No.151477

『舞い踊る季節の中で』 第62話

うたまるさん

『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

【主殺しの張遼】かつて【神速の張遼】と呼ばれていた霞は、
現在、降将として袁術軍に身を寄せているが、其処はある意味、洛陽の都より腐敗していた。
そんな中、武人と許せない毎日を、命を共にした部下達のため我慢する毎日、

続きを表示

2010-06-18 18:41:14 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:20757   閲覧ユーザー数:13961

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -寿春城編-

   第62話 ~ 誇り高き魂は、泥の中で苦しみに舞う ~

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

        神の手のマッサージ(若い女性には危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術

 

  最近の悩み:某日、某宿内の一室にて

        吸い付くような柔らかな頬に、 長く細い睫毛の形を整え、 全体に薄く化粧を重ねて行

        く、必要以上の事はしない。 あくまで彼女らしさを、優しく強調するに留める。 それ

        が、一番彼女を輝かすからだ。 控えめだけど、野に咲くどの花よりも、優しく美しい花、

        そんな彼女に似合う装飾と化粧を施してゆく、 仕上げに、目元が明るく輝いて見えるよ

        うに、胡粉をほんの少し塗す。 そして、薄い色の紅を、彼女の瑞々しく柔らかな唇にひ

        く事で、俺は彼女に化粧を施すと言う作業を終え、一歩下がって、その出来を確認する事

        にする。

        

        「・・・・・・・・・・」

        

        化粧を終えた彼女は、閉じていた瞼を開き、 首をやや傾げて俺を見る彼女の姿は、とて

        も眩しく、俺をしばし呆然とさせた。 彼女の心優しい性格が滲み出るような優しい微笑

        みは、やや大きく開いた目は、幼さを感じさせるも、その瞳に宿る光は間違いなく大人で、

        女性としての艶を同時に感じさせる。 小さな唇は、まるで吸い込まれそうな感覚に襲わ

        れるも、まるで彼女の甘い香りが、其処から出ているように感じられる。

        ・・・・・・俺、一体どうしたんだろう。  「一刀君、終わりましたか?」そんな彼女の言葉

        が、思考を止めていた俺を、現実に引き戻す。 俺は首を振って、己のやる事を思い出し、

        彼女に、今回の化粧や装飾の趣旨を説明していく。 彼女は俺の説明を聞きながら、鏡に

        向かって、今の自分を確認していくが、その時の仕草が、表情が、とても眩しいくせに目

        が離す事が出来ない。 見慣れている彼女の顔が、別人のように見える事もあれば、逆に

        彼女をより強く感じる。 ・・・・可笑しいよな、こんな事、あっちの世界で何度もやってい

        たと言うのに、こんな事初めてだ。

        そんな中、彼女はどう見えるかを聞いてくるが、そんなもの決まっている。決まっている

        るのだが、何かそれが物凄く恥ずかしい事を言うようで、黙っていると、

        

        『 ふわっ 』

        

        そんな香水と彼女の自身の香りが織り成す甘い香りが、俺の鼻腔を、思考を麻痺させる。

        だけど、そんなものは、次の瞬間、更なる刺激で、更に麻痺させられた。 

        「きちんと、真っ直ぐ見てくれなければ、分からないですよ」 そう言って彼女は、俺の

        目の前というか、服が触れ合う所まで近づいてきたと思ったら、その手を俺の首にかけ、

        まるで、首にもたれ掛かる様に、その身体を俺に密着させて来た。 彼女の身体にこうし

        て触れ合った事は、何度か事故であった。 あの時も大変だったけど、今は、そんな問題、

        じゃない。 なにせ目の前に、彼女の顔が、化粧を施し、今まで以上に綺麗に見える彼女

        の顔が、下から覗き込む様に、俺を見詰めている。 その頬は、チーク施し過ぎた訳でも

        無いのに、薄く朱に染まり、その瞳は熱く潤んでいるように見える。 彼女の瞳に映る俺

        の顔は、彼女以上に顔を朱に染め、動揺しているのが分かる。 『バクッバクッ』心臓が、

        破裂すると思えるくらい大きく鼓動しているのが分かる。 そして、それと重なるように

        俺に圧し掛かる彼女の身体から、彼女の柔らかな感触と共に伝わる彼女の鼓動が、俺の鼓

        動と重なり、その事が、狼狽する俺の心とは裏腹に、とても安らかな気持ちにさせてくれ

        る。・・・・なんで彼女の鼓動を、こうも強く感じるのだろう・・・・そんな言葉が、頭を過ぎる。

        それでも、俺は何か答えを返さないといけないと思い、カラカラに乾いて張付く唇を、な

        んとか動かし、自分でもよく分からない言葉を紡ぐ。 何を言ったかよく分からないけど、

        彼女はその言葉に満足したのか、彼女らしい優しい微笑を浮かべたと思ったら、そして、

        時折彼女が見せる、悪戯っぽい笑みを浮かべ、俺に益々その身体を預けて、俺を覗き込ん

        でくる。 こう言う時の彼女はとにかく不味い。 何が不味いか分からないが、本当にそ

        の潤んだ年上の女性を感じさせる、妖しい瞳に吸い込まれそうになる。「・・・・ちょ、その、

        翡翠、・・この姿勢は色々不味いから・・・・」と何とか此の窮地を脱しようとするが、彼女が

        それを聞いてくれる訳もなく、益々その瞳に、俺が困惑する様を面白がる光を、そして、

        それ以上に何かを訴えるような光が揺れて行く。 ・・・・だけど、何にか知らないけど、追

        い込まれていると言うのに、俺の心の奥は、何処かこの事態を喜んでいるのが分かる。彼

        女の温もりが、彼女に向けられる瞳が、・・・・とても安心できるものだと、言っている。

        

        「ふふっ」

        

        そんな彼女の、優しく、そし小さな声が、その艶やかな色に染まった唇から紡ぎ出され、

        俺の脳は、益益霞が掛かっていく・・・・『・・・・吸い込まれそうだ』そんな言葉が頭に大きく

        浮かんだ時、俺の体に掛かった彼女の心地よい重さは消え、彼女自身もいつの間にか、俺

        から離れ、まだ霞が掛かった脳と耳に、外で待つ旨を伝え、そそくさと部屋から出て行く。

        俺はそれをただ、呆然と見送る事しかできず。 やがて「・・・・や・やばかった」 自分で

        も何がやばいのか、よく分からないが、口から零れ落ちた。

        

  (今後順序公開)

 

霞視点:

 

 

「あーーーっ、ムカつくったら、あらへんっ!」

 

長い廊下を、ずんすんと歩きながら、ウチは隠しもせず叫んだる。

怒り心頭のウチを、周りは、『またか』と言った様子で、ウチを避けて行くが、かまへん。

何がムカつくって言ったら、此処の連中やっ!

降将の身だから、冷遇されるのも、扱き使われるのも覚悟し取った。

だが何や、あれはっ!

あれでも、将のつもりなんかいっ!

 

兵士達にろくな調練をしないだけなら、官軍にも幾らでも居った。

だけど、鍛錬をつけてやると言うて、下級兵を一方的痛めつけて、少しでも反撃しようものなら、懲罰房行き、・・・・・・あんなん、ただの虐めやっ、 いや、虐待やっ!

今日もいい加減キレて、そいつ叩き潰そうとしたけど、部下数人掛かりで止められてもうた。

しかもその姿を見て

 

『ははははっ、さすが、主殺しの張遼、

 その徳の無さに、配下の者にまで裏切られているとは、人間此処まで落ちぶれたらお終いだのう』

 

だなんて抜かしおった。

ウチだけやなく、部下まで馬鹿にされて黙って居れるかっ!

そう切れかけた所に、

 

『張遼様、我等を思ってくれるならば、此処はどうか、どうかお耐えくださいませ』

 

そうウチを抑える部下全員に、口を揃えて言われたら、ウチとしたら耐えない訳にはいかへん。

かと言って、怒りその物が収まるわけやあらへん。

此処の将はそんなんばっかりや、・・・・・・いや、将だけやあらへん。

文官・袁家の老人と呼ばれる高官共は、もっと腐っとる。

此処はあれや、都、洛陽の街と同じや、・・・・・・贅沢する事しか考えておらん。

その贅沢は本来、民を守り、導く事の代価、だと言う事をすっかり忘れておるんや。

だから、心はどんどん腐っていくんや。

 

命令で官軍時代の部下を呼び寄せたけど、半分しか呼ばへんかったのは正解やったな。

あと三ヶ月もすれば、ウチをこうている曹操の所や、曹操自身の趣味には付き合えへんけど、此処よりはマシなのは確かなはずや、確かにあいつ等の言うとおり、我慢しどきや、

 

 

 

 

やがて、人目も無くなる位、奥まで来て角を曲がろると

 

「ひっ!」

 

そんな小さな声と共に、まだ小さい少女が、ウチを見て、小さな悲鳴上げて固まっていたけど、

やがて、怯えた顔が安堵した顔に戻ると、今度は不安げに周りを見回した後、

ウチの横を何処か辛そうに歩きながら、通り過ぎようとする。

 

がしっ

 

「ちょい、待ちぃ」

「ひっ!・・・・お許し下さい、これ以上は・・・・・」

 

少女はウチが肩を掴むと、再び怯え、涙を浮かべながら許しを請うて来る。

あかんっ、きっと、今のウチは怖い顔しているに決まってる。・・・・この子供を怯えさせるような顔を

 

「おぉ~、こんな所まで逃げて居ったか」

「張遼よくやった、その小娘を、こっちに引き渡してもらおうか」

 

そんなウチに、廊下の向こうから姿を現し、声を掛けて来た阿呆二人がおる。

たしか、袁家の老人のいっちゃん偉い奴の息子の閻象と、韓胤やったか、

そうか、この二人が、こんな小さな娘を、・・・・・・・・・、

 

少女はもう逃げられないと諦めつつも、それでも、ウチに助けを求めるように、震えながらウチの手にしがみ付いている。

まだ十にもなっていないであろう少女は、街の子らしく、飢えで痩せ衰えておる。

だと言うのに、身に纏っているのは上等な布・・・・いや、寝具の布を身体に引っ掛けてきただけやろうな。

・・・・そして、少女の足を伝わっている赤いものの正体は、

・・・・ウチの横を通り過ぎる時、歩き辛そうにしていた理由は、

そんなもん、答えは一つしかあらへん。

しかも二人が掛かりやって?

何処まで外道なんやっ

あかん、こんなん見たら、我慢でけへん!

 

じゃきっ

 

「あんたら、覚悟は出来とるんやろうな」

 

愛用の飛龍偃月刀を取り出し、二人に突きつけると、

 

「はっ、我等に刃向かってどうする。

 そんな事をすれば、お前の配下はおろか、その家族や親戚にまで、その罪が及ぶ事になるぞ」

「だが、その娘を渡し、大人しく此処から去るのならば、今のは見なかった事にしてやる」

「それが、どないしたん。

 あいつ等は、こんな外道を見逃した事の方が怒る。 そう言う奴等や」

 

此処で、こんなのを見逃したら、ウチは何を守って生きているのか分からなくなる。

それはあいつ等もきっと同じや、・・・・そう言う阿呆な奴等なんや、

・・・・・・悪いけど、地獄まで付き追うてもらう事になりそうやわ、

 

ウチの覚悟に、二人は、はったりではないと分かったのか、顔を青くし出すが、もう遅い。

先に地獄に送ってやるさかい。 あの世で後悔するんやっ!

 

 

 

 

ひしっ

 

槍を打ち降ろそうとするウチを、小さな手が、必死にしがみ付いて止める。

少女は、全てを諦めたかのように、俯きながら、

 

「ごめんなさい。 でももう良いです。

 私があの人達の所に行けば、貴女様のお友達と家族が助かるなら、それで良いです。

 ・・・・・・私には、もう、そんな人は・・・・・・・居ないから・・・・・・もう、いいんです。

 あ・・・有難うございます。 私のために怒ってくれた事は、・・・・わ・忘れません」

「そうだ、小娘の方が、我等には向かう事がどう言う事か、よっぽど分かっていると言う物だ」

 

なんや、それっ!

こんな小さな娘が、他人を思いやって、涙を堪えて、自分を犠牲にしようと言うのにっ、

こいつ等は、何んも感じへんのかっ!

何処まで魂が腐ってるんやっ!

 

ウチは怒りで、頭が真っ白になりそうになったけど、

少女の優しさが、それを押し止める。

せやけど、こいつらは生かしておいても、同じような犠牲を生むだけやっ、

そう思った時、

 

「張将軍、此処に居られましたか、直ぐに、大広場へお越し下さいっ」

 

部下の一人が、そう駆け寄ってきた。

 

「閻様と韓様も此方に、おいででしたか、お二方も火急に大広場へお越し下さいませ。

 孫策が、反旗を翻し、すぐ近くまで迫って来ております」

「「な゛っ」」

 

二人は、部下の報告に驚きの声を上げ、慌てて部屋に着替えに戻る。

ウチはその隙に、

 

「この娘に服と食事を与えて、街の安全な場所に逃がしてやってや」

 

ぎりっ

 

ウチは、部下にそう言って少女を託すと、部下の怒りのあまり、言葉なく歯を食いしばる音に、安堵しながら、早足に大広場に向かう事にした。

・・・・・・それにしても、何でこんな時期に来るんやっ、幾らなんでも無謀ちゃうんか?

 

 

 

 

「どう言う事だっ! 孫策は恭順を示していたのではないのかっ!」

「どう言う事と言われましても、どうやら、恭順を示す振りをしていただけのようですねぇ~」

「くっ、あの女狐がっ!」

 

大広間に行くと、何人かの老人が、袁術と張勲に詰め寄って、文句を言っている姿があった。

・・・・そないな事しとる場合では無いやろう。

そないな阿呆な光景を眺めて居るとやがて、閻象と韓胤もやってきた頃には主要だった人間が集まり終え、

 

「ほらほら、皆さん揃いましたから、対策を立てないと、孫策さん達が攻めて来ちゃいますよ」

「くっ」

 

張勲の言葉に、老人達は自分の場所に戻り始める。

・・・・さっきから眺めていたけど、あの姉ちゃんやるなぁ、

巧い事話の矛先を逸らしたり返したりしているで、

しかも、袁術の嬢ちゃんには、決して矛先が向かないように気を使っとる。

大将軍って言う肩書きやけど、・・・・あれは、どう見ても軍師向きやな。

話の逸らし方だけなら、詠より巧いで、・・・・・・詠は普段は冷静な振りをしとるけど、頭に血が昇る事があるから、ああ言う真似を終始徹底する事は無理やからな。

 

「はい、では、まだ事情を知らない人のために、もう一度報告して下さいなぁ」

「はっ、一揆を起こした農民を粛清するために、江東に向かった孫策ですが途中、引き返し打ち合わせていた

 であろう部隊と合流し、次々と関を落として此方に向かっております。 その数およそ二十万」

「「「「 どよっ 」」」」

 

伝令の報告に、場がざわめき立つが、仕方あらへんかも知れへんな。

平和ボケしている連中や、自分達が攻められるだなんて、夢にも思わへんかったんやろうな。

・・・・・・しかし、二十万か・・・・幾らなんでも、おかしいで、その数は・・・・・・、

 

「はいは~い、皆さん落ち着いてください。

 幾ら最近売り出し中の孫策さんでも、いきなりそんな数が集められる訳がありません。

 その大半は、一揆を引き起こした農民さんだと思います。 そうですよね~」

「はい、各地で一揆を起こした農民達を扇動し集結させ、その数、およそ十五万と思われます」

 

あぁ、成程、それなら納得や、

 

「だそうですよ、つまり孫策さんの軍そのものは、五万程しかないって事です」

「そんな事は分かっておるっ! 今のあやつが、呼びかけても、それくらいしか集まらない事はなっ、

 問題は、農民も併せ、二十万もいると言う事だっ。 我等は十五万しか居らんのだぞっ」

「そうだ、それでは勝ったとしても、多くの被害が・・・・・」

「いや、そもそも、本当に勝てるのか?・・・・・・」

「いっその事、こいつ等を差し出した隙に、我等だけでも、・・・・・」

 

張勲の言葉の意味を理解しない連中が、早速保身に走り始めよる。

お前等、もう少し、孫策の性格を把握でけへんのかっ、

そんなんで、よく文官なんてやっておるなぁ

 

「はいは~い、皆さんよ~く聞いて下さい。

 孫策さんは良識ある英傑として名高いですが、それ故に、農民さん達を、巻き込むような真似はしないと

 思うんですよ」

「だが現に、農民達が・」

「話は最後まで聞いて下さいね。

 ですから、農民さん達を利用するのは、其処までだと思うんですよ。

 でなければ、孫策さんは農民さん達を盾に戦った、と後ろ指を差されてしまいます」

「成程、確かにそれは言えている」

「そうだ、もしそんな事をすれば、我等に勝ったとしても、誰も孫策を信用しなくなる」

「となれば、これを機に、江東を・・・・」

 

張勲の言葉に、騒いでいた連中も収まり、逆に、今後の事を考えて下種な笑みを浮かべてる。

阿呆、江東の連中が、孫策を倒したからって、大人しく恭順を示すようなタマかっ!

だいだい、そんな事は、この戦いに勝ってから考えっちゅうにっ!

 

 

 

 

そして、老人の中の中心に立つ初老の男が、この場の全員を代表するように中央に立ち、

 

「つまり、実質は、孫策軍五万に対して、我等は十五万と言う訳だな。

 大方、我等が数に怯え、降伏すると思うたのだろうが、その慢心が、己の首を絞める事になるとはな。

 張勲よく見抜いたと言いたいが、・・・・そもそも一揆を引き起こしたのは、貴様の責任、全てが終わった後

 の処罰は免れぬものと覚悟しておくのだな」

「え~~っ、そんな事言われましても、あれ以上の支出を要求されれば、どうしても重税を課すしか」

「それを何とかするのが、貴様の仕事だっ!」

 

などと、かなり身勝手な事を張勲に、叩き付ける。

だいたい、民に重税を課して、あんだけ贅沢し、横暴を重ねとって、今まで一揆が起きなかった方が不思議やっ、 ・・・・だと言うのに、此処の連中は、そないな事全然自覚しとらへんわ。

まったく呆れ果てるとは、こう言う事を言うんやな。

それにそんな状態や、幾ら孫策が農民達を使う気はないっちゅうても、農民達自身は、そうとはかぎらへん。

孫策軍が劣勢になって散ってくれればええけど、最悪此方に立ち向かってくる危険性は孕んだままなんやで、

 

「紀霊よ。 飼ってやった恩を忘れ、我等に歯向かう孫策を、全軍で持って叩き潰せ」

「はっ!」

「ただし、街に火が入って、万が一でも我等の家に火が点いて家財が焼けては堪らん。

 農民達への見せしめもある。 野戦で決着をつけろ。三倍の兵力であれば、問題なかろう。

 前の戦で我等を苦しめた張遼を貴様の副官に就ける。 上手く使って貴様が手柄を上げろ」

「はっ、必ずや孫策の頸、此処にお持ちいたしましょう」

 

つまり、ウチを使って美味しい所は、全て子飼いの紀霊に渡せっちゅう事か。

まぁ、それはええ、 どうせ此処で手柄を立てたかて、煙たがられるだけやし、もうじき此処からおさらばと思えば、それくらいの置き土産はしたる。

 

それに紀霊は、人間としても、武人としても最低な奴やけど、その武は本物や、

本気でやれば、ウチかて、かなり手こずるやろうな。

そして、その武に見合うだけの、目を持っておるし、

ウチを使う言うたら、巧く使う事が出来るだけの頭も持っとる。

おそらくこれが最後やし、今回は、大人しゅう指示に従ごうてやる。

 

 

 

 

「だぁぁぁ、紀霊っ何やっとるん! 孫策軍はとっくに見えてるっちゅうのに、今まで何やっとったんやっ!

 ウチら本隊が最後やでっ!」

 

襲撃を受けると言うのに、かなり遅れてきた紀霊に、ウチが文句を言うが、

 

「ふん、やはり主殺しの張遼だけあって、頭が回らんな」

「なにぃ」

 

ウチの言葉に、紀霊は馬鹿にしたように鼻で笑い。

 

「相手は田舎者の孫策、決戦となれば阿呆のように、行儀良く此方が出来るのを待っているに決まっている。

 現に、奴らはまだ攻めてこんだろう。

 それにな、奴らがこの街を囲み、威圧すればする程、この街の住人は、儂を尊敬し、逆らわなくなる。

 そして英傑と名高くなった孫策を討てば、それだけ儂の名が上がり、儂の価値が上がると言うものだ」

 

ぎりっ

 

この阿呆んだれっ、己の功名心のために、民を危険に晒すっちゅうんかいっ!

何進といい、こいつといい、何でウチの上に付くのは、こんなんばっかなんや。

まぁええ、叩き斬りたいとこやけど、今は仲間うちで言い争っとる場合や無い。

 

「なら、もう十分やろう、とっとと出るでぇっ」

「ふん、優雅さも欠片も無いガサツな女が、偉そうに言うな。 命令は儂が出す」

 

ならとっと出せっちゅうねんっ!

これ以上遅くなる訳には、いかへん故に、黙って心の中で悪態を付くけど、腹立つ事には変わりあらへん。

 

 

 

 

紀霊の言うとおり、孫策軍は、此方が隊列を組み終えるまで、一向に動きを見せなかったけど、此方の準備が整ったと見たのか、二騎が此方に向かって来た。

・・・・・・そうか、一刀も居ったんやったな。

月達の件で借りがあるさかい、味方してやりたいけど、こうなったら仕方あらへん。

・・・・・・・ほんま、天も意地悪やで・・・・・・・・・、

 

「ふんっ、舌戦で、我等の士気を挫くつもりか。

 付き合う義理は無いが、儂がこの戦を握っている所を、見せねばならぬから、そう言う訳にも行かぬか」

 

こいつは、一々格好をつけんと喋れんのかいっ

 

「もし奴等が、不審な動きを見せたら、お前は命を落としてでも儂を守れ」

「そんな心配が無い相手やから、のんびりしとったんやろぅ、

 くだらない事言っとらんで、とっとと行ってきぃ」

 

もう呆れ果てて怒る気もしなくなったウチは、適当に返事をしながら、犬を払うように手を振って、紀霊を見送る。

 

 

 

 

「儂は袁術軍が将、紀霊っ! 何故あって、謀反を働くばかりか、我等が治める街に攻め込むっ」

 

「我が名は孫伯符、母、文台より奪いし、土地を返して貰いにきたっ」

 

「はっ、我等が主袁術様の御心のおかげで、生きながらえた恩を忘れ、その恩を仇で返すかっ、

 恥知らずとは、この事を言うのだっ」

 

「黙れっ! 我等の代わりに、袁家が治め、民が笑って過ごせるのならば、袁家の天下でも良かろう。

 だがっ袁家が治めてより、民からは笑顔が消え、餓えと病に苦しみ、今、国は民の涙で沈もうとしている。

 見よっ、遠くに見えしの民たちの怒りと嘆きをっ!

 彼等は、袁家の治める未来に絶望し、我等孫呉を求めたのがその証しっ!」

 

「民は何も苦しんでおらぬっ! 民は我等が袁術様に治めて頂く事を望んでいる。

 だと言うのに、何の罪も無い農民達を、いや民を巻き込むのが、孫呉のやり方かっ!

 なんと言う没義道っ! 天は、そのような卑劣を見逃す訳が無いっ!」

 

「俺は、天の御遣い北郷一刀、この憂いに満ちた此の地を救わんがため、天に使わされ、孫呉に舞い降りた。

 この身に纏いし、光り輝きし衣は、その証しの一つ、

 天は、此の地を、此の地に住まいし者のために、その元凶でたる者共の排除を望んだっ」

 

「そのような、たわ・」

 

 

「 聞けいっ! これは、天命であるっ!

 

    天敵に組する者共よっ! 武器を捨て降伏せよっ!

 

      人として死にたくば、我等に戦う意志無き事を示せっ!

 

        さもなくば、その身を、その魂を、天が裁くであろうっ! 」

 

 

「天を語る、不届き者共がっ!

 我等が、天に代わり、天を詐称する貴様等を裁いてくれようっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです。

 第62話 ~ 誇り高き魂は、泥の中で苦しみに舞う ~ を此処にお送りしました。

 

今回は袁術郡に降りた霞のお話になりました。

霞の視点から見ての、袁家の腐敗具合如何でしたでしょうか?

その中で必死に耐え、あがき続けている霞と、その直属の部下達、彼女達が報われる日が来るのでしょうか。

 

さて、話は代わり私的な事になりますが、この作品で閻象と韓胤の場面を書き終え、我ながら嫌な気分になったので、続きは、一度心を洗い流してからと思い。その日の執筆を止めたのですが・・・・・・次の日、朝起きたら、四月に購入したばかりのPCのデータードライブが、まったく認識しなくなると言う出来事に・・・・・・(涙

幸い小説は懲りずにUSBメディア管理だったので、被害は免れましたが。 700G分のデーターが・・・・(号泣

きっと、閻象と韓胤の行いに、天罰が下ったのかもしれませんね・・・・・・・・・・、

まぁ、そんな目に遭ってまで書いた場面ですが、Tinamiの禁則事項に引っかからない事を祈りつつ(一応配慮したつもりです)今話を投稿いたしました。(最近引っかかっている方も、偶に居られるようなので・・・・)

ちなみに紀霊と閻象と韓胤に、関してはwikiで、袁術の配下の名前から取ってきたので、能力と役柄が合わないかもしれませんが、なにぶん三国志の知識が無い為ご勘弁下さい。(余りに問題あるほど違う場合は言ってくだされば、再度調べ直したいと思います)

 

そして、とうとう、先陣の火蓋が、切って落とされようとしています。

孫策達は、いったい、どのように戦うのか、・・・・そして、霞の運命は・・・・・・、

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。


 
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