No.150133

愛紗にゃーにゃー 凪にゃーにゃー

 久々に書いてみました恋姫のSSです。
 萌将伝が発表されて、こういうものかな? と想像して書いてみました。
 萌将伝で本当に楽しみなのは、前作までで まったく接点のなかったキャラたちのカラミ。去りし日のKOFのチームエディットのように、考えもしなかった組み合わせで、想像もつかない楽しみ方をさせてくれるのを期待してます。

2010-06-12 22:58:17 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:12402   閲覧ユーザー数:10776

 

 

愛紗「負けたッ!」

 

 敗北宣言とともに床を転がる愛紗。

 その姓は“関”、名は“羽”。三国に名を轟かせる猛将中の猛将である。

 そんな愛紗を負かした相手とは一体誰か?

 

明命「わーい! わーい! 勝ちましたーッ!」

 

 呉出身、音なき戦いでは右に出る者なしという隠密戦のスペシャリスト。周泰幼平こと真名・明命であった。

 何故この二人が戦っているのか?

 その理由は、天の御遣い・北郷一刀が、平穏を迎えた三国の中心に新都を建てることに起因する。

 

明命「これで私が一刀さまの護衛役に決定です! いいですね愛紗さんッ!」

 

 北郷一刀の護衛を、どの勢力が担当するかという懸案だった。

 一刀が新たに建設する都は、三国の中心に位置するという関係上、魏・呉・蜀の管轄が物凄く微妙になってしまう。なので三国すべてが「一刀護衛は自分たちの任務だ」と主張して譲らず、揉めに揉めていたというわけだった。

 それで泥沼化した議論を解決する唯一の方法が、実力行使。

 一番強い者が一刀を守る、という明快な理論の下に試合が組まれたのである。

 

愛紗「うう……、負けてしまった………」

 

 プライドを打ち砕かれて、スゴスゴ引き下がる愛紗。

 三国最強と謳われた彼女も、気配ゼロで物陰から強襲する明命には、なすすべなく破れてしまった。明命、何たるダークホース。ケンカとゲリラ戦は別物だという事実が、敗者に重く のしかかる。

 

凪「お疲れさまです、愛紗殿」

 

愛紗「凪か、……卿も魏代表として戦ったんだったな」

 

 そして見事に負けたんだったな。

 愛紗も凪も武人としては、正面から戦って敵を撃破するタイプ。明命の隠密性に翻弄され、まったく いいとこなしで のされた挙句、敗者の責めとして、顔に落書きまでされてしまった二人であった。

 

 ちなみに愛紗に書かれた落書きは『おっぱいだけが不道徳』

 凪に書かれた落書きは『マーボー隠れ巨乳』であった。

 

 明命の勝因は、巨乳に対する怨念の強さも含まれているのかもしれない。

 

愛紗「だが……、クソ、これでご主人様の護衛権は、呉のモノになってしまった」

 

 顔の落書きを洗いながら、悔しがる愛紗。

 

凪「仕方ありません。勝った者が隊長を護衛する、そういう約束でしたから」

 

愛紗「しかし、一度負けたぐらいで諦められるか? ご主人様の護衛だぞ? こんな栄誉ある仕事を、たった一度負けたぐらいで本当に諦めきれるのかッ?」

 

 無論ながら彼女らの本当の狙いは、護衛役に就くことによって四六時中一緒にいられる北郷一刀との甘い生活にあるのだが、そんなことは口が裂けてもいえない真面目タイプの愛紗&凪。

 

愛紗「もう一度だけ戦って、明命を打倒するのだ! そうすればヤツの護衛能力に疑問が生じ、すべてを白紙に戻せるかもしれん!」

 

凪「ですが明命殿の隠密能力は完璧に近いです。まともにぶつかっては、何度やっても勝てるとは思えません……!」

 

愛紗「護衛任務は、通常の戦闘とは色合いが違うから、正規の試合形式では やらせてくれないからな。……なんでもアリになれば明命の隠密性能が有利になるのは当然……」

 

 一体どうすれば明命に勝つことができるのか?

 蜀の神将 と 魏の堅将が頭を抱えて唸っている その時であった。彼女らに救いの手が差し伸べられたのは。

 

一刀「お困りのようですな」

 

愛紗「ご主人様ッ!?」

凪「隊長ッ!?」

 

 出てくるタイミングのよさは喪黒 福造並といわれる北郷一刀の登場であった。

 

 

    *

 

 

一刀「ふむふむ…、では二人は、どうしても明命に勝ちたい! というわけだね?」

 

愛紗「はあ、まあ、そんなところですが……?」

 

 護衛任務に就きたいという相談を護衛対象本人にするのも どうなのだろう? という疑問を抱えつつ、しかし神妙にしている愛紗と凪。

 

一刀「それでは二人に、明命の弱点を教えてしんぜよう!」

 

愛紗「弱点ッ!?」

凪「本当ですかッ!?」

 

一刀「その弱点を突けば、二人とも勝利は確実。今宵は旨い酒が飲めましょうぞ」

 

 今回の一刀は何だか怪しい。

 しかし明命のチートめいた隠密性には まったく勝てる気のしなかった愛紗と凪である。クソみたいな難易度の謎解きゲームに、攻略サイトを検索するがごとく、一刀の助言に耳を傾ける。

 

愛紗「それで、明命の弱点とはなんなのですか ご主人様ッ!?」

 

一刀「うむ、それは………」

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――ネコだッ!!!

 

 

 

 ―――――――――ネコだッ!!!

 

 

 

 ――――――ネコだッ!!!

 

 

 

 ――ネコだッ!!!(エコー)

 

 

 

 

 

 

愛紗&凪「……ネコ?」

 

 二人ユニゾンで首を傾げる。

 

一刀「げに その通りッ! 明命のネコ好きは、三国を突き抜けて天竺・韃靼・羅馬に響き渡るほど有名なことだ! ネコを“おネコ様”と呼んで崇拝し、モフモフするのに命を懸ける、そのさまは、まさにネコ中毒者! その隙さえ突けば、必ずや勝つことができるだろう」

 

凪「そ…、それはちょっと卑怯なのでは……?」

 

愛紗「具体的に どうすれば いいのでしょう?」

 

凪「愛紗殿ッ!?」

 

 愛紗は 既に勝ちにいく目になっている。いかなる手段を講じても明命を打ち倒し、一刀を護衛する(一日中一緒にいる)権利が欲しいようだ。

 

愛紗「大のネコ好きといっても、それを実戦に利用するのは難しいのではないですか? ネコを人質に取るというのは武人の矜持が許しませんし、相手の注意を引くために利用するとしても、ネコも生き物ですから、我々の思い通りに動いてくれるかどうか……」

 

一刀「ハハハ…、愛紗、スッゲェ考え込んでるなァ……」

 

 いかにマジに勝ちたいかが一目でわかる態度。

 

一刀「しかし心配なかれ、この天の遣い・北郷一刀の提供する策は、そんじょそこらの伊地知幸介の作戦とは わけが違うぞ」

 

 すげぇ名指しだ。

 

一刀「たしかにネコは気まぐれ。策に利用しても、思うとおりに動いてくれる保証はまったくない。所詮ネコは他人、二人のためにネコが何かする義理はない、だから………」

 

愛紗&凪「だから………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「二人がネコになればいいんだッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………。

 …………………………………。

 

愛紗「ご主人様ありがとうございました」

 

凪「仕事がありますので、これで失礼します」

 

一刀「ああっ、ちょっと待って! 俺のこと可愛そうなヤツだと認識したまま去らないでッ! 別に おかしくないから! ちゃんと秘策を用意してあるから!」

 

凪「秘策?」

 

 二人の興味が戻ると、一刀は「しめた☆」とばかりに、懐から あるアイテムを取り出す。

 

 

 ねこみみヘアバンド。

 

 

一刀「これを二人に装備させます。武器や防具は装備しないと意味がないから!」

 

~あいしゃ~

  Eせいりゅうえんげつとう

  Eねこみみヘアバンド

  Eあぶないみずぎ

  Eうろこのたて

  Eねこのしっぽ

 

~なぎ~

  Eえんおう

  Eねこみみヘアバンド

  Eエッチなしたぎ

  Eねこのしっぽ

  Eほしふるうでわ

 

 装備完了。

 これでバ○モスとも戦える。

 

愛紗「戦えますかッ!」

 

 気付いたら変なコスプレに着替えさせられたことに激昂する愛紗。そりゃ怒るわな。

 

愛紗「なんですかッ? なんのつもりですか ご主人様ッ!? こんなアホな仮装で明命が騙されると本気でお考えですかッ!? もし本気なら すみやかに ご主人様を華佗の診療所に運び込みますよッ!?」

 

凪「しかもその、……ドサクサに まぎれて実に布地の少ない衣服に着替えさせられてますし……」

 

 エッチなしたぎを装備させられた凪は恥らった!

 

愛紗「私だって恥ずかしいわッ! なんですか ご主人様、この私が着ている あぶないみずぎはッ?」

 

一刀「アッサラームで78000Gで買いました」

 

愛紗「税金の無駄遣いッ?」

 

 北郷一刀のお小遣いは、下民からの血税でまかなわれています。

 

一刀「あぶないみずぎ と エッチなしたぎはともかく、ネコミミは ちょっとした特別製なのだよ。……なにせ、偶然通りかかった于吉さんに仙術をかけてもらったからね!」

 

凪「于吉って偶然通りかかるものなんですか?」

 

一刀「仙術により、このネコミミを装備した者は、本物の猫として認識されるのだ! これなら明命だって騙される率400%! これが勝利の鍵だ!」

 

 と一刀は興奮して語るが、愛紗と凪は そうやすやすとは騙されない。

 

愛紗「そんな……、ご主人様……、そんな左道の術があるわけがないじゃないですか。…………凪、卿には私がどう見えている?」

 

凪「あぶないみずぎを着たネコミミ愛紗殿です」

 

愛紗「ホラ御覧なさい! 私たちは こんなウソに担がれるほどバカではありませんよ! わかったらな もっとマシな策を………!」

 

 愛紗が一刀に詰め寄ろうとしたとき、ちょうど その場に紫苑が通りかかった。

 

紫苑「あらあら ご主人様、こんなところで ご休憩ですか?」

 

 大人の魅力ムンムン溢れた紫苑は、一刀たちの存在に気づいて歩み寄ってくる。

 愛紗と凪は、自分たちの あられもない姿を思い出し。恥を晒したくないと動揺するが………。

 

紫苑「あら、ネコさんと戯れてらっしゃるのね」

 

凪「へ?」

 

 紫苑の、愛紗と凪を見下ろす瞳は、小動物を愛でるような色であり、人間を見る それではない。

 

一刀「ハハハ…、ペットって心が癒されるからね」

 

紫苑「天界の言葉は よく存じませんが、ご主人様の新都建設の激務はお察しいたしますわ。ご無理せずに、お疲れになったら いつでも私に ご相談くださいね」

 

一刀「………相談したら どうなるの?」

 

紫苑「寝台の上で たっぷりと癒してさしあげますわ♪」

 

 逆に搾り取られそうな。

 

紫苑「それでは失礼いたします。……ネコさんも、さようなら」

 

 紫苑は、愛紗の頭を優しく撫でると、そのまま去っていった。

 彼女の態度には最後まで、愛紗と凪のことを人間と見ている様子はなかった。

 

愛紗「こ、これは……!」

 

凪「本物なのでしょうか………?」

 

 二人は戦慄した。

 紫苑は完全に二人のことをネコと見ていた。愛紗と凪が、互いを人間だと見えているのは、ネコミミを装備している本人同士だからだろうか?

 もし本当に二人がネコに見えているなら、明命に対して これ以上有効な切り札はない。ネコ好きの明命がデレンとなって駆け寄ってくるところに、本気の一撃を叩き込めばいいだけなのだ。

 

愛紗「勝てる……、これは勝てるぞ凪!」

 

凪「そうですね愛紗殿、さっそく このまま明命殿のところへ………!」

 

一刀「あいや待たれいッ!」

 

 勇んで駆け出そうとする愛紗と凪を、一刀の一喝が止める。

 

一刀「二人ともそれだけで勝てると思っているのかッ? 甘い、甘すぎるぞッ!」

 

愛紗「どっ、どういうことですか ご主人様ッ?」

 

 いいか よく考えろ! と一刀は語る。

 

一刀「今から貴様らが挑まんとする相手は あの明命。世界のトップブリーダーが推奨する明命だ…!」

 

凪「言ってることの意味が よくわかりません」

 

一刀「明命は三国一のネコ好き、ゆえにネコのことを誰よりも知り尽くしている! よって、ただ姿かたちを真似るだけでは簡単にニセモノと見抜かれてしまうだろう!」

 

愛紗「なるほど、相手は本職の隠密、擬態・変装は あちらに一日の長があるというわけですね?」

 

一刀「だから君たちは勝負の前に、見てくれだけでなく一挙手一投足にもネコらしさを完備しなければならない。でないと明命を欺くことなど とてもムリだろう!」

 

 一刀の言うことにも一理ある。

 愛紗は、助言に従って、ネコの真似をしてみることにした。

 

 

 

愛紗「……………………………にゃあ☆」

 

 

 

 致死量の恥ずかしさ。

 愛紗は顔を覆って転げまわった。

愛紗「ダメだッ! こんなこと やれるか! 武人・関雲長の誇りが死んでしまうわッ!」

 

凪「うぬぬぬぬ……!」

 

 羞恥心に悶え苦しむ愛紗を見て、凪もまた一つの選択を迫られようとしていた。

 彼女とて武人である。

 その職務は、戦場を歩き、敵を駆逐し、軍に勝利をもたらすこと。

 不器用に ただ戦うことに勤めてきた彼女が、こんな恥ずかしいことをできるのか?

 しかし、その勝利の先に待っているのは、護衛として一刀の傍に控える日々。それを手にするために、体面などに拘ってどうなる。

 

 彼女の名は楽進。

 

 いかなる困難があろうとも、いかなる壁が立ちはだかろうと。

 前へ、ただ前へ。

 不器用に、愚直に進み続ける。

 それが楽進の武であった。

 だからこそ彼女は、どんな障害にも引き返しはしない!

 さあ、踏み出せその一歩をッ!

 

凪「……にゃあ」

 

凪「にゃん?」

 

凪「にゃあにゃあ!」

 

凪「なぁ~ご……」

 

凪「んにゃあ、にゃんにゃんにゃん☆」

 

 

 

 

一刀「迷い猫オーバードライヴッッッ!!!!!!!!!」

 

 

 

 一刀は狂喜した。

 

一刀「そうそれ! それだよ凪きゅん! 見てくれだけでなく、中身もまたネコになりきる! それでこそ明命をも騙しとおせる本物の猫となるのだ!」

 

凪「にゃあ…、隊長、頭を撫でてほしい にゃん☆」

 

一刀「撫でますよッ! いくらでも撫でますよ! ――よしよし、よーしよしよし、よしゃよしゃよしゃよしゃ、よーしゃよしゃよしゃ………!」

 

 ムツゴ○ウ化した一刀に、心行くまで頭を撫でられる凪は、本物のネコのごとく気持ちよさそうに目を細めている。

 その光景を見て、愛紗は戦慄した。

 なんと うらやましい。

 イヤ。

 なんという勝利に賭ける執念。

 すべては明命に勝つため、一刀の護衛役の座を勝ち取るため。そのためには ちっぽけな体面など喜んで捨てる凪の執念に、愛紗は畏れを抱いた。

 

 やがて、一刀の頭撫で撫でが終息し、解放された凪が戻ってきた。足取りがフラフラおぼつかず、頬もほんのり赤い。

 

愛紗「だ、大丈夫か、凪?」

 

 凪の下へ駆け寄る愛紗。

 それに対し凪は、やはりどこか夢見心地な表情で、陶然と言った。

 

凪「…頭 撫でてもらって、気持ちよかったにゃん」

 

 ガガーンッ!

 ここまでネコを極めたか凪よ。ともに明命打倒を目指すパートナーの飛躍の成長に、愛紗は目を見張る。

 こんな状態でも、語尾に「にゃん」を入れられるほどに、ネコの気持ちを掴んだとは。

 

愛紗「私も、私も負けてなるものか……!」

 

 故国・蜀では五虎将軍の一人である愛紗である。

 しかし愛紗は思った、自分は今から五虎将軍ではなく、五猫将軍になると。

 お前はネコだ。

 ネコになるんだ。

 

 

 ネコになるんだにゃーーーーーーーーーーーッ!!!

 

 

愛紗「ご主人様!」

 ネコミミと、あぶないみずぎを装備した愛紗が勇み出た。

 

愛紗「わ、…私の頭も、撫でてほしい…………、にゃん」

 

 振り絞る勇気。

 愛紗の その一大決心を見届けて、一刀は満ち足りた顔で頷いた。

 

一刀「だが断る」

 

愛紗「なんでーーーーーーーッ!?」

 

 Youはshook!! 愛紗で空が落ちてくる。

 

愛紗「何故ッ? 何故ですか ご主人様ッ!? 私だって凪のように ご主人様に頭を撫でてもら…、もとい! ネコを窮めたいのです! ご主人様は協力しては下さらないのですかッ!」

 

一刀「いや、協力は惜しまぬ俺である。…だが愛紗よ、頭を撫でてもらうことだけがネコを窮める道ではない。君には さらに、もう一つ上のステップを踏んでみる気はないか?」

 

愛紗「…す、すてっぷ?」

 

一刀「そう、頭を撫でるよりも一段上のステージ、それは……、お腹撫でだッ!!」

 

愛紗「お腹ッッ!?」

 

一刀「そうだ、あらゆる動物にとって腹は急所、ゆえに普段は背中を上にし、決して外にさらすことはない。ネコは用心深い動物だから、それが特に顕著だ」

 

愛紗「た、…たしかに」

 

一刀「だが そんなネコも、安心したときには無防備に腹を出し、心から信頼する相手には撫でさする権利を与える。今昔の愛猫家にとって、それは選ばれし者の桃源郷! 至福のスペースなのだよ!」

 

 なるほど! と愛紗は腑に落ちた。

 ネコを窮めるために、頭以上に重要な部位、そこを教えて、自分により完成されたネコの境地に至らせようと、一刀は考えているのだ。

 なんという思いやり。なんという愛情。

 愛紗は一刀の心づけに、なんとしても答えたくなった。

 

愛紗「ご主人様!」

 

 ゴロンと仰向けに寝転ぶ、ネコミミと あぶないみずぎ装備の愛紗。

 

愛紗「ご主人様に、私のお腹をワシャワシャ撫で撫でしてほしいです! にゃん!」

 

一刀「汝の願い、しかと受け止めた!」

 

 

    *

 

 

 この間、北郷一刀による いかがわしいタイムが進行しております。

 しばらくお待ちください。

 

 

    *

 

 

 事後。

 一刀によってメチャクチャになるまでお腹を撫でられた愛紗は、全身 汗みずくになって四肢を脱力させていた。

 瞳の焦点が合っていない。息が乱れている。

 その上でネコミミ装備の愛紗の艶姿は、見る者にイケナイ想像をもよおさせずにいられないほどだった。

 

凪「あ、愛紗殿、大丈夫ですかにゃん?」

 

愛紗「凪、心配してくれるのかにゃん? あしがとうにゃん?」

 

 なんか二人とも手遅れっぽい。

 

一刀「しかし! これで満足するのはまだ早い! 二人とも、完全無欠にネコを窮めるために、最後の追い込みを始めるぞ!」

 

愛紗「お、お願いしますにゃん!」

 

凪「隊長、ビシバシ私たちを鍛えてくださいにゃん!」

 

一刀「では愛紗、ねこじゃらしだッ!」

 

愛紗「にゃあッ!」

 

一刀「凪、ダンボール箱だ!」

 

凪「突入にゃん!」

 

一刀「凪、愛紗、じゃれあえ!」

 

愛紗「にゃあにゃあ!」

 

凪「にゃうん、ごろごろ……」

 

一刀「頬を舐めてあげるといいかもねッ!」

 

愛紗「ペロペロ……」

 

凪「やっ、くすぐったいにゃん☆」

 

一刀「よーし待て、足踏み、ぜんたーい、止まれッ!」

 

愛紗&凪「「了解ですにゃん!!」」

 

 なんかもう調教は完璧だ。

 一刀は、一仕事やり終えた男の顔で、満足げに笑った。タバコがあれば一服したいところだ。

 

一刀「……愛紗、凪、君たち よく ここまでネコを窮めた。もはや俺に教えることは何もない、君たちは 何処に出しても恥ずかしくない、立派なネコだ」

 

 愛紗と凪も、達成感に目頭を熱くする。

 

愛紗「ご主人様、ここまでのご指導ご鞭撻、感謝の言葉もないですにゃん!」

 

凪「見ててくださいにゃん、この窮めたネコ技で明命を倒し、必ずや隊長の護衛役に就いてみせますにゃん!」

 

 ああ、そういやそんな設定だったっけ。

 

愛紗「ゆくにゃん凪! 目指すは明命のところにゃん!」

 

凪「ハイにゃん、ともに行きましょう愛紗殿! にゃん!」

 

 こうして、爆走していく愛紗と凪。

 ともにネコミミ装備、水着とエッチな下着付き。

 彼女らの着けたネコミミには于吉の賭けた仙術によって、装着者を本物のネコに見せる。そういう後付け設定があったが………。

 

一刀「ふぅ………」

 

 出陣していく愛紗・凪の お尻を見送り、一息ついた一刀の背後から、何者かが声を掛けた。

 

紫苑「堪能いたしましたか ご主人様?」

 

一刀「うん、すげえ堪能した」

 

 それは ついさっきこの場を通りすがり、そして去ったはずの紫苑だった。

 思えば愛紗たちが至極あっさり仙術云々を信じたのは、偶然を装って通りかかった紫苑が、あたかも愛紗たちを本物のネコのように見なしたからであった。

 

『紫苑が、自分たちをネコだと思っている。だからご主人様のヨタ話は真実に違いない』

 

 まさか一刀と紫苑が最初からグルだったなどと、夢にも思わぬ愛紗たちであった。

 

紫苑「本当にコロッと騙されちゃって、愛紗ちゃんも凪ちゃんも おぼこいわねぇ……」

 

一刀「でも、こうでもしないと愛紗も凪も硬くて甘えてくれないからなあ。いや、ホントに貴重な経験をした」

 

 新都建設で、一刀が激務に追われているのは紛れもない真実である。

 その疲れを癒すために、たまにはこうして萌え分を補給するのが、必要不可欠なのであった。

 愛紗や凪に被せたネコミミは、街の呉服屋に特製でオーダーした代物ではあるが、正真正銘 何の変哲もないネコミミである。変身なんて けったいな機能、備えているわけがない。

 すべては一刀と紫苑の お芝居だったのである。

 

紫苑「でも、ご主人様も人が悪いですわ。そんなにネコミミに飢えていらっしゃるなら、私が望みをかなえて差し上げましたのに、にゃん♪」

 

一刀「紫苑さん、いつの間にネコミミを被ったのですか?」

 

 気付けば、ネコミミ装備の紫苑が、スズメを狙うネコの目つきで一刀のことを捉えていた。

 しかし、ネコミミを着けても紫苑はネコとは言えなかった。

 女豹だった。

 捕まれば喰い殺される。

 

紫苑「ご主人様、私、計画に協力して差し上げた ご褒美ほしいですにゃん♪」

 

 ネコミミ紫苑、舌なめずり。

 

一刀「いやぁ、ハハハ、俺もうネコミミ分は補給し終えたから、戻って仕事しなきゃなあ~」

 

桔梗「お館、それは つれないですぞにゃん」

 

祭「紫苑から面白いことがあると聞いて、お呼ばれされにきたわいにゃん」

 

一刀「増えたッ!?」

 

 女豹が増えたッ!?

 

紫苑「さあ ご主人様、あちらで しっぽりと楽しみましょうにゃん♪」

 

一刀「やだーッ! 喰われる、骨も残さず喰い散らかされるーッ!」

 

 悪に相応の報いあり。

 

 

    *

 

 

 後日談である。

 愛紗と凪は、一刀の下を去った後、明命の面前へ突入し、こう言った。

 

愛紗「明命! ネコさん参上だにゃんッ!」

 

凪「モフモフして、撫で撫でして、抱っこしていいにゃん! 優秀なネコである私たちは、人間たちの要求に何でも答えてみせますにゃん!」

 

 愛紗も凪もノリノリであった。

 そんなコスプレ姿の二人を見て、当の明命は、すげぇ冷めた目つきで言った。

 

 

 

 

明命「愛紗さん、凪さん、一体何をやってるんですか?」

 

 

 

 

 時間が凍ったという。

 しかも、その時ちょうど折悪く、世間は3時の おやつの頃で、明命の周囲には、ともに放課後ヤムチャタイムを楽しんでいた思春や亞莎や小蓮や蓮華たちが大集合しており、彼女らもまた愛紗&凪の、乱心したとしか思えない暴挙を目撃し、言葉を失っていた。

 元々は冷静で、思考の回る二人である。

 冷酷な現実は すぐさま理解できた。

 愛紗と凪の顔が赤熱し、涙目になり、絶叫がこだまするのは、そのすぐの瞬間だった。

 

 

 

 

 

愛紗&凪「やだにゃ~~~~~~~~~~~~~~~ッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 一刀による調教は骨の髄までしみこんでいた。

 

 

    *

 

 

 さらに余談であるが。

 一刀の護衛役は、後に厳正な抽選をしなおした結果、貂蝉と卑弥呼に一任された。

 

 

               終劇


 
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