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『舞い踊る季節の中で』 第64話

うたまるさん

『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

自軍の三倍と言う袁術軍と、真正面から挑んだ孫呉。
一刀の覚悟のおかげで、その勝負が見えた時、
孫策は、いまだ血の涙を流しながら戦う一刀を止めるために動く。

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2010-06-26 21:37:18 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:20130   閲覧ユーザー数:12701

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -寿春城編-

   第64話 ~ 泥に血に塗れながらも、国を背負いし魂は、何を想い舞う ~

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

        神の手のマッサージ(若い女性には危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術

  (今後順序公開)

 

 

雪蓮視点:

 

 

びしゃっ

 

嫌な音を立てながら、

かつて人の形をしていたモノが、地面に崩れ落ちてゆく。

私達が一刀の隊に追いついた時、そんな光景が私達の目に映る。

まともなのは、膝から下の部分くらいね。

いいえ、逆にそこだけが原形を留めているからこそ、

それが何であったのかを、周りの者に伝える事が出来ると言えるわ。

この期に及んで、一刀に向かっていった敵将らしい男が、この世に居た証、

そして、それを見た周りの敵の兵士達は、我先に己の武器を捨て、両手を挙げ、地に両膝をついてゆく。

一刀は、その中を何事もないように通り過ぎようとするが、

投降の意思を示した敵兵の中に、周りの人間に隠れて一刀を狙おうとした男がいるのを、私は見つけ、

 

「一刀あ・」

 

ごろっ

ずしゃっ

 

私が声を上げかけた時、その男の首が転がり落ちつつ、その形は幾つもに分かれながら、

やがて、かつて人の頭の形をしていたものが、地面に血の花を咲かせる。

その事実に、敵兵達は恐怖をさらに広げ、その場に腰を抜かす者が続出してゆく。

 

……一刀、もういいから、

 

そう叫びたかった。

でも、そう叫んだ所で一刀はきっと止まってくれない。

だって、この戦において一刀が動く事が、一番双方に被害を少なく終わらせる事が出来るって、一刀は考えているだろうし、それは間違いない事実だもの。

でも、私達は、貴方をこんな所で失う訳にはいかないの。

だから、

 

「霞、貴女の隊で、この周辺のまだ抵抗する敵部隊を、黙らせて来て頂戴」

「了~解、いくで、おまえらっ」

 

 

 

 

私の言葉に、さっそく動き出す霞を見送りながら、

私は、足を一刀の方ではなく、少し離れた一刀の隊に、足を向け……、

 

「あっ孫さ・」

 

ごっ!

 

私の姿に、敬礼をしようとする彼女を、……朱然の頬を、容赦なく殴りつける。

彼女は大きく上体を揺らされながらも、さすが孫呉の武官だけあって、

声一つ上げず、倒れる事無く踏み止まった。

 

「朱然、私は何て言った? そして貴女は、何て答えたか言ってみなさいっ!」

「そ・それは・」

 

私の詰問に言い淀む彼女に、私は容赦なく殺気をぶつけてあげる。

彼女の事は、明命から聞いている。

武はともかく、将来有望な兵士だと、 鍛えれば良い将になるだろうと言う事も、

でも、所詮は鍛えればにすぎない、私の殺気に耐えれる訳もなく、

ただでさえ少し青ざめていた顔を、さらに青褪めていく。

そして、

 

「ほ・北郷隊長が無理をした場合連れ戻せと、

 そして、い・命に代えて、その命令を守ると言いました」

「そう、じゃあ、貴女は、今の一刀が正常に見えると言うつもりなの?

 あんな血の涙を流していると言うのに、無茶していないと言うつもり?」

「そ・そんな事は・・・・ないです。 ですがとても、隊長に近づ……いえ、何でもありません・・・・」

 

私の先程とはうって変わって、静かな質問に、

目を細め、底冷えするような私の声に、彼女は声を震わせながら答えていく。

最後言い訳を、途中で止めたのは正解だったわね。 でなければ、頸が飛んでいたわ。

王の命令を破ったばかりか、言い訳など、このような場でして良いものではないわ。

その辺りの冷静さが残っている辺りは、明命が可愛がっていただけはあるかもね。

 

正直彼女に、いえ、彼女達を責めるのは、酷だと言う事は分かっている。

今となっては、あんな一刀を止めろと言う、私の命の方が、無茶苦茶だと言う事わね。

とても近寄れる雰囲気ではないし、あんなものを目の前で見せ続けられていたのでは、恐怖ですくむと言うのも無理はないわ。

それでも、こうやって一刀についてきたのは、半月にも満たないとは言え、

一刀の部下として、一刀の人となりに触れていたからだと思う。

彼女達の目には、恐怖が映っているものの、一刀を尊敬する光は、いまだ失っていないもの。

 

 

 

 

朱然は、命令違反を犯した事実に、覚悟を決めたのか、先程のような怯えた顔から立ち直り、

彼女本来の顔色を戻し、私をまっすぐ見る。 ・・・・うん、武官として良い表情ね。

でも、せっかく覚悟を決めてくれて悪いけど、私は此れ以上、彼女を責めるつもりはない。

そもそも、ここで彼女の命令違反を責める意味は、あまりない。

私の本来の目的は、

 

「孫策、彼女が何をしたかは知らないけど、彼女は俺の部下だ。 なら責めは俺が受ける」

 

そんな事を言いながら、一刀は、先程までの鬼気迫る思いつめた顔から、焦燥するも、自分の部下を心配する顔になって、こちらに歩いてくる。

 

・・・・・・・・酷いわね。

 

それが、一刀の顔を見た私の素直な思いだった。

血の涙は、止まっているものの、その跡が痛々しく残っている上、

まるで一気に齢をとった雰囲気を、その身に纏っている気がする。

 

「悪いわね。 でも彼女には、一刀に内緒の特別な指示が出してあったの。

 それが全く出来ていなかったおかげで、迷惑を被る人達がいるのよ。

 でも安心して、これ以上彼女を責める気はないから」

 

嘘は言っていない。

嘘など一刀に見破られてしまう。

だから、翡翠や明命の事をそれらしく言って、一刀を何とか納得させる。

私は、一刀に聞こえないように

 

「一刀に対しては、こう言う風にやるのよ。

 ただし、嘘はまず見破られると、思っておいた方が良いわよ」

 

そう朱然に伝える。

朱然は、そんな私の言葉に、『 はっ 』としながら、私の目的と状況を理解し、安堵の息をつく。

・・・・安心した、それでもどこか辛く悲しそうな顔で一刀を見る。・・・・・・慕われているわね、一刀。

朱然を利用した事を謝る気はない。

彼女が王である私の厳命を守れなかったのは事実だし、その罰があれくらいで済むなら、安いもの、

朱然もその事は分かっているはず。

彼女には、まだまだこれから先、一刀を守ってもらわなければいけない。

なら、そのために学ぶ機会を、恐怖ですくませて終わらせる訳には行かないわ。

 

「一刀、此処は他の者に任せて、私達は街に入るわ。

 貴方は、私の横で見ていなさい。 貴方には、見届けなければいけない事があるはずでしょう」

 

私は、一刀の返事も聞かず、再び朱然に振り向く。

この戦において、もう一刀に何も言わせる気はない。

今の一刀は、きっと一人でも犠牲を少なくするためなら、自分が傷つく事など一切考えないわ。

確かにその想いは尊いと思う。

・・・・でも、こういう傷つき方は、見ている方も辛いし、あの二人を不幸にする訳にもいかない。

 

「朱然、張遼が戻ってきたら、貴女達は一時的に彼女の指揮下に入りなさい。

 私の命を果たせなかった償いは、彼女達と共に、街と城を制圧する事で果たして見せなさい

 ただし、言うまでもないと思うけど、民を無用に怯えさせたくないわ。 街に入ったら、刃向う者は、

 可能な限り生け捕りになさい」

「はっ!」

 

 

 

 

思った通り、殆どの兵は出ていたため、城壁や街の中にはろくな兵士もおらず。

城内に、警備のための幾らかの兵が立て籠もっていただけだった。

それも、あの大敗の影響か、それとも、今更命を懸けるだけの忠誠心が無いだけなのか、

こちらが、抵抗しなければ、命を獲らないと知ると、抵抗らしい抵抗を止め、殆どが捕縛するか、逃走していった。 ……まぁ両方ね、きっと

 

それにしても少なすぎるわね。

 

あの老人達の事だから、自分達を守るために、この五倍はいると思ったのだけど……、

それに、老人達も誰一人見つかったと言う報告も受けていない。

……もしかしてもう逃げたとか?

街の外周は、取り囲んでいると言う訳ではないけど、それでも見張りがいるし、

逃走する一団が居れば、それを捕えるなり、報告が来るなりするはず。

 

玉座の間に居ないとなると、逃げ出したとみるのが普通だけど、

開戦から数刻も経っていないのに、ましてや勝つ気でいた彼等に、そんな暇はなかったはずよ。

逃げたなら逃げたでも構わないんだけど、

なんにしても、この戦を終わらせるには、その辺りの白黒を付けなければいけない。

それに、私の勘が、まだ『居る』と告げている。

 

「さて、どこに居るかなぁ?」

「報告がない以上、どこかに潜んでいる可能性が高いけど、

 逃走された可能性も、考慮しておいた方が良いかもな」

「逃走ね……一刀、思っていもいない事を、口にするものじゃないわよ」

「………そうだな。 すまない。」

 

一刀らしくない言葉に、私がそれとなく咎めるような言葉に、素直に謝る一刀、

・・・・・・やっぱり本調子ではないわね。

袁術と張勲を助けたい、と言う一刀の気持ちは分からないまでもないわ。

一刀から言わせれば、あの二人が本当に悪いわけでもないのでしょう。

でも、天の世界ならともかく、この世界において、そんな甘い考えは通用しない。

 

『 袁術 』

 

彼女の名前で人は集まり、そして彼女の名の下、政を行われている以上、そこに罪は発生する。

そして、彼女の命令で、私達は良いように扱われ、多くの同胞の血が流れた。

・・・・・・それは、彼女達の境遇を考慮しても、許せるようなものではないわ。

それに、二人の目的のために、多くの血が流れたのも事実だし、

今回の戦の引き金を引いたのは、間違いなくあの二人の意志によるもの。

なら、最低でも、この戦の責任を取る必要はあるわ。

 

「こっちからね。……匂いがするのよ」

「匂い?」

「そっ蜂蜜の甘ったるい匂いがね」

 

私の言葉に、一刀が鼻を嗅ぐけど、実際にそんなものが匂うわけがない。

戦場を駆け抜けた私達には、血臭が染付き、例えそんな匂いが漂っていたとしても、

今の私達に蜂蜜の匂いなんてものが、感じ取れる訳がないわ。

本当はただの勘、ただ、そう言った方が、私自身にも勘に調子がつくから、そう言っているだけ。

私と一刀は、私の勘のまま、回廊を歩いてゆき、

 

「……見つけた」

 

前の方の回廊を、隠れるように、移動していく大小の影、

ここからは、その姿ははっきり捉える事は出来ないけど、間違いないわ。

私は駆け足になりながら、横についてくる一刀に向かって、

 

「一刀、約束どおり、二人の事は真剣に考えるわ。

 でも、これはあの一帯を纏める豪族の代表として、 孫呉の王として決めるべき事、いくら天の御遣いで

 ある一刀でも、口出しは無用よ。 むろん結果にもね」

「・・・・・・ああ、分かっている」

 

……それは、私の出す答えに対して?

……それとも、私に対する信頼?

どっちの『分かっている』なのかしらね。

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……美羽様大丈夫ですかぁ?」

「ひぃ、ひぃ、ふぅ……わ、妾はもう疲れたのじゃ~……。 七乃、おぶってたも」

「さ、さすがにそれは無理ですよぉ。 私も体力の限界がじりじり迫ってきていますし」

「ううー……みじめなのじゃぁ……」

「戦に負けちゃいましたからねぇ……」

「うー、七乃七乃! 蜂蜜水が飲みたい! 妾は蜂蜜水が飲みたいのじゃ!」

「もぉー。 わがまま言っている間に、足を動かしてくださいよぉ」

「やじゃやじゃ! 妾はもう動けないのじゃ!」

「そんなこと言っていると孫策さんがやってきますよ。 悪い子はいねーかーって」

「それは嫌なのじゃ。……でも蜂蜜水はもっと飲みたいのじゃー!」

 

二人に近づくにつれ、

そんな会話のやり取りが、聞こえ始める。

……なるほど、言われてみれば、少し不自然さを感じるわ。

それに、この内容……そう、まだお芝居を続けると言うのね。

なら付き合ってあげるわ。

どうせ今まで騙され続けて来たのですもの、言った所で、誤魔化されるだけだわ。

だから、私は目の前の袁術達に向かって、

 

「なら好きなだけ飲ませてあげましょうか?」

「……っ!?」

「……ぴっ!?」

「ただし……あの世でだけどね」

「きゃーっ! でたーっ!」

「きゃーっ! でたのじゃーっ!」

 

私の突然かけた言葉に、可愛い声を出して驚く二人。

……どう見ても、本気に驚いているように見えるんだけど、一刀、これ本当に演技なの?

そう思いもしたけど、今更それを疑っても仕方ないわね。

一刀との約束だもの、面倒くさいけど、二人に付き合って、二人を見極めなければいけないわね。

 

「失礼ね。 人を化け物みたいに言って」

「な、ななな何のようじゃ孫策! 妾はおまえになど用は無いのじゃ!」

「そうそう! そうですよ!

 用は無いんで、私たちは先に行かせてもらいますね。 孫策さんはごゆっくり~♪」

「つれないこと言うわねぇ。

 ……でも残念。 私にはとっても大切な用があるの」

「ほ、ほう。 なんじゃ?

 用があるのならさっさと言って、さっさとどっかに行けば良いのじゃ」

「そうですよ、こう見えても私も美羽様も、とーっても忙しい身なんですから♪」

 

そう、助けを乞うような真似はしないと言う訳ね。

一刀から聞かされた彼女達の目的を考えたら、当然よね。

 

「ふーん。……ならさっさと用事を済ませてしまいましょうか」

 

しゃらっ

 

そんな音を立てながら、私は腰の南海覇王を抜き放ち、

その時の彼女達の目を、表情を一瞬たりとも見逃さない。

本当に、死に直面したら、そんな演技なんてできないでしょ?

 

 

 

 

なのに、袁術は、

 

「な、な、なぜ剣を抜くのじゃ!」

「え? だって、剣が無いとあなたを殺すこと、できないでしょ?」

「ひーっ! 妾を殺すと言うのか!?」

「当然。……今まで貴方にコキ使われて来たんだから、。 意趣返しするくらい良いじゃない」

「な、七乃! 七乃七乃! 妾を助けるのじゃ!」

 

一瞬、仮面が外れ、目を瞑り、唾を飲み込んだ張勲と違い、

そんな素振りは一切見えない。

袁術、分かっているの?

貴女これから死ぬのよ?

そんな私の思考を余所に、二人は、

 

「ムリ!」

「な、なんじゃとぉ! 七乃は妾の傅役ではないのかぁ~!」

「だってぜぇ~~~~~ったい孫策さんには敵いませんもん!」

「それでも妾を守るのが七乃の仕事じゃろ!」

「守ってますよ! 後ろから見守ってます!」

「なんなのじゃそれはぁぁ~~っ!」

 

そんな事を言い合っている。

そんな事を続けている。

こんな状況なのに、

わがままで、

身勝手で、

私の知っている、

ムカつくだけの袁術を、

 

「……はいはい。漫才はそこらへんで終いよ。

 ……ついでに袁術ちゃんの命も、そろそろお終いにしましょうね」

「あぅあぅあぅあぅ~~~~……」

「うううー、美羽さまぁ~~~~……」

「あらら、泣いちゃった」

「やだやだやだ。死にたくないのじゃ~!」

「わたしもですぅぅ~~~~!」

 

……これ以上は時間の無駄ね。

二人を見れば見るだけムカつくだけよ。

 

「残念……そろそろ死ぬ時間よ。 二人とも覚悟は良いかしら?」

「う、ぐしゅ……いやじゃ……いやじゃいやじゃいやじゃ!

 妾は死にたくないのじゃ~~! うわぁぁぁ~~~んっ! 助けてたもぉぉ~~~~!」

「ううっ、美羽様ぁぁぁ~~~!」

「麗しき主従愛って?……でも泣きわめいても許してあげない。

 うふふっ、二人仲良く殺してあげる」

 

 

 

 

一刀、この二人が、例え一刀の言うとおりだとしても、

一刀の望む事なんて望んていないわ。

 

それに、これが本当に演技だとしたら、危険よ。

この二人にその気が無かったとしても、

二人を保護すれば、それを利用しようとする者が出てくる。

そうなれば、何時裏切るか分かったものじゃないし。

今まで、私や冥琳を騙し通して事を運んだ二人よ。

気が付いた時には、手遅れと言う事もありえるわ。

 

逆に、一刀の言うことが間違いで、

これが彼女達の本性そのものだとしたら、

余計二人を許す訳にはいかない。

今更、そんな二人に何かできるとは思えない。

だから、興が乗れば見逃した事もあったと思う。

でも、もうそれは無理、

一刀があんな覚悟をしたのは、

この二人が発端なのだから、

 

私は、お互いを庇い合う様に、抱き合う二人に、

南海覇王を、袁術の喉元に突き込むために、体を動かす。

……せめて楽に死なせてあげる。

 

シュッ

 

「うわぁぁん! 七乃ぉ~~~!」

「地獄に落ちてもずっと一緒ですよ、お嬢様ぁぁぁ~~~!」

 

ごめん一刀、貴方の願い、王としては聞く訳には行かないわ。

二人には、孫呉の礎として死んでもらう。

民の恨みを、

民の涙を、

民の血を、

逝ってしまった者達の想いを、

二人には背負って逝ってもらうわ。

 

一刀、恨むなら、私を恨みなさい。

そして知りなさい、この世界の現実を、

一刀の想いはとても大切なものよ。

でも、今のこの世界では、それが叶わない事を。

 

だから、そんな世界を、私は、孫呉は何とかしたいと思っているの。

孫呉に、江東に住む人達だけでも、そんな想いをさせなくてすむ世の中にしたいの。

この世界は、只生きるだけでも大変で苦しいわ。

だから、せめて戦に、野盗に、そして圧政に苦しまない国にしたいの。

みんなが、笑って安心して住める国にしたいの。

 

一刀の尊い想いは、きっと孫呉を良くして行くわ。

そのために、力を貸して欲しいの。

私に力を貸してとは言えない。

だから、翡翠と明命、二人のためにも力を貸して欲しい。

二人を利用するようだけど、

例え、そう思われたとしても、私の想いは変わらない。

 

恨みも、罵声も、全部私が引き受けるわ。

でも、その代り血生臭い事は、私の代で終わりにしてみせる。

多くの者を逝かせた罪も、

多くの者を泣かせた罪も、

多くのモノを犠牲にしてきた罪も、

その責の全ては、私にある。

私の罪は、全部終わったら取るつもり、

 

だから、一刀、

恨むなら、私一人を恨みなさい。

恨むなら、こんな世の中を恨んでちょうだい。

そして、こんな世の中を、何とかして欲しいの。

一刀なら、きっと、それが出来ると思うわ。

 

この二人の事は駄目だったけど、

その代り、今度はどんな事も聞いてあげる。

だから、この世界を嫌いにならないで、

孫呉を嫌いにならないで、

心をそれ以上壊さないで、

 

……一刀、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです。

 第64話 ~ 泥に血に塗れながらも、国を背負いし魂は、何を想い舞う ~  を此処にお送りしました。

 

まずは、前回の更新から大分空いてしまっている事、お詫びいたします。

最近いろいろ忙しくなってしまい、筆が止まってしまっていましたが、やっと続きを書く事が出来ました。

(まぁ、前回力が入りすぎた反動も多少はあるかもしれませんが……)

今の忙しさがいつまで続き、また忙しくなるか見通しがつきませんが、何とか合間を見て書いていきたいと思っています。

 

さて、今回は孫策一人の視点となりました。

この外史の孫策は、最初が最初だけにいろいろ嫌われていますが、

私は、そんな孫策も彼女らしさの一つだと思っています。

そして、今回も、見方を変えれば身勝手、とも取れるような彼女の視点と想い。

読者の皆様にはどう映ったでしょうか?

 

理想の王、理想のヒロイン、色々な考え方もあると思います。

ですがそんな彼女達も、そんな肩書きの前に、一人の少女であり人間です。

受け入れやすい光り輝くところもあれば、多くの失敗や間違い、暗い感情や、馬鹿な行動だってあると思いますし、そんな所を含め、彼女達の愛すべき姿の一つだと、だからこそ輝くのだと、私は思っています。

そんな演出を不愉快と思われる方もいるかもしれませんが、そこは暖かな目と、広い心で見守っていただけたらと思います。

 

むろん、皆様の意見は、真摯に受け止めたいと思っていますし、

それを、作品をより良くしていくための、力や参考にしていくつもりです。

『 TINAMI 』は作品を只発表するだけの場ではなく、そう言った読者の声を作者にいち早く届ける事によって、作者と読者を成長させてくれる良い場だと思っています。

( まぁ、私自身調子に乗って暴走した事も、過去ありますが(汗  m(_ _)m反省しています )

 

あとお気づきでしょうが、後半の台詞回しは、ほとんど原作のままです。

同じ言葉を使っても、背景が大きく違えば、また違ったように見えると思い、あえて挑戦してみました。

 

さて、次回は、謎を謎にしたままの袁術と張勲、二人の想いに視点を当てる予定です。

二人が望んだ事と、その結末、……そして、二人が気付いていない、本当に望んでいる事とは……、

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。


 
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