No.152542

真・恋姫†無双~外史を渡る者~「蜀編Ⅱ」

趙雲の策略により、一刀は蜀にいることに

こうして、蜀での生活が始まった。

2010-06-22 21:31:24 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:3085   閲覧ユーザー数:2389

~一刀、奮闘記~

 

 

 

一刀が蜀に当分居ることに決まり、会議も終わった。

最初は蜀の何名かの武将が反対していたが、それもなんとか説得し、なんとか了承した。

 

相変わらず桂花は

 

「華琳様、もともとこんな奴居なかったんですからいいじゃないですか」

 

と、言っていた。

 

凪達にも話すと、一番理解があると思った凪が泣いて騒いで大変だった

それもなんとか真桜と沙和でなだめ、泣きやんでくれた。

 

そんなこんなで、今晩は魏軍も成都で体を休め、明日洛陽に帰る事になった。

 

 

一刀は今、用意された当面の自室になるであろう部屋で今後の事を考えていた。

 

どうすれば信用されるのか?

万が一の戦闘は?

 

と、悩みはつきなかった。

 

コンコン!

 

北「ん?…どうぞ」

 

華「入るわよ、一刀」

 

北「華琳?

どうしたこんな夜に?」

 

来訪者は華琳だった。

 

華「眠れないの?」

 

華琳は部屋に入ると備え付けの椅子に腰かけた

一刀も向かい合うように座る。

 

北「まぁな…

華琳、悪かったな勝手あんな事言って」

 

華「構わないわよ…

大陸の安寧、それを思えば必要な事よ…」

 

北「それを見越してのことだからな…

俺達魏だけじゃ大陸全土を脅かす五胡勢力に対抗出来ないからな」

 

華「えぇ、私達にも限界はあるからね」

 

北「洛陽で留守にしてる季衣や流琉…

いや、これは言わずしても分かるな」

 

華「え?」

 

俺は机を隔て、華琳の手を握った。

 

北「また、離れちまうな」

 

華「言ったでしょ?構わない、と」

 

北「そうだったな…」

 

華琳は席を立ち、かつて戦終わりに体の震えを抑えてくれたように一刀を包み込んでくれた。

華「本当は…すごく寂しいんだから…」

 

北「俺もだ…」

 

二人はどちらからと言うこともなく、静かに目を閉じて、唇を重ねた。

 

 

その後、華琳に手を引かれて寝台に座り、また唇を重ね、二人は肌を重ねた。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

次の日の朝

窓から差し掛かる朝日が顔を直撃し、目が覚めた。

隣で華琳はスヤスヤと寝息を立て、一刀の手を握っていた。

寝顔も最高に可愛い彼女を名残惜しみながら起こした。

 

北「おぃ、華琳…」

 

華「…ふみゅう…」

 

北「(いや、ふみゅうとか可愛すぎるから…!)

起きろよ、着替えないと…

今日は洛陽に帰るんだろ?」

 

華「…分かってる…わよ…」

 

北「華琳さ~ん…起きないと昨日の続きしますよー」

 

華「…別にいいわよ」

 

とかまぁ、そんな上手いことは行かず

華琳はニヤっと笑み浮かべて颯爽と寝台から降りて行き、一刀は生殺しを味わった。

 

華「ふふっ…この続きは魏に帰ってからね」

 

と言う事は魏に帰れない一刀は当分生殺し

 

北「へぃへぃ…

じゃあ華琳、俺はちょっと行くとこあるから先に出るぜ」

 

すでに着替えを済ませた一刀はベルトに刀を差し込み部屋を後にした。

 

部屋を出るとまだ日が登ったばかりで城は静かだった。

 

北「なんだよ…まだ寝れたじゃないか…

(文句の一つも言いたくなるさ…昨日は華琳が一晩…

 

いやこれは言うまい…)」

 

一刀は城に居るであろう、彼女に用があった

最初は部屋を探すのに苦労するかと思ったが簡単に彼女を見つけた。

 

扉をノックし部屋に入る

彼女は筆を片手に書類と向き合っていた。

 

彼女、劉備はそこに居た。

 

北「おはよう、徹夜かい?」

 

劉「ほぇ?

はっ!…空が明るい!!」

 

北「もしかして…素で気付かなかったの?」

 

劉「ふぇ~

またやっちゃったよ~」

 

どうやら彼女は天然らしい

しかも「ド」が付くほどの。

 

劉「それで北郷さんはどうしたの?」

 

北「あぁ、君に預けたい物があってな」

 

劉「私に?…なになに?」

 

一刀はベルトに差し込んだ刀を取り、劉備に突き出した。

 

北「俺がこの世界でまともに使える刀だ

これを君に…蜀の王、劉備玄徳に預ける」

 

劉「え?」

 

北「当分身を置くんだし、俺は俺のやり方でここの人達に認めて貰いたいんだ

信頼を得るのに武器はいらないだろ?」

 

劉「そうだね

じゃあ私が預かるね」

 

劉備は刀を手に取り満面の笑みを浮かべた。

 

劉「ほぇ~

北郷さんの刀、軽いね」

 

北「こっちの世界に比べるとそうだろうね

それと俺の事は一刀でいいよ」

 

劉「えっ?

じゃあ私も…改めて、私は劉備玄徳、真名は桃香

桃香って呼んでね」

 

いきなり真名を預けられ、一刀は少々面食らった。

 

北「いいのか?」

 

劉「うん!

鈴々ちゃんや恋ちゃんの言う通り、一刀さんは悪い人には見えないし、刀を預けるってのも信頼の証しでしょ?」

 

北「そっか、ありがとうな…桃香」

 

劉「うん!」

 

桃香はまた嬉しそうな笑みを浮かべ、一刀の刀をギュッと抱きしめる

 

刀は桃香の天然の二つの山に挟まれている…

 

 

劉「じゃあ、この刀はそこの壁に架けて置こう~」

 

そう言って桃香は立ち上がり部屋の壁に武器を架けるために付けられたフックに刀を置いた。

 

そこからが悲劇の始まりだ

桃香は徹夜明けで疲れが溜まっていたのだろう、そのせいで足をもつらせ倒れてしまう

 

劉「うわぁっ!?」

 

北「桃香!」

 

彼女を助けるために体を前に出して、彼女を受け止めた

彼女を一刀が抱きしめるような形になり、床との接触は免れたのだが…

 

華「桃香、一刀来てないかしら?」

 

北「あっ…」

劉「あっ…」

 

その最凶最悪のタイミングで部屋を訪れたのは華琳だ。

華「…」

 

無言…

静まり返った部屋はある意味、地獄だった。

 

北「あの~…華琳、さん?」

 

華「一刀、選ばせてあげるわ

1、ここで大声をあげる

2、縛り上げて馬で引きずり回す

3、その首をはねる

どれがいいかしら?」

 

北「落ち着け華琳!

俺は桃香を助けようとしてだな…」

 

華「桃香?

いつからあなた達は真名を呼び合う仲になったの…か・し・ら!」

 

北「ま、待て!

桃香、君からもなんとか言って…」

 

桃「くーくー…むにゃあ…」

 

北「こんな状況で寝ちゃらめーっ!」

 

華「かーずーとー…!」

 

北「いや…まて華琳!!」

 

華「問答…無用!!!」

 

北「ギャー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、凄まじい羞恥プレイ2が行われ、まだ朝明けの成都に一刀の悲鳴が響き渡った。

 

華「それじゃね、桃香」

 

桃「うん

道中気を付けてね!」

 

成都城正面門に蜀の面々が集まり、洛陽に帰る魏面々を見送る。

 

霞「なんや一刀?

どないしたん?ほっぺた真っ赤やん?」

 

華「霞、一刀の事はほっときなさい」

 

霞「ま~たなんかやらかしたんかぁ」

 

真「まぁ、隊長やしな」

 

北(ひどいぜ…みんなして

しばらく会えないんだから、もぅちょっとさ…)

 

春「よし!全軍出立!!」

 

北「って!

春蘭にいたっては無視かよ!」

 

華「一刀…」

 

北「なんだ華琳?」

 

さすが華琳…

最後は別れを惜しんでくれてるようだ、と思ったが

 

顔を耳に近づけてささやくように話す

 

華「桃香達に変なことしたら…

…殺すから…」

 

北「やっぱりかぁー!!」

 

 

そんな感じで、魏の面々は一刀を残しさっさと洛陽に帰って行った。

北「はぁー」

 

深いため息の後、後ろを振り返ると…

すでにそこには誰も居なかった。

 

北「ひどっ!?」

 

 

部屋に戻り、寝台に寝そべりこれからの対策を一刀は考えていた。

 

当然やることはなく

、部屋でゴロゴロするしかない

先ずは桃香に真名は許してもらった訳だが、他の面々はどうするか悩んでいた。

 

部屋で考えていてもらちがあかないので、体を動かすため、庭に出てようと思い、部屋を出ると…

 

呂「…………………」

 

北「えっと…?」

 

扉を開けると二つの触覚髪が一刀を待っていた。

 

北「呂布…さんだっけ?」

 

呂「……(コクっ)」

 

北「なにしてるの?」

 

呂「………見張ってる」

 

北「え?」

 

呂「愛紗に…頼まれた…変なことしないように…見張れって」

 

北「(愛紗って確か、関羽だよな…?

やっぱり最大の難点は関羽か…)

それだと俺に見つかるとダメなのでは?」

 

呂「……………?……?」

 

どうやら素で分かっていないらしい。

 

?「はぁー恋はダメダメなのだ」

 

と、そこに季衣ぐらいの背丈の少女、張飛が現れた。

 

呂「恋…ちゃんと…見張ってる…ダメじゃ…ない」

 

北「(はぁー

やばいこの子可愛すぎだ!

こう自然に手が彼女の頭に行ってしまい)

そうだねー呂布は頑張ったよねー」

 

頭を撫でてしまった。

 

呂「……///」

 

張「恋がお兄ちゃんに頭を撫でられてるのだ!」

 

北「はっ!?

しまった、つい妙な保護欲が働いてしまい…」

 

呂「恋…」

 

北「ん?」

 

恋「真名…恋でいい」

 

北「え?真名で呼んでいいの?」

 

恋「悪い人…じゃない…だから…いい」

 

北「ありがとう、恋

俺は一刀でいいからね」

 

恋「一刀…覚えた」

 

こうして一刀は呂布から信頼?を得て彼女から真名を預かった。

張「恋が真名を預けるなら鈴々もなのだ!

鈴々は姓は張、名は飛、字は翼徳!真名は鈴々なのだ!」

 

北「鈴々か、よろしくな」

 

鈴「うん!」

 

こんな感じに真名を二人から預かった。

庭に行きたいと鈴々に話すと鈴々は一刀の手を引いて走り出した。

 

鈴「ここが庭なのだ!」

 

北「へぇー」

 

緑が多くテラスのようなものまである。

 

北「鈴々、いらない材木とかないかな?」

 

鈴「材木?どうするのだ?」

 

北「木刀を作りたいんだよ」

 

鈴「木刀なら訓練用があるのだ」

 

北「俺の刀に合わせて作りたいんだよ」

 

鈴「ほー

分かったのだ!」

 

鈴々は砂煙を巻き上げ、猛ダッシュで走って行った。

 

北「しかし…いい天気だなぁ~」

 

恋「あそこで、寝るといい…気分」

 

恋が指刺す方には大きな木があり、適度に日が射している。

 

北「そうか~いい気分かぁ~」

 

恋と話していると妙に気分がホンワカする

などと思ったいると庭が地鳴りを起こす。

 

北「な、なんだ!?」

 

鈴「お兄ちゃーん!!」

 

北「り、鈴々!?

早っ!しかも量多っ!?」

 

鈴々はその小柄な体には似使わないほど大量の材木を持ってきた。

 

鈴「いっぱい持ってきたのだ!」

 

ガラガラと音をたて、その場に材木を転がす。

大小様々で中には箸ぐらいの長さの材木まである。

 

北「持ってきたのだって…

量多すぎだろ?」

 

鈴「はにゃ?」

 

北「まぁ…いいか」

 

一刀はその材木の山から加工しやすい材木を手に取り、鈴々から短刀を借り受け木を削る。

 

鈴「はわ~

お兄ちゃん、すごいのだ」

 

北「道場に居るとき木刀の作り方を爺ちゃんにしごかれたからな

自分の鍛錬用の木刀は作ってたからな

余った材木で道場に来ていた子供達に玩具を作ったこともあるぞ」

しばらくガリガリやっているとどうやら鈴々と恋は飽きたらしく、恋が先ほど教えてくれた所で二人並んで寝てしまった。

 

北「できた!」

 

出来上がった木刀のバランスを確認していると。

 

?「お兄ちゃん、何が出来たの?」

 

北「木刀がだよ…君、誰?」

 

一刀の目の前に知らない女の子が立っていた

「お兄ちゃん」なんて言われるから鈴々かと思ったが鈴々ではなかった

鈴々よりさらに小さな女の子だ。

 

璃「私は璃々だよ。お兄ちゃんは?」

 

北「俺は北郷一刀」

 

璃「一刀お兄ちゃん?」

 

?「璃々~

どこいったの~?」

 

璃「あ、お母さーん!」

 

璃々ちゃんは「ここいるよー」と言わんばかりに大きく手を振る

 

?「あら?

あなたは確か…魏の」

 

北「北郷一刀だ」

 

次に俺の前に現れたのは母性愛の塊のような女性だ。

 

黄「そうだったわね、私は黄忠」

 

璃「お母さん、喉乾いた~」

 

呑気に自己紹介していると璃々ちゃんは駄々をこね始めた。

 

黄「はぃはぃ…すぐにお茶にしましょうね~」

 

どうやら璃々ちゃんは黄忠と庭でお茶をするらしく我慢出来ずに駄々を言ったらしい。

 

北「お茶を飲む所で悪いんだが鍛錬してもいいかな?」

 

黄「構いませんよ」

 

了承を頂いたところで一刀は木刀を構え先ずは軽く素振りをし、木刀の出来を確かめる。

 

北「まずまずのと言ったところだな」

 

そこから縦切りから切り上げ、縦から横への変則的な太刀捌きをする。

 

黄「へぇー」

 

璃「お兄ちゃん格好いい!」

 

璃々ちゃんのその言葉にがぜんやる気が出た一刀は木刀での鍛錬を続けた。

 

?「ほれ!後ろから弓が飛んできたぞぃ!」

 

北「え?」

 

後ろを振り返ると小石が飛んで来た

完全に不意打ちだったので弾き返すことも避けることも出来ずに小石は一刀の額に命中した。

北「いでぇっ?!」

 

?「なんだ…

良い太刀捌きかと思うたが注意力がたりんのぅ」

 

小石を投げた犯人はなにやら不満な表情浮かべていた。

 

黄「桔梗…いくらなんでもあんな豪速球じゃ無理でしょ?」

 

犯人は右肩に「酔」と書かれた大きな肩当てが特徴の厳顔だった。

 

しかし、蜀の弓兵は何故みんなおぱーいがデカいんだ?

 

厳「ふぅむ…魏の小僧殿はなかなか良き太刀捌きをするな

どうじゃ儂と一手?」

 

北「…やられっぱなしは割にあわん

一手、お願いしよう」

 

一刀はそう言って木刀を正眼に構えた

厳顔は鈴々が大量に持ってきた材木から適当なのを手に取り、振り回して手にあった物を探している。

そんな事を二、三回程して手にあった物を持った。

 

厳「ほぅ…なかなか良き面構えよな

来い小僧っ!」

 

北「はぁっ!」

 

突進して、一刀は厳顔に面を放った。

 

厳「ふんっ!」

 

北「ぬぁっ!?」

 

厳顔は片手で材木を振り上げ、一刀の一撃を弾き飛ばす。

 

厳「見事な一撃よ…

しかし、単純じゃのぅ」

 

北「くそ…

てりゃあっ!はぁっ!!」

 

続いては連続的に攻撃を放つ

しかし、これも簡単に片手であしらわれてしまう。

 

黄「桔梗ー

少しは手を抜いてあげなさいよー」

 

鈴「お兄ちゃーん!

頑張れー!!」

 

璃「頑張れー!」

 

恋「モグモグ…」

 

いつの間にか目覚めた鈴々と恋は黄忠達に混じり茶菓子片手に一刀と厳顔の試合を見ていた。

 

「どうした小僧!その程度か!!」

 

北「くっ…なら少しやり方を変えるか…」

 

今度は面を放つフリをして刀を引き、ハイッキックを放つ。

 

「ぬおっ!?」

 

厳顔は顔を後ろに下げ、蹴りを避ける

一刀は足を戻して連続的にもう片方の足で回し蹴りの要領で放つ。

回し蹴りまでも回避された

そこで一旦間合いを取り厳顔の出方を窺った。

 

厳「くぅ…儂が遅れを取るとはな

小僧、なかなかやるではないか!」

 

北「そりゃどうも」

 

厳「儂は元来、弓兵なのでな剣はあまり得意ではないが少々本気でいくぞぃ!」

 

一刀の複合武術を警戒、はたまた本気を引き出せたのか不明だが、厳顔は木刀を両手持ちに切り換え一刀に向かってくる。

最初の一撃を受け止めるが、簡単に吹き飛ばされてしまう。

片手から両手に切り替えただけでこんなにも力が違うのかと思う程、厳顔の一撃は強かった。

 

北「ぐっ…!?」

 

厳「そらそらぁー!」

 

鈴「お兄ちゃんが劣勢なのだ!」

 

恋「…モグモグ…紫苑…それ、食べたい」

 

黄「はぃはぃ、恋ちゃん」

 

璃「恋ちゃん、璃々のも上げるー」

 

恋「それは璃々の分…恋、たりる」

 

北(何だろ?

この温度差は…)

 

北「ぐぅ…!」

 

厳「どうした!終いか?!」

 

もう何度打ち合ったか…

一刀の手は真っ赤になりそろそろ限界を迎えていた

そこで一刀は最後の賭けに出た。

 

北「はぁっ!」

 

厳「見切ったわ!」

 

再び厳顔に切りかかるフリをしてハイキック…これもフェイントととし、厳顔を油断させた

そこから腰を下げ、突きを放ったが…

 

厳「ぬるいわっ!」

 

厳顔は一刀の手を蹴り上げる

その蹴りの力で限界を迎えていた手から木刀が離れてしまう。

さらに腰を下げていた事もあり突然の衝撃に体のバランスが崩れてしまい、一刀の体は無防備になってしまう。

 

厳「見事な太刀捌きだった…これで最後よ!

うおぉぉおぉぉぉっ!!」

 

北「ぐはっ!」

 

無防備になった体に厳顔からの突きが放たれ一刀は地面に伏せてしまった。

北「ごはっ…ごほっ!」

 

呼吸が乱れ、息苦しい。

 

厳「よき太刀捌きだったぞ」

 

なんとか体を起こして、厳顔に頭を下げ礼を述べる。

武人としての礼節は怠らなかった。

 

北「あ、ありがとう…ございました」

 

厳「武人の礼をわきまえておるな

気に入ったわ!

我が名は厳顔、真名は桔梗

桃香様に仕える喧嘩師よ!

北郷一刀、我が真名を預けるぞ」

 

北「ど…どぅも…」

 

嬉しいのだが、一刀は猛烈な腹の痛みに耐えかねて体が倒れた。

 

黄「よっ…

ふふ、桔梗相手によくやりました」

 

倒れそうになった一刀を黄忠が抱きしめて支えてくれた

しかし、腹の痛みは強さを増し一刀の意識は飛んだ。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

一刀が目を醒ますとテラスの椅子に腰掛け、何故か上半身裸だった。

 

北「あれ…?」

 

黄「あら、起きたの?」

 

北「黄忠さん?」

 

黄「ごめんなさいね

傷を冷やしたかったから服を勝手に脱がしちゃったわ」

 

北「いや…ありがとう」

 

黄「桔梗相手に善戦だったわね」

 

テラスには一刀と黄忠、璃々ちゃんが居て鈴々と恋は自分の武器を手に鍛錬をしていた。

 

北「まだまだですよ…

俺のはただの何でもありの武術

あんなの戦じゃ役にはたたないと思うし」

 

黄「そう?

でも桔梗をあそこまで追い詰めたのだから誇っていいんじゃない?」

 

桔「誰が追い詰められと?!」

 

と、そこに桔梗は大徳利を片手にテラスにやって来た。

 

桔「紫苑、儂は別に追い込まれてはおんぞ」

 

黄「あらあら、蹴りを放たれた時は焦ってなかったかしら?」

 

桔「う…ぅぅむ…」

 

北「そうなんですか?」

 

厳「まさかあそこであんな風に戦うとは思わんだろ…

小僧…いや、北郷殿はなかなか骨のある奴だ」

 

黄「そうね…

北郷さん、我が名は黄忠、字は漢升…真名は紫苑

あなたに真名を預けます」

 

北「え?」

 

紫「一緒に大陸の安寧の為に闘いましょう」

 

紫苑はニコやかに笑い一刀に茶を差し出してくれた。

北「あぁ…よろしく紫苑さん」

 

紫「えぇ」

 

鈴「あ!お兄ちゃんが起きたのだ!」

 

鈴々が目覚めた一刀に気づき、蛇矛を放り投げ、テラスに駆け込んで来た。

 

恋「一刀…大丈夫?」

 

北「あぁ、恋…ありがとうな

まだちょっと痛いけど大丈夫だよ」

 

恋「…///」

 

恋は物言わずニコッと笑うだけだった。

 

桔「ほぅ、恋まで真名を預けたのか」

 

桔梗は大徳利を傾けグビグビと酒を飲む。

 

鈴「鈴々もお兄ちゃんに真名を預けたのだ!」

 

桔「鈴々もか…

北郷殿はなかなか骨のある奴だな」

 

北「ははは…」

 

紫「ふふ、北郷さん

どうぞ」

 

北「あ、ありがとう」

 

紫苑さんが入れたお茶を再び煎れてくれ、一刀達はお茶を飲んで楽しんだ。

 

相変わらず、恋は…

 

恋「ハグ、モグモグ…ハム…モグモグ」

 

食ってばっかり…

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗から受けた突きの痛みも徐々に消え、一刀は庭を後にし、木刀をベルトに差し、ブラブラしていた。

 

桃『お城は好きに見ていいからね

あ、でも女の子部屋に無断に入っちゃ…

メッ!

だからね』

 

と、桃香には既に了承を得ている。

 

?「あ、北郷さーん!!」

 

北「ん?…確かあれは」

 

サイトポニーテールの鈴々ぐらいの背丈の女の子が元気よく手を振っている。

 

?「北郷さんなにしてるの?

暇なの?」

 

北「えぇと…?」

 

?「たんぽぽー!

どこ行ったー警邏行くぞー!!」

 

と、俺が誰だか解らない時に馬超がやって来た。

 

?「あ、お姉様!!」

 

北「お姉様?」

 

馬「どこ行ったんだよ…

あん?あんたは確か?」

 

北「よぅ」

 

馬「あんた確か…」

 

?「北郷さんだよ、お姉様」

 

馬「あぁ、そうだったな」

 

北「いきなり斬りつけて来たくせに忘れられてたのか…俺」

馬「わりぃわりぃ

こんな所でなにしてんだ?」

 

北「いや…特にどうって事はないんだけどさ」

 

?「あ!

ならさ、北郷さんも警邏行こうよ!」

 

北「え…?」

 

たんぽぽと呼ばれる彼女は一刀の袖を掴み体を引っ張る。

 

馬「何言ってんだよたんぽぽ…」

 

北「いや、出来たらお願いしたいな」

 

?「やたー!さぁ行こう!!」

 

彼女は一刀達の腕を掴み、廊下を駆けて行った。

 

北「なぁ馬超さん…」

 

馬「ん?」

 

北「あの子?」

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

三人は警邏と言いつつもただ街をブラブラするだけだった。

ちなみに一刀の袖を掴んだ彼女の名は馬岱。

馬超とは従姉妹だが、馬超の事を「お姉様」と呼びしたっている。

 

北「しかし、成都は平和だな」

 

馬「そりゃそうさ、この前の戦で街も少々壊されたしな」

 

馬超の言う通り、街は特に商店が賑わう訳でもなく町人は復旧作業に没頭していた。

 

北「そうだな…」

 

岱「ここも前は美味しい店が並ぶ所だったのになぁ~」

 

馬「そうだったな…」

 

二人は復旧作業を眺めながら、かつての街の姿を思い起こしているのだろう。

 

一刀は少しいたたまれない気分を味わった。

 

馬「でも、こう言う時に多いのが…」

 

「物取りだ!」

 

まるで馬超の言葉を待っていたかのように作業している通りの奧からその言葉は飛び込んできた。

 

馬「行くぞたんぽぽ!」

 

岱「おぅ!」

 

が、しかし…

勢い良く飛び出したが復旧作業をする町人達の群や材木やらで道は塞がれており、二人は進行に苦戦した。

 

洛陽で警邏の隊長をしていた一刀の出番

素早く状況を確認し、通れる道を探す。

街の全容が掴んでいないので道は解らないが、それに変わる道を探す

そこで一刀の目に止まったのはある店の脇に積まれた木箱だった。

北「馬超さん、馬岱ちゃんこっちだ!!」

 

二人を呼び、木箱を昇り店の屋根に飛び移った。

二人もそれを見て木箱を昇り、一刀の後に付いて来る。

 

岱「北郷さんすご~い!」

 

北「二人共、滑るなよ!」

 

瓦の上を走る音は状況とは裏腹に軽快に鳴り、それを聞きながら三人は犯人を追った

しばらく行くと両手に盗んだ荷物を大事そうに抱えて、三人の少し先を走る犯人を発見した。

 

馬「居たぞ北郷!あいつだ!!」

 

北「よし!」

 

馬超の確認も取り、一刀はさらに走るスピードを上げる

ようやく犯人と並び木刀を抜いて屋根から飛び降りた。

 

北「おい!お前!!」

 

「な、なんだ!?」

 

北「はあぁぁ…てぃっ!!」

 

一刀の声に反応し、犯人は足を止め上を見た

しかし、それは一刀に取って好都合だ

木刀で犯人の肩に一撃を放つ。

 

馬「しっかし、やるなぁお前」

 

三人は犯人を警邏部隊に引き渡し、再び街をブラブラ歩く事に

盗まれた物も被害者に返し、一件落着した。

 

北「これでも洛陽じゃ、警邏部隊の総指揮をとってるからな」

 

岱「一刀さんすごぉ~い!」

 

馬「あぁ、最初は胡散臭い奴だと思ってたけど

なかなか骨のある奴だな」

 

岱「あれぇ~?

お姉様ったら最初は「信用出来ない」とか言ってたくせに…

もしかして、惚れた?」

 

馬「ななななな!?

バッ!バカ違うよ!?

素直に認めたって話だよ!」

 

北「ははっ…ありがとうな」

 

岱「一刀さん、私の真名は蒲公英だよ

蒲公英って呼んでいいからね」

 

一刀の腕を掴み抱くようにして、馬岱こと蒲公英は真名を預けてくれた。

 

馬「じゃあ、私もな…

私は馬超、真名は翠だ

よろしくな、北郷」

 

北「一刀でいいよ、翠」

 

一刀は翠に手を差し伸べ、握手を交わした。

その後、三人で世が世ならオープンカフェのような場所でお茶を楽しみ、夕暮れ時まで語り合った。

 

残るは

関羽、趙雲、諸葛亮、鳳統、魏延…

 

北(まだまだ先は長いな…)

 

そう思いながら、一刀は沈む夕日を茶を片手に眺めていた。


 
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