時間は一週間前に遡る。
「ついに動き始めましたね・・・」
朱里の一言に、玉座に集められた俺達は一斉に頷く。
動き始めたというのは、言うまでもない五胡の動きについてだ。一週間前に、なんと五胡があの孫策が率いる呉を侵略したという情報が伝わってきたのだ。
最初は「何かの間違いでは?」とみんな思っていたが、どうやら本当の話らしい。
なぜ本当だと言えるのかというと、
「すみません・・・私が、いながら・・・」
「周泰ちゃんは悪くないよ。本当に悪いにのは五胡の人達・・・だから、そんなに自分を責めないで。」
今でも泣きそうな顔をする周泰。それを桃香は、そっと優しく抱きしめて慰める。
つまり、なぜ呉が侵略された話が本当だと知ったのは周泰達のおかげということだ。
周泰達は呉が侵略された三日後に俺達のところへと来た。そして、何とか呉のみんなを助け欲しいと必死に俺達に懇願してきたのだ。
「そうですよ明命ちゃん・・・今の私にできるのは悲しむことじゃなくて、前を向くということです。前を向いて、どうするべきか考えることですよぉ。」
「隠さま・・・」
周泰の隣に座り、呉の軍師の一人の陸遜。陸遜も、周泰達と逃げてきた内の一人・・・しかし、逃げてきた呉の中心人物はこの二人だけで、残りは護衛としてついてきた少人数の兵士。
他の中心人物らは、大半が何らかの方法で城に侵入してきた、環の妙な技の仕業で倒されてしまったらしい。
「しかし・・・何度聞いても、環一人であの孫策殿達が倒されるとは、なんとも信じがたい話だな・・・」
愛紗は話を聞いただけでは、あまり納得し難いといった風にポツリと呟く。
「いえ~、実際には環一人ではありませんでしたよ?もう二人・・・背の低い男の子が二人がいましたねぇ。」
「・・・っ!そ、その男の一人に、手に槍を持ったヤツはいなかったか!?」
俺は陸遜の話を聞き、思わず机をバンッと叩きながら立ち上がる。
「え、えぇ・・・確か、環と一緒にいた子は『王湾』と呼ばれていましたね~。そして私達が城を出る頃、五胡が一斉に攻めてきた時に先頭にいた子は、手に槍を持っていたのを覚えています・・・けど、それがどうかしたんですかぁ?」
「い、いや何でもない。ありがとう・・・」
俺はゆっくり元の席に座り、腕組をする。
「(やっぱり・・・飛鳥はあそこにいるみたいだ。しかし・・・今更だけど、何で飛鳥は五胡にいるんだ?陸遜が言う妙な技みたいなので、あやつらてるんだったら納得がいくけど・・・ん?あやつられてる・・・?)」
ある単語に対して、頭の中の何かがぴったりとはまる音がした。
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
玉座中に俺の驚きの声が響く。
「はわっ!?い、一体ど、ど、ど、どうしたんですかご主人しゃま!?」
「あわわわわわわわわわわわわわ・・・・・(ガクガクブルブル)」
俺の大声に、朱里は驚きすぎて殆ど呂律が回らず、雛里に関しては身をガクガクと震わせて怯えている。
「え?あ、ああ。ごめんな怖がらせて・・・その、陸遜と周泰に一つ聞きたいことがあるんだけど、いいか?」
「はい~答えられる範囲でしたらぁ~♪」
「何でしょうか?」
「ありがとう・・・で、もし見えてたらいいんだけど、環の身体に杖とか装飾品みたいなものは付いてなかったか?」
俺の質問に陸遜と周泰は、う~んとしばらく考え込んでいると、その数分後。
「確か・・・孫権さまが倒れる瞬間、杖はありませんでしたけど、環の右手に付いていた指輪らしきものが光ったようなぁ~・・・」
「ええ。こう・・・パァって光りだしたと思ったら、孫権様が倒れて・・・・・あっ!もしかして・・・!」
周泰がハッと何かに気づいた風に声を漏らす。
「ああ。その‘もしかしたら,だ・・・多分、環の術は人を眠らせてその眠った相手を思い通りに動かすことができるものだと思うんだ。まだ確信はできないけどな・・・」
「なんと・・・」
「そんなことが出来るのか!?」
俺のまだ確信できてはいないが、多分そうだろう言える考えに、みんなが驚愕の声を漏らす。
「(飛鳥も多分この術で、あやつられてるんだと思う・・・くそったれが!)」
「じゃ、じゃあ・・・雪蓮さまや祭さま達とかも・・・」
「・・・蒼介さんの考えが本当だとしたら、きっとそうなってるんでしょうね。」
「・・・っ!?そ、そんな・・・」
周泰は陸遜の一言に、顔を真っ青にする。それも無理もないことだ・・・仲間と剣を交えることになるかもしれないんだから。そんなことがあれば、きっと周泰はもちろん、愛紗や鈴々だって相手の身体を傷つけることはできないと思う。だったら・・・。
「だったら俺が、環の指輪を壊してやる・・・だから、周泰ちゃんや愛紗達は攻撃を受けることだけ考えてくれ。」
「け、けど、そんな危険なこと・・・!」
「大丈夫だ。必ず破壊してやる・・・俺の命に替えてもだ。」
俺の一言に周泰は途中で言葉を止め、静かに頷いた。
「・・・でしたらこうしたらどうでしょうか?」
「ん?何かあるか朱里。」
会話が終わった俺に、朱里は手を挙げて提案した。
「ご主人様のご友人に魏の北郷さんがいますよね?その人に頼んで、何とか魏と同盟は組めないでしょうか?そうすれば、五胡との勢力差も減って、環のいるところに辿り着きやすくなると思うんです。」
「一刀にか・・・」
朱里の提案に、額に手を当てて考える・・・確かにあいつとは一緒に修行して実力はあるし、曹操のいる魏と同盟が組めたら、勢力的にも対抗ができる。
「分かった。だったら、すぐ一刀達がいる魏に向かってお願いしてみよう・・・みんなもそれでいいか?」
・・・・・コクッ。
俺の問いかけにみんなはしっかりと頷いてくれた。
「よし・・・!じゃあ善は急げだ。明日にはもう出発しよう・・・それと周泰と陸遜。」
「はい?」
「何でしょうかぁ~?」
「二人にも、一緒に来て欲しいんだ。一応、説明役がいるしね。」
「「はい!」」
そして、俺達は明朝に一刀達の魏へと向かうこととなった。
「・・・で、多分環の術はそういうものだと思うんだ。だから、急いで指輪を破壊するためにも君達の力がどうしても必要なんだ・・・力を貸してくれ!」
俺は玉座に腰掛けている曹操に、頭を必死に下げて懇願した。
「・・・ふぅ、仕方ないわね。こちらも利害が一致している以上、手を貸さないわけにはいかないわ・・・よろしい。その同盟組ませてもらうわ。」
「あ、ありがとう・・・!本当に感謝する!」
曹操の返事に、俺は満面の笑みで感謝の気持ちを表した。
「蒼介凄いな・・・よくここまで考えられたモンだよ。これで、少し可能性が出てきたな。」
「ああ。けど、俺達が頑張らないと飛鳥を助けることなんて不可能だ・・・だから一刀、死ぬ気でヤレよ。」
「分かってるよ・・・蒼介こそ、な。」
俺達は互いの拳をぶつけ合い、これからの戦いのため気合を入れる。
しかしその一週間後、俺達が攻める前に五胡の方から侵攻をし始めてきたのだ。俺達の軍と一刀達の軍とで結成された同盟だ。そう易々と潰される気はない・・・それぞれの想いを胸に、俺達は戦場へと向かい討つ。
群雄、環を討たんとす・・・戦いの幕開けである。
※どうもお米です。エラーが二回も起こり、更新がかなり遅れてしまいました。本当にすみません・・・さて、三十回を突破したこの3人の誓いも、そろそろ終わりがみえてきましたね・・・最後に向かってひた走るばかりです。それでは失礼します~。
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ついに三十話目となりました!こんな駄文がここまで来れたのも、応援してくださるみなさんのおかげです。これからも誠心誠意書かせていただきますので、よろしくお願いします!