プロローグⅢ 炎は燃えないⅡ
いつからだろう。
僕が感情を抑え始めたのは。
いつからだろう。
笑わなくなったのは。
本当にいつからだろう。
他人に見せる偽の笑顔は自分だけでなく人を傷つける。
まだ、弱虫だったあのころ。
なんで無邪気に笑えたのだろう。
前科はあった。
それまでもあのことを予兆することは幾度無く起きていた。
町が燃えた日。
僕は何をしたのだろう。
何もしなかったはずだ。
ただ、ただ。
普通に家族と暮らしていただけだったはずだ。
出来ると思っていた。
いや、出来なければいけなかった。
でも、結局。
僕は町を燃やした。
そう、僕が燃やしたのだ。
第3話 崩れる日常 壊れる仮面
彼は一体何もの?
僕の目には信じられない光景が映し出されていた。
そこは夜の繁華街。
繁華街といっても商店街ぐらいの大きさしかない。
その中、彼は美しい金髪を靡きながら5名ものの人と戦う。
まさに圧倒的という言葉が理想的だ。
彼は圧倒的な強さを持って5名の不良を蹴散らした。
その間、わずか10秒。
「くっ!!!」
と横腹に激痛が走る。
先ほど蹴られたからだ。
「大丈夫かい?」
彼の温厚な声が耳にしみこむ。
「・・・・ああ。」
僕は自分でつくづく強がりだと思った。
彼はそんな僕を見透かすように
「無理しても意味がないから、痛かったらちゃんと言って。」
と言い手を差し伸べる。
それはまるで僕を闇から救い出すような仕草だったが僕は手を払いのける。
「・・・・・いい、大丈夫だ。」
彼は何故か残念そうな顔をしたがすぐに「クスッ」と笑う。
「強がりなんだね。」
とまた手を伸ばしてくる。
「いいって言ってる。」
また手を払いのける。
「わがままだねぇ。せっかく僕が手当てしてあげようとしているのに。」
彼の顔には薄気味悪い笑みが浮かんでいた。
「・・・・・・」
僕は無言で立ち上がる。
痛みがしたが彼は危険だ。
「・・・・ありがとう。」
でも一応謝罪を言っておく。
チャイムの音がする僕はそれでも眠り続ける。
ちょんちょん。
何かが僕をつつく。
それでも眠り続ける。
ちょんちょん。
また、つついてきた。いい加減にしてくれ。
「え~と、北下君?」
ちょんちょんちょん。
激しくつつきが繰り出される。
さすがの僕も眠気がなくなっていく。
ふつふつと眠気の変わりに怒りが出てくる。
ちょんちょんちょんちょん。
「ああ、もう。」
ガバッと起き上がる。
「あ、起きましたか?」隣から声。
「ん?」
隣を向くと金髪の須藤理代がにっこりと笑ってる。
「・・・・お前か?」
僕の怒りは何故か消えていく、代わりに訪れたのは眠気となんともいえないやりきれなさだ。
「はい、授業ですよ。」
わかってることを言ってくる。
「わかってて寝てたのに。」
「え~と、それはいけないと思うのですが・・・・。」
何故かむかつく。
「関係ないだろ・・・・・。」
僕は彼女を突き放すように言う。
「そうもいけませんっ!!」
彼女はいきなり机をバンッと力強く叩き席から立ち上がる。
ざわざわ。
僕の中で何かが切れた。
今まで溜めていたもの、それが一気に出て行く感じ。
「関係ないだろっ!!」
僕が怒っていた。
ここ数年間感情を隠していた僕が怒っていた。
「だから、そうもいけないんですっ!!」
彼女は引き下がらない。青い目には強い意志。
「ちっ・・・・。」
やりきれない気持ちが高まる。ほんの小さなことなのに。
僕は感情を隠すために席を立ち教室を出ようとする。
「待ってくださいっ!!話はまだ終わっていませんっ!!」
彼女が追ってくる。
僕はそのまま教室を出て屋上へ向かおうとする。
「おい、北下っ!!授業中だぞっ!!」
ようやく状況に追いついた教師の声が聞こえたが構わず行く。
「待ってくださいっ!!」まだ追ってくる。
今までの感情と今の感情との葛藤が僕を押しつぶそうとする。
「付いてくるな!!」
僕の心の奥にある記憶。
それが呼び覚まされる。
黄金の炎は自分以外のすべてを飲み込む。
そう、僕はもう燃やしたくない。
自分で感情コントロールをしなければすべてが燃えてなくなってしまう。
僕はそれらの葛藤を振り切るように屋上へ走り出す。
そのおかげか彼女の声は段々小さくなってきた。
屋上への階段をあがる足はやけに重く感じた。
錆ついた屋上の扉をゆっくりと開く。
「・・・・・く・・」
心の痛みが全身をくすぐる。
他人に一番、触れられたくない部分。
今、そこが痛い。どうしてだろう。
彼女は別に僕の心に踏み込もうとしたわけではないのに。
ただ、いらついただけ。
「久しぶりだね。」
不意に声が聞こえた。
屋上を見渡すと金髪の少年が立っていた。
昨日の奴だ・・・・。
最近は金髪の人間にすかれているらしい。
「・・・・。」
「う~ん、つれないなぁ~。」
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ずいぶん前の作品の続きです。
書庫にあったのでだしてみました。
この続きも書いてみようと思います。