌なBGMを耳にしながら、一刀は制服のままベッドに横になっていた。

 

(今夜の晩飯、どうするかな・・・)

 

 北郷家の食卓は、一刀が担っている。

 

 両親は物心が付く前に事故に遭って死別し、それ以来は九州の祖父母と暮らしていた。

 

 その祖父母も小学校の時に亡くなると、東京から兄と名乗る人物が引き取りに来た。

 

 それが来刀だった。

 

 一刀は自分に兄がいる事など、その時まで知らなかった。

 

 が、戸籍標本には、しっかりと明記されており、顔立ちも誰から見てもソックリと言われ、尚且つDNA鑑定までして本物と証明された。

 

 ただし、その出会いが当時、『神童』とまで言われていた一刀が、自分の限界を知ってしまったのだが。

 

 その頃、来刀は愛と婚約していたが、彼女は壊滅的に料理の腕が下手で、初めて彼女の料理――焼飯だった――を口にした時、死に掛けたのは未だ強烈な記憶として残っている。

 

 来刀は普通に出来るが、『めんどい』の一言で一切、家事をしない。

 

 必然的に自分がしなければ、家庭は回らないと一刀は小学生の時点で悟ってしまった。

 

 一刀は、ひょっとして兄が自分を引き取ったのは、家事をさせる為ではないかと疑っている。

 

(確か冷蔵庫の中に昨日作ったマカロニサラダの残りが・・・)

 

 が、何だかんだで主夫業が染み付いた一刀だったが、眠くなって来たので少しだけ寝ようと思い、ゆっくりと目を閉じた。

 

 

 

 

 夢を見ていた。

 

 此処ではない。

 

 何処か知らない場所。

 

 “一刀”は二人の男と対峙していた。

 

『この世界を終わらせるなんてこと、俺が絶対にさせやしない!』

 

 自分では決して言わないような台詞を吐く“一刀”。

 

『ふっ・・・しかしあなたがここに辿り着いた事で、既に物語りは終焉に向かっている。避けられない事象なのですよ、これは』

 

『あるものは突端と終端。外史が形作られた時からこうなるのは必然・・・だから・・・終わらせるのさ。この世界をっ!』

 

 光が弾けた。

 

 “一刀”の夢はそこで終わった。

 

 

 

 

「あのぉ~・・・・大丈夫ですか?」

 

 一刀が目を開くと、そこは家の天井ではなく、どこまでも吹き抜けるような青い大空と、そんな自分を心配そうに見つめる空と同じ色をした少女の瞳だった。

 

 

 

 始まりの物語が終わった。

 

 そして終わりから新たな始まりが生まれる。

 

 かつて神が見た夢。

 

 叶えるは天に選ばれし者。

 

 神すら成し得なかった世界を成せ。

 

 それこそが彼に与えられた使命なのだから。

 

 

 

 人物設定

 

名前:北郷一刀

性格:原作と違って捻くれてて人付き合いは基本的にしない。協調性なし。根はお人好し。

詳細:幼い頃は『神童』や『天才』と呼ばれるほどの才媛。が、兄の来刀と出会い、決して自分では超えられない存在、自分では手に入れられないものを簡単に手に入れる存在に自分の限界を悟り、絶望。が、そんな兄に憧れている面もある為、非常に捻くれた性格になった。兄とは、小学生の時に初めて会い、余り肉親という感じは無いが、それでも容姿や才能、趣味も似ているので血の繋がりをDNA鑑定よりも実感できる。

   好きなものは家事と兄に勧められて読んだ三国志演義。嫌いなものは義姉の手料理。剣道は好きだった祖父から教えられ一刀も大好きだったが、初心者だという兄に打ち負かされて以来、嫌いになった。

 

 

名前:北郷来刀

性格:非常にちゃらんぽらんで、女癖が悪くスケベ(妻&弟談)。後、底抜けに意地が悪い。

詳細:一刀の兄。『天才』や『神童』と呼ばれた一刀に対し、『神』とすら呼ばれた人物。望めば全てが叶うとまで言われる程で、あらゆる事に対し神がかり的な事を行う。一刀とは瓜二つの容姿をしている。

   好きなものはエロゲーと家族。嫌いなものは妻の手料理。過去、妻と凄まじい出会いを経て結婚したという。

 

 

 

名前:北郷愛

性格:男勝りで悠然としているが、慈愛に満ちている。

詳細:来刀の妻で、一刀の義姉。そして一刀の初恋の人でもある。一刀を実の弟のように可愛がっている。滅茶苦茶、強く、怒らせると来刀も敵わない。『浅草の軍神』と言われているとか。本人曰く『昔はリアルに軍神と呼ばれていた』らしい。

   好きなものは夫と義弟、そしてお守り鈴と虎のキーホルダー。嫌いなものは自分の料理の腕とお化け。

 

 
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