No.150428

真恋姫無双 おせっかいが行く 第十話

びっくりさん

いよいよ、この物語のメインヒロイン的存在が登場!
まぁ、恋姫なんでメインとかサブとか関係ないですけどね。

他にもお知らせしたいことがあるのですが、それはあとがきにて・・・。

2010-06-13 22:56:46 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:21116   閲覧ユーザー数:15781

 

 

 

「おい・・・あれ」

「うわ・・・なんなんだ?あいつは?」

「早くどいてくれないかしら?」

「ハエがたかってるぞ。生きてるのか?」

 

周りから聞こえるのは、気色悪がる声。彼らの視線の先には茶色いローブをまとった人が一人。フードを被っている為、体全体が隠れていて男か女かも判断出来ない。そして回りの声の通り、ハエまでたかっている。と、そのとき、一陣の風が吹きフードをめくりあげた。そこから現れた顔を見て・・・周りは。

 

 

「きゃああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 

「うわああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 

悲鳴を上げた。在る者は逃げ出し、在る者は腰を抜かし、場が騒然とした。

フードから現れた顔は、やつれにやつれ、肉などないのではないかと思うくらいにやせ細り、骨と皮が目立つ女の子だった。本来なら綺麗なストレートの黒髪だったのだろう髪の毛も、痛みに痛み、ボサボサになったまま。極めつけは、何日も体を清めていないのだろう、悪臭とハエまでたかってしまっていて生気が全く感じられない姿である。

彼女の名前は『管輅』。予言めいた言葉を発するが、その容貌から『妄言を吐く死体』とまで呼ばれ気味悪がられている存在である。

彼女こそ、貂蝉の友人であり、一刀が助けると約束した子であった。

 

これは、そんな彼女を救うべく平原へと訪れるおせっかいの話である。

 

 

 

 

 

 

「ここもすごいな。村とは違って人が多いぞ」

 

一刀は貂蝉の話を聞いた為、平原へと初めて訪れた。村と比較し、人の多さに苦笑する。最近では人が増えたからといってまだまだ自分の村は、それを村と呼べるほどの規模になっていないと実感しながら。そして、一刀は出会う。

 

「あの人か・・・」

 

大通りの片隅にちょこんと置いてある一対の机と椅子。そこに座って目の前の机にある水晶をじっと見つめる白いローブの人。確証はないのに、一刀はあの人こそ貂蝉が言っていた友人なんだとわかってしまった。

 

「すいません。少しいいですか?」

 

一刀は近づき声をかけてみた。そこで初めて気づく目の前の人物の異常性に。危うさに。それが、一刀のおせっかい魂に火がついた瞬間だった。そんな一刀を怪訝な表情で見つめる平原の人々。あの、気味悪い人物に話しかけた人だからである。その視線に一刀も気づいたが完全に無視した。そんなことに構っている場合ではないからだ。

 

「危ない!」

 

なぜなら、目の前の人が崩れ落ちたから。かろうじて支えるのが間に合い、倒れる寸前に抱きかかえることが出来たが、抱きかかえてわかってしまったことがある。服越しに伝わる骨ばった感触。異常なまでの体重の軽さ。体の不潔さもあって、かの人の体調が激しく悪いことに。一刀はなりふり構わずにその人を抱き抱え、走りだした。最低限の食物を胃の中へと入れさせた後、自分の村へと連れて行く為に。貂蝉との約束を果たす為に。

 

 

 

 

 

「?」

「あっ・・・起きた?」

「・・・」

「ご飯作ってあるから食べよう」

 

白いローブの人が目を覚ましたのを確認した一刀はご飯が出来ていると案内する。その人は言葉を発することなく、黙って一刀の案内についていった。

 

「ほい。お粥。何日も食べてないんでしょ?そんな状態でいきなり重いものを食べても吐き出しちゃうだけだからね」

 

一刀はお粥を茶碗によそって差し出すが、白いローブの人は受け取る姿勢をとらなかった。さきほどから言葉を発することはせず、黙っているだけ。幸い、言葉は通じているようではある。しかし、何も話してくれない、動いてくれないとなっては困ってしまう。仕方なく一刀は受け取らせるのを諦め、食べさせる方向に持っていった。

 

「はい、口あけて・・・あ~ん」

 

その人は無言で小さくもちゃんと口を開けた。これをきっかけに一刀は希望を見出す。自分でやらせるのは無理だが、人からやらされるのはやると。このままでは後々問題になるだろうが、今はこの方法でやるしかない。と一刀は掬ったお粥をふぅふぅと冷まして、与えるのであった。

 

「よし、次は体を洗うよ」

 

例によって言葉を発することがない白いローブの人の手を引いて一刀は小川へとやってきた。料理の準備は出来たのだが、風呂の準備が出来なかったのだ。仕方がないので小川での水浴びと垢すりで体を洗うことにする。

 

「は~い。じゃ、服をぬぎぬぎしましょうね~」

 

言葉はないが、素直に言うことに従ってくれる人を完全に小さな子供扱いする一刀。子供の着替えは慣れたもの、ローブをぱぱっと脱がし、肌が見える前に布で隠す。そこで一刀は始めて気がついた。白いローブを纏った人が実は女の子だということに。

 

「じゃ、冷たいけど慣れれば平気になるから。ゆっくりと入ろう?」

 

一刀は軽く手を引いてその子を小川へと入れる。予め布を手で落ちないように押さえてと指示は出しておいた為、女の子の体は布で隠れていて肝心な部分は見えないようにしていた。それでも、普通なら布一枚隔てているといっても女の子の裸体が目の前にあれば、あらぬ想像も、おさわりしてしまうこともあるだろう。しかし、一刀は平然としている。それは一刀が異常なのではなく、少女の体が痩せ細り、骨が浮き出て、血管などの筋が見えてしまうというあまりにも痛々しい姿にやましい気持ちで見ることが出来なかったのである。

 

 

 

 

 

「痛かったり、かゆかったりしたら教えてね?」

 

小川に体を入れた少女に垢すりを始める。一応、注意はしておいたが彼女から言葉が発せられることもなく、また一刀も言葉を発することもなく黙々と垢すりを行っていく。しばらくは沈黙が場を支配するのであった。

優しく傷つけないように気をつけながら黙々と洗っていく。そこで一刀は彼女の異変に気がついた。

 

ブルブルブルブル・・・

 

「震えてる?・・・!?しまった!!」

 

彼女の体が異様に震えているのである。一刀はすぐ原因に気がつくことが出来た。垢すりもほとんど終わっていたのが幸いし、手早く小川から上がり、水気を拭くことが出来た。

そのまま、服を着せてその上から乾いた布をかけて体を温める。一刀は少女の手をとりさっさと家へと戻るのだった。

 

「迂闊だったな。彼女の状態を考えれば簡単に思いついたことだったのに・・・」

 

家に戻ってすぐに囲炉裏に火を入れ、彼女を傍へと座らせて体をさする。あの震えの原因はその異常な体重の軽さによる熱伝達の速さだった。簡単に言うと、痩せすぎの為、冷たい水で体が冷えてしまい寒さで体が震えてしまっていたのだ。普通ならもっと速い段階で寒いと意思表示をするのだが、彼女は会ってから今まで一度として言葉を発しないので状態異常に気づけなかった。一刀は悔しげに顔を歪ませ、反省をするのだった。

 

「さて、そろそろ聞きたいことがあるんだ。答えてくれるかい?」

「・・・・」

 

しばらくすると震えがとまった為、さするのをやめ彼女の正面に座る一刀。貂蝉との約束では『話を聞くだけでいい』らしいが、さきほどから一言も話さない彼女にどうすればいいのか、とりあえず話して反応を見ようということで切り出した。

 

「まずは名前を教えてくれるかな?」

「・・・・」

 

沈黙。これは駄目かと思った一刀だが、彼女が口を開いたところで早とちりであることに気づく。

 

「か・・・ろ」

「え?」

「私の名前は・・・管輅。流浪の占い師」

「(なるほど、三国志の有名な占い師か)」

 

小さな掠れた声だが、はっきりと言葉を発した。彼女こと管輅。一刀は言葉を発したことに希望を見出す。

 

「俺の名前は白士。よろしくね」

「・・・・」

 

自分の名前も紹介してみるが、これには無反応であった。しかし、今まで無口だった少女が自分の問いかけに答えてくれたのである。一刀はこれからも声を駆け続けてゆっくりと彼女が心を開いてくれるのを待とうと思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

管輅を連れてきて数日が過ぎた。この数日で彼女についてわかったことが三つある。

まず、一つ目は反応がないように見えて一度言ったことは覚えているということである。未だに自分で動くことが少ない彼女だが、垢すりのときは自分で服を脱ぎ、体を布で隠してくれた(でも、体を洗おうとはしなかった)。ご飯もしっかりと自分で食べるようになった。このように少しづつだが、変化が見られるようになっていた。

 

二つ目は、彼女の趣味である。ある夜、寝ていた一刀は寒さを感じて目を覚ます。すると、家の扉が空いていたことに気づいた。しかし、一刀は寝る前に戸締りは確認したので開いているはずがないのである。さらに、隣の布団で寝ていたはずの管輅がいない。一刀は慌てて外に出たが、そこには空を見上げている管輅が静かに佇んでいたのである。彼女の姿を見つけた一刀は少し安堵して落ち着きを取り戻すと、管輅に話かける。

 

「ここにいたのか。姿が見えなかったから慌てちゃったよ」

 

管輅は一刀に振り返ったが、すぐに視線を空へと戻してしまった。

少し残念に思いながらも、話し続ける一刀。

 

「星を見てるの?」

「・・・(コクッ)」

「星を眺めるのが好きなのかな?」

「・・・(コクッ)」

 

相変わらず言葉を発することはなかったものの、このとき彼女のことが一つだけだがわかったのである。これ以降、星見に出た管輅の体が冷えないよう、毛布を持って一緒に星を眺めるようになるのであった。

そして、三つ目。

 

「・・・!?」

「ん?どうかしたの?」

 

今日も一刀は畑に出ていた。そろそろ、収穫も出来るほどの成長してきた作物を見て満足気な笑みを浮かべていた一刀だったが、ふと隣にいた管輅の顔が変化したことに気がついた。

 

「・・・森の中から大きな影出現。しかしその影前に進むこと叶わず、闇の中へと落ちていく」

 

自己紹介以来の声を聞くことが出来た一刀だが、喜びよりもその意味深な言葉のほうが気になった。

 

「大きな影?闇の中へ落ちる?どういうこと?」

「・・・」

 

質問をしてみるも、その予言のような言葉以降。彼女が言葉を発することはなかったのである。その言葉の翌日、村はいつもより活気に溢れた。

 

「長~!今日は大物がとれましたよ~!」

 

感じた喜びを分かち合いたいのか、村人が一刀のところへと報告に来る。普段なら一緒になって喜ぶところだが、今回は驚愕するしかなかった。現場を見ると、そこには落とし穴に落ちた大きな熊がいたのである。一刀の頭には昨日の管輅の言葉が蘇っていた。

 

――森の中から大きな影出現。しかしその影前に進むこと叶わず、闇の中へと落ちていく――

 

「(大きな影は熊のこと、闇の中って落とし穴か・・・あの言葉通りの状況だ)」

 

管輅の言葉通りになった状況に、一刀はただただ驚くしかなかった。あの街で聞いた管輅の評価、妄言を吐く死体・・・とんでもない。彼女は紛れもない凄腕の予言者である。その人達は彼女の言葉を理解出来なかったのだ。直接表現ではなく、抽象的な表現で発せられる言葉、その意味を理解すればその予言の正確性がわかるのだ。

一刀が知っている史実の占い師とここにいる少女は実力に遜色がなくまぎれもない凄腕の占師、管輅であることをはっきりと認識できたのである。

 

 

 

 

 

 

 

~管輅サイド~

 

私の名は管輅、占い師をやっている・・・ことになっています。私の本来の仕事は外史の管理をすること、でした。私は仕事に誇りを持っていたのです。しかし、あるときの上司の言葉でその誇りを失い、私の存在する意味もわからなくなってしまいました。

それからというもの、何かをする気力を失い、面倒になりました。それでも、外史の管理者としての仕事をやっていたのは、未だに信じられなかったからでしょうね。管理者の仕事以外はまったくやる気がおきなかったのに、仕事だけはやっていたのですから。ですが、やはりというべきか、食事すらもしなかったので限界に来てしまったのです。

 

「(力が入らない・・・ああ、もう限界なんだ)」

 

倒れる間際までそんなことを冷静に考えていました。そういえば、倒れる直前に誰かに話しかけられたような気がしましたが、今更意味はないですね。ここで、私は死ぬのですから。私は考えることをそこで放棄しました。最後に暖かいものに包まれた感じがして、私は意識を失ったのです。

 

「あっ・・・起きた?」

 

意識を取り戻したときに聞いた第一声がこれでした。私は少し驚いてしまいました。倒れるとき、私は自分は死ぬのだと思っていたのに意識を取り戻したからです。状況から考えるに、目の前の人が私を助けてくれたようですね。街の人からは不潔さと不気味さで蔑まれてすらいた私を助けるとは・・・相当なお人好しなのですね。

 

「ほい。お粥。何日も食べてないんでしょ?そんな状態でいきなり重いものを食べても吐き出しちゃうだけだからね」

 

私の体調を考慮して作ってくれたのでしょうね。お粥が渡されましたが、私には食べようとする気力もないのです。渡された状態のまま、動きませんでした。動かない私を見て、だんだんと困った顔になっていく彼には申し訳ないと思いますが。

動かない私に彼は食べさせてくれました。さすがにそこまでされては動かないわけにはいきません。彼の作ってくれたお粥を食べました。そのお粥がおいしく感じたのは、恐らく久しぶりの食事であるからという理由だけではないでしょう。

 

「は~い。じゃ、服をぬぎぬぎしましょうね~」

 

食事の後も彼は私の世話をしてくれます。水浴びでは体まで洗わせてしまいました。それでも、恥ずかしいという気持ちはわきませんでした。気力とともに感情も忘れてしまいましたから。ですが、彼の私への対応の仕方が幼い子供に対する対応だと感じるのは気のせいでしょうか?どうでもいいことですね。忘れましょう。

これ以降も彼は私の世話を焼いてくれました。あるときは星見に付き合ってくれ、あるときは私の予言に感謝してくれ。いつしか、私の心にも彼に負担をかけたくないと、彼に言われたことには注意しているという変化が生まれていることに気づきました。絶望していた私がこんなことを考えるとは、驚きですね。

 

 

 

 

 

「おさ~。あそぼ~」

「ごめんなさい。この子が長と遊びたいって聞かなくて」

「俺からも謝ります」

「ははは。気にしないでいいよ。俺も遊びたいと思ってたところだからね」

 

彼は長と呼ばれて慕われているみたいですね。近くに住んでいる兄妹の三人が頻繁に訪れますし、村人も彼らほどではないですけど、訪れてきますし。彼も彼で、困った顔もしないで笑顔で対応するので、非常に仲がいいです。ただ、最近では少し変化がありました。それは・・・。

 

「おねえちゃんもあそぼ~」

「・・・?」

 

私も誘われるようになったことです。前の街にいたときには考えられないことです。この状況は少々驚きますが、それ以上に困ってしまいます。こんなときどう対応すればいいのかわからないのです。助けを求めて彼を見ますと、目が合いました。彼は一つ頷くとこちらの意図を汲んでくれたようです。これで、助かり・・・。

 

「お姉ちゃんもいいよって」

「わ~い」

「「ありがとうございます」」

 

全然、こちらの意図が伝わっていませんでした。その上、私も参加することになってますし。彼の返事に子供達も嬉しそうに声を上げてます。これはもう、断れる雰囲気ではありません。彼のことを睨もうとしたとき、耳元で子供たちには聞こえないよう配慮して、彼が囁きました。

 

「(たまにはいいでしょ?子供達も喜ぶし、気分転換になるよ)」

 

彼は確信犯だったようです。そこまで言われてしまってはもう断ることは出来ません。こんな私と遊んで楽しんでもらえるか不安ですが、お付き合い致しましょう。

 

「ん~・・・こうだ!」

「おっ、上手いぞ。成功だ」

「わ~い」

 

私達は今、綾取りという遊びをしています。紐を結んで輪にして、その輪を指に引っ掛け、様々な形の物を表現するという遊びです。最初は見本ということで彼がいくつか作ってくれました。とんぼ、亀、架け橋など見事な物でした。末っ子の女の子は早速、興味を持ち始めたようです。やり方を説明してもらって、自分でやり始めました。何故か私も。しばらくやっていたのですが、複数人で遊ぶやり方もあると教わり、今はそちらをやっている最中なのです。

そんなことを考え事をしていたのが悪かったのでしょう。

 

パラ・・・

 

「あっ・・・」

「おねえちゃんのまけぇ」

 

私の番になり、失敗してしまいました。勝った女の子は大喜びです。楽しんでもらえているようでなによりですね。

 

「クスっ・・・」

「おっ、初めて笑ってくれたね」

 

えっ?私、笑ってましたか?自分でも知らない内に私は笑っていたようです。彼に指摘されて始めて気づきました。笑うことなんて、管理者の仕事について久しくなかったですかね。そんな私でも、ちゃんと笑えることが出来たみたいです。

 

「よし。今度は外に行こうか。とんぼをやってあげるよ」

「「「わ~い」」」

 

彼は兄妹達を連れて外へと出かけていきました。とんぼとは先日、彼が作った竹で出来た空に飛ばして遊ぶ玩具の名前だそうですけど、今彼らがやろうとしているのはそれに似た行動です。彼の両腕に一人ずつ掴まり、彼がその場で回転して両腕に掴まっている人を宙に浮かすという遊びです。あまり長くやると目が回って転んでしまい危険だということですが、子供たちはこれをすっかり気に入ってしまい、頻繁にせがむようになってしまいました。彼は困った顔をしますが決して断ることはしません。一人で子供二人分の重さを支えるのは大変そうですが。

 

「・・・クスっ」

 

今度は自覚できました。私、笑ってますね。これも、あのおせっかいさんの影響でしょうか?でも・・・悪くないですね。こういうのも。

 

 

 

 

 

管輅が一刀に連れてこられて一月がたった。一刀の献身的な介抱により、管輅の体は完全に健康を取り戻していた。痛みでカサカサであった髪も潤いを取り戻し、贅肉はおろか必要な肉までもなく、骨や血管が浮き出放題になっていた体も、まだ痩せすぎなところもあるが、大分体重を取り戻していた。

 

「管輅さん。今日、夕飯どうしようか?」

「・・・お魚で」

「了解。じゃ、水を汲むついでにとってこようか」

「(コクッ)」

 

この一月の間、簡単な言葉を話すようにもなった。ある日のこと、朝、管輅が起きてきたのに気づいた一刀は「おはよう」と声をかけると。

 

「おはよう・・・」

 

と返したのである。この後から、彼女は少しづつだが一刀の言葉に返事するようになっていったのであった。

そして、言葉以外にも増えていったものがある。それは、予言であった。

 

「・・・西方に飢えた犬の群れあり。本能を剥き出し、猫を襲う」

「西だね。見てくるか・・・」

 

いざ、西に行くと盗賊のような男達が、商人らしき人を襲おうとしていた。人数は6,7人。一人で戦っても勝てる人数ではない。一刀は見つからないように木に隠れながら、男達に石を投げつける。

 

「おう!荷物を置いてけ、ぶはっ!?」

「どうした?どぶはっ!」

「官軍か?どっかぎゃふっ!」

 

投げた石は全て盗賊の頭に当たり、一撃で昏倒させていく。最初は石の出所を探していた盗賊達は半数を倒したところで、諦め逃げることを選択した。盗賊達は一刀の居場所を特定できない男達はそのままいては自分達も同じ道を辿ることになると判断し、倒れている仲間などおかまいなしに逃げだしていったのである。

一刀は追うことをせず盗賊が戻ってこないかを慎重に確認しながら、商人に近づく。

 

「大丈夫ですか?」

「あ、あなたが助けてくれたんですか?」

「ここは危険です。早く去られたほうがいいですよ」

「ありがとうございます。なにかお礼を・・・」

 

というように。

 

管輅の占い→一刀が確認→人助け→お礼or住人へ

 

という流れがお約束のようになり、気づけば廃村だった面影がなくなり、立派な村と呼べるまで住人が住んでいるようになっていた。一月前までは廃墟が目立つ村だったというのに。今では空家などない。逆に新しく住居を作らないといけないくらいである。

 

「ただいま~」

「おかえりなさい・・・どうでした?」

「うん。予言通りだったよ。あれからね・・・」

 

帰ってきた一刀に詳細を聞く管輅。最近ではこういう風に会話することが増えた管輅であるが、いまだに自分のことは話そうとはしない。ただ話しを聞くだけでいいと貂蝉は言っていたが、果たして本当にそれだけで彼女を救うことが出来るのか。これまで、会話をしたことは何度もあるが、彼女を救う上で自分が何をすればいいのかが全く見えてこない。その事実に一刀は不安を募らせていた。しかし、そんな一刀の不安も解消する手段が見つからないまま時代が動こうとしていた。

 

「・・・黄天起つ。各地で黄天を掲げて反乱が起こる。動乱の時代が始まった。それと共に群雄も起つ。やがて、大陸全土を巡る群雄割拠の時がやってくる」

 

そう、三国志で有名な黄巾の乱が起ころうとしているのである。だが、予言はここで終わりではなかった。

 

「・・・一本の木が黄色の光に飲み込まれた。後に上がるのは赤い炎と轟音。やがて炎が収まり残った焼け跡に白い石が二つ。その石、ひどく濁り汚れている」

 

ここで予言が終わった。前半は理解できたが、後半はさっぱりである。事象が起こらないことには何を示している予言なのかわからないのである。後半については今は問題ではない。今、問題なのは前半の予言・・・。黄巾の乱のことである。

一刀の頭に浮かんだのは一緒に生活をしたこともある三姉妹のことだ。黄巾の乱の首謀者、一刀の知っている三国志通りだとすると、彼女達ということになるのだから。違っていてくれと強く願う一刀であった。

 

 

 

 

 

 

 

~程立サイド~

 

「・・・なんだったのだ?あの者は?」

「さあ?占い師のようでしたが・・・」

 

別れるときに第三者の割り込みによって機を逸してしまい、趙雲は離れることが出来ないでいた。

 

「まぁ、気にするほどでもないか・・・では、私もこれで失礼しよう」

「え、ええ。お元気で」

「ああ。二人もな」

 

こうして、趙雲も去っていった。残った二人はここで宿を取るべく動き出すが、先ほどの予言を聞いてから程立は一言もしゃべらないのが気になった。

 

「何か先ほどの予言で気になることでもあるのですか?」

 

戯志才は思い切って聞いてみることにした。すると、意外な言葉が返ってくる。

 

「実はですね・・・ここは曹操様の領地ですよね?」

「ええ」

「曹操様の領地へ入ってから同じ夢を見てます」

「夢ですか?」

 

程立曰く、最初は真っ暗闇の中に自分がいるそうだ。しばらくすると、2方向から光輝く。左を見ると力強く輝く日輪を数人の人が支え、掲げあげていく。その中に戯志才もいるのが確認できた。もう一方を見ると暖かな白光が輝いているが日輪は見えなかった。しかし、こちらにも数人の人がいて、白光に包まれて幸せそうな笑顔でいるのが確認できた。その中に、一緒に生活したこともある恋とある意味、程立のライバルである陳宮の姿があったとか。

 

「それは・・・」

「そうなんですよ。さっきの予言と同じなんですよね~」

 

それっきり程立は再び黙ってしまった。彼女の中にあるのは、夢と同じ内容だった予言。選択を迫られる。厳格な日輪、暖かな白光のどちらにするかということ。その二つが何を示しているのかは予想はついている。厳格な日輪は曹操のことだろう。そして、暖かな白光は・・・。どちらにせよ、今はまだ答えが出せないでいた。

 

「もう少し、時間が欲しいのです」

 

程立は曹操を直に見て、どんな人物かを見極めてから判断しようと考える。自分にとって納得できる答えを見つける為に。

 

 

 

 

前回の閲覧数が前々回までの話に比べて伸びが速過ぎて名前の通りびっくりです。

 

さて、この話を持っておせっかいが行くは終了・・・ではなく(笑)

第十話となりました。

いよいよ次からは二桁の話数になるわけですが、物語も進みます。

 

まず、この話に登場しました管輅ちゃんについて。

 

原作でもエセ占い師として名前だけは絶対登場してますよね。

かゆさんやハムさんなど、不遇なキャラがいますが、この管輅ちゃんもある意味不遇じゃないかと思ったわけです。

 

なんで、思い切って・・・ヒロインにしちゃいました♪エヘッw

 

後々、本編を交えながら彼女について説明していきますが、先は長いですね。

まだ、本調子ではありませんし。

というわけで、気長にお付き合い頂けたらと思います。

 

肝心の管輅の容姿についてですが・・・・

私のイメージを絵に描いて本編にアップしようと思います。

実は今回の登場にあわせてアップしようとしたのですが、スケッチブックを用意し忘れるというポカをしまして、かけませんでしたので・・・。

 

ああ、先に申しますが、あまり期待しないで下さい。

描いた絵をスキャナに取り込んでアップする方法にしますし、線画状態で・・・色をつけても色鉛筆を使用してなので・・・クオリティは低いといわざるをえないので・・・。

 

線画を本編で。

色をつけたのをイラストとしてアップする予定。

ああ、でも他の方のイラストを見てると色鉛筆で色付けした絵なんて載せていいものかと思いますが・・・。その場合は本編の絵を差し替えるということでwww

 

 

最後になりましたが・・・。ようやくやってみたかったアンケートをやってみたいと思います。

内容は本編の最後にもありましたが。

程立ちゃんの選択です。

 

①原作通り魏に仕官

②お兄さんの元にとつg・・・げふんげふん、仕官する。

 

では、次回も楽しんで頂けるよう頑張ります。

 

 


 
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