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仮面ライダー×真・恋姫†無双 呉編  地を! 海を!  越える戦い  前編

BLACKさん

これは仮面ライダー×真・恋姫†無双 呉編の最終話のエピローグ前にあたる作品ですので、本編を読まないと分からない部分が存在します。その事をご了承下さい。
そのほかにも「仮面ライダー×真・恋姫†無双 魏編」、「仮面ライダーディケイド×新・恋姫†無双」、「アクセル全開! 真・恋姫†無双」、「仮面ライダー×新・恋姫†無双×仮面ライダー」を読んでいない分からない部分もありますことをご了承下さい。
またこの作品はライトノベルで発売されている「真・恋姫†無双 呉書・外史」のものを原作としているため、本と同じような表現が部分部分に出てきますことをご了承下さい。
そしてオリジナルキャラやオリジナル仮面ライダーもいることをご了承ください。
なお本作は長編のため前後編があります。後編はインスパイア元からどうぞ。

2010-06-26 16:29:28 投稿 / 全20ページ    総閲覧数:4583   閲覧ユーザー数:4067

赤壁の戦いから半年が経ったある日のことであった。

 

「う……うう……」

 

巫女服のような服を着た少女が一人、流されたかのように浜辺で倒れていた。

そこに……。

 

「起きなさい」

 

一人の別の巫女服の少女が倒れている少女を起す。

 

「う……うう……」

「起きなさい」

 

二度目の呼びかけで倒れていた少女の意識は戻った。

 

「はっ! ここは?」

「気がついたようね」

 

倒れていた少女が起してくれた少女を見る。

 

「あ、あなたは?」

「私の名前は管輅。あなたの名前は?」

「私は……壱与と申します」

「ようこそ、三国志の世界へ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  仮面ライダー×真・恋姫†無双 呉編  地を! 海を! 越える戦い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呉の首都建業の城。

 

「………」

 

呉の王、孫権こと蓮華が不機嫌そうに玉座に座っていた。

 

「どうやら、まだご機嫌が優れんようじゃな」

 

黄蓋こと祭が蓮華の様子を見てそういう。

 

「はい。それどころか更に悪くなってるんですよ~」

 

陸遜こと穏も蓮華の様子を語る。

 

「原因は北郷一刀。あの女たらしのせいだな」

 

甘寧こと思春が蓮華の不機嫌の原因であろう男の名前を言う。

 

「どうじゃ、誰が権殿の機嫌を直すか賭けてみぬか?」

「蓮華様で賭けるのですか!?」

 

周泰こと明命が慌てたような声を出す。

 

「お前達っ!」

 

そこに蓮華の声が響く!

 

「先ほどから何を話しているのだ!」

 

何故ここまで蓮華の機嫌が悪いのかと言うと理由はある。

それは数日前に遡る。

 

 

赤壁の戦いを終えた後、曹操達がこの大陸から姿を消したのを機に、呉は蜀である劉備達とかねてから決めていた大陸を二分する事を実行し、現在は二分されている。

しかし蜀は西、呉は東を取るのは前々から決まっていたのだが、西には海がなかった。

蜀は海のある土地が欲しいのだ。その上国境線を暫定的にしか決めておらず、その国境戦に蜀は軍を送り込んだのだ。

そしてその軍を率いてる将とは関羽であった。

そしてその軍に対抗するために先に呂蒙こと亞莎を行かせようと、蓮華は考えたが……。

 

「ダメだ」

 

天の御遣いとされる青年北郷一刀が反対したのだ。

 

「何故よ!?」

「色々あるんだよ。それにこんな事で争うなんて間違ってる。雪蓮と冥琳が望んだ平和をこんな事でなくしたら……」

「何ですって!」

 

蓮華が怒りを顕にする。

雪蓮とは孫権の姉、孫策。冥琳とはその孫策の大親友、周瑜のことである。

二人は今は亡き人間。蓮華はその二人の思いを継いでいるのだ。もちろん一刀も。

だが……。

 

「私が勝手な誤解で姉様と冥琳の望んだ平和をなくすなんて……。一刀、あなたは私にそんな事……」

「そこまで言ってないぞ」

「そうですよ」

 

一刀がキバに変身する時に必要なキバットバット三世とタツロットが蓮華を諌めようとするが……。

 

「出てって」

「「「は?」」」

 

突然の「出て行け」発言に一刀とキバットとタツロットは信じられないような声を漏らす。

 

「呉王しての命令よ。今すぐここから出て行きなさい!」

 

蓮華は今にも剣を抜こうとする勢いで怒る。

 

「やばっ! 行くぞ! キバット、タツロット!」

 

一刀はキバットとタツロットをつれてその場を出て行ったのだ。

そして今に至るのだ。

 

 

「はあ~」

 

一刀は事実上自宅謹慎を命じられ、部屋にこもっていた。

 

「なあ、一刀。何で言わなかったんだ?」

「言わなかったって?」

「呂蒙と関羽をぶつけたら二人とも死んでしまう話ですよ」

 

キバットとタツロットは一刀が亞莎を行かせたくなかった理由をきちんと知っていたのだ。

しかし一刀は言わなかった。

 

「あのな。確かに亞莎と関羽をあわせるのは危険中の危険だ。だからと言っても歴史どおりって事もないと思うからな」

「と言うと?」

「こんなに早く赤壁が終わったことと曹操がいなくなったことだ。既に歴史どおりじゃない」

「そうですけど……」

「それに余計な混乱は起したくない。別の世界の俺だったら言ってるかも知れないけど……」

 

一刀は思わず顔を上に向けて天井を見る。

 

(あのアギトの俺だったらどうしたんだろうな……)

 

そう考えてる時だった。

 

「一~~~~刀♪」

 

突然部屋の扉が開かれ、一人の少女が入ってくる。

少女の名は孫尚香。孫策と孫権の妹で真名を小蓮と言った。

 

「小蓮、突然扉を開けて来るなっと言っただろ?」

「だって一刀謹慎中でしょ? 元気ないかな~って思ってね」

「だからと言って突然扉を開けて入ってくる理由にはならないぞ」

「いいから、いいから」

 

すると小蓮はすぐさま一刀の腕に抱きつくように絡んでくる。

 

「お、おい。小蓮……」

「街に行きましょ♪」

「俺は謹慎中」

「謹慎中でも町に行っちゃダメって言われてないでしょ? だったらいこ」

「おおおお……」

 

一刀は無理矢理小蓮によって部屋から連れ出された。

 

「一刀さんも大変ですね~」

「それがあいつの宿命なんだろうぜ」

 

キバットとタツロットは他人事にように話すのであった。

 

 

街で小蓮と色々買い食いをする一刀。

それでも元気はなかった。

そんな時であった!

 

「お願いするでござります!」

 

城門前から突然大声が聞こえてきたのだ。

 

「何だ?」

「行ってみよ」

 

一刀と小蓮が城門前に行ってみた。

するとそこには巫女服の少女が土下座して門衛に何か頼んでいたようだ。

 

「何があったの?」

「どうか。わらわを天の御遣いである北郷一刀様に会わせて欲しいでござります!」

「え?」

「き、君」

 

一刀が土下座する少女の前に出る。

 

「俺がその北郷一刀だけど……」

「あなた様が北郷一刀……」

「俺に何か用?」

「どうかお願いしますでござります!」

 

少女は再び土下座した。

 

「だからどうしたの!?」

「どうか、どうか、我らの国。邪馬台国をお救い下さい!」

「邪馬台国!?」

 

一刀はものすごく驚いた。

 

「邪馬台国って……」

「一刀、知ってるの?」

「よくな……。でも何で……」

「それは孫権さんに会ってから話すべきですね」

 

そこにまた別の巫女服の少女が現れる。

一刀はその少女を少しばかり知っていた。

 

「管輅」

「お久しぶりですね。一刀さん」

「かなりのわけありみたいだな。何とか蓮華に取り次ごう」

「ありがとうございます」

 

 

一刀達は玉座の間へ行くと……。

 

「お前は謹慎中のはずだぞ、一刀」

 

蓮華がかなり不機嫌そうに言う。

 

「登城も、ましてやこの玉座の間に入る事も禁じられている」

「それは分かってるけどな……」

「なら、何故入ってきた?」

「蓮華や皆に聞いて欲しい事があったから来た」

「出て行きなさい一刀」

「まあ話を聞いてくれるなら出て行くけど……」

「出て行きなさい」

「………」

 

一刀はクウガのベルト、アマダムを出す。

 

「一刀、どういうつもりかしら?」

「話を聞いて欲しいだけだ。戦う気はない」

 

一刀と蓮華の間には不穏な空気がよどんでくる。

 

「お姉ちゃん、シャオからもお願い。一刀の話を聞いてあげて」

 

小蓮が請う。

 

「小蓮……」

 

蓮華はようやく一刀と小蓮の隣にいる管輅と壱与の存在に気付く。

 

「その者達は?」

「まあそれは俺の話……というよりこの子の話を聞いてあげるなら教えるよ」

「ふむ、何かあるようだな。権殿、ここはこの老いぼれに免じて小僧の話を聞いてやらんか?」

「私からもお願いします!」

「私もです!」

 

祭、亞莎、明命、穏も請う。

 

「お前達……」

「罰なら後で受けてやるから……とりあえず話を……」

「いいだろう、話してみろ」

「それじゃあ……」

 

そして壱与は蓮華の前に出る。

 

「私の名は邪馬台国の壱与と申します」

「邪馬台国?」

「ここから東にある海を越えた国の事よ」

「お前は?」

「私の名は管輅。ちょっとした占い師ですよ」

「なるほどな。それで用件は?」

「我らが邪馬台国は、海の向こうより現れた謎の軍の襲撃を受けました。どうか、孫権殿、我らが邪馬台国をお救い下さい!」

「? どういうことだ?」

 

壱与は説明した。

邪馬台国の統率者の卑弥呼が突然失踪し、国は混乱を始めた。

そんな時、海の方から侵略を受けたのだ。その軍の名は「天照軍」。

『新たな天下を照らす者』と謳う天照と名乗った女王が率いた軍であった。

その天照軍は見たことのない巨大戦艦で攻めてきた。

邪馬台国は戦艦をもっておらず、卑弥呼不在のため連戦連敗。

しかも恐ろしい事に天照とその腹心である月読と須佐能は戦闘中にとんでもない姿に変わったとの事であった。

壱与は決死の覚悟で交流のあった曹操のところに頼ろうとしたら、天照軍の襲撃を受け、この呉の国に流された。

そして管輅から曹操がいないことを聞いたのだ。

 

「そうか……ところでそのとんでもない姿とは?」

「はい。三人とも見たこともない鎧に突然姿を変えるのです」

「鎧に姿を変える?」

「はい」

「………」

 

一刀は何となく嫌な予感がした。

 

「少しいいかな?」

「なんでしょうか?」

「その鎧に姿を変えるとき、顔に仮面を被らないか?」

「あ、はい! 仮面も被ります」

「当たりか……」

 

一刀は思わず手を顔に当てる。

 

「どうしたの一刀?」

「それは完全に仮面ライダーだ」

「かめんらいだー?」

 

壱与は何のことかよく分かってない状態だった。

 

「壱与ちゃん、今から俺もその仮面ライダーに変身するけど、驚くなよ」

 

そして一刀はクウガの変身ポーズを取る。

 

「変身!」

 

一刀は仮面ライダークウガに変身した!

 

「ひゃあ!」

 

壱与は思わず腰を抜かしてしまった。

 

「驚かせてごめん。でも……」

「は、はい! 確かに天照達はそのようなものに姿を……」

「大当たりか……」

 

一刀は元の姿に戻る。

 

(相手が仮面ライダーとなると……最低でもあの一刀さんには知らせておいた方が良いですね)

 

管輅は一人でそう思った。

 

「蓮華」

「却下よ」

「何も言ってないだろ?」

「あなたの意見を聞く気はないわ。あなたは謹慎中の身なんだから……」

「まあいいさ。俺一人でも……」

「あのぅ……」

 

亞莎が手を上げる。

 

「うん?」

「壱与さんに聞きたいのですが、その天照、月読、須佐能以外は一体どんな感じなのでしょうか?」

「どんな感じ?」

「例えば格好とか……」

「格好……そういえば皆さんとあまり変わらない格好でした」

「あまり変わらない……もしかして曹操軍……」

「……なるほどですね~。それだったら曹操軍がこの大陸にいなくなった理由が分かりますね~」

(曹操軍……? いや違うな。曹操は仮面ライダーの変身能力とかアイテムは持っていなかった)

 

一刀は赤壁での曹操との一騎打ちを思い出す。

 

「(仮に俺と戦った後に手に入れたとしてもそんな力を使う人間とは思えない。何かあるかも……)

よし! なら俺達は全員で邪馬台国を助けに行こう!」

「何ですって!?」

 

蓮華は思わず立ち上がった。

 

「一刀!」

「全員がダメなら俺一人で行くぞ」

「何故そこまで……」

「仮面ライダーの悪行は仮面ライダーが正さないといけないからな」

「仮に全員で行くとしても劉備達が国境線を越える可能性だって…」

「流石に無いと思うよ。そんな事したら仁の道に反する。あの劉備はそんなことしないさ」

「言いきれる自信は?」

「さあね。ほとんど俺の勘」

「お待ち下さい」

 

壱与が止める。

 

「どうしたの?」

「いえ、そこまでしてもらうなら見返りを……」

「別にいいのに……」

「そういうわけにはいきません。見返りとして……『不死の霊薬』。

一壺あれば一人、二壺あれば二人、死者を甦らせる事が出来ます。それを二壺差し上げます」

「………」

 

蓮華は考える。

 

「どうする? 蓮華」

「……分かったわ。呉の総力を上げて邪馬台国を救い出します!」

「あ、ありがとうございます!」

 

壱与は土下座してお礼を示す。

 

「さてとそれじゃあ私はこれで……」

 

管輅はさっさとその場を去った。

そして玉座の間を出て、外に出ると……。

 

「さてと、とりあえずあの一刀さんに連絡をするようにあの世界の私に伝えましょう」

 

管輅はそういうとその場から姿を消した。

 

 

とある世界。

 

「ふあ~あ」

 

一刀が大きなあくびを出す。

 

「どうしたんですか? 一刀さん」

「だらしないあくびなんかして……」

 

月と詠が一刀のあくびに反応する。

 

「いや、少し退屈だなって……」

 

この北郷一刀は仮面ライダーディケイドに変身する力があり、この世界は一刀の元いた世界である正史と一刀が飛ばされた外史ととなりあったものとなり、外史の人間が正史に行きやすくなったのだ。

この世界の一刀は今、外史で作った写真館で暇を潰しているのだ。

 

「そんなこといってると、またろくでもないことが起こるわよ」

「そういうな……」

 

そんな会話をしていると、写真館の玄関の扉が開く音が聞こえる。

 

「いらっ……しゃい」

 

そこに来たのは管輅であった。

 

「管輅。お前と言う事はあまりいいニュースじゃないみたいだな」

「はい」

 

管輅は呉の国に居る一刀の世界で何があったのかを説明した。

 

「なるほど、敵の仮面ライダーが三人……」

「それであなたの力が必要なのですが……」

「少し前もそんな事あったな……」

 

一刀は思い出す。少し前は蜀に行った自分が行方不明なので探して欲しいと……。

結局見つけた後は戦闘が起こったのは言うまでもない。(参照 仮面ライダー×真・恋姫†無双 蜀編  クロスロードより)

 

「だけどな……この後と言うかしばらくは凪や沙和に明命達とデートの予約があるからな……」

「そうですか」

「まあだけど、力を貸してくれそうな俺には声をかけるさ」

「ありがとうございます」

「ああ、けど、心当たりは二人居るけどそのうちの一人は、管輅、君が説明して連れて行ってくれないか?」

「いいですけど、何で私ですか?」

「そいつは少しばかり特殊でな。俺よりもまだ顔を知らないお前がいいだろうと思ってな」

「そうですか。分かりました」

「それじゃあ、本当に少しだけど出かけてくるわ」

 

そういうと一刀は椅子から立ち上がり、写真館を出て行った。

 

「それじゃあ私も……」

 

管輅もその場から去った。

 

「行っちゃったね」

「まああのやる気のなさ。いつもより早く帰ってくるわよ」

 

 

とある世界の日本。

 

「よし! 後一周!」

『はい!』

 

一刀は教導官として訓練生達を鍛えていた。

 

「よし今日の俺の教導は終わりだ! 今日はもう休んでいいぞ」

「いいんですか?」

「いつもより早い気が……」

「俺にも都合があるんだよな、これが!」

「分かりました!」

「今日はありがとうございます!」

 

訓練生達は一刀にお礼の言葉を言うとグラウンドから去って行った。

 

「さてと……そろそろか」

「一刀ーーーーー!」

「美沙緒。遅かったな」

「ごめんごめん。最終調整が遅れちゃって……」

 

この少女の名は睦月美沙緒。この世界の一刀の相棒である。

この世界の北郷一刀は仮面ライダーアクセルに変身する力を持ち、軍に所属しており昔はその軍の特殊部隊に居た。その特殊部隊の名は『ムーン・ロック』である。

一刀と美沙緒は少し前にこの世界で起こった戦争の終盤に敵組織であった『アルハイム』と戦い、最高幹部の一人であったヴァリュザ・ガードと戦闘。

その際に次元の亀裂により外史に飛ばされたのだ。相棒の美沙緒とヴァリュザと共に。

一刀と美沙緒は曹操に、ヴァリュザは劉備に付いた。

そして魏と蜀の最終戦争のときに一刀と美沙緒は見事ヴァリュザを倒し、それからすぐにこの元の世界へと帰ってきたのだ。

しかし二人は再び自分達の知るあの曹操達に会いたいと思い、現在は美沙緒は医者兼科学者として幻影体についてと並行世界に行ける研究をしているのだ。そのため科学者などが着ている白衣である。

研究はしていても中々並行世界に行ける「次元跳躍機」が出来ないのだ。

それと並行して美沙緒はあるものを作っていたのだ。

今回はあるもののテストのために一刀は訓練を早めに終わらせたのだ。

 

「はい、一刀」

 

美沙緒がそれを渡す。それは仮面ライダーアクセルを更なる段階に進めるためのメモリ、「トライアルメモリ」であった。

 

「さてとまずは変身だな」

 

一刀はアクセルドライバーを腰につけ、手にアクセルメモリを持つ。

 

「アクセル!」

「変……身!!」

 

一刀はアクセルメモリをアクセルドライバーに挿入する。

そしてドライバーの右グリップ部のパワースロットルを捻る。

 

「アクセル!」

 

一刀は仮面ライダーアクセルに変身した。

 

「よし」

 

一刀は次にアクセルドライバーからアクセルメモリを抜き、トライアルメモリを変形させ、メモリ状態にさせる。

 

「変……身!!」

 

トライアルメモリをアクセルドライバーに挿入する。

そしてドライバーの右グリップ部のパワースロットルを捻る。

 

「トライアル!」

 

体の色が赤から黄色に変わる。

次によくレースで聞く発信準備音がタイミングよく三回鳴り、アクセルの装甲が変わった。

装甲が薄くなり、体の色が先ほどの黄色から青色に変わった!

これぞ仮面ライダーアクセルトライアルの姿である。

 

「おおう。成功した」

「ああ。後は動きだな」

「あ、言い忘れた」

「何だ?」

「マキシマムドライブをする時は10秒が限界だからね」

「10秒過ぎるとどうなる?」

「変身が強制解除されるの。だからそれを押してマキシマムドライブする時は10秒以内にもう一度押してね」

「10秒か……。とりあえずは普通の動きの見るとするか」

 

一刀はその場でパンチとキックを空に切る!

 

「早いな……。それにパンチもキックも軽く感じる」

「そりゃあ、あの装甲を外したんだもん。軽くなるよ。でも、攻撃力と防御力は最初より下がってるからそこは注意してね」

「そうなると連続パンチとキック、それにマキシマムドライブが決めてになるのか」

「そういうこと。まあ一刀ならその姿になってもエンジンブレードを振り回せるよ」

「何かあったら麒麟ってところだな」

「それじゃあマキシマムドライブのテストしようか」

「そうだな」

 

一刀がトライアルメモリを抜いて、ボタンを押そうとすると……。

 

「北郷さん!」

 

そこに受付係り(?)の人間が走ってきたのだ。

 

「うん?」

「何だ?」

「北郷さんに会いたい人がいるんですけど……」

「俺にか?」

「はい」

「……」

「……仕方ない」

 

一刀は変身を解除した。

 

「美沙緒」

「私も付いていくからね」

「そう言うと思ったんだな、これが……」

「どうしましょう?」

「とりあえず応接室に通すようにしてくれ。俺と美沙緒は先に部屋に行くようにしたいから少し待たせてくれ」

「分かりました」

「行くぞ」

「うん」

 

一刀と美沙緒はひとまず先に応接室に向かった。

 

 

一刀と美沙緒が応接室で人を迎える準備をした。

 

「これでよし……」

「さてと……」

 

一刀と美沙緒が椅子につく。すると扉を叩く音が聞こえる。

 

「来たね」

「どうぞ」

 

一刀の言葉を聞いて、巫女服を着た一人の少女が応接室に入ってきた。

 

「おじゃまします」

(思ったより可愛いね)

「(ああ)所で君は誰だ?」

「私の名は管輅と言います」

 

そう。この世界の一刀に会いに来たのは管輅であった。

この管輅は先ほどまでディケイドの一刀のところにいた管輅である。

 

「管輅……確か三国志に出てくる占い師の名前だな」

「知ってもらって光栄です」

「管輅って……確か華琳さん達が聞いた占いの言葉を言った人の名前だよね」

「その管輅ですよ」

「嘘ーーーーーーーー!?」

 

美沙緒はとても驚いた。

 

「正確にはその管輅とつながりのある別の管輅ですけどね」

「? それってつまり……」

「別の世界の管輅という事か」

「そういうことです」

「もう別の世界の人間がこの世界に来るなんて……」

「それで俺に用とは何だ?」

「はい。簡単に説明しましょう」

 

管輅は別世界、外史のことを話し、呉の世界で起こったことを話し、それをディケイドの一刀と話しあった結果、アクセルの力を持った一刀に協力を求めようとし、この世界に来たというのだ。

 

「なるほどね~」

「別の世界ではそんな事が起こっているのか」

「それでどうでしょうか?」

「では言おう。俺は正直、忙しい。見ての通りここは軍施設。そして俺はその教導官だ」

「そうですか」

 

管輅は何事もないかのように対応する。

 

「それでは……」

「待て」

 

管輅が立ち上がって扉を開けようとすると一刀が止める。

 

「?」

「誰が引き受けないと言った?」

「一刀?」

「良いだろう。助けに行ってやる」

「いいの? 一刀」

 

美沙緒が一刀に聞くが……。

 

「美沙緒はどうなんだ? その様子だと……」

「もちろん行く気満々だよ! そんな悪い奴倒してやらないとね♪」

「戦争というのはどちらも正しいと思ってやっている。だけど、そうだな。一方的でなおかつ非情なのは許せんな」

「では……」

「俺と美沙緒。二人だ」

「分かりました。では終わったら見返りを……」

「見返り?」

「ええ。あなた達が製作している『次元跳躍機』に必要な技術の提供でも……」

 

管輅がそういうと……。

 

「そんなのいらないよ」

「ああ、そうだな」

「何故ですか?」

「私達は自分達の力であの世界に行きたいからね♪」

「そういうことだ。俺達は俺達の技術と力であの華琳達に会いに行く」

「……いい心意気ですね。分かりました」

「まあでも時間調整くらいはして欲しいよね」

「そうだな。その世界に行った後、この世界に戻ったらかなり時間が経ってたなんてことになったら俺達、かなりのお怒りをくらわされるからな」

「分かりました。では行きましょうか……」

「いや、せめて出かけると部下達に言ってからにしてくれ」

 

 

ある世界の魏。

 

「みんな大好きーーー!」

『てんほーちゃーーーーん!』

「みんなの妹ぉーっ?」

『ちーほーちゃーーーーん!』

「とっても可愛い」

『れんほーちゃーーーーん!』

 

許昌にある特設ライブ会場では張三姉妹のライブが行われていたが……。

 

「ふふふふ……」

 

そこにこの世界にいた一刀がライブステージに現れた。

 

「あら?」

「あなたは?」

 

一刀のところに何かが飛んでくる。それはカブトゼクターだったが、そのカブトゼクターは黒かった。

 

「変身」

「Henshin」

 

一刀が黒いカブトゼクターをライダーベルトにはめる。

一刀は仮面ライダーカブトマスクドフォームに変身するが、変身したと同時に鎧の色が黒くなっていき、青色の眼も黄色の眼に変化していった。

しかも変身と同時にキャストオフし、ライダーフォームに変身するが、その姿は赤色ではなく、黒色であった。

この姿は仮面ライダーカブトではなく、仮面ライダーダークカブトの姿であった。

 

「きゃあああああ!」

「ふふふ、このまま君達を襲ってあげよう」

「皆、大変よ!」

「ダークカブトが私達の前に現れたわ!」

「でも大丈夫! こんな時は強い英雄がいるんだもの!」

「皆! あの英雄を呼ぼう! せーーーーーのっ!」

『キュリティカルちんきゅーーーーーーーーー!』

「待つのです!」

 

皆の声を聞いて何者かの声が聞こえてくる。

 

「誰だ!?」

 

ダークカブトが辺りを見るが、その声の主は見つからない。

 

「ここなのです!」

 

その声の主はライブ会場近くの家の屋根の上にいた。

 

「誰だお前は!?」

「世を悪に染めようとする者はこのキュリティカルちんきゅうが成敗してやるのです! とおっ!」

 

そのキュリティカルちんきゅうと言うのは陳宮つまりは音々音(愛称はねね)であり、ねねの格好は濃い緑色のマントを羽織、目にはアイマスクのようなものをかぶせていた。

キュリティカルちんきゅうは屋根から勢いよく飛び降り、ステージに降り立つ。

 

「勝負するのです! ダークカブト!」

「いいだろう……」

 

キュリティカルちんきゅうとダークカブトの戦闘が始まる!

 

「ふっ! はっ!」

 

ダークカブトが拳を当てようとするが、キュリティカルちんきゅうの身長が低いため、必然的にかがんでんしまい、拳が思いように当たらない。

 

「そこなのです!」

 

キュリティカルちんきゅうがダークカブトの脛を蹴る!

 

「ぐぅう!」

 

いくら仮面ライダーに変身していても脛はすごく痛いのだ。

 

「まだまだなのです!」

 

キュリティカルちんきゅうは蹴りの連打をダークカブトに当てる。

 

「ぐぉお!」

「次で決めるのです!」

 

キュリティカルちんきゅうは再び屋根に飛び移る。

 

「はああああああ!」

「1,2,3」

 

ダークカブトはゆっくりとカブトゼクターにあるボタンを三つ押し、ゼクターホーンを最初の位置に戻す。

 

「ライダー……キック」

 

その言葉と同時にゼクターホーンを再び倒す。

 

「Rider Kick」

 

ゼクターから足にタキオン粒子がたまる。

 

「ちんきゅーーーーーーーーーキーーーーーーーーーーーーーック!!」

「はっ!!」

 

キュリティカルちんきゅうのとび蹴りとダークカブトのキックがぶつかり、その場で小さな爆発が起こる。

 

「はっ!」

「ぐわぁあ!」

 

キック同士の戦いはキュリティカルちんきゅうに軍配が上がり、ダークカブトはステージに転がる。

 

「覚えていろ……」

 

そういうとダークカブトはステージ裏へと姿を消していった。

 

「ありがとうキュリティカルちんきゅう」

 

天和がキュリティカルちんきゅうにお礼の握手をする。

 

「当然のことをしたまでなのです。それでは、さらばなのです!」

 

そういうとキュリティカルちんきゅうはまた屋根に飛び移り、そのままいずこかへと去っていった。

 

「皆ーーーー、キュリティカルちんきゅうに対してお礼の歌を送るよーーーーー」

「いいよねーーーーーー?」

『ほわぁああああああああ!!!』

 

張三姉妹はキュリティカルちんきゅうに感謝しながら再び歌い出す。

ステージ裏では……。

 

「ふぅ……」

 

ダークカブトが変身を解き、元の一刀に戻る。

 

「一刀さん、お疲れ様です」

 

月が少し疲れた一刀の所に駆け寄り、一刀の汗をふく。

 

「ああ月、ありがとう」

「よくあんなこと何度も出来るわね」

 

そこに詠もやって来る。

 

「思ったよりも楽しくてな」

「ねねも楽しいのです」

 

そこにねねがやって来た。

 

「楽しいのはいいが、俺の脛を思いっきり蹴るのはやめて欲しいな。いくら仮面ライダーでも痛いものは痛いぞ」

「いつも恋殿といちゃいちゃしてるから天罰を与えてやったのです」

「いつもじゃないだろ…。まあしかし、まさかこのカブトゼクター、色を塗るだけでダークカブトゼクターに変わるとは思わなかったよ」

 

実は先ほどの戦いは演技、つまりはショーだったのだ。

ちなみに先ほどのライダーキックはタキオン粒子の溜まった右足ではなく、溜まっていない左足で放ってたのだ。

もし右足だったらねねは負けているのだから……。

ダークカブトゼクターはカブトゼクターを黒く塗っただけであった。

 

「これも管輅のお陰かな……」

「だと思うぜ」

 

そこに突然別の人間の声が聞こえる。

四人がその方を振り向く。

そこには一刀がいた。

 

「一刀さん?」

「ディケイドの俺か」

「よく分かるな。お前は……」

 

そう。現れたもう一人の一刀はディケイドに変身する一刀であった。

 

「その格好でなおかつ異世界に簡単に行けるのはディケイドの俺くらいだからな」

「それもそうだな」

「あの、一刀さん……?」

「悪いけど三人とも少し離れてくれないか? 俺はちょっと俺同士の話をしたくてな…」

「……分かりました」

「ではさっさと行くとするのです」

 

月、詠、ねねはそこから少し離れて行った。

 

「いいのか?」

「あまり面倒事を聞かせたくないしな。それに並行世界の事をきちんと言ったのはまだ華琳だけだし……。

それで俺に何の用だ?」

「実はな……」

 

ディケイド一刀は魏の一刀に呉の世界で何があったのかを説明した。

 

「また呉の俺か……」

「またって……」

「ドラスジョッカーの元の一つの司馬懿を一緒に倒すのに協力してもらった仲だ。

まあ司馬懿は許貢って奴の体を乗っ取って俺達に戦いを挑んだけどな」

「司馬懿は本当にしつこかったんだな」

「今度の件は……」

「司馬懿ではないみたいだな。だが仮面ライダーがいるのは確定だけどな」

「仕方ないな……。とりあえず華琳に事情を説明してまた行くとするか」

「本当か?」

「別の世界とは言え、俺のピンチの一つだ。俺が行かなきゃ誰が行く?」

「……そうだな。ああ、それと一応言っておくがお前の他にもう一人別のお前を呼んでる予定だ」

「別の俺? 蜀のか?」

「いや、正式に軍に入ってる仮面ライダーアクセルのお前だ」

「アクセルの俺もいるのかよ……」

 

魏の一刀は「本当に自分という存在が多いな」っとつくづく思ったのだった。

 

 

数日が経った。

呉では軍船が集められ、皆がその集められた軍船を見る。

 

「何だか久しぶりですね」

「それもそうじゃ。これだけの軍船を集めたのは赤壁以来じゃからの」

「ところでこれを見てどう思う?」

 

一刀が呉の軍船を始めてみる壱与に尋ねる。

 

「すごく……多いです」

「北郷、皆揃ったか?」

「後は蓮華だけだ」

 

実はまだ蓮華と仲直りをしていない一刀。

つまり一刀は蓮華と話しにくいのだ。

そこに蓮華が来て、一刀と目が合うが……。

 

「かーーーずと!」

 

すると突然小蓮が一刀に抱きつく。

 

「うわっ! 小蓮……」

「一刀はシャオと同じ船に乗るんだよね?」

「いやそれは俺が決めることじゃ……」

 

蓮華に話しかけようとしたら蓮華は顔を背ける。

 

(……)

(蓮華の奴、まだご機嫌斜めのようだな)

(大丈夫ですかね?)

 

一刀と蓮華の険悪さを不安がるキバットとタツロットであった。

少しして全員揃った事により蓮華が号令をかける。

 

「皆の者! これより我らは海を渡り、邪馬台国を滅ぼそうとする天照軍と戦う!

これは平和のための戦い! 決して負けるわけにはいかない! 皆、出講の準備!」

『応っ!』

 

そして全員出航の準備に入る。

その準備をする一刀のところに蓮華が来る。

 

「蓮華」

「一刀、あなたは壱与と一緒に小蓮の船に乗りなさい」

「え? でも蓮華は……」

「蓮華様、北郷を乗せないのですか?」

 

そこに思春が来る。

 

「ええ。それと思春、あなたもよ」

「!? 何故です!?」

 

思春は驚いた。

思春は蓮華の警護を一刀が来る前からやっている。事実上蓮華の専属ボディガードのような存在なのだ。

蓮華はそれを拒否したのだ。

 

「思春、もし姉様だったらどうすると思う?」

「……」

「姉様だったら一人で指揮をしているはずよ」

「……」

「それに私はあなたを有能な将として船の指揮を任せたいのです。だから自分の船を指揮しなさい」

「しかし…」

「少し良いか?」

 

一刀が会話の中に割って入る。

 

「何?」

「いくら雪蓮でも一人で指揮をするとは思えないな」

「何が言いたいの? あなたが乗りたいというの?」

 

実は今蓮華が言った「あなたが乗りたいの?」と言うのは一刀が蓮華に謝れば乗せてあげると言う意味が含まれているのだが……。

 

「そうじゃない。誰か一人補佐として乗せたほうが良いってことだ」

「?」

「蓮華は全軍の指揮をしないといけないときが来る。その時自分の船を指揮する人間が別に必要だという事だよ。それは分かってるよね?」

「も、もちろんよ」

 

蓮華は正直、一刀のことを考えていたためそこまで頭が回ってなかった。

 

「それで俺は明命が良いと思う」

「明命を?」

「明命の船の扱いは呉の中でも一、二の腕だ。だから蓮華の補佐を任せられると思うけど……」

「………分かった。思春、明命を呼んできて」

「はっ!」

 

思春は明命を呼んで戻ってきた。

 

「明命は私の船の副官をあなたに任せます。いいですね?」

「は、はい! 周幼平、蓮華様の副官、頑張ります!」

「では……全員出航開始!」

『はっ!』

 

全員が出航を始める。

 

(頼むよ、明命)

 

心の中でそう思い、小蓮の船に乗り込む一刀であった。

 

 

それから船は海を航海していく中、呉の将は一時、一つの船に集まった。

 

「あついな……」

「全くだぜ」

 

一刀とキバットが太陽の暑さで少しまいってくる。もちろんタツロットも。

 

「か~~~ずと♪」

 

小蓮が後ろから声をかける。

 

「小蓮か。今日は日差しが強いから、中に……!!」

 

一刀は小蓮の格好を見て驚いた。

小蓮の格好はなんとビキニであった。

 

(あれ? 俺、ビキニの提案してないよな……)

 

この世界の一刀は色々服を考える余裕はないのだ。

他の世界ならともかくこの世界での服は一刀は一切関与していない。

 

(またこの世界のオーバーテクノロジーか……)

 

おまけにやって来た壱与に亞莎も同じようなビキニ姿だった。

 

(………ここに祭さんと穏がいなくてよか……)

 

そう思った矢先、祭と穏がやって来た。しかもビキニ姿。

一刀は思わずかがみそうになったがなんとかこらえた。

 

(もうやだこの国……)

 

一刀はネタであったがそう思った。

 

「ところで天照軍はどんな船をもっておるのじゃ?」

 

祭が壱与に尋ねる。

 

「祭さん、それは蓮華がいる時に話したほうが……」

「こういう場でないと今はくつろんげのでな……」

「……確かに今の蓮華の前じゃな……」

 

一刀は頭をかく。

 

「そうですね……。一言で言いますと巨大な戦艦でした」

「巨大な戦艦?」

「具体的にどんなものでしょうか?」

「私も人から聞いた話なのですが、天照軍の船に一隻だけ巨大な戦艦があるみたいなのです。

何でも城郭が船の上に乗った様な大きさで、三千以上の兵士が武器を手にしていて、船体は石や鉄のように硬く、あらゆる矢や石をはじいたそうです」

「…話を聞く限り、曹操の楼船の三倍ですね」

「そんな馬鹿な……」

 

この話を聞いて一番驚いたのは祭であった。

 

「わしはそんな船聞いたことないぞ。石や鉄でできた船など見たことないわ! ましてや石や鉄が浮くわけなど……」

「そうでもないんだよな」

 

そこに一刀が入ってくる。

 

「俺の世界じゃそういう鉄でできた船は存在するんだよな」

「なんと!?」

「とはいっても未来の話だけどね。この時代でそんな石や鉄でできた船は聞いた事ないな。

三千人以上の人間が乗れる大型の船ならどうか分からないけど……」

「あ! 思い出しました!」

 

亞莎が思い出してその場で少し飛び跳ねる。

 

「何を思い出したんだ?」

「三千人以上の人が乗れる船です。一つだけあります」

「それは一体……」

「司馬遷の『史記』の中の一説にあります。『秦の始皇帝は大いに喜び男女三千人職工百人を徐福にあずけ、船に乗せて行かしむ」

それで『漢書』にも『徐福をして海に入り、仙薬を求めしむ。童男女三千人、職工百人』と同じようなことが書かれているのです」

「なるほど。それなら大きな船があってもおかしくないわけだ」

「本当に昔っからあるんですね~」

 

キバットとタツロットが感心していると……。

 

「なら何故その三千人が乗せられる船が今はないの?」

 

そこの蓮華が明命をつれてやってきたのだ。思春も一緒である。

蓮華と思春はいつもの格好だが、明命は現代で言うスクール水着。おまけに胸にはひらがなで「ごぐん・しゅうたい」と書かれていた。

「それに、徐福は巨大船一隻で行ったのではなく、数隻、または数十隻で行ったとも考えられるでしょう」

「まったく考えられない……わけじゃないけどな……」

「とにかく、全員、ただちに自分達が指揮する船に戻りなさい」

 

蓮華が一刀ににらみをきかす。

 

「一刀、今度勝手に軍議を開くようでしたら、今度こそ私はあなたに厳重な罰を与えます。いいわね?」

(俺が開いたわけじゃないんだけどな……)

 

一刀はそう言おうと思ったが、蓮華のにらみが強くて言いたくても言えなかった。

 

「分かった」

「これ以上、私を失望させないで」

 

蓮華は後ろを向く。

その様子を見る一刀には少し寂しさを覚えた。

 

(蓮華、君は一体俺にどうして欲しいんだ? そして君は何を望んでいるんだ?)

 

蓮華とのすれ違いが少し長かったため、蓮華の気持ちが分からなくなっていた一刀であった。

 

 

それから数日が経った。

船影が見えたとの報告があった。空はどんよりした雲に覆われていた。

その上霧まで出てきたのだ。

 

「こんな状態で敵と遭遇したらまずいな……」

 

すでに臨戦態勢であり、蓮華の乗る船から銅鑼がなる音が聞こえてくる。

 

「まだ敵の規模も分からないの陣を組むのは危険だぞ。分かっているの? 蓮華は……」

「お姉ちゃん、きっと怖いんだよ」

「怖い?」

「お姉ちゃん、自分だけで水軍を動かすのこれが始めてだもん」

 

一刀は絶句した。

 

「それは早く言え!」

「え、え?」

 

一刀はすぐにクウガのベルトであるアマダムを体内から出す。

 

「一刀?」

「すぐに戦闘に入ってもいいようにしておく」

 

先頭に立つ、祭と穏は敵の船を確認するが、藁でできた船が五十隻ほどしかない事に気付く。

しかもその船は四人乗るのがやっとの小型であった。

 

「まるでゴキブリのような群れじゃの」

 

完全に祭は見くびっていた。それが罠である事を知らずに……。

 

 

「蛟龍(こうりゅう)隊・火龍(かりゅう)隊が既に敵の先陣と接敵したそうです」

「簡単すぎて面白くないわね」

 

その報告を受けるのは天照軍の統率者天照。

報告をしたのは須佐能であった。

 

「まああの娘のおかげで奴らが我らを蛮族だとあのどっているのが分かったから……あの娘に蜂蜜でも上げておきなさい」

「はっ!」

「この戦、我らの勝ちね」

 

 

祭と穏は目の前にいる藁の船の部隊を攻撃しようとするが、どこかおかしい事に気付く。

穏は水平線から空へと視線を変える。

すると自分達のすぐ近くには壱与の言っていた巨大な戦艦が存在していた。

 

「祭様! 火矢を上に放ってください!」

「なんじゃと!?」

「いいから、早く!」

「分かった。皆の者、火矢を空に向かって放て!」

 

火矢が空に向かって放たれたことにより霧が晴れた。

そしてようやく気付いた巨大な戦艦が自分達の目の前にいることを……。

 

「うわあああああああ!」

「なんだあれ!?」

 

呉の兵士達はそのあまりの巨大な戦艦に悲鳴を上げる。

しかもその戦艦の甲板には三千人の兵士が矢を構えていた。

そして矢が放たれた!

 

 

「何があったんだ!」

 

銅鑼が打ち鳴らされる。

 

「一刀! お姉ちゃんから突撃の合図だよ!」

「なんだって!?」

「穏と祭が危ないみたいだからその救出に向かうんだって」

「蓮華自らかよ!」

 

一刀がクウガの変身ポーズを取る。

 

「変身!」

 

一刀は仮面ライダークウガに変身する。

 

「今は陣を固めて敵の出方を待ったほうが良い! 俺達は敵の旗艦を見つけてないのに……」

「きゃああああああ!」

 

小蓮が悲鳴を上げる。

 

「どうしたんですか!?」

「あ、あれは、まさしく天照軍の旗!」

 

壱与が一刀にしがみつく。

一刀は上を見上げる。そこには天照軍の巨大な戦艦があったが、一刀は思った。

 

「もはやあれは船じゃない。城だ……」

 

一刀はそれでも諦めようとしなかった。

 

「少し離れて」

 

一刀が壱与に離れるように言う。

 

「超変身!」

 

一刀はクウガマイティフォームからドラゴンフォームにフォームチェンジした。

一刀は近くにあった棒を手に持ち、ドラゴンロッドに変える。

 

「おお!」

「小蓮、少し船を任せる」

「一刀は!?」

「少しあの船に飛び移ってくる。キバット、タツロットも来い。場合によってはキバに変身する」

「おっしゃ!」

「任せてください!」

「行くぞ!」

 

一刀はドラゴンフォームの力で軽々と巨大な戦艦の甲板に飛び移った。

 

「何!?」

「何者だ!?」

「うぉおおおおおりゃあああああああ!!」

 

一刀はドラゴンロッドをふりまわし、天照軍の兵士達をなぎ払う!

 

「くっ! こいつ……」

「強い!」

「まるで天照様や月読様や須佐能様のようだ……」

「すぐに天照様に報告を!」

 

伝令の一人がすぐに天照に報告しに行った。

 

「何ですって?」

「はい。敵の一人がこの船に侵入。甲板の兵士達はその者と戦闘中ですが、なかなかの強さで止める事が出来ないようで……」

「天照様……」

「仕方ないわね。須佐能、あなたが相手をしてやりなさい」

「はっ!」

「月読」

「なんでしょう?」

「『覇王砲』の準備をしなさい」

「『覇王砲』をですか?」

「二度も同じ事を言わせないで頂戴。『覇王砲』を『孫』と言う名の牙門旗に向けて放ちなさい」

「はっ!」

 

月読は敬礼して、覇王砲の準備をさせに行く。

 

「この私に歯向かったことを後悔させて上げるわ」

 

 

「おりゃあああ! どりゃああああ!!」

 

一刀はドラゴンロッドを振るい、敵兵達を次々に減らしていく。

そこに……。

 

「何というざまだ」

「須佐能様!」

 

須佐能が来たのだが…。

 

「!」

 

一刀は須佐能の姿を見て驚いた。

 

「夏侯淵?」

 

須佐能は夏侯淵にとてもよく似ていたのだ。

 

「ほぅ。やはりあの娘の言ってた通り、我らの姿は大陸の人間とよく似ているようだな」

「その言い方……別人みたいですね」

「喋るのか? その虫どもは」

「虫だと!?」

 

須佐能の虫発言にキバットとタツロットは怒る。

 

「落ち着け、お前たちがどんな生き物か分かってないだけだ」

「しかしお前も変わった格好をしているな」

「それはどうも」

「だが私も似たような格好が出来るぞ」

「何?」

「お前達、下がっていろ」

「しかし須佐能様……」

「いいから下がっていろ。巻き添えを食らいたいのか?」

「は、はい!」

 

兵士達は急いで甲板から離れていった。

 

「?」

「ふん!」

 

須佐能の腰からベルトが姿を現す。

 

「なっ!? ベルト?」

「変身」

 

須佐能の体が黒く包まれ、その黒いものがなくなると須佐能の姿が変わっていた。

その姿は仮面ライダーG4によく似ていたが、G4よりも黒さがあり、何より外見がまがまがしいものがいくつか存在していた。

 

「その姿は……」

「これが私のもう一つの姿、仮面ライダー焼箕(やき)だ」

「やはり仮面ライダーだったのか……」

「では行くぞ」

 

焼箕は突然武器を取り出す。

正確には武器を形成したのだ。何もないところで……。

しかもその武器はマシンガンのようなものであった。

 

「おいおい…」

「!」

 

そしてマシンガンのようなものから弾丸が発射される。

 

「うお!」

 

一刀はドラゴンフォームのジャンプ力をいかして、ジャンプしてよけ、当たりそうな弾丸はドラゴンロッドで回しながら防ぐ。

 

「やるな……だが!」

 

焼箕は右手にマシンガンを持ち、左手にはまた別の武器が現れる。

 

「発射!」

 

左手にある武器は小型のランチャーであり、そのランチャーから小型のミサイルが放たれ、そのミサイルは誘導弾であり、一刀に直撃しようとする。

 

「超変身!」

 

一刀はこのままでまずいと判断し、ドラゴンフォームから防御力が高いタイタンフォームにフォームチェンジする。

タイタンフォームは重いフォームなのでそのまま船に落ちていく。

 

「くっ!」

「一刀!」

「大丈夫ですか?」

「何とかな……」

 

タイタンフォームのお陰でダメージは軽減できたが、それでも直撃は受けている。

 

「まだ立てるか。ならこれでどうだ?」

 

すると焼箕は突然と姿を消す。

 

「消えた?」

「違う! これは! ぐわっ!」

 

一刀は後ろから突然攻撃を受ける。

 

「一刀さん!」

「やっぱり速度を上げたんだ」

「その通り。お前にこの速さ、ついてこれるか!」

 

焼箕は大量の武装で一刀を攻撃するため、一刀はフォームチェンジする隙がなかった。

仮に対応できるペガサスフォームに変身できたとしてもペガサスボーガンになる道具がないのだ。

 

(このままじゃまずい……)

「これで終わりだ!」

 

焼箕が一刀の目の前、しかも眼前に現れる。

 

「やられる!」

「とりゃあ!」

 

 

すると突然、焼箕の攻撃を阻むかのように少女が焼箕の横からキックを入れる。

焼箕は突然のキック乱入に対応できず横に吹っ飛ぶ。

 

「くっ! 新手か?」

 

そこにいたのは睦月美沙緒であった。

しかもその格好はかつてアクセルに変身する一刀と共に外史に居た時の、露出の高い格好であった。

 

「……誰だ?」

「間に合ったようだな」

 

そこにバイクフォームから元に戻った仮面ライダーアクセルがやってくる。

 

「お前は……誰だ?」

「別の世界の俺。とでも言っておこう」

「別の世界の……俺?」

「そうだ。管輅って奴に頼まれてこの世界に連れてこられた」

「管輅が……、であの子は?」

「俺のパートナーの……」

「睦月美沙緒だよ♪」

 

美沙緒が呉の一刀に自己紹介する。

 

「睦月?」

「そう、よろしくね。一刀」

「あ、ああ……」

 

呉の一刀は美沙緒と握手するが……。

 

「? お前浮いてないか?」

「まあ色々あって、今は幽霊に近い状態かな」

「幽霊……」

「その事は時間があったら説明してやる。それよりも……」

 

アクセル一刀と呉の一刀と美沙緒は倒れている焼箕の方を見る。

 

「くっ……」

 

焼箕は立ち上がる。

そんな時であった。

突然この船からものすごい爆音が聞こえてきたのだ。

 

「今のは……?」

「覇王砲が放たれたか」

「覇王砲?」

 

呉の一刀は船の側面を見る。するとそこには大きな大砲の先端が出ていた。

 

「大砲!? この時代にこんなもの……ありえない!」

「そうかな……」

 

焼箕は再び高速移動をし、後ろを向いている呉の一刀を攻撃しようとするが……。

焼箕の拳はアクセル一刀によって受け止められる。

 

「お前の相手は俺がしてやる」

「そっちの一刀は撤退して」

「しかし……」

「今の砲撃は恐らく旗艦狙いだ。となると……」

「蓮華!」

(うん? 蓮華?)

 

アクセル一刀は少し違和感を感じた。

 

「仕方ない。キバット、タツロット。撤退するぞ!」

「了解!」

 

呉の一刀とキバットとタツロットは船から下りていった。

 

「貴様……」

「言ったはずだ。お前の相手は俺、いや、俺と美沙緒が相手してやる」

「くっ!」

 

焼箕はすぐに後ろに離れる。

 

「先にその女を始末する!」

 

焼箕は再びマシンガンを出し、美沙緒に向かって撃つが……。

 

「おおう! 怖い、怖い」

 

マシンガンの弾は全て美沙緒の体を透き通っていった。

 

「何!?」

「残念残念。今の美沙緒は『幻影体』だから効かないよーだ」

「くそ! ならば」

「美沙緒、早速テストするけど良いか?」

「もう仕方ないな~。いいよ♪」

 

アクセル一刀の手にはトライアルメモリが握られており、アクセルメモリをアクセルドライバーから外す。

 

「トライアル!」

「変……身!」

「トライアル!」

 

アクセル一刀は仮面ライダーアクセルトライアルへと姿を変えた。

 

「姿を変えたところで何があるのだ!」

 

焼箕は高速移動をし、アクセルトライアルを攻撃しようとするが……。

 

「ふん! ふん!」

 

焼箕の攻撃は全て簡単に避けられた。

 

「何!?」

「これがトライアルの速さだ」

 

そういうとアクセルトライアルはパンチのラッシュを浴びせる。

 

「くっ!」

「美沙緒! 行くぞ!」

「OK!」

 

アクセルトライアルはトライアルメモリをドライバーから外し、メモリのボタンを押す。

 

「10秒行くぞ!」

 

アクセルトライアルはトライアルメモリを上空に投げ、先ほどよりも速いスピードで焼箕に向かって突撃して行く。

その手にはエンジンブレードが握られており、逆手で持っていた。

エンジンブレードトンファーモードで焼箕を叩き切る。

そして高速移動で焼箕の後ろに回りこみ、焼旗の背後をエンジンブレードの先端で刺す。

 

「美沙緒!」

「ほぉおおおおおおお! あちょおおおおおおおお!!!!」

 

美沙緒のパンチのラッシュが焼箕を襲う。

美沙緒は今は幻影体であり、美沙緒の幻影体はアクセルドライバーに対応しているためにトライアルの力でスピードが上がっているため、美沙緒のスピードも上がっているのだ。

その為焼箕は美沙緒の高速のパンチのラッシュを浴びせられているのだ。

そして追い討ちとばかりにアクセルトライアルは向きなおしてエンジンブレードを使い、焼箕を斬り上げる!

アクセルトライアルは向き直してしゃがむと同時にエンジンブレードを順手に持ち替えて、ソードモードにする。

 

「コード……」

 

しゃがみ込んでアクセルトライアルは一気に跳び、その途中で後ろ回転し、空に上がった焼箕の元に向かう。

 

「麒麟!!」

 

その技の名前を叫ぶと同時にエンジンブレードが焼箕を縦に切り裂いた!

それと同時に上空に舞っていたトライアルメモリを持つ。

アクセルトライアルが着地すると同時にトライアルメモリのボタンを押す。

 

「9.5秒。それがお前の絶望へのゴールだ」

「うわぁああああああああ!!」

 

アクセルトライアルの台詞と同時に焼箕は斬られたところから爆発する。

そして爆発した後は何も残らなかった。

 

「テスト成功だね」

「実戦あるのみだ」

「とりあえずどうしようか?」

「俺達も撤退したほうがいいだろうな」

「そうだね」

 

そしてアクセルトライアルと美沙緒は船から飛び降りて撤退した。

その様子を黙ってみる者がいた。

 

「あれが仮面ライダーアクセルか……。なるほどな」

 

その者の姿は仮面ライダーカブトライダーフォームの姿であった。

 

「俺はもう少し調べてみるとしよう」

 

そしてカブトは船の中へとこっそり入って行った。

 

 

呉の一刀とキバットとタツロットが何とか小蓮の船に戻って状況確認をする。

状況はとても悪く、アクセル一刀の言う通り先ほどの大砲の狙いは蓮華の船であり、船首をやられ、海中へと沈んでいく状態であった。

 

「小蓮」

「何?」

「撤退命令を出してくれ」

「一刀! お姉ちゃんを見捨てるっていうの!?」

「見捨てるものか! 俺は誰も見捨てたくはない!」

「だったら!」

「だけどここは撤退するべき場面なんだ! 一人でも 多くの兵士達を生かすための策はそれしかない!」

 

一刀の目には涙が溜まっており、本当なら今でも泣きそうであり、下手をすればクウガアルティメットフォームのブラックアイに変身してしまうかもしれない状態であった。

それを一刀はこらえているのだ。

小蓮はやっとそんな一刀の気持ちを察した。

 

「分かった。(蓮華お姉ちゃんも雪蓮お姉ちゃんを亡くした時も同じ気持ちだったのかな?)

皆、撤退だよ!」

 

小蓮が全軍に撤退命令を出し、太鼓が打ち鳴らされる。

 

 

「あ~どうしましょう~」

 

穏はのんきそうに自分の乗っている船の上で危機を感じていた。

 

「これだけの呉の船があるのに傷一つ付けられないなんて悔しいですね~。

あの船、なんというのでしょう?」

「この船の名は『ヤマト』。『ヤマト国』の不沈艦よ」

 

そこにそのヤマトと呼ばれる船の甲板に一人の少女が腕を組んで姿を現した。

 

「うん?」

 

穏は一生懸命その少女の姿を見ようとする。

そして穏は少しばかり驚き、その名を口にする。

 

「……曹操さん?」

 

その少女は曹操と瓜二つであった。

 

「天照さんというのは曹操さんのことだったのですね?」

「違うな。私の名は天照。だがそれほどまでにその曹操と言うのと似ているようね」

 

天照はうすら笑いをする。

 

「お前に二つの選択肢をやる。一つは、その船のと共に死ぬ。もう一つは私に捕まるか」

「三番目の選択肢はないのですか~。逃げるとか?」

「ないわ」

 

穏は少し考えるが答えを出す。

 

「あなたたちに捕まるくらいでしたら、ここにある書物と一緒に沈んだほうがましですね」

「そうか……ならば……」

 

天照が踵を返して兵士達に火矢の準備をさせる。

 

「その書物と共にこの世に消えるがいい」

 

そして穏のところに火矢が大量に射られた!

 

「!」

「ジェット!」

 

しかし火矢は穏どころか穏の船に一つも当たらなかった。

なぜならその火矢はすべて撃ち落とされたのだ。

 

「何!?」

「これは?」

「どうしました?」

 

天照が再び踵を返して穏の方を見ると無事な穏を見る。

 

「これは一体……」

「ジェット!」

 

すると天照達の横から何かが飛んできた。

それは凝縮された蒸気であり、天照はそれをよけるも兵士達はそれをくらい吹き飛ぶ。

 

「今のは……」

 

天照が穏のいるところから横に視線を変える。

そこには仮面ライダーアクセルと美沙緒が小型の船に乗っていた。

 

「あなたは?」

「陸遜! こっちに移動しろ!」

「え?」

「…ああくそ……、美沙緒!」

「OK!」

 

美沙緒が飛んで、穏のところに移動する。

 

「あれ? 人が空を飛んでる?」

「そんなの後で説明してあげるから、逃げるよ」

「逃げると言っても書物が……」

「そんなのは自分で書けばいいでしょ! とにかく逃げるよ」

 

美沙緒が何とか穏を持ち上げてアクセルの船に移ろうとする。

 

「させんぞ!」

 

天照が再び火矢の準備をさせようとするが……。

 

「スチーム!」

 

エンジンブレードから放たれた蒸気が目くらましとなった。

 

「何!? 霧か!?」

「前方が見えません!」

 

敵が蒸気の煙で見えないうちに穏は何とかアクセルのところに着いた。

 

「よし、逃げるぞ!」

 

アクセルは船を動かす。

船は自動で動き出し、その場を高速で去って行った。

実はこの船はアクセル一刀と美沙緒の世界の船、高速艇であったのだ。

この高速艇はアクセル一刀と美沙緒がこの世界に来る前に何とか自分達の長官から貸してもらったものだが試作機のため、テストをしていない。

そのテストをしてほしいと長官に言われてテストを兼ねて持ってきたのだ。

アクセル一刀がすぐにこの場所に来れたのはそのためである。

スチームの煙が消えるとアクセル一刀達はすでに逃げ去った後であった。

 

「逃げられたか……。まあいい。どうせまた来るでしょう……」

 

天照は船の中へと入って行った。

 

 

穏は何とか一刀や小蓮や壱与、亞莎、思春、祭のいることに着いた。

 

「ありがとうございます~」

「ところであなた達は?」

 

亞莎がアクセル一刀に尋ねる。

 

「これは変身した姿だ。これから変身を解くが、あまり驚かないでくれ」

「? ええ」

 

そしてアクセル一刀は変身を解き、元の一刀に戻る。

 

『か、一刀(さん)(様)(北郷)!?』

 

やはり皆大いに驚いた。

 

「やっぱり驚いたね」

「まあ無理はないんだよな。これが……」

「お前は何者なんだ?」

「簡単に言うと別の世界の北郷一刀だ」

「別の世界?」

 

アクセル一刀と美沙緒は簡単に説明した。

 

「とても信じられませんね~」

「というより、そっちの俺や喋るこうもりいる時点で俺もおかしいと思うけどな。これが……」

「まあいいや」

「あ、そういえば」

 

穏は何か思い出したような顔をする。

 

「どうしたんですか? 穏様」

「皆さんに言わなきゃいけないことがあります」

「?」

 

穏は先ほど天照と会い、その時の会話を皆に話した。

 

「『ヤマト国』ね~」

「では我らの邪馬台国は滅んだと」

「そういうことになりますね。それと天照さんの顔、どう見ても曹操さんの顔でしたけど……」

「そう言えば須佐能って奴も夏侯淵の顔だったが……」

「いや、あれは華琳じゃない」

 

そこにアクセル一刀が入ってくる。

 

「曹操さんじゃない?」

「貴様、なぜ曹操の真名を口に……」

「俺と美沙緒は華琳、つまりは曹操に拾われたからな」

「何だと?」

 

アクセル一刀と美沙緒は自分達が別の世界で何があったのかを簡単に話した。

 

「一刀さんは世界によってどの勢力に拾われたか変わるんですね~」

「そう言うことだ。それはともかくさっき言った華琳じゃないについてだ」

 

アクセル一刀は話を戻す。

 

「華琳はまずあんなひどいことをしない」

「それは分かりませんよ」

「いや、別の世界とはいえ華琳と一緒にいたんだ。あんな虐殺に近いことをする人間じゃないのは分かる。

第一出している氣が全然違った」

「氣、ですか」

「うん。あたしとこの一刀は少しなら氣を感じられるしね」

「それに俺と美沙緒は特殊部隊所属の軍人だ。嫌というほど人を見てきたさ」

「それで天照さんが曹操さんではないと」

「ああ、断言してやる」

「でも同じような姿なのにやってることがひどすぎるよ!」

 

美沙緒はとてもご立腹の様子であった。

 

「完全な別人なら仕方ねえ事だけどな。それでお前達、これからどうするんだ?」

 

アクセル一刀が呉の面々に尋ねると……。

 

「おいそこの北郷」

「なんだ?」

「その船をよこせ」

「断る」

「何故じゃ?」

「どうせ一人で孫権と周泰を助けに行くんだろ? そんな手助け俺は出来ないね」

「何故じゃ!? わしが老いぼれだからか?」

「誰がそんなこと言った?」

「何?」

「さっきも言ったが俺は特殊部隊所属の軍人だ。それで俺はその部隊の隊長だった。

俺が隊長してたとき、同じような事をしようとした奴がいたさ。

それで俺は止めた。一人で行っても返り討ちになる事が多い世界だったからな。

だから救出は全員で行う。それが俺の部隊の決まりの一つだった」

「それがどうした? ここはお前の部隊とは違うのだぞ」

「そこの陸遜は皆で行こうという顔をしてるが……?」

「何?」

 

そこでようやく全員、穏の方を見る。

 

「私も確かに皆で助けに行く事に賛成で~す」

「どうするつもりなんだ?」

「あの巨大戦艦ヤマトに真正面から行くんですよ」

「ヤマト?」

「あの戦艦そういう名前だって天照さんが言ったのですよ」

「そうなの……」

 

呉の一刀は「ネタじゃないのかよ」と思った。

 

「穏、お主何をするつもりじゃ?」

「お忘れですか? 祭様。太史慈さんの所にあるあれを使うんですよ~」

「神にも悪魔にもなれる力か!」

「そうですよ~」

「神にも悪魔になれる力?」

 

呉の一刀は想像する。

 

「まさかマジンガーと言うんじゃないよね?」

「いえいえ、『大蓮花』と言う巨大戦艦で五千人の兵を乗せられる、雪蓮様と冥琳様が残してくれた『終わり無き夢』の船です」

「なるほど。質には質で勝負か。それで太史慈はどこにいる?」

「これから向かうんですよ~」

「どうする一刀?」

「天照を倒すのを手伝ってくれと頼まれたからな。とりあえずは付き合うぞ」

 

そしてアクセル一刀と美沙緒は呉の面々と共に太史慈のいるところへと向かうのであった。

 

 

その頃……。

 

「ふん! ふん!」

 

明命が牢屋の格子をどうにかしようにもびくともしなかった。

 

「明命、もういいのよ」

 

蓮華はうずくまりながらそう言った。

明命は言われると止めるが明命の目から涙が流れる。

 

「私は……一刀様に蓮華様を任せるように言われたのに……」

「いいのよ。あなたがいなければ私は死んでいた。それだけで充分……」

 

するとそこに誰かがやって来た天照である。

 

(……あれは……)

「曹操……」

 

天照があまりに曹操に似ているために蓮華も間違えてしまった。

 

「その名前、聞き飽きるな。私の名は天照。邪馬台国を滅ぼし新王国『ヤマト国』の王だ。

あなたが呉の王、孫権ね」

「……違う、と言ったら?」

「それはないわね。そしてあなたが周泰」

「なっ!?」

 

明命は驚く。

 

「私はまだ名前を言っていません! その名前を知っているという事はやはりお前は曹操!」

「いえ、あなたの場合はそこに名前が……」

「え?」

 

明命が天照の指差すほうを見る。

明命の現在の格好はいつもの服が破れ、下に来ていた水着姿であり、その水着には「ごぐん・しゅうたい」と書かれていた。

 

「はうっ!」

 

明命は思わず恥ずかしがり、胸の名前を隠す。

 

「いい加減、猿芝居を止めたらどうだ? 曹孟徳」

「まだ私が曹操だと思っているのか?」

「あなたはあまりにもあの大陸のことを知りすぎている」

「それはそうだ。情報源がいるのだからね」

「情報源?」

 

すると天照の後ろから蓮華達が見たことある少女一人と女性一人が入ってくる。

 

「お前達は!?」

 

その二人と言うのはずっと前に呉国設立のために雪蓮が追放した袁術と張勲であった。

 

「何故あなた達がここに?」

「それはですね~」

 

張勲が簡単に説明した。

袁術はどうしても皇帝になりたいと言い、とりあえずは人材を集めようとしたが、来たのが元董卓軍の将の華雄のみであった。

まあそれは仕方ないとして三人でとりあえず国を探すとして船で南へ行こうとしたところ、このヤマトに見つかってしまい、華雄とはそこではぐれてしまい、袁術と張勲は天照に拾われたのだ。

 

「雪蓮姉様が命を助けてくれた恩を忘れて、異国のものの手先になるとは……恥を知りなさい!」

 

蓮華は袁術に対して怒ると……。

 

「うぇええええん。七乃~、こやつがわらわを叱ったぞ!」

「あ~あ、泣かせちゃった」

「あまり情報源をいじめないで欲しいのだけどね。孫権」

 

天照は腕を組むと、すぐに副官の月読が椅子を用意してその椅子に座る。

蓮華達はその副官であった月読の姿を見て、また驚く。

 

(あいつもか)

「夏侯惇」

「この者は私の副官の月読。もう一人副官がいたのだが、お前達の仲間にやられてしまったようだ」

「私達の仲間?」

「赤い鎧から青い鎧へと姿を変え、そして一人の女と一緒に私の副官の一人、須佐能を倒したとね……。

しかもその一緒にいた女は須佐能の攻撃をくらうことなく、体が透けるようにきかなかったと聞いたわ」

(赤から青に変わる鎧……)

(もしかして一刀様がクウガの力を使ったのでは?)

(そう思うけど、一刀と一緒にいた女というのが気になるわ。そんな将、私達の軍にはいなかったはずよ)

 

それもそうだ。一刀は一刀でもその一刀は蓮華達の知る一刀ではないのだから。

そして蓮華達はその一刀と一緒にいる美沙緒のことを知らない。

 

「しかし、あの大陸には私達に似たようなものが多いようね」

 

天照は足を組む。

 

「だが理由がないわけじゃない。何故なら私達の先祖は大陸の人なのだから……。

その曹操も夏侯惇と言うのも同じ先祖なのかもしれないからね」

(何?)

「同じ先祖? 確かに曹操と夏侯惇は親戚同士と聞いてはいるが、異国のあなた達が何故?」

「いいえ、私達は異国のものではない。元々大陸の人間よ」

「なんだと?」

「私達は昔、時の皇帝であった秦の始皇帝の命令で『不死の霊薬』を求め、仙人・徐福様と共にこの島国に渡ってきた人間の末裔だから……」

(そういうことか……)

 

蓮華はそれを聞いて、天照や月読が知っている人間によく似ていて格好も似ている事の理由。

そして三千人は乗せられる船を所有している理由も……。

 

「あなたの目的は何なの? 天照」

「知ってどうする? 孫権」

 

天照は金色の前髪を指で絡める。

 

「まあいいわ、教えてあげましょう」

 

天照は椅子から立ち上がり、格子近くにいる蓮華の側に立つ。

 

「一つは邪馬台国の滅亡。もう一つは大陸の侵攻。それが目的よ」

「そんな嘘。私が信じると思っているのか?」

「嘘? 何故そう思う?」

「何故、邪馬台国を滅ぼさなければならない? 何故大陸に侵略をしなければならない? 理由が見えてこないわ」

(確かに……ただの支配欲に駆られているとは思えんな)

「そうね。では教えてあげるわ。私達の先祖を連れてきた仙人・徐福様は、まるで未来から来たような天才だった。

この戦艦も、あの大砲覇王砲も彼が一人で作り上げたものなのよ」

(未来から来た……俺のような存在か? それとも管輅のような外史が生み出した存在なのか?

どちらにしろ仙人と呼ばれている以上、並みの人間じゃなかったという事だな)

「でも、それだけの天才であった彼でも叶えられなかった夢がある。それは不死」

(人はいずれ死ぬ。いや、生あるものにはいずれ死が来る。それは当たり前だ。人だろうと動物だろうと……)

「そして天才である自分を理解しなかった大陸の民への復讐!」

(天才ゆえに僻んだか……。いや、歪んだ天才だな)

「しかし、そんなこと、それこそ、お前達には関係ないことじゃない。徐福は遥か昔に死んだのよ。そんな死んだ人間の過去の夢なんて叶えてどうす……る」

 

蓮華はそこで重大な事を思い出す。

顔も青ざめ、思わず後ろに下がってしまう。

 

「孫権……どうやらお前は頭がいいようね」

「そ。そんな事は馬鹿げているわ」

「馬鹿げていないわ。私は真剣よ。そしてもうすぐやり遂げるわ」

(どういうことだ?)

「邪馬台国にある不死の霊薬。その一つは徐福様に飲ませ、徐福様を甦らせる。そしてもう一つは私が飲み、そして私と徐福様は二人、未来永劫この東方と大陸を照らす神となるのよ!」

(とんでもないことを考えていやがるな)

「そんな死者を甦らせ死者と共に神になろうだなんて……。この呉王・孫権が止めてみせる!」

「それは無理ね。孫権」

 

天照があざ笑う。

 

「何故だ?」

「私にはこの力がある。変身」

 

天照の体が黒い霧のようなものに包まれ、そして霧が消えると天照の姿は変わっていた。

その天照の姿は仮面ライダーダークキバのようなものであったが、それに仮面ライダーキバーラを加えた、いわば仮面ライダーダークキバを女性のようなものにしたもので、ベルトも全然違い、ベルトには風車のようなものがついていた。

 

(ダークキバ+キバーラ。それに昔の仮面ライダーのベルトか……)

「その姿は……キバ……」

「違うわ。これは私のもう一つの姿。仮面ライダーアマテラスよ」

「仮面ライダーアマテラス……」

「これは徐福様が残した最大の技術。私の肉体を改造する事で得られた力よ。そこの月読も変身できる。もっとも倒された須佐能も出来たのだけれど……。もうそれは過ぎたことね」

(改造人間……)

「それにもうすぐこの船は不死の霊薬がある不死山に着くわ。そこで霊薬を手にいれ、この間で眠る徐福様を復活させる」

(富士山……まさに不死の山だな。言い伝えが俺の知っているのと全然違うが……)

「そのまま船は大陸に向かい、大陸への侵攻が始まる。

誰も徐福様やこの力を持つ私を止めることは出来ないわ」

 

天照は変身を解き、部屋から出ようとすると……。

 

「そうそう、月読。袁術と張勲もこの孫権や周泰と同じ大陸の者。つもる話もあるでしょうから同じ部屋に入れておきなさい」

「な、何故じゃ!?」

「そうですよ~折角大陸の情報を上げたのに~」

 

袁術と張勲は無理矢理蓮華達と同じ牢屋に入れられた。

 

「それじゃあね……」

 

天照と月読は部屋から去っていった。

 

「蓮華様……」

「早く、ここから出なければ……。一刀にこの恐ろしい野望を知らせないと……」

(……とりあえずは仕込んでおくか……)

 

その部屋の屋根に隠れていた者はその部屋から去っていく。

 

 

少し時間が経つ。

 

「ねえここなの?」

 

美沙緒が穏に尋ねる。

 

「はい。この島で間違いないですよ。ここが夷州(今の台湾)の北東に位置する小島『睡蓮島』です」

 

呉の面々とアクセル一刀と美沙緒はある小島にたどり着いたのだ。

 

「巨大戦艦を置いておくには小さいと思うが……」

「そうですね~」

「でも探してみるべし」

 

そして呉の将全員とアクセル一刀と美沙緒が船から島に降りた。

 

「ここに来た事は?」

「実はありませ~ん」

「ええ~?」

 

美沙緒は呆れたように驚く。

 

「場所だけ知っているか。となるとその太史慈と言うのは一体……」

 

皆が島を歩いていると……。

 

「本当に、こんな場所にその太史慈って人が……」

「北郷っ!」

 

言うよりも早く思春が早く動いており、思春は呉の一刀に襲い掛かってきた鎖を何とか防ぐが……。

 

「なんて重い攻撃だ」

「思春!」

「何奴じゃ!」

 

祭が鎖が飛んできた方を見る。

その鎖の元は岩に隠れていたため、分からなかったが、その鎖の主が姿を現す。

 

「それはこっちが聞きたいね」

 

その鎖は何と竿のようなものから出ており、いわば鎖の先端はルアーのようなものであったのだ。

しかもその釣竿の持ち主は女は、鎖がついている竿を片手で持ち、頭には麦藁帽子があった。

 

「お前らこそ、何者だ?」

「お主は、太史慈!」

 

祭がその太史慈を指差す。

 

「この人が……」

「麦藁帽子にのびのびの鞭をもった女。まさしく太史慈」

「麦藁帽子にのびのびの鞭って……(どこの海賊王を目指そうとしてる人だよ……)」

「私達は孫呉のものです。あなたが託された戦艦大蓮花を受け取りに来たのです」

「孫呉の者が受け取りに来た?」

「頼む太史慈」

「私達には雪蓮様が遺してくれた戦艦がどうしても必要なのだ」

「あれを必要としてるとなると未曾有の危機が迫っているようだな」

「頼む太史慈。この通り……」

 

いつもは頭を下げない祭も頭を下げてお願いするが……。

 

「だが断る」

「なんじゃと!? お主策殿に命を救われた恩義を忘れたのか?」

「確かに孫策殿には恩があるが、お前達にはない」

「貴様! 今や孫呉の命運は、その船に掛かっているのだぞ!」

「知るか」

「知るかだと!」

 

思春は怒って剣を太史慈に向ける。

 

「ならば力ずくで、船の場所まで案内してもらうぞ」

「その程度の腕で私に挑むのか? いいだろう」

「まあ、待て」

 

そこに二人の一刀が割ってはいる。

 

「何だお前? おかしな服を着て……」

 

太史慈が呉の一刀に尋ねる。

アクセルの一刀は現代の一般的な日本人が着る服だが、この世界の人間にとっては制服姿のほうが珍しいのである。

 

「俺は北郷一刀。人々から『天の御遣い』と呼ばれてる男だ」

「噂は聞いてるよ。変わった力を持ってるってのも……」

「雪蓮の妹の蓮華、つまりは孫策の妹の孫権が囚われの身になってて、助けるためにはその船が必要なんだよ」

「わかりやすくすれば納得すると思っているのか?」

 

しかし太史慈は呉の一刀が二人の真名を口にした事に気付き、あることを思いつく。

 

「そうだ勝負しないか?」

「勝負?」

「どんな勝負だ?」

「これだ」

 

太史慈はどこからか竿をもう一本出す。

 

「釣り勝負……」

「これに勝ったら大蓮花をお前達にやる」

「それしかないのか?」

「ない」

「なら勝負だ」

 

そして二人の勝負が始まる。一時間が経つが太史慈は大量に魚を釣るも一刀は釣れなかった。

 

「言っておくが手助けは無用だぞ」

 

太史慈が念を押す。

しかし一刀は考える。

 

(それはあくまでも他人の場合だろ? だったら俺ならいいということだ)

 

それを考えたのはアクセル一刀であった。

 

(でもそんな事するとあの一刀が怒らない?)

(安心しろ。俺はただ魚を誘うだけだ。それ以上のことはしない)

(でもどうやって?)

(エンジンブレードを海の中に入れてスチームで無理矢理あいつの竿に食いつかせる)

(出来るの?)

(運だな)

 

アクセル一刀は少し遠くに離れて行き、エンジンブレードにエンジンメモリを入れる。

 

「エンジン! スチーム!」

 

エンジンブレードを海の中にいれ、無理矢理蒸気を発させた。

すると魚達はうまく一刀の竿の方に行ったのだ。

 

(おおー。うまく行ってる)

 

それを見る美沙緒。

そして……。

 

「マグロが釣れたーーーーーー!」

 

結果三メートル以上のマグロを釣る事に成功した。

 

「負けたといわざるをえないな。さすが天の御遣い」

「いやいや……。それより時間がないから大蓮花を……」

「いいだろう。これが孫呉最強の戦艦『大蓮花』だ!」

 

太史慈がある石を叩くとそこから舵輪が現れ、太史慈はそれを思いっきりまわした!

すると島全体が揺れ始める。

 

「な、何だ?地震か?」

「それとも巨大ロボットの登場か!?」

「違うぞ北郷! この睡蓮島自体が大蓮花だ!」

『な、なんだってーーーーーーーー!?』

 

一部の人間が思いっきり驚く。

そして岩や土を引き剥がし、まるで巨大な蓮が花を咲かせるかのように円形に広がった。

 

「これが大蓮花だ!」

 

ここに雪蓮と冥琳の遺してくれた巨大戦艦『大蓮花』が海に姿を現したのだ!


 
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