「いにゃいでしゅってー!?」
道々の拠点で敵兵の数や備蓄がほぼなかったことから劉備軍は彭城で決戦に備えているだろうと予想した曹操は威力偵察のために夏侯惇、夏候淵、許緒の三人を少数部隊として彭城に送り込んだのだが、その三人からの報告では彭城には敵影がなく、民の数も恐ろしく少なかったというのである。
そして桃香たちが向かったのが益州だとわかるとすぐさま指示を出した。
「まってにゃしゃいよかじゅと!」
彼女は覇道を歩む者。
「夏侯惇将軍! 前方に劉備軍と思われる集団を発見しました」
「よし。やっと追い付いたか」
素早く兵の確認をするが、桃香をしたってついてきた者が多く、正確な兵の数を割り出すことが出来なかった。
一般人を巻き込むことを考えしばらくはこのまま追尾することにした。
しかし、功に焦った一部の兵たちが突出してしまったのである。
「うぉぉぉ! 天の御遣いさえやっちまえば全ては俺のものだー!」
「俺は劉備軍の幼女の方が好きだー!」
「褐色の赤髪萌!」
「幼天當立!」
訂正。
一部のロリコンであった。
「申し上げます! 敵軍がこちらに向かって攻めて来ました!」
兵の報告を聞いて民たちに動揺が走る。
そして実際にこちらに向かってくる兵たちを見た者たちが一斉に逃げ惑った。
「くそっ! このままじゃまずい!」
一刀はそれらを抑えきれずに焦る。
「大丈夫なのだお兄ちゃん! 敵の狙いはお兄ちゃんと鈴々たちなのだ!」
「……ご主人様、恋が守りゅ…………守る!」
「ね、ねねは仕方ないから守ってやるのですぞ!」
「……私もいるぞ」
それを聞いた一刀は心が落ち着いた。
「そうだ。俺がこの子たちを導かなきゃいけないんだ!」
一刀は絶対にこの子たちを守ると決意するのだった。
「しかし民たちをどうにかしないとヤバいな……」
このままでは身動きがとり辛く意図せずに民が傷ついてしまうかもしれなかった。
そう考えたところ、民たちが何やら一か所に集まっていくように見えた。
「伝令です! 趙雲将軍が民たちは任せろとのことです!」
星が民を先導して安全なところに避難させているということだった。
不安が消えた鈴々たちは長坂橋にて曹操軍を迎え撃つことにした。
「みんな! 桃香をいじめる悪い子たちにお仕置きしてあげなさい!」
一刀先生により指示が出される。
「うう、ガオーーーー!」
「ご主人様…………先生いじめるやつ許さない!」
「ですぞ!」
「私もいるんだからな!」
白蓮はもはや一刀の視界には入っていない。
「さあ、行きなさい! 俺の愛しい子たちよ!」
こうして長坂橋の戦いは始まった。
そして一刀は、
「今行くぞ、星!」
馬に乗り、単騎で駆けだした。
恋は張遼、そして鈴々は許緒とそれぞれ戦いを始めた。
「へっへーん。チビペタハルマキの攻撃なんか全然効かないのだ!」
鈴々は許緒攻撃をいとも簡単に交わしてしまう。
それを見かねた夏侯姉妹は許緒を下がらせる。
「この状況で、いつまで時間が稼げると思う?」
兵数に余裕のある夏候淵がやや余裕の表情で問うが、その表情も一瞬にして崩れ去る。
「数に勝てないのは重々承知なのだ。……けど、来たければ来ればいいのだ」
そして武器を構えて不敵な笑みを浮かべる。
「天下無敵と謳われた燕人張飛の丈八蛇矛、お兄ちゃんがいれば雑兵の千や二千や五十三万、地獄に送るのは軽いのだ」
鈴々から溢れ出てくる一刀大好きオーラに二人は思わず身震いした。
そして気持ち程度に存在していた白蓮は許緒と対峙していた。
「ねえ、姉ちゃん名前は?」
「公孫賛だ!」
名前を聞かれて嬉しかったのか、白蓮は勢いよく名前を名乗った。
「知らない」
「分かっていたさ!」
すでにあきらめていたのである。
「だがないくら普通とか、地味とか言われている私にも民を守りたいという気持ちはあるんだぞ!」
そして白蓮は普通の剣を構える。
「普通普通と謳われた白馬長史の普通の剣、雑兵の一人や二人、地獄に送るのはなんとか出来るぞ!」
「よし、ならいくぞ! でやぁぁぁ!」
「ぐはっ!」
相手は雑兵ではなかった。
一方星は、
「あるじ~、どこですか~?」
民を安全なところに連れて行ったあと道に迷っていた。
「おい、あそこにいる幼女は敵の趙雲じゃねえか?」
「本当だ! なかなか上玉の幼女だぜ!」
「くっくっく。しかもまだこっちに気付いていないようだ」
「可愛がってやるか」
敵を探していた魏軍の兵に見つかってしまったのだが星はまだ気がつかない。
「あるじ~、ひっく、あ、あるじ~! うぇぇぇぇぇん!」
ついに泣きだしてしまった星。
「お、おい泣きだしてしまったぜ」
「お前のせいだろ」
「俺じゃねえよ!」
「泣き喚く幼女。……イイネ!」
少なからず動揺してしまう兵たち。
その瞬間兵たちを今までに感じたことの無い悪寒が襲った。
そして一斉に後ろを振り向いた。
そこに居たのは、
「てめらの血は、何色だー!」
怒りに震える一刀だった。
兵たちは龍の逆鱗に触れてしまったのだった。
「星!」
「あ、あるじ~!」
一刀の姿を見つけた星は一目散に一刀に抱きついた。
一刀は星を優しく抱き上げて頭を撫でながら星をあやす。
「ほら、もう俺が来たから怖くないよ~」
「うん! うん!」
優しい空気が流れる二人の周りには累々と横たわる死屍(気絶してるだけ)があったという。
「それじゃあ戻ろうか。そろそろ鈴々たちもお仕置きが終わった頃だろうし」
「うん! …………あるじ」
「どうした?」
「このままで帰ろう?」
「ああ。星は甘えん坊だな~」
「い、いいではありませんか!」
とても戦場には思えなかった。
「帰ったら一緒にメンマ食べようなー?」
「私はメンマにはうるさいですぞ?」
たわいのない話をしながら長坂橋に戻る二人だった。
「ちょーひ。りゅーびにちゅたえなちゃい。今回は見逃してあげりゅんだかりゃね! 今度は絶対かじゅとをいただくかりゃ! そうちゅたえなしゃい!」
相変わらず舌っ足らずな覇王様は、負け惜しみのように鈴々に言伝を頼む。
こうして曹操軍は去っていくのだった。
そしてすぐに一刀が到着した。
「お兄ちゃーーーーーーーーん!」
すぐに鈴々が足元に抱きついてくる。
「んにゃ? なんで星がいるのだー?」
「主に迎えに来てもらったのだ」
「そうなのかー」
そしてそこに恋とねねもやってくる。
「ちんきゅーダイブ!」
新技を携えたねねが一刀にしがみつく。
「恋も登る」
それを見た恋もしがみついた。
「鈴々もするのだ!」
四人の幼女は一刀のいたるところに抱きついた。
こうして殿部隊は見事曹操軍を撃退したのだった。
「え、衛生兵をよんでくれ」
その声は果たして一刀に届くのか?
<おまけ>
「お姉様! なんですかその荷物は?」
「ちょっと、えきしゅーまで」
「なぜです?」
「かじゅとに会いに」
「いけません! この大事な時に何が『ちょっと、えきしゅーまで』ですか!」
「うるしゃいわねー。にゃられんふぁも来なしゃい!」
「どうしてそんな話に……って腕を引っ張らないでください!」
「いいかりゃいいかりゃ♪」
「ちょっとーー!」
「まってなしゃいよかじゅとー!」
「劉備軍はまだ益州に入ったばかりで平定もしていないのですよ!」
「なりゃてちゅだえばいいじゃない♪」
「ダメだ、この姉は」
「それじゃあしゅっぱーちゅ!」
「めーりーん!」
この日、呉から王族が二人もいなくなり混乱に陥ったのだった。
完。
なんなんだこれは((( ;゚Д゚)))
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内容忘れちゃいそうだったw