No.152126

真・恋姫†無双~覇天之演義~ 裏一章・洛陽動乱

FALANDIAさん

*旧作
裏一章、出来上がりました。
裏表同時に作っていたら、思いのほか時間かかってしまいました。

裏と表は平行時間の物語です。

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2010-06-21 01:56:10 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:3291   閲覧ユーザー数:2885

洛陽郊外

 

 

「くそっ!なんなんだ、あいつは!今迄の外史にはあんな奴はいなかったぞ!」

 

「いいえ、左慈。存在はしていましたよ。表に現れたのは初めてでしょうが。

 しかし、あの将はあのような姿でしたでしょうか…?」

 

 

白衣を着た道士二人が、洛陽から離脱して逃走していた。

この外史(パラレルワールド)の管理を受け持ち、破壊せんとする者たち。

柄の悪い口調の男は左慈。丁寧な口調の男は于吉という。

天の世界(現実世界)で銅鏡を盗み出そうとしていたのは左慈である。

 

 

于吉「しかし、どうしましょうか。今回、私たちが洛陽を追われたことで、

 今まで執ってきた帝と董卓軍を裏から操作するという手段が断たれてしまいました。

 かの御仁がいる限り、私たちが再び洛陽に舞い戻ることはまず不可能でしょう。」

 

左慈「ちっ!おのれ、何進め。いつか俺が、直接この手で貴様の首級をあげてやるぞ!」

 

 

悪態を吐きながら、二人は森の中に消えていった。

洛陽外壁の上からその様子を見ていた将が、誰にともなくつぶやく。

 

 

何進「何進遂高(カシンスイコウ)、任務完了。正史誤差影響度、小。」

 

??『南華、了解。』

 

??『田豊、了解。』

 

??『龐徳、了解。』

 

??『公孫越、了解。』

 

 

将のつぶやきに、何者かが答えていく。

 

 

何進「状況に障害なし。各位、任務継続されたし。」

 

??『『『『 委細承知。 』』』』

 

 

何処からともなく聞こえていた声は消え、あたりに響くのは将の声と風の音のみである。

 

 

何進「望むべき乱世は来ない…。中途半端な力をつけさせられる気分はいかがかな、皆々様。」

 

 

今度は答えは返ってこない。将が、彼が語りかけているのは、いったい誰に対してか。

 

 

何進「さァ、乗り越えて見せろ。期待してンだぜ?」

 

 

嗤う将の兜の隙間から、白い帯のような布がはためく。

ふと、いつの間にやら、外壁の上には既に何者の影も形もなくなっていた。

 

??「何進め、毒を盛ったというのに運よく生き残りおって…。

 計画通りなら、今頃はとうに何進を暗殺してあのうつけな劉弁と劉協めらを傀儡にして、

 この漢王朝の実権をワシが握っておるはずだったというのに…。まったくもって忌々しい。」

 

 

洛陽内の宮殿の廊下を、苛立たしげな足音を立てながらうろうろする人間がいた。

張譲と呼ばれる、十常侍という官職の宦官である。

張譲は霊帝の時代から王朝の実権を握ることを目的に行動してきている。

ついに霊帝が没し、ようやく計画成れり、というところで現れた何進により、計画は遅延。

張譲は何太后と朱苗を味方に地位の拡大を、何進は董卓と丁原を味方に軍事力の拡大を行い、

互いを牽制し合い、決定打に欠けたいたちごっこが続いている。

つい先日、劉弁の偽の詔勅で食事会へ招き、何進は毒を盛られた料理を食し、臥した。

しかし、いつの間にか招いていた腕の良い医者によって一命を取り留めたのである。

そのため、暗殺の何進暗殺の失敗と、自身の計画の遅延にイラついているのである。

そんな、ぶつぶつ呟きながら未だうろつく張譲の様子を、盗み見ている影があった。

 

 

何進「聞ィてたか。弁、協?」

 

劉弁「ああ、しかと聞いたぞ、進。聞いたが…、しかし…。」

 

劉協「なんということでしょう…。まさか、あの張爺様が…。」

 

 

盗み聞いた張譲の呟きに、ただ絶句する二人の少女。

彼女たちこそ、この漢王朝の皇族、劉弁と劉協である。

 

 

何進「だが、誤魔化しはきかねェ。実際、何進は死んだンだからよ。」

 

劉弁「そ…うだな。」

 

劉協「ご遺体も、見せていただきましたしね…。」

 

 

『何進は死んだ。』

しかし、劉姉妹と会話しているのは何進である。

少なくとも、そういうことになっているはずである。

では彼はいったい誰なのだろうか…。

そうこう言っている間に、張譲はどこかへいってしまった。

 

何進「さァて、このまま放置すンのは、あまり得策じゃねェな。

 俺の行動に痺れをきらしゃァ、最悪お前ェたちを人質にとる行動に出るかもしれねェ。

 いざとなりゃァ、お前ェたちを殺して別の人間を皇帝に擁してもおかしくはねェ。」

 

劉姉妹 (( 囚われのお姫様的立場も悪くないかも…。 ))

 

何進「…なァに考えてやがる、あァ?」

 

劉弁「ご、ゴホン!ならば…、どうすればいいのだろう…?」

 

劉協「けふけふ!不勉強で申し訳ないですが…、私にもどうしたらいいか。」

 

何進「…はァ。一番手っ取り早ェのは、まァ、暗殺なんだが。

 世間に疎いお前ェ等が暗殺に関わりでもすれりゃァ、

 ………毎夜悪夢にやられて俺が襲撃を受けるハメになりそうだから却下。

 ならば、今回のことを理由に十常侍から罷免、更に洛陽からの永久追放でもすればいい。」

 

劉弁「ああ、なるほど。そうすれば血は見ないで済むな。」

 

劉協「ふに…、良かったです…。」

 

 

迷うことなく、それで決まり、みたいな態度をとる二人に、何進は言う。

 

 

何進「…お前ェら皇族なンだから、もうちっと鵜呑みにしねェで考えるってしようぜ。」

 

劉姉妹 「「 なんで?(ですか?) 」」

 

何進「あァ、もういいよ…。」

 

 

いろいろ諦める何進であった。

 

張譲の追放を決断した劉姉妹ではあるものの、

盗み聞いた話からという理由では立ち行かない。

よって、何進の計画立案による、張譲追放作戦が展開される。

 

 

張譲「お、おのれぇ!何進め、いったい何をした!?」

 

 

張譲と拮抗していた何進の勢力が、今までを凌駕するくらいの勢いで伸びた。

一時から、急激に徴兵と調練に力を入れ始めたのである。

やや無茶に見える訓練の結果、練度もかなりのものに仕上がった。

もはや、張譲派と何進派の勢力バランスは取り返しがつかないものとなっていた。

この事態に焦った張譲に、ある噂が飛び込んでくる。

内容は、何進によって招かれた将である董卓と丁原が、何進の人使いの荒さに辟易している事。

彼女らの軍から何人もの優秀な人材を無断で引き抜いており、

他者の配下の軍を我が物顔でこき使っている何進に怒り心頭である、というもの。

これを聞いた張譲は、これぞ好機!、とばかりに彼女らに接触を計る。

持ちかける話は、張譲が放つ刺客を警備で止めることなく、何進のもとまで通すこと。

 

 

董卓「…もしもの時、こちらに被害が出ないことを約束してもらえるなら、お受けします。」

 

丁原「…右同。」

 

張譲「ええ。ええ、もちろんお約束しますよ、ええ。」

 

 

そういいながらも、張譲はもしもの時は彼女たちに罪を全て押し付けてしまうつもりだった。

抜かりなど無い。すでに手回しは済んでいる。

これで…、これで全てうまくいく…。ついに権力を我が手に…。

詰みだ、と。張譲は心中呟く。

 

そもそも始めから自分が、何進の掌の上とも知らず…。

 

翌朝、宮中は騒然としていた。

何者かが警備の網を突破し、何進大将軍が暗殺された、と報じられたのである。

それも、ぎりぎりで察知して、阻止せんとした丁原もろともに、である。

よもや丁原が裏切るとは、と少し胆を冷やしながらも、

ついに何進を墜としたことに、内心ほくそ笑みながら、

悲しげな表情を作って、扉を開けて悠々と謁見の間へ入り――

 

 

「よォ、随分と機嫌がいいじゃねェか。何か良い事でもあったのかよ?」

 

 

かは、という笑い声に思考が止まる。

皇帝がいない、玉座には劉弁が座っているはずだというのに。

では、目の前の玉座に座っている男は誰だ?

 

感情の制御もむなしく取り乱す。

 

 

張譲「…かな、馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!貴様何故生きている!?

 貴様は昨夜、私が放った朱苗に討ち取られたはずでは…!!」

 

劉弁「ほう、それはどういうことか…。」

 

劉協「詳しくお聞かせ願えますか…?」

 

張譲「なっ、何…!?」

 

 

バタン、という扉の閉まる音と、今この場で聞くのは非常にマズい声。

振り返った張譲の視線の先に居たのは、扉を両側から閉めた劉姉妹に、

突如上から降ってきて、門番のように扉の前、劉姉妹の少し後ろに仁王立ちする丁原だった。

ようやくここに至って、自分がはめられたことを理解する張譲。

怒りに顔を歪ませながら振り返った先には―、

 

策に嵌めた張本人である何進と、寄り添うように並び立つ二人の少女の姿。

一人は何進に招かれ、既に忠誠を誓っている少女、董卓。そしてもう一人。

彼女こそ、今回の作戦の要であり、この事を予見して随分昔に何進が打っておいた最大の伏兵。

彼女こそ、今回刺客として送られ、これをもって作戦を成功させた名女優。

彼女の名前は朱苗(シュビョウ)。

今は何進の義妹として何苗(カビョウ)を名乗る、依代(イヨ)という真名の少女である。

 

 

張譲「麗(レイ)!貴様…。あれほど寵愛してやったというのに、

 そちらに寝返ったのか!容易に股を開きおって、この薄汚い売女め!」

 

依代「あら、笑わせないでくださいな。

 私は始めから徹頭徹尾、何進兄様の味方でしかありません。

 それに触れることは胃が破れそうなほど我慢してゆるしましたけれど、

 私は、愛しい何進兄様以外にこの操を許したことなどありませんわ。」

 

張譲「な、なんだと…!?」

 

依代「あなたが今日まで抱いてきたのは、兄様の幻術で見たあなたの妄想です。

 あなたは私を抱いたつもりになって、ひとりで勝手に悦に入っていただけですよ?

 あと、私の真名は麗ではありません。あなたなんかに託す訳がありませんわ。」

 

張譲「ぐ、ぬぬぬぬぬ…。おのれ…。まだだ…、まだ大丈夫だ。

 ここにいる全員の口を封じれば良いだけではないか。者共、出会え!」

 

 

張譲がそう言った瞬間、大量の兵士たちが謁見の間に雪崩れ込んできた。

全員がそれぞれの獲物を構え、部屋の外周を取り囲んでいる。

 

 

張譲「此奴等は皇族とその将を騙る賊だ!ここにいる連中全て殺してしまえ!!」

 

 

張譲が叫ぶ。これで決まった!と言わんばかりの勝ち誇った表情である。

しかし、次第にその表情も凍り付いて行く。張譲の号令にただの一人も、兵が動かない。

 

 

張譲「どうした、貴様ら!はやく賊を…!」

 

??「……無駄。」

 

??「そうやで、おっちゃん。いい加減諦めーや。」

 

??「愚かな話だ。私たちが両陛下のご尊顔を知らぬとでも思っていたのか。」

 

 

そう言いながら、兵たちの中から三人の武将が現れる。

 

明らかにサイズがおかしい装飾戟『方天画戟(ホウテンガゲキ)』を、軽々と肩に担いで出てくるのは、

無双・飛将軍、呂布奉先(リョフホウセン)。真名を恋(レン)。

 

サラシに袴という、やや時代錯誤気味ないでたちで、鈎(カギ)のついた、

長柄の薙刀『鈎韋駄天(コウイダテン)』を油断無く携えている関西弁(?)の女は、

神速名高い張遼文遠(チョウリョウブンエン)。真名を霞(シア)。

 

淡く青みがかったやや短めの髪、胸元の鎧とスカートのような服、

身の丈に迫る長柄の巨大な戦斧の刃を引きずりそうなほど低い位置に構えた女は、

攻めも守りもこなす勇将、華雄辰姫(カユウシンキ)。真名を桜(サクラ)。

 

現官軍誇る最強戦力がこの場に集結した。

張譲は完全に孤立無援状態。脱出や隠蔽など最早不可能であることを悟る。

 

 

張譲「く、くそぉおおおお!!何進、この上は貴様だけでも!!」

 

 

そういうと、張譲は懐から短刀を抜き、何進へ向かって走り出す。

張譲の急な行動に、誰も動けない。いや、動かない。表情も余裕を表すそれである。

走りながらいぶかしむ張譲を、何進の背後から天高く飛び出した人影が襲う。

 

 

??「今よねね!行きなさい!!」

 

??「了解なのです!

 ちんきゅぅぅううーーーーーーーっきーーーーーーーっっっく!!!!」

 

張譲「な!?うぐぁっ!!」

 

 

ラ○ダーキックの直撃を受けた張譲は、短刀ごと吹き飛ばされた。

 

 

??「ふん、呆れたものね。行動が透けて見えるわ。」

 

??「そんなわるあがき、お見通しなのです!往生際が悪いですぞ!」

 

 

かなり小柄な体格で大の大人の男性を派手に蹴り飛ばした少女。

少女の名前は陳宮公台(チンキュウコウダイ)。真名は音々音(ネネネ)である。

彼女の発射(?)の合図をしたのは、いつの間にか丁原の隣で腕を組んで不敵に笑う少女。

彼女は賈駆文和(カクブンワ)。真名は詠(エイ)である。

蹴り飛ばされた張譲は、元の位置まで吹っ飛び、飛んでいった短刀は丁原が指で挟んでいた。

万事休す。これで完全に張譲の打つ手は無くなった。

 

 

劉弁「ま、という訳でだ。」

 

劉協「十常侍宦官・張譲。お覚悟…、よろしいですか?」

 

丁原「…破滅。」

 

 

こうして、張譲は何進殺害の容疑により十常侍の地位を剥奪、洛陽から追放された。

 

今回のことのあらましはこうだ。

一度起こった、毒による暗殺事件からこうなるであろう事を予測していた何進は、

義妹・依代を伏兵役として張譲側に派遣。

伊予の演技と何進の幻術によって今回の件まで張譲をだまし続けていたのである。

 

そして、作戦の始動にあたり、劉姉妹と董卓、丁原にこれを説明。

協力の約束を取り付ける。

 

最初は、張譲に揺さぶりをかけるために勢力を一気に伸ばす。

もともと、張譲など眼中になかった何進は、必要最低限のことしかしていなかったので、

名声や実力共に充実している何進にとって、勢力に関する労などあって無いようなものだった。

また同時に、何進に何かしら才を見出された者は、何進が直接調練を行った。

一時から、急激に兵たちの人気を集めていた何進の直々の調練である。

いつか自分たちも、と兵たちの士気は見る見る上昇し、練度もかなりのものに仕上がった。

張譲を騙して追い出す作戦のうちに、ちゃっかり兵を磨き上げているのであった。

 

そして焦った張譲に、手を回した一般兵を使ってブラフの噂を流す。

内容は、董卓と丁原が何進に不満を抱いている、というもの。

なりふり構っていられるほど余裕のない張譲はこの噂に飛びつき、内通を頼む。

この際、張譲は事が露呈し窮地に陥った時、董卓と丁原に責任を押し付けられるよう、

各方面に根回し手回しを行っていたが、その相手たちも既に何進側の人間だったりする。

 

この時点で張譲派はかなり縮小してしまっており、刺客として動けるのは依代くらいである。

仮に刺客が依代でなかったとしても、一兵卒程度に寝首をかかれる程何進も弱くは無い。

結果として、狙い通り依代が刺客として放たれ、何進の部屋を訪れる。

ここで関係者を集め、翌朝に何進と丁原が暗殺されたという報を回すよう、

計画に関わっている数名の兵たちに手を回し、あとは余裕こいてる張譲を待つだけである。

 

乗せられた張譲はまんまとこの罠にかかり、玉座に座ってニヤけている何進を目にし、

取り乱して劉姉妹と丁原が潜んでいる謁見の間で大声で情報を暴露してしまった。

言い逃れできる筈も無い現行犯。張譲は都を追われたのであった。

 

依代「しかし…、ふふ、びっくりするほど綺麗に嵌りましたね。」

 

劉弁「そうだな、いっそ清々しい。」

 

劉協「進様が狙われることが無くなってよかったです。」

 

何進「おィ、下手すりゃお前ェも狙われてたンだぜ。」

 

劉協「小梅(コウメ)です。」

 

何進「あァ?」

 

劉協「私の真名、お前じゃなくて小梅です。小梅って呼んでください。」

 

劉弁「じゃぁ、ワタシも。ワタシは椛(モミジ)だ。」

 

董卓「へぅ。わ、私は月(ユエ)です~。」

 

賈駆「月が名乗るなら…。ボクの真名は詠。よろしく。」

 

丁原「影夜(カグヤ)」

 

何苗「依代ですわ。どうぞよしなに。」

 

呂布「…恋は恋。みんな…家族。」

 

陳宮「いつも恋殿のお側に!音々音なのです!」

 

張遼「霞や。よろしくしてやってな~、大将、みんな~!」

 

華雄「私か。私は桜だ。字は辰姫だぞ。」

 

何進「何泣いてンだ?」

 

桜「泣いてなどいない!!」

 

何進「…そォか。」

 

 

何進は深くは追求しなかった。

 

 

何進「あとは俺か。俺の真名は―――」

 

湊瑠「―――湊瑠(ソウル)だ。」

 

 


 
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