No.152066

真・恋姫†無双~外史を渡る者~「蜀編」

洛陽に帰還した華琳率いる魏軍
しかし、華琳達の知らない所で戦いは激しさを増していた。

戦いはある者の来訪によりにはじまった。

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2010-06-20 23:06:12 投稿 / 全23ページ    総閲覧数:3497   閲覧ユーザー数:2821

華琳と一刀が洛陽に到着してしばらくしてのこと…

 

ある国が五胡の進行を受けていた。

 

 

 

 

 

関「蜀に牙向く、愚かな蛮族共っ!!

我が青龍偃月刀の錆びにしてくれるわっ!!!」

 

 

 

 

 

場所は蜀

義王劉備の収める成都が五胡が進行して来た。

 

 

 

 

 

趙「常山の趙子竜!

恐れぬならば掛かってこい!!」

 

 

 

 

 

張「鈴々がぶっ飛ばすのだーっ!!」

 

 

 

 

 

関羽を始め趙雲、張飛を始め多くの武将が五胡の攻撃に抵抗した。

 

 

しかし、圧倒的な兵数に蜀軍は苦戦をしいられた。

 

 

五胡の猛攻は止まらず、劉備は民を成都の城に避難させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっぐ…ぐすっぐすっ…」

 

 

馬に相乗りする少女は黒煙の上がる成都を見つめ、かぶった帽子を握り締め、涙を流していた。

 

 

 

 

 

「泣くな雛里…

私達は泣いてる暇なんてないんだよ…」

 

 

 

 

少女の後ろに座るポニーテールの女の子は口を噛みしめ、悔しそうに成都を見つめていた。

 

 

 

 

 

「えっぐ…ぐすっ…ぁい」

 

 

 

 

雛里と呼ばれた少女は大粒の涙を拭った。

 

 

ポニーテールの女の子は馬を動かし、成都に背を向けた。

 

 

 

 

 

(私は忘れない…あの十文旗を…!)

 

 

 

 

 

 

成都を囲む五胡軍の中に十文字の旗が不気味になびいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蜀編~成都奪還戦~

洛陽に戻った魏の軍勢は城で息つく暇もなく華琳に集められた。

 

 

華「さて、今回の戦と模擬戦は皆ご苦労

模擬戦は関係ないが、建業での戦をまとめたいと思う」

 

そう切り出した華琳。

 

どうやら情報整理を兼ねた軍議のようだった。

 

この世界を離れていた一刀には丁度いい勉強になる。

 

華「まずは北郷隊が一刀の偽者と遭遇したのはあの夜襲の昼間よね?」

 

凪「はい

真桜と沙和で前線の戦闘中に隊長の偽者が現れ私は攻撃されました」

 

華「一刀はその昼間に帰還したのよね?」

 

北「あぁ…建業をフラフラしてた所を呉に捕まったんだ

その後は雪蓮に保護された」

 

華「保護…ねぇ」

 

一刀の言葉に異常に反応した華琳

華琳だけではない、その場に居る全員が意味あり気な視線を一刀に浴びせてくる。

 

 

華「ま、それは別によしとして…」

 

 

北「いいのかよ…」

 

 

華「春蘭と秋蘭は妖術師と出会ったようね?」

 

秋「はい

姉者と一緒に隊をまとめておりましたらいきなり現れ、戦闘に入りました」

 

春「力は非力でしたがとにかく速くて…」

 

華「そぅ…ならばその妖術師が一刀の偽者を放ったと見て間違えはないわね

後はあの赤い鎧を付けた奴ね」

 

北(徐晃って奴か

あいつは俺を含め華琳達も見てるからな 。

確か徐晃って魏の将だったよな?)

 

季「すんごい強い奴だったんですよ!」

 

流「私と季衣の力技をねじ伏せるぐらいですから」

 

確かに徐晃は片手で二人の鈍重武器をなぎ払っていた。

 

華「今分かるのはこの程度か…

桂花、これをまとめて各国に至急手紙を放ちなさい」

 

桂「御意」

 

華「今日はこれにて解散!

各員、本日は自由に休むがいい」

 

華琳のその言葉を合図に皆、解散した。

そんなこんなで次の日…

 

 

北「はぁっ!!」

 

凪「足さばきが雑です隊長」

 

一刀は朝からいつものように鍛錬に勤しんでいた。

昨日、会議終了後に真桜にダンベルの制作を依頼した

夜までには仕上がりそのダンベルを使い正拳付きや裏拳など武の鍛錬をしている所に凪が通り掛かり、稽古をつけて貰うことになった。

 

華「精が出るわね、二人とも」

 

凪「華琳様、おはようございます」

 

北「おはようさん」

 

華「おはよう

凪、一刀の相手も良いけどあなた、朝は警邏担当ではなくて?」

 

凪「あっ!?

申し訳ありません!直ちに向かいます!!

隊長、それではまた!」

 

 

凪はあわてて、その場を後にした。

 

北「華琳、すまない

俺が凪を引き止めたんだ

あまり叱らないでくれ」

 

華「構わないわよ

…あの子もあなたに会えて嬉しかったんだろうしね」

 

華「一刀、これが終わったら後で付き合いなさい」

 

 

華琳の言う「これ」とは恐らく手に持った書類の事だろう

覇王と言えど政治には手を抜けないらしい。

 

北「あぁ…構わないぜ」

 

華「じゃあ後でね」

 

 

そう言って華琳はいそいそと行ってしまう。

 

凪、華琳が居なくなった所で一刀は再びダンベルを手にして鍛錬を始めた。

 

ちなみにダンベルと言っても元の世界のとは違い、ただの鉄パイプに重さが均等の岩がくっ付いているだけでけ。

 

 

秋「精が出るな、北郷」

 

 

汗をかきながらしばらく鍛錬をしていていると次は秋蘭がやって来た。

 

 

北「秋蘭、仕事は終わったのか?」

 

秋「うむ…以前から書いていた報告書が終わってな今は手持ち無沙汰だ」

 

北「そうか…

なら、今は暇だよな?」

 

秋「あぁ、華琳様に呼ばれない限りはな」

 

北「ならさ、俺に弓の稽古をつけてくれよ」

秋「弓…か?」

 

北「剣や武は爺ちゃんに教わったけど弓は無理でね

弓道場に通う程でもなかったしね

だけどやっぱり遠距離系の技は鍛えとかないとな」

 

秋「うむ、了解した

では訓練用の矢と弓、それと簡単な的を持ってこよう

それまでに汗でも拭いて待っててくれ」

 

 

「ありがとうな」

 

 

持ってきた手拭いで汗を拭き、ダンベルを片付けて待っていると

秋蘭が一式と自分の弓を持ってきた。

 

秋「では、始めよう」

 

 

秋蘭から渡された的を設置し、弓を持って秋蘭からの教えをこうことに

 

秋「先ずは私が手本を見せよう…いくぞ!

はぁっ!!」

 

 

さすが弓の名手、放った矢は的のど真ん中に矢がささっている。

 

秋「うむ…まずまずだな

では、北郷やってみろ」

 

北「お、おぅ…」

 

とりあえず見よう見真似で構えて矢を放ってみるが引きが弱いのか矢はヘロヘロ的の前で落ちてしまう。

 

秋「引きが甘いな…しっかり弓を持ち弦を引け」

 

北「おぉ…よっ!」

 

秋蘭の指導を受け、もう一度矢を放つ

今度は的の前まで届くが矢は地面に突き刺さってしまう。

 

秋「今度は力が入りすぎて形が崩れたな

こうやるんだよ」

 

北「ちょっ!秋蘭!?」

 

 

いきなり秋蘭は一刀の背後にピッタリと張り付き一刀の腕を持って形を整えてくれる

 

だけど一刀はそれどころではない…

 

秋蘭のふくよかな胸が一刀の背中にあたり集中できない。

それどころか、体が硬直してしまう。

 

秋「どうした北郷?

体が硬いぞ……クス」

 

北「(笑ったよね?

今、「クス」って笑ったよね?!)

秋蘭、近いよ…」

 

秋「こうしなければ稽古になるまい?」

 

北「こ、こうか?」

 

 

一刀はあえて触れず真面目に弓の稽古を始めるが…

 

秋「違うこうだ」

 

そう言うたびに秋蘭は胸をさらにあてて来る。

北「うっ…!」

 

秋「こら、体を硬直させるな

もっと背筋を伸ばせ、なぜ前かがみになるのだ?」

 

北(なぜってそれは俺の矢が…

いや、これを言うのはやめておこう)

 

しかし、相変わらず秋蘭はわざとやるようにフニフニ当ててくる。

 

だが、さすがに一刀も何度も当てられれば慣れると言うもの。

 

秋「うむ、いい型になってるそれではこのまま矢を放ってみろ」

 

北「了解…」

 

意識せずに弦を引く

相変わらず、秋蘭の胸は俺の背中に当たっているが

今は気にならない。

 

秋「ほぅ…」

 

北「なんだ?形がおかしいか?」

 

秋「いや、見事な集中力だよ

さぁ放ってみろ」

 

ギリギリと弦を引き的に狙いを定める

 

北(よし、ここだっ!!)

 

秋「………………………ペロリ」

 

北「うひゃっい!!」

 

 

突然、密着状態にある秋蘭が一刀の首筋を舐めてきた。

 

北「な、なにすんだよ!?」

 

放った矢は当然的には当たらず、地面に突き刺さる

ちなみに飛距離は初の最短距離だ。

 

秋「しょっぱいな…」

 

北「味の感想はどうでもいいわっ!!」

 

秋「北郷、お前は勘違いしているぞ

何も私はいたずら心でお前の首筋を舐めたわけではない」

 

 

北「嘘だぁっ!!いたずら心だろ!」

 

秋「ここが戦場なら悠長に弓を構えてる暇はないぞ

素早く矢を取り、構え、放つ、それだけだ

お前が構えてる隙にお前は無数の矢が刺さる剣山だぞ」

 

北「た、確かに…」

 

秋「ほら、ならば構えろ

鍛錬の再開だ」

 

また秋蘭と密着状態になり弓を構える。

 

しかし…

 

秋「…ペロリ」

 

北「うひゃっ!?」

 

いきなり来る秋蘭の奇襲に一刀は翻弄されまくった

こうして今回は的に当たることもなく

秋蘭先生のエロ奇襲式弓術の鍛錬は幕を閉じた。

その後、秋蘭は事務仕事を思い出したなどと言って弓の稽古は終わった。

 

一刀は忙しいながらもいたずら心99%ぐらいで稽古を付けてくれた秋蘭に礼を告げて、鍛錬道具の一式を片付けていると政務を終えた、華琳が後ろに季衣と流琉を引き連れやって来た。

 

一刀は一旦、部屋に戻りダンベルと訓練用の剣を置き

腰に刀を差して華琳達の待つ庭に向かった。

そこには臭いを嗅ぎつけてか、霞まで居る。

 

季「兄ちゃんおそ~い」

 

北「わりぃわりぃ…お!茶菓子まであるとは豪勢だな」

 

流「はい!

兄様に食べさせたくて一生懸命作りました!!」

 

霞「流琉っち可愛いな~

一刀はモテモテやなぁ」

 

流「そんな…霞様照れます…」

 

流琉は顔を真っ赤にする

その顔もまた可愛い。

 

北「華琳、政務はいいのか?」

 

華「えぇ…あらかた片付いたし、あとは桂花に任せてきたわ」

 

茶の席では一刀の元の世界の話をしていた。

 

剣道で全国三位に入賞したこととか、経済や政治関連の授業で学んだことを華琳達に話した。

 

華「なるほど、あなたもまんざら無駄に生活してたわけじゃないようね」

 

季「兄ちゃんスゲー」

 

霞「ウチにはサッパリ分からんかったわ…」

 

流「正直私も…」

 

北「ま、基礎の基礎しかやってないから、あまり難しいことを聞かれると困るけどな」

 

華「基礎が大事なのよ

何事も基礎と言う土台を組み上げて形にして行かなければ、いい物は出来ないわ

これは国にも言えるわね」

 

霞「そう言うこっちゃ」

 

北「霞、お前には言われたくないぞ」

 

霞「一刀のいけずー!」

楽しく茶を飲んでいたが、季衣と流琉は北郷隊の警邏の仕事を手伝っているらしく

その時間だと言って行ってしまった。

 

霞「ほな、うちも消えるとしますか~

一刀~がんばりや~」

 

ニヤニヤと笑みを浮かべて霞も席を立って行ってしまった。

 

当然、その場に残ったのは一刀と華琳。

 

華「さてと…」

 

華琳はそう言って、立ち上がり何を血迷ったか、一刀の膝の上(正式には腿の上)に座った。

 

さらに、

 

華「ふむ…座り心地は良くないわね…」

 

などと文句を言う始末。

 

北「なぁ、華琳」

 

華「なに?」

 

北「俺さ、なんか仕事したいんだよな」

 

華「仕事?」

 

北「タダ飯食うわけにはいかないだろ?

せめて俺の隊を使って警邏ぐらいはよ…」

 

華「いい心がけね

いいわ、明日から凪達と一緒に警邏に出なさい

真桜達に聞いたけどあなたも腕を上げた様だしね…」

 

北「…zZ」

 

華「一刀?」

 

一刀はなんかいい感じに睡魔が襲って来て…

 

 

 

寝た。

 

 

 

華「まったく…こいつは

でも寝顔は可愛いわね」

 

北「…zZZ…」

 

華「ま、こいつもいろいろ疲れてるんだろうし

まぁ良しとしますか」

 

華琳も一刀の胸に背を預け、寝息をたてた。

茶会から数日後

 

一刀は華琳、春蘭、霞、桂花、凪、真桜、沙和 と各隊の兵士を引き連れ荒野を馬で駆けている。

 

先頭を走るのは蜀の五虎将の一人、馬超と馬超の前に座る鳳統である。

 

何故、蜀の将を筆頭に馬を走らせているかと言うと、事の発端は数日前にさかのぼる。

 

 

 

 

桂「華琳様!」

 

血相を変えた桂花が華琳の部屋に入って来た

その時、一刀は凪を連れて華琳の部屋で警邏の報告をしていた。

 

桂「ちょっと!

なんであんたが華琳様と私の愛の巣に居るのよ!!

さっさと出て行ってよ!!」

 

北「ツッコミ所満載だな」

 

華「桂花、そんな事より何か一大事なのではなくて?」

 

桂花の"最初"の表情を見れば一刀だってただ事では無いのに気が付く。

 

桂「す、すみません

実は蜀より馬超、鳳統の二名が救援を求めに舞いました」

 

華「救援?内容は?」

 

桂「それが…馬超は堅く口を閉ざし、華琳様を呼べと…」

 

華「ふ、翠ならあり得るわね…

よほど切羽詰まった状況か、私が居ないと話せない内容か…

いいわ、広間に皆を集めなさい」

 

桂「はっ!」

 

桂花は華琳に返事をし、出て行った。

 

華「一刀、あなたも来なさい」

 

北「いいのか?」

 

華「えぇ、諸侯に天の御使いの名を知らせるいい機会よ」

 

北「分かった」

 

しかし、この華琳の提案が思い掛け無い情報につながった。

 

 

そのまま、華琳について行き、広間に向かった

すでに広間には魏の精鋭が集まっており、深々と頭を下げる服や鎧がボロボロになった馬超と鳳統の姿がそこにあった。

 

華琳が玉座に座り、一刀はその横に居るように言われた。

華「馬超、鳳統、表を上げなさい」

 

華琳のその言葉に二人は顔を上げる。

 

馬「華琳、この度はお目通り…お、お前は!!」

 

北「ん?俺?」

 

馬「てめぇ!覚悟しやがれっ!!」

 

馬超はいきなり大声を上げ、床に置いた十文字槍を手に取り一刀に切りかかって来た

一刀は腰に掛けた刀を抜き、馬超の一撃を防いだ。

 

鳳「あわわ…」

 

凪「隊長!」

 

春「北郷!」

 

北「いきなり何しやがる!」

 

馬「うるせぇ!

お前のせいで桃香様や…蜀のみんなが…!」

 

一刀は力を込めて馬超を振り払う

しかし、満身創痍とは言えさすがは錦馬超…一撃受けただけで手に痛みが走る。

 

北「言ってる意味がわかんねぇよ!」

 

馬「我が白銀の豪撃、その身に受けて果てやがれ!!」

 

鳳「翠さん、止まって下さい~」

 

北「ちっ!」

 

華「双方!矛を収めよ!!

ここをどこと心得る!!」

 

大声を上げて馬超と一刀を止めたのは魏の王、曹孟徳だ。

 

華「覇王の前でこれ以上争いを続けるなら双方、それなりの覚悟を決めよ!」

 

馬「くっ…」

 

鳳「翠さん、ここは華琳様にお話ししてからの方が…」

 

馬「分かったよ雛里…」

 

悪態を吐く馬超だったが鳳統に止められしぶしぶ槍を下ろし構えを解いた

しかし、一刀への警戒はまだしている。

 

華「それで翠、詳しく事情を話しなさい」

 

馬「あぁ…実はな蜀が侵略されているんだ」

 

華「何ですって…!?」

 

鳳「相手は五胡…兵は数万

内半分は愛紗さん鈴々ちゃん星さん、桔梗さん焔耶さん達で撃破しましたけど…多勢に無勢でした」

 

そう語る雛里こと鳳統はよほど切迫した戦いだったのか体が小刻みに震えていた。

 

馬「私らは籠城戦になったんだ…そしたら奴ら街を破壊するわ、やりたい放題で…城にかくまった町民達が暴れたりして大変なんだよ」

華「町民達も街が破壊されてるのを見て我慢できなかったようね…

それで私に援軍を求めたと…」

 

鳳「はぃ…」

 

華「分かったわ

全軍すぐに戦準備を!!

蜀へは私、一刀、春蘭、霞、桂花、凪、真桜、沙和

残りは連絡を待ちすぐに援護に出れるようにしておけ!」

 

「「「「「はっ!!」」」」」

 

広間に集まった魏の精鋭達は各々戦準備に取りかかる

 

そんな中、華琳は馬超にある事を聞いた。

 

華「翠、なぜ一刀に切りかかったの?」

 

北「そうだよ…

馬超さんに怪我がなかったら俺は死んでたぜ」

 

馬「五胡を引き連れて来た将は…北郷一刀」

 

北「俺?」

 

華「まぁ、そんな事だと思ったけどね…

あれがあの時だけだと思ってなかったわ…

翠、その事に関しては後で説明するわ

あなたはまず傷を癒しなさい」

 

こうして一刀達は蜀の国に向かうことになった。

道中、華琳が馬超に一刀の偽者の話しをしたので一旦誤解は解けたものの、馬超はいまだに一刀に警戒心を抱いているようだ。

 

北「それで?蜀に着いたらいきなり戦闘か?」

 

華「まずは情報を手に入れてからよ

あの関羽や張飛を手こずらせた連中よ

大軍ではない私達がいきなり戦闘しても苦戦か…最悪返り討ちよ」

 

桂「バカね」

 

北「うるせぇぞ桂花!」

 

桂「ふんっ!

春蘭みたいな事言う輩にはお似合いの言葉よ」

 

北「ちょっと待て!

俺は少なくとも春蘭よりはマシな方だ!!」

 

春「なんだと北郷!」

 

北「じゃあ春蘭はさっきの華琳の説明分かるのか?」

 

春「当然だ!

要は敵が多くて強い連中ばかりと言うわけだろ」

 

北「む!

いろいろ抜粋されてるが当たってはいるな」

 

「しかし、いくら強いと言っても私には適わんがな!!」

 

 

北(やっぱアホだ、こいつ)

馬「賑やかな連中だな…」

 

鳳「ふふ…蜀のみんな見たいですね」

 

馬「ま、否定はしないけどな

…桃香様、みんな…待っててくれよ」

 

などと道中賑やかに行く一行はついに蜀の都市、成都の近くまで到着した。

竹林が生い茂る丘に陣を張った。

 

先ずは情報収集の為に霞と沙和が成都に向かった。

 

しばらくして二人が戻って来て、それをもとに軍議を始めた。

 

霞「あらアカンなぁ

成都を城壁囲むように敵がうじゃうじゃいるで」

 

沙「そうなの~

弓兵さんもたくさん居て、街を囲んで逃げようとしたら直ぐに撃たれちゃうの」

 

北「ってことは逆もありか…」

 

華「近づいても撃たれるわね

翠、愛紗達は成都の城の中に居るの?」

 

馬「あぁ、みんな城の中で戦準備は出来てるはずだ」

 

馬超のその言葉を聞いて一刀はある作戦を思い付いた。

 

北「馬超さん、成都に入るには正門だけ?」

 

馬「…」

 

一刀を無視するように馬超は口を閉じたままだった。

 

「そんな事してる場合かよ」

 

と、一刀が言おうとした時…

 

華「翠、一刀はこれでも悪知恵は働く方よ

今は桃香達の為にも協力してちょうだい」

 

華琳が先に口を開いた

その言葉を聞いて、馬超は固く閉じた口を開いた。

 

馬「一応、裏門があるぜ

城の裏口に通じてる道が近くにもあるしな」

 

北「となると…

沙和、敵の十紋旗はどこにあった?」

 

沙「成都の正面門の先なの」

 

北「やっぱ正面か…

よし、なんとかいけるな」

 

華「なにかいい手は浮かんだの?」

 

北「あぁ…先ずは準備だ

桂花は今から言う指示を春蘭にわかりやすく説明してくれ

次に霞、馬超さんを縄で縛ってくれ」

 

馬「なにぃ!?」

 

北「事情は後で説明するよ

最後に鳳統さん」

 

鳳「はぃ?」

 

北「服を脱いでくれ」

 

鳳「あ、あわわ~!?」

それから一刀の指示の下、戦準備に取りかかった。

 

霞は若干嬉しそうに馬超を縄で縛り、一刀は雪蓮からもらい受けた鎧を付け体を覆うマントを羽織り刀を腰に掛けた。

 

北「よし、二人とも準備出来たか?」

 

鳳「…(コクっ)」

 

馬「私がなんで…」

 

不平を漏らす馬超に対し鳳統は静かに頷いた。

 

北「華琳、後は手はず通りにな」

 

華「任せなさい

…怪我、しないでよ」

 

北「あぁ、心配すんな

じゃあ行ってくるぜ」

 

一刀は馬にまたがり馬超を縛った縄の端を掴み背中に馬超の槍を背負い、前に鳳統を乗せ馬を歩き始めた。

 

 

しばらく歩くと成都の裏門が見えてきた

霞の言う通り、敵が取り囲むように居る

 

一刀は緊張でゴクリと生唾を飲み、敵が居る裏門周辺にやって来た。

 

「北郷司令!」

 

五胡の兵が一刀達に気付いて近付いてきた。

 

北郷司令…偽者はそう呼ばれているようだ。

 

北「諸侯に救援を求めに行った馬超と鳳統を捕縛した

どうやら救援は断られて、単騎駆けをするところだったようだ」

 

嘘話を口にし、一刀があくまで五胡の北郷一刀だと言うことを演じた。

 

「左様ですか…

しかし、司令は正門に居たのでは?」

 

北「しばらく馬を走らせ、辺りを見回っていたのだ」

 

これも嘘

しかし、しばらく五胡の兵は沈黙していた。

 

「分かりました

ではその二人はこちらで預かります」

 

上手く突破した

しかし、ここからが最大の問題。

 

北「いや、構わない

それより、餌が手に入ったのだ

二人を使い俺が裏門から入り正面門を開ける

お前達は囲んでいる兵を正面門に下がらせ、突撃出来る様にしてくれ」

 

これがこの作戦の最大の嘘だ。

この嘘が通れば作戦は上手く行く。

しかし、敵も疑っているのかはたまた了承出来ないのか返答に悩んでいた。

その僅かな沈黙が一刀の心臓の鼓動を早くした。

 

「…承知しました

司令の命は絶対だと言われてますので」

 

北「うむ、では兵を下がらせろ」

 

「承知」

 

そう言って敵の兵士は周りの兵士に指示を伝えに走った

それを見て、一刀は安堵し深いため息を吐いた。

 

凪「上手くいきましたね、隊長」

 

隣の鳳統が一刀の安堵の表情を見てそう言った

正確には鳳統の服を着た凪だ。

 

北「あぁ…これで蜀と合流出来る

しかし凪…なかなか似合ってるぞ」

 

凪「あ、ありがとう…ございます」

 

鳳統の服を借り受け凪に着せたのは万が一、敵にバレた時の戦力として連れてきたのである。

さらにバレた時には成都の背後に華琳達が伏しているので逆に敵を成都から引き離し奇襲したのち成都裏門から入る策も配してある。

伏兵で倒した方が成功率はあったがこれで戦わずに成都に入ることができる。

適度に敵が居なくなったところで馬超の縄を斬り、解放した。

馬超は自分の槍を一刀の背中から取ると軽く振り回し体をほぐした。

 

北「よし、馬超さん門を開けてくれ」

 

馬「分かった」

 

何やら秘密の合い言葉があるのか裏門の近くにある小さなあの開いた壁に向かい合い言葉を言う

しばらくして静かに門が開いた。

 

馬「開いたぜ」

 

北「なら、馬超さんと凪は先に行って蜀と合流し、作戦を話してくれ

華琳達が来たらすぐに撃って出れる様にしてくれ

俺はここで華琳達を待つ」

 

凪「了解しました

翠さん、行きましょう」

 

馬「おぅ!

五胡の連中見てろよ…すぐに錦馬超がツケを返してやるぜ!」

 

北「凪、忘れもんだ」

 

凪「これは…?」

 

北「お前の手甲と服だ

沙和にまとめて貰ったんだ

城に入ったら着替えろ」

 

凪「ありがとうございます

…隊長、まさかと思いますが下着とか見てませんよね?」

 

北「…桃色」

 

凪「ッ///」

 

顔を真っ赤にした凪は頬をぷくっと膨らませ行ってしまった。

しばらくして後方から砂塵が上がる。

華琳達だ。

 

一刀は両手を大きく振りみんなを出迎えた。

 

華「一刀、ご苦労ね」

 

北「おぅ

みんなもすぐ来てくれて助かったよ」

 

華「我が軍なら当然よ

桂花は補給物資をを成都城の民や負傷者に配分しなさい。出し惜しみしてこの曹孟徳の顔に泥を塗るなよ」

 

桂「御意!」

 

華琳に指示され物資が積まれた馬車を引き連れて桂花が成都に入っていく。

 

北「華琳、みんなに駆け足の指示を出してくれ

敵は完全な撤収は終えてないはずだ

すぐに蜀が攻撃してくれるように馬超さんには頼んである

今からなら敵の混乱を突いて攻撃出来る」

 

華「なるほど…あなたこれも考えていたのね

 

聞けっ!魏の精鋭達よ!

敵は我らが友を傷つけた!!

相手は飢えた獣!

誇りを持て!怒りを刃に込めろ!!

天命はこの曹孟徳にあり!!

全軍突撃っ!!!」

 

華琳が兵を鼓舞し兵士達は雄叫びを上げ成都に入り正面門に突撃していった。

 

北「これで蜀が出て来るまで時間が出来るな…真桜、沙和!北郷隊も出るぞ!!」

 

沙「了解なの!」

 

真「待ってましたや!!」

 

北郷隊の兵士を連れ、一刀達は正面門に向かった。

正面門はすでに先発隊の春蘭、霞の二隊が戦闘を繰り広げていた。

予期した通り、五胡の兵は突然の撤退命令の兵と正面門に居た兵とで混乱が生じ、その中での魏の出現に敵は慌てふためき冷静な判断を失っていた。

 

真「うっしゃー!」

沙「やーなの!」

 

一刀達は春蘭達が討ち損ねた残存兵を叩く事に力を出し正面門を堅守した。

 

北「よし、あらかた片付いたな…

真桜、沙和、悪いが前線の春蘭達の援護に向かってくれるか?」

 

沙「了解なの!」

 

真「任しとき~

ウチら隊長のためなら火の中、閨の中や」

 

北「最後は聞かなかったことにしとこぅ」

 

真「あぁん!

隊長のイケず~」

ブーブー言う真桜を沙和が腕を掴んで行く

そんな二人を鼻でクスッと笑い残りの兵に指示を出す。

 

北「みんなは引き続き正面門の堅守だ

敵が入ったら蜀の町民が危ない、一人たりとも中に入れるなよ」

 

威勢のいい声とともが辺りに響く

残存兵が辺りに居ないのだが、ここは戦場。

何が起きても不思議ではない。

 

凪「隊長!」

 

北「凪、早かったな」

 

凪「はぃ

もうしばらくしたら蜀軍が出てきます」

 

北「よかった…

さすがに連中も冷静を取り戻してきたみたいでそろそろ激戦になるなんて思ってたんだ」

 

凪「えぇ…先程城から辺りを見回しましたが敵は集結し、陣形を整えつつありますからね」

 

「北郷隊長、楽進隊長!」

 

北「どうした?」

 

そこに守備にあたっていた兵士が声を上げ凪は何事かと慌てる。

 

「成都より蜀軍です!

旗は関、張、趙、馬、黄!

そして真紅の呂旗です!」

 

援護の報告に安堵する。

五虎将に飛将軍呂布

そうそうたる顔ぶれが出陣して来た。

 

北「よし、北郷隊は正面門の堅守に付きながら後方の蜀軍の道を開くんだ」

 

「はっ!」

 

伝令は直ぐに下がり一刀の指示を隊員に復唱した。

それを確認した後、一刀は鞘に閉まった刀を握りしめ前線に赴くために覚悟を決めた。

 

北「凪、蜀軍が来たら俺たちも出るぞ」

 

凪「了解しました」

 

北「俺…まだ敵を斬れるか分かんないけど…」

 

凪「大丈夫です

隊長は自分が守ります」

 

北「すまん…

よし!行くぞ凪!」

 

凪「はいっ!」

 

 

しかしこの時、前線では予想もしなかった事態が起きていた。

春「くっ…」

 

体中に無数の切り傷が付き、傷から血が滴り落ち片膝を付き荒い呼吸をする春蘭とその春蘭を不安そうに見つめる霞の姿が前線にあった。

 

霞「惇ちゃん!」

 

春「来るな霞!

こいつは…こいつは私が討つ!」

 

?「夏侯元壌…弱すぎて話にならない…」

 

春蘭と対峙するのは巨漢の大男でもなければ、名のある将でもない。

その顔つきから、まだ歳のいかない幼い少女だと言うのを物語る。

季衣や流琉の年齢に近い少女だった。

 

霞「あんた…一体何者や!」

 

?「張…儁乂(しゅんがい)…」

 

口をかすかに動かし、か細い声で張儁乂と名乗る少女は右手をスッと上げると風を斬るような音と共に春蘭の体から新たな傷ができ血が噴き出した。

 

春「あぐぅっ!?」

 

張「…鎌鼬は肉を容易く切り裂く…

次は首を跳ねるよ」

 

沙「春蘭様!?」

 

霞の横で不安そうに見つめる真桜、沙和も声を上げる。

 

張「じゃあ…終わり」

 

凪「はあぁぁぁぁっ!」

 

その時、烈火のごとく凪の拳が大地に炸裂し砂塵を起こす

張儁乂は突然の砂塵に目を手で隠し構えを解いた。

 

北「よっと!」

 

その砂塵の中で凪と共に前線に赴いた一刀は春蘭を抱きかかえ、張儁乂との距離をとる。

 

春「ほ、北郷…」

 

北「無事…でもないな…すまない遅くなった」

 

張「北郷…一刀」

 

北「ッ!?」

 

砂塵が止みユラリと張儁乂がそこに立っていた。

 

北「あんた何者だ?

前の徐晃って奴の仲間か」

 

張「戦華さん…そぅか…戦華さんには会ったんだ…」

 

北「?」

 

祇「僕は…張儁乂…真名は祇針…真名でいいよ…どうせすぐに死ぬんだし」

 

無表情で唇だけを動かす張儁乂こと祇針(ししん)は一刀にそう言う。

北(ゾクッ…!?)

 

一刀は目の前にいる幼い少女に恐怖した。

表情一つ変えないで「死」と言う言葉を放つ少女からとてつもない殺意を感じたからだ。

 

真「そうはいかんで~」

 

沙「そうなのそうなの!」

 

凪「隊長は我々が守る」

 

北「お前ら…」

 

一刀の前に立つ三人は堂々と祇針の前に立つ。

 

北「霞、春蘭を頼む」

 

霞「一刀…あんた戦う気かいな?」

 

北「やるしかねぇだろ…俺は北郷隊の隊長!

部下を置いて行くほど臆病者じゃない

霞は春蘭を救護班に預けたら戻って来てくれ」

 

霞「…分かったで!

惇ちゃん預けたら、すぐに戻って来るからな!

死ぬんやないで!!」

 

霞は春蘭を抱いて馬に跨ると颯爽と駆けて行った。

駄々をこねた春蘭だったが霞が「じゃかぁしぃっ!」と一喝するとおとなしくなった。

 

祇「馬鹿な奴…あいつに僕を戦わせればよかったのに…」

 

北「策を考えた奴が策で生じた責任を持つ!

それが俺のやり方だ!」

 

祇「勝てない相手に向かう…それは無謀…

だけど四人は僕が不利…僕も援軍…」

 

そう言うと祇針の後ろから偽者の俺が現れた。

 

凪「悪いが我らに偽者はもぅ通用しないぞ」

 

祇「そんな事はしない…

僕の相手はお前達…魔王は頭の回転が速いからそっちの相手をさせる」

 

北(頭の回転?何の話だ?)

 

祇「行く…」

 

凪「望むところだ!

行くぞ真桜、沙和!」

 

真「合点承知の助や!」

 

沙「私達の力見せてやるの!」

 

三人は意気揚々と祇針へと向かい三人での連携攻撃は舞を思わせるかのように華麗である。

 

北「いくぜ…!」

 

「…」

 

おそらく本者がいると偽者の機能は戦う事だけになるようだ

一刀は静かに抜刀し対峙する偽者に刃を向ける

鏡のようだ。

漫画とかである「敵はお前自身だ」みたいな感じ。

 

北「はぁっ!」

 

早く、鋭く剣を振り相手を翻弄する

しかし、すべて紙一重で避けられてしまう。

凪との特訓でさらに上達した武術も

春蘭とやり合い力を付けたはずの剣術もすべて避けられてしまう。

 

北「くっ…」

 

派手に動く分だけ無駄に体力だけが奪われる…

そして偽者もついに動く

体力がなくなったのを見越してか、回避しかしていなかったのについに攻撃に転じて来たのだ。

 

北「うわっ!…よっ!

…おわっ!」

 

先程とは立場が逆転

今度は一刀が回避するようになった。

 

北「よっ…!」

 

一刀は後方に飛び、一旦距離を取る

その頃には一刀はすでに息切れをしていた

そんな中で一刀が使うのは猛攻の相手にスピードで勝つ、効果的な一撃

一刀は静かに剣を鞘に収める

 

そしてまたすぐに抜刀出来るように手は柄を握ったままだ

 

居合い抜きの構えだ。

静かに心に曇りなく真っ直ぐ敵を見つめる

偽者は何も知らずに真っ直ぐに向かってくる。

 

北「はぁっ!」

 

刹那の瞬間、偽者と一刀は密着する。

偽者の懐に入る際に偽者の持つ剣の切っ先が一刀の頬を切る。

 

懐に潜り込んだ一刀は腹部に峰で切り込む。

 

北「つっ…!」

 

斬られた頬から血がにじみ出る。

だが逆に偽者は妙な煙を放ち倒れた。

 

北「やった!」

 

祇「…役立たず…」

 

北「え?」

 

声のする方を見ると祇針と対峙していた三人は春蘭と同じ傷で片膝をついていた。

 

北「凪!真桜!沙和!」

 

 

真「なんやこいつ…」

 

凪「まるで見えない刃だ…」

 

沙「いたたなの~」

 

祇「雑魚に用はない…首…斬る…」

 

北「三人共離れろ!」

 

三人の身を思い、そう叫ぶが三人は退こうとはせず立ち上がり身構えた。

 

凪「我ら三人は…隊長を守る」

 

真「ここで退いたら…隊長が危ないやろ」

 

沙「全力で守るなの…」

 

北「やめろっ!

頼む!退いてくれ!!」

 

必死に三人を止めるが彼女達は一刀の言うことを聞いてはくれなかった。

 

祇「命を賭けて…僕に挑むか…

その意気を認め…ひと思いに…殺す」

 

北「やめろぉぉぉっ!!」

 

?「星雲…神・妙・撃っ!!」

 

一刀の必死な静止を遮るように突風に似た一陣の風の如く、砂塵を巻き上げ、それは現れた。

 

趙「三人共、待たせたな…

蜀が将、常山の趙子龍!ここに参上!!」

 

祇「邪魔な奴…」

 

三人の前に凛々しくかつ神々しく現れたのは蜀の五虎将の一人、趙雲だった。

 

凪「星さん…」

 

趙「凪よ、これは酷くやられたな」

 

凪「面目ない…」

 

趙「ふむ

しかし、それだけ奴は強者と言うわけか…」

 

祇「蜀の趙雲…ひと思いに切り裂いてやる…」

 

趙「ふふ…

悪いが私は凪達のように温くはないぞ…

趙子龍!いざ参る!!」

 

趙雲は真紅の二又の槍を回転させ、祇針に向かって行った。

その時、砂塵が立ち上りキラキラと何かが光っていた。

 

趙「でやぁっ!はあっ!!」

 

ピョンピョン飛び回り、祇針に一撃を放とうとする趙雲

しかし、そのどれもがあと一歩のところで弾かれてしまう。

 

見えない刃…

先程凪が呟いた言葉が一刀の頭に残っていた。

 

北「三人共、大丈夫か?」

 

三人のもとに駆け寄り安否を確認すると各々、傷だらけだがさほど深い傷ではなかった。

 

北「しかし…あいつは一体どうなってんだ?

本当に鎌鼬なのか?」

 

趙「はあっ!!」

 

目の前では趙雲が相変わらず激戦を繰り広げている

派手に動く趙雲のおかげで地面からは小規模な砂塵上がる

その中でキラキラと何かがまた光っていた。

 

北「…ん?」

 

真「どないしたんや隊長?」

 

北「砂塵で何か光っていたないか?」

 

沙「んー………あっ!本当なの!」

 

北「…もしかして!

真桜、螺旋槍を貸してくれ」

 

真「高いで~」

 

北「冗談言ってる場合か」

 

真桜の頭を軽く叩き螺旋槍を借り受けその瞬間を待った。

趙「くっ…」

 

祇「終わり?なら…死ね…」

 

北「ちょっと待ったぁ!!」

 

祇「?」

 

一気加勢に螺旋槍を構えて祇針の前に立った。

趙雲は一刀を見つめ、少し不信感をあらわに見ていた

馬超同様に趙雲からも信頼はされてないようだ。

 

祇「魔王…お前は後だ…」

 

北「選手交代…

次は俺が相手だ!!」

 

祇「なら…始末する」

 

北(チャンスは一度…

しくじれば…最悪、死ぬ…

だけど退きたくない

命を張って守ってくれた三人の為に…勝つ!)

 

祇「死ね!」

 

北「今だっ!」

 

螺旋槍を地面に斜め刺しにして回転させ、砂塵を祇針に放つ

その砂塵からあの光を探す。

 

北「見えた!」

 

僅かに光る一瞬の勝利の光を見つけ、その光に激しく回転する螺旋槍を突き刺す。

 

祇「あ…」

 

北「巻き取れっ!!」

 

激しく回転する螺旋槍は砂塵で姿を表した祇針の鎌鼬の正体を巻き取る。

 

ガリガリガリガリッ!

 

何かを巻き取った螺旋槍は次第に回転が弱くなっていく。

 

しかし、そんなに上手くいかなかった

巻き取りを抜けた何かが一刀の腕を斬る

ジュッと言う嫌な音と共に血が吹き上がった。

 

真「なんや!?」

 

後ろで一部始終を見ていた三人、特に自分の武器が妙な音を上げた事に真桜は声を上げた。

砂塵が止み、静かに対立する一刀と祇針

一刀は不適な笑みを浮かべた。

 

北「鎌鼬…敗れたり」

 

そう言って一刀が手に持つ螺旋槍には何やら細い糸みたいな物が絡まっていた

螺旋槍の刃が削れているのを見るとそれがただの糸ではないのが分かる。

 

祇「やっぱり…頭の回転が速い…斬鋼線が…魔王…嫌い…」

 

趙「斬鋼線…鋼の糸か

なるほど凪達の傷があの様になるのも合点がいく」

祇「鋼線を破っても…無駄

僕の武器は鋼線だけじゃない…」

 

祇針は懐から金色の先の尖った鋼の爪を指先に付けた。

 

祇「斬鋼線はあくまで繋ぎ…次は仕留める…」

 

趙「あいや待たれっ!」

 

後ろで疲れを癒していた趙雲が前に出た。

 

趙「種が割れればこちらのもの!

北郷殿、感謝する

趙子龍!再び…参る!!」

 

祇「邪魔をするな」

 

趙雲は小声で一刀に礼を告げ、加勢に飛び出した

先程とは打って変わり、先端に付いた尖爪の起動を読めば切り裂かれる心配はない

さらに言えば、祇針は春蘭、凪達、趙雲の連戦で疲れが見えている。

趙雲の猛攻に祇針は防戦一方だ。

 

趙「はぁっ!」

 

祇「くっ…」

 

「将軍!」

 

その戦闘の中、五胡の兵士が祇針に歩み寄った。

 

「前線が総崩れです!

いかがなさいますか?!」

 

祇「そろそろ終わりか…」

 

祇針はそう言うと鋼線で伸ばした爪を指に戻す。

 

祇「後はお前等に…任せる」

 

「は?」

 

逃げると思った一刀は祇針に声を上げて止めた。

 

北「待て!

お前等はなぜ俺を魔王と呼ぶ!?お前等の目的はなんだ!」

 

祇「…魔と覇は対であってはならない

また…会おう」

 

そう言って祇針は徐晃同様に煙を放ち消えた。

 

その後、蜀と魏の猛攻に五胡の大軍は大半が撃破された。

 

そうして一刀達はこの蜀の窮地を救うことに成功した。

 

だが、一刀は傷付いた春蘭、凪や真桜、沙和の事を思うと素直に喜べなかった。

 

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

その後、一刀達は劉備に謁見するために成都の城に入った。

玉座の間に向かうのは華琳と俺、桂花の三人。

 

華「桃香、入るわよ」

 

劉「華琳さーん!」

 

満面の笑みを浮かべ玉座から飛び降りた劉備はそのたわわに実った二つの膨らみをタユンタユンと揺らし一刀達のもとに駆け寄って来た。

劉「華琳さん、今回はありがとうね」

 

華「何を言ってるの困った時はお互い様よ」

 

劉「でもでも、すごかったね~

私達がすぐに攻撃出来たのは華琳さんのおかげだしね~」

 

華「それは一刀の策よ」

 

劉「ほへ?」

 

キョトンとする彼女に華琳は一刀を紹介する。

 

北「ども」

 

劉「うひゃあーーー!!」

 

北「うおっ!?」

 

突如奇声を発する劉備は華琳の肩を掴み華琳を盾に背中に隠れた

しかし、華琳と劉備の身長差はかなりありただ華琳を盾にしても頭やその他もろもろ飛び出ている。

 

劉「ななななな、なんで!?敵の大将さんがいるのー!!」

 

華「落ち着きなさい、桃香!

これは本者よ!」

 

劉「はへ?」

 

北「どうも者本の北郷一刀です」

 

冗談混じりそんな事を言ってみたが一刀だったが、劉備は涙を浮かべ、今にも泣き出しそうだった。

 

馬「桃香様、さっきも話しただろ?」

 

そこに呆れた様子の馬超が現れた。

 

劉「あ、そうだっけ?」

 

馬「はぁ…これだからな~」

 

劉「あぅ~…ごめんなさぁ~い」

 

華「さっさと会議を始めたいのだけど」

 

華琳は若干怒り気味に言うと劉備は苦笑いを浮かべ一刀達を部屋の奥まで案内した。

そこには大きな丸机があり趙雲や蜀の五虎将が席に着いていた。

また机を囲むようにそのほかの将軍も席を用意し腰を降ろしていた。

 

一刀達も席に座り、華琳が先ず建業での戦から今までのことを含め一刀が本者であると説明する。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

劉「うぅ~ん…つまり敵は仙術を使うの?」

 

華「そうよ、桃香の偽者も作る事も出来るのかもしれないわ」

 

?「しかし、だからと言って彼が本者だとは信用できん」

 

黒髪をサイドポニーテールを揺らし、悩む表情をする彼女、関羽はそう漏らす。

 

?「確かに…敵が仙術を使うのは分かりましたが、かと言って直ぐに信用は出来ませんね」

 

顎に手をやり考え込む幼い少女、諸葛亮も関羽同様にそう言葉を漏らした。

趙「このままだと話が平行線だぞ、愛紗」

 

関「星、分かってはいるが…な」

 

?「確かに愛紗ちゃんの言うことも分かるけど、星ちゃんの言うこともたしかよね…」

 

蜀の面々の中で年上の女性がおっとりと話す女性、黄忠が言うが未だに関羽は納得出来ないようだ。

 

?「鈴々は信じてもいいのだ、なんかこのお兄ちゃんは偽者と違った悪い人には見えないのだ」

 

?「…恋も…」

 

二人の赤髪の少女、季衣や流琉ぐらいの歳の彼女の名は張飛

後にどこか呆けた口調の彼女は呂布だ。

 

華「すぐに信じてくれとは言わないわ

ただ、これから本格的に五胡と戦う時に偽者の一刀が居ること知って欲しいのよ

まい伏の疑いは捨てて欲しいのよ」

 

趙「しかし華琳殿、そう安易な事も言ってはられないのもまた事実…

どうですかな?この趙子龍に妙案がございますが」

 

ニヤっと笑みを浮かべる趙雲が顎に手をやりそう言う。

 

華「何かしら?」

 

趙「北郷殿をしばらく我が軍で預かると言うのはいかがか?」

 

華「何ですって!?」

 

趙「如何せん、このままでは話は平行線

ならば蜀で北郷殿の素行を見て誠に信じられる人物か評価したい

それに…北郷殿はかつて魏で信を得た人物、これほど簡単な役割はないと思うが?」

 

北(そう来たか…)

 

華「う…」

 

華琳は承諾しかねて唸っていた。

 

北「華琳、俺はかまわないぞ

五胡を倒すには蜀の協力は必須だろ?」

 

華「……バカ…」

 

北「ん?」

 

華「何でもないわよ!

いいわ、星のその案を受け入れましょう

桃香もいいわね?」

 

劉「うん!」

 

先程から傍観者だった劉備も納得したのか二つ返事を出した。

こうして、一刀は華琳達から離れ蜀に身を置く事になった。


 
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