「こんにちは、北郷一刀です! 今日からしばらくの間よろしくお願いします!」
わあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
なぜか鬨の声があがる成都の玉座の間。
「保護者の孫策で~す」
「雪蓮さんこんにちは」
「お久しぶりです」
「なのだ!」
「あわわ」
「はわわ」
「へぅ」
「…… お腹減った」
「へぅ」
「……なんか普通ね」
一刀との対応の違いに慣れてしまった雪蓮はそれ以上は何も言うことはなかった。
一刀が成都に来たのは、蜀の者たちと交流を深めることと、天の知識を提供するというのが主な目的だ。
「えっとね、今日は一刀くん…………と雪蓮さんの歓迎会があるからそれまではゆっくりして明日からお仕事してもらいますね」
「わかった」
「そうよね。私はいつもついでなのよね……」
分かっていることだがなんとなくおもしろくない雪蓮だった。
そんな雪蓮を見て一刀が声をかける。
「俺にとって雪蓮は大事な人だからね」
それを聞いた雪蓮の表情は喜色に染まる。
「やっぱり一刀は最高の旦那ね♪」
皆が見ているにもかかわらず一刀に口づけをする雪蓮。
『孫策已死、蜀兵當立……』
「あ、あのどうしちゃったのかしら皆さん?」
なにやらぶつぶつ呟き始めた蜀の将たち。
『一刀くんを穢すな~!!』
「きゃー!」
蜀の将たちと雪蓮の追いかけっこが始まった。
「みんな行っちゃった……」
「へぅ…………私がいますよ」
あえて雪蓮を追わずにいたのは月一人だった。
「月お姉ちゃん!」
「へぅ! …………我が事成れりです~」
「何か言った?」
「いいえ~♪」
他の者たちは月の掌で踊らされているのだった。
「どうしましょうか?」
「それじゃあ成都を案内して欲しいかな」
街の様子も見ておきたかった一刀はちょうどいいと思い、月に案内役を頼むのだった。
「へぅ! それじゃあすぐに行きましょう!」
「うん!」
月はさりげなく一刀の手をとり歩き出した。
「へぅっへっへっへぅ♪」
上機嫌で鼻歌を歌いながら一刀を案内するメイドさん。
「月お姉ちゃん嬉しそうだね」
「へぅ!? ……そ、そうですか?」
「うん」
「へぅ」
一刀に指摘されて恥ずかしくなり顔を赤くする月だった。
「ここは良い街だね。みんなが笑顔で暮らしている」
「はい。最初にこの街に来た時とは比べ物になりません」
桃香たちが最初にこの街に入った時は、民たちは疲弊しきっており、市などもとても見られるような状態でのはなかっただが、民を思いやる桃香のおかげで今のように大勢の人たちで溢れかえるようになっていたのである。
「でも俺たちの街も負けてないよ」
一刀の言うとおり呉では自由奔放の元君主雪蓮がよく一刀を連れて街に現れるので非常に賑やかなのである。治安の方も一刀の天の知識から非常に良くなっており、犯罪の起こしにくいものとなっていた。
「へぅ! 一刀くんや雪蓮さんならそうでしょうね」
「ありがとう。この街ももっと良くして見せるからね!」
「へぅぅぅぅぅぅ~」
笑顔で決意する一刀くんに悶えるメイドがいた。
その後、日が暮れるまで街を見物した二人は城に戻っていった。
「……雪蓮大丈夫?」
「そう見えるんならあなたの目は節穴ね」
「ですよね」
城に帰ると案内された部屋で雪蓮がボロボロの姿で発見された。
「せっかく一刀と街を見て回ろうと思ったのに……」
「ごめんね。でも今度は俺の案内で一緒に行こうね」
「ああ。何もかもが癒されるわ~」
一刀の笑顔に感嘆のため息を漏らす雪蓮。
一刀の笑顔は必察必治癒だった。
しばらく二人で会話しているとコンコンと扉が叩かれた。
「は~い」
「誰かしら?」
扉の向こうからは愛紗の声が帰って来た。
「お二方、宴の用意が出来たのでお集まりください」
言うとおりに二人は愛紗の後をついていった。
「えっと、それじゃあ一刀くんが来てくれたことにかんぱ~い!」
『かんぱ~い!』
「良いのよ私は……。お酒が飲めればいいんだから!」
完全に桃香にスルーされた雪蓮はぐいぐいと酒を飲むのだった。
「いや~、お茶が美味いですなぁ~」
お酒を飲まない一刀は月に淹れてもらったお茶を飲んで和んでいる。
「日本酒、バーボン、ビールにアブサン、焼酎、どぶろぐ、テキーラなんでも来い! 酒持ってこい!」
自棄酒をする雪蓮は一刀に教えてもらった酒の名前を叫んでいる。
「雪蓮、飲み過ぎちゃだめだよ」
「なによ~、今日くらい飲ませなさいよ~」
「はぁ。……よしよし」
もたれかかってくる雪蓮の頭を優しく撫でてあげると、雪蓮は猫のように丸まって寝てしまった。
「ごめん、愛紗お姉ちゃん。雪蓮を部屋に運ぶのを手伝ってくれる?」
「もっちろん!」
酒が入っているのかやたらテンションが高い愛紗だった。
「私も行く~♪」
そこに酔っぱらった桃香が一刀を抱き上げた。
「桃香様! どうせなら雪蓮殿を担いでください!」
「え~、わたひ武官じゃないから無理だよ~」
「愛紗お姉ちゃんお願い」
「もっちろん!」
やはりテンションの高い愛紗だった。
「よし、それじゃあ戻ろうか」
雪蓮を寝台に寝かせて宴会場に戻ろうとすると、桃香が何かに気付いた。
「ねえ一刀くん、あれは何?」
それは机に置いてあった大きくなる薬だった。
「えっとね……、なんて言えばいいのかな」
大きくなった自分が受け入れてもらえるか不安なので口籠もる一刀。
「飲んでみてもいい~?」
「えっ、別にいいけど……」
大人に効力がないのは実証済みなので許可する一刀。
しかし今の桃香は酔っぱらっており行動力に溢れていた。
「えいっ♪」
「んっ!?」
薬を一錠、一刀の口に入れてしまったのである。
そして一刀はみるみるうちに元の姿に戻っていった。
「はわわ!」
「あわわ!」
驚愕する二人は他人の台詞を口走ってしまう。
「どうも。北郷一刀改です」
「あ、あなたは一刀くんなの?」
「か、かかかか一刀くんが……」
いきなりの出来事にすっかり酔いが醒めてしまった二人。
「えっと、これが一応本来の姿かな」
なんとなく恥ずかしい一刀はやや俯いてしまう。
「す、凄く格好良い!」
「あの可愛らしい一刀くんがこのような素敵なお方だったとは……」
可愛らしい一刀くんの姿から元に戻った一刀のギャップに二人は完全に陥落していた。
陥落させること呼吸の如し。
「ん~、うるさいわね~」
そこで雪蓮が目覚める。
「あら、一刀が大きくなってる」
どうして大きくなっているのかは分からないが、桃香と愛紗の反応を見た雪蓮はニヤリと笑って、何かを思いつく。
「ねぇ~一刀♪ 今日は久しぶりに抱いて?」
一刀に寄りかかりながら熱っぽい表情で一刀を見つめる雪蓮。
「ええ!?」
「なななな、なにを!」
ひどく狼狽する二人を見て雪蓮は作戦が成功したことを確信する。
「え~、だって最近は蓮華とか冥琳ばっかり相手して抱いてもらってないんだも~ん」
「えっ、でも昨日は森でぐひょ!」
さりげなく一刀の鳩尾に肘を入れる雪蓮。
森で何があったのかはわからない。
「ほらほら、時間が少ないんだから早くしましょ♪」
そう言いながら次々に服を脱いでいき、やがて全裸になった。
豊満な肢体を惜しみなく曝しだしている雪蓮を前に一刀が耐え切れるはずもなかった。
「あん♪」
優しくキスをする一刀に思わず声が漏れる雪蓮。
『ごくっ』
二人の情事を目の前に唾を飲む二人。そしてそんな光景を見せられている二人は女としての本能が疼き出す。
「あなたたちも、ポケーっとしてないで部屋を出ていくか混ざるかしなさいよ」
『ええっ!?』
一刀を含めた三人は驚きの声をあげる。
人前で始めた一刀が驚くのはどうかと思うが。
「わ、わわわわわたしたちも!?」
「そ、そそそそそそんなこと!」
かつてないほど狼狽する二人。
「雪蓮、無理に勧めるのは良くないぞ。二人が気にいっているのは小さい俺であって今の俺じゃないんだから」
朴念仁の一刀は気付かない。二人が思いっきり惚れてしまっていることに。
「一刀はこう言ってるけどどうなの?」
二人に問いただす雪蓮。
「わ、私は……」
口籠もる愛紗。
「好きです! 大きいととか小さいとか関係なく一刀くんが好きです!」
「と、桃香様!?」
愛紗と違って隠さずに好意を伝える桃香。若干酒の力もあるようだが。
「あなたはどうなの愛紗?」
「…………お慕いしております」
顔をこれでもかというくらい赤くさせて愛紗は言った。
「こういうことよ一刀♪」
「二人の気持ちは分かった。……おいで」
今の一刀に三人相手などとるに足らなかった。
「うん」
「はい」
そして三人を寝台に押し倒し、たっぷりと楽しんだのである。
次の日。
「ねえ雛里ちゃん」
「どうしたの朱里ちゃん?」
執務室で仕事をしていた二人だが朱里が手を止めて雛里に話しかける。
「今日の桃香様と愛紗さんの様子おかしくなかった?」
「う、うん。なんか歩くのが辛そうだった」
今朝の朝議で見た二人は内股で歩きにくそうにしていたのである。
「女の人が歩きにくそうにするってことは……」
「あわわ! そ、それってまさか……!」
いつか見た本に書いてあったことを思い出す二人。
「で、でも誰とかな?」
「はわわ! 二人が身体を許す相手なんて一人だけだよ雛里ちゃん!」
二人は一人の少年を思い出す。
「で、でもどうやって?」
「そ、それは分からないけど……」
そんな時、コンコンと扉がノックされる。
「あわわ!」
「は、はわ! ど、どうぞ!」
そして中に入って来たのは話題の一刀くん。
「あわわ!」
「はわわ!」
「どうしたの二人とも?」
まさか自分の話で盛り上がっているとは思わない一刀。
「警備体制について纏めてみたから見てもらえるかな?」
「はわ!」
「あわ!」
不審に思いながらも二人に書簡を渡して、近くの椅子に座る一刀。
「す、すごいよ朱里ちゃん!」
「うん。こんなところとか絶対に考えつかないね!」
一刀の考えた案は大いに受け入れられた。
「か、一刀くん!」
朱里は頭から離れない桃香と愛紗について質問してみた。
「知りたい?」
『(コクコク)』
興味津々のふたりを前に一刀は白状することにした。
「こういうことさ!」
元の姿に戻る一刀。
「はわーーーー!」
「あわーーーー!」
こうしてまた二人餌食になるのだった。
一刀たちが来てから、皆の様子がおかしい。
星がそれに気付いたのは一刀たちが来てから一週間が経った頃だった。
なぜか歩きにくそうにしている者や、腰を押さえている者、そして肌が艶々になっている者が多くなっていたのだ。
桃香と愛紗に始まり、朱里、雛里、鈴々、翠、蒲公英、月、詠、紫苑、桔梗、焔耶、さらには恋とねねまでそのような状態だった。
麗羽たちは宝探し、美以たちは南蛮に帰っている。
すなわち、
「私だけなのか?」
そう、一刀の餌食になっていなかったのは星だけだったのだ。
「な、なぜだかもの凄く悔しい気がする」
考えれば考えるほどもどかしい気持ちになって来た星は一刀を訪ねることにした。
メンマを食べかけのまま置いて行くほど、今の星には余裕がなかった。
「どうしたの星お姉ちゃん」
「…………はっ」
首を傾げる一刀にクラっときた星。
「か、一刀くんが来てからだな、皆の様子がおかしいのだが原因を知っているのか?」
「あはは、ついに星お姉ちゃんも気付いたんだな。最もいち早く気付くと思っていたんだがな」
なぜか饒舌になる一刀。
「な、なにか知っているのか!?」
目の前の一刀が少し恐ろしく見える星。
「教えてあげるよ」
星の手を引き寝台へと誘う一刀。
星なら振り払うのは簡単だったのだがなぜか抗いたくなかった。
「えいっ!」
寝台に星を座らせると、一刀は星の服を一気に脱がして、上半身を露出させた。
「な、なにを!?」
そして胸を触りだす一刀。
「ん、か、一刀、あん、く……ん」
あえぎ出す星。
そこで違和感に気付く。
胸を触る一刀の手がいつの間に大きくなっていたのである。
「誰だ!?」
後ろ振り向くと元の姿の一刀がいた。
「お、ひゃん! お……ぬ、しはぁぁぁん!」
「みんなと同じようにしてあげるよ」
「きゃん!」
この後、美以たちと麗羽たちも捕食し、コンプリートしたのである。
完。
後悔はない。
次は何書こうか?
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今回は蜀にやってきたぜこのやろー!
数が多いので何人かは出ませんwww