No.148378

『想いの果てに掴むもの』 ~第18話~

うたまるさん

『真・恋姫無双』魏END後の二次創作のショート小説です。


街をともに巡回する一刀と風、其処で見た呉の警備の実態とは・・・・

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2010-06-06 09:19:55 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:22547   閲覧ユーザー数:15629

真・恋姫無双 二次制作小説 魏アフターシナリオ

『 想いの果てに掴むもの 』孫呉編

  第18話 ~ 天の御遣い呉の現状を知る -後編- ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおぅっ、愛紗よ、そのように簡単に体を晒すなど、はしたないですよぉ、

 女の慎みは、何処へ行ったのですか~」

 

ピクッ

 

「おやおや、翠までそのように体を男に押し付けるとは、もうめろめろなのですね~」

 

(なんで、メロメロなんて言葉を知っているんだ?)

 

「だめですよ~桃香も愛紗と喧嘩をしてはいけません。

 喧嘩をするくらいなら、二人で仲良くいただいてしまえば良いのです。

 ほら、一刀‥も受け入れる気で、待ち構えているのですよ~、

 一刀‥よ、女をとっかえひっかえ相手にするとは、女っ誑しの上、絶倫ですね~」

「はぅぁ!」

 

 

 

 

「だぁぁぁぁ風っ、猫に紛らわしい名前をつけるのはもう諦めたけど、一刀三号の三号だけ、態と聞こえない

 ような声で、言うのは勘弁してくれっ、知らない人が聞いたら勘違いするじゃないか」

 

俺は、風の目に余る行動(いやこの場合、耳に余るか?)に、案内役を待っている間を利用した"氣"の修行を止めて、すぐ近くで猫と戯れる風に文句を言う。

風が猫に重要人物の名をつけて、戯れるのは、ひやひやする事もあるが、風の魅力的な一面でもあるし、普段は面白いので、黙って聞いている(たまに突っ込みあり)のだが、さすがに俺の名前で、あれは洒落にならない。

 

「むーー、お兄さんは、風の安らぎの時間を邪魔するのですかー?

 もしや、紫苑達が一刀‥に盗られるのが、黙っていられないと?

 おぉぉぉ、お兄さんの隠された趣味を、風は暴いてしまったのです。

 ですが、さすがに獣姦は辞めた方が良いと思うのです。

 それにお兄さんの立派なモノでは、璃々が壊れてしまうのです」

「はぅあっ!」

「無いからっ! そんな趣味欠片も無いからっ!

 特に、最後の名前は、人間だったとしても犯罪だからっ! 頼むから人聞きの悪い事はやめてくれ」

 

あまりと言えばあまりの発言に、俺は魂の底から、風に懇願する。

獣姦も問題だが、璃々ちゃん相手は、世間的にもっと不味い。

例え、風の冗談にしても、そんな噂が広まったりしたら・・・・・・・・

 

ブルッ

 

うん、璃々ちゃんのお母さんである紫苑さんに射殺される前に、確実に華琳達に殺されるな。

その情景が一瞬だけ頭を過ぎり、その恐怖に体を震わす。

だけど、そんな俺をよそに、風は飄々とした表情で、

 

「おやおや、彼方此方に節操無く触手を伸ばしているお兄さんでも、喰わず嫌いがあるとは知らなかったの

 です」

「はぅっ・・・・・・・・やっぱり噂は本当だったのです」

 

などと猫から離れたは良いが、話の質ではなく幅に変わっただけで、人聞きの悪い事には以前変わりが無い。

・・・・・・・・うん、いい加減、現実逃避をするのはやめよう。

・・・・・・・・なんか、ますます深みに嵌って行くような気がするから・・・・・・・・

 

俺は意を決して、後ろを向くと、

そこには、驚きの表情を浮かべている、本日の案内役の周泰こと、幼平さんがいた。

 

「もう終わりとは残念です。 お兄さんの忍耐力は、春蘭ちゃん以下なのですか?」

 

等と、背中を向けた風が残念そうに、だけどその響きは明らかに楽しそうな声を、俺の背中に掛ける。

いや、さすがに、春蘭以下の忍耐力と評するのは勘弁して欲しい気がするが、今は目の前の事に集中したほうが良い気がする。

なにせ周泰は、両手でその小さな体を庇う様に抱きながら、小さく震えながら此方を警戒する目で見ているからだ。・・・・・・・・何もしていないはずなのに、こう罪悪感に苛まされるのは何でだろうか・・・・・・・・

とにかく、誤解を解かなければと、一歩進もうとしたが

 

「そ・それ以上近づかないでくださいっ」

 

そんな、悲壮な叫びが俺の耳に届く

 

(・・・・・・・・・・神様、俺なにか悪い事したでしょうか?)

 

こんな可憐な少女に、此処まで警戒されなければいけない俺って・・・・・・・くすんっ

まぁ、とりあえず、心に受けた傷は置いておいて、俺は周泰の言うとおり足を止める、

こう見えても、周泰は呉の武将で、俺なんかでは間違っても太刀打ちできない相手だ。

今の状態の周泰に、迂闊に近づけば洒落にならない事になりかねない。

 

「さっきの風の言葉は冗談だから、そう警戒しなくても」

「う・嘘です。 そうやって、油断させるつもりなんですね。

 先程の風様の発言は、我々の集めた情報以上ですが、実態は情報以上の事と言う事は、しばしばあります」

「じ・情報って、いったい?」

 

周泰のあまりの警戒振りと、情報と言う零した言葉に(すごく嫌な予感がするけど・・・・・・)俺が聞きなおすと、

 

「女性とみれば見境無く声を掛け、優しげな雰囲気と言葉で女性を誑かす魏の種馬、その毒牙には、華琳様を

 始め、魏武の大剣の春蘭様ですら、その体を組み敷くと言います。 私程度では油断する事は出来ません」

 

・・・・・・・・はっ?

 

ちょっとまて、何、その俺の人格を全否定するような、無茶苦茶な情報と言うか噂はっ!?

俺は、其処まで言われるような身に覚えは・・・・・・(脳裏に華琳を始め、閨を共にした皆の顔が浮かんでは消える)・・・・・・まったく無いとは言わないけど、誑かすなんてとんでもない。

そもそも、そんなつもりでいたら、俺の首など、とっくに無くなっている・・・・・・・・・・・・・・たぶん。

 

そう言えば先日も雪蓮が、

 

 『 将の娘達を落して回っているって噂よ、本当? 』

 

なんて言ってたよな、そしてそれと同時に、周りの冷たい視線がさらに冷たくなった気が・・・・・・・・もしかして、このトンデモ噂が原因とか言わないよね?

とにかく噂も気になるが、今は、この女性の敵と断定された状態から早く脱したい、でなければ幾らなんでも、この状況は我ながら悲しすぎる。

かと言って、俺がこれ以上何か言っても、この警戒様では逆効果にしかならない。

なら、ここはと、

 

「風、幼平さんの誤解を解いて欲しいんだけど」

「なるほど、誤解を解いて、油断させたところを、美味しく頂いちゃうのですね」

「ひぃっ!」

 

俺の懇願をあえて無視して見せた風の冗談に、小さく悲鳴を上げながら、一瞬でさらに距離をとる周泰。

その行動に、俺は心の其処からしみじみと、

 

「・・・・・・・・風、俺泣いていい? さすがに、本気で悲しくなってきた・・・・・・」

「やれやれなのです。・・・・・・・・明命ちゃん、明命ちゃん、大丈夫ですよ~、そんないきなりとって喰われたり

 しませんので、大丈夫ですよ~、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・たぶん?」

「ひっ!」

 

風の最後の、俺に確認取るような一言で、周泰は、一瞬解きかけた警戒心を更に高めて、後ろに跳びすざる。

 

「風ーーーーーーーっ!」

 

 

 

 

「三町毎に置かれた詰所を基準に、基本五人体制で、街の警邏に当たっているわけですが、置かれた周辺は、

 良いのですが、許昌のように、一町毎に置け無い事もあってか、目の行き届かない箇所が増えてしまい。

 其処を基点に、後戻りと悪循環を繰り返して・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

何とか、風に真面目(?)に誤解を解いてもらい、こうして街の要所を、詳しい説明付で案内してくれているわけだけど・・・・・・・

 

「あの幼平さん、少し声が聞き取りにくいで、もう少し近づいて良いでしょうか?」

「えっ、あのっ、もう少し大きな声で説明しますから」

 

そう、今彼女と俺達の間には、約5メートルという物理的な距離が離れていた。

例え、俺が一歩でも、これより近寄ろうとしても、その分だけ正確に遠ざかられてしまう。 しかも此方を見る事も無く、後ろ向きのままで正確に・・・・・・・・すごい技術なんだと思うんだけど、こういう知り方は、したく無かったです・・・・・・(涙

どちらにしろ、このまま大声で、街中を視察するわけにもいかないので、

 

「えーと、幼平さん、大っぴらに大声で話す内容じゃないから、出来れば近づいて欲しいです」

「はぁぅっ、・・・・・・えーと、近づいて襲ったりしないでしょうか?」

「しないからっ、と言うか、例え襲おうとしても、俺じゃあ、幼平さんに瞬殺されるだけですから」

「やっぱり、そういうつもりだったんですね」

 

などと、何故か泥沼に填ってしまう始末、

風に視線で、もう一度助けを求めるが、

 

「・・・・・・・・・・くーーー」

 

目に映るのは、快い返事ではなく、何事も無かったように目を瞑って、立ったまま眠る風の姿だった。

・・・・・・・・どうやら、俺一人で解決しろという事らしい。

俺も、出来れば自分の力で誤解を解きたいのだが、こう警戒されていては、手の内ようが無いと言うか、悪化するばかり、しかも放って置けば、誤解は誤解のまま定着するという悪循環、さてどうしたものやら・・・・・・・・

 

「何じゃ騒々しいっ」

 

いい加減どうしようかと思い悩んでいたところを、そんな威勢の良い声と共に現れたのが、

 

「あっ、祭様」

「誰が騒いでいるかと思えば、お主達であったか・・・・・・ん、何じゃ明命、そんなに北郷殿達と距離を置いて、

 確かお主は午前中は、街を案内するはずだったはずじゃが」

「えっ、あの、その・・・・・・すみません」

 

唐突に姿を現した黄蓋に、周泰は平静さを取り戻したのか、此方を警戒しつつも騒ぐのを止めてくれる。

その様子に、黄蓋はなにやら気がついたのか、

 

「幼平よ、あのような噂に踊らされ、己が目で判断せぬとは、お主らしくも無い」

「っ!・・・・・・そうでした・・・・・・・・」

「だがまぁ、そうやって、怯えたと言う事は、女として北郷殿を意識したと言う事じゃな。

 ふははははっ、北郷殿には気の毒だったが、明命の成長も見れたし良しとするかのぉ」

「えっ、あのっ違いますっ!」

 

なにやら、俺には解らない事で、黄蓋は周泰をからかい、一通り笑い終えると、

 

「ほれ、明命、風を挟んで並べば、少しは気が紛れるじゃろうて、そこで噂を真に受けずに、真実を見極めて

 みせい、普段のお主ならすぐに分かる筈じゃ。 心配なら、儂もしばし後ろについていてやろう。

 儂の早討ちの腕前は知っておろう」

 

そう言って近づいてくる黄蓋に俺は、

(後半の部分は、この際聞かなかった事にして(汗 )

 

「ありがとうございます」

「余りに見ておれなんじゃったから、口を挟んだだけじゃ。 そもそも、明命にも非があった事じゃしな」

 

そう言って、黙って少し離れたところに立つと、風を挟んで隣に立つ明命が、まだ此方を少し警戒しながらも、視察を再開し始めてくれる。

 

 

 

 

黄蓋さんが、付いて来てくれて以来、案内は順調で、周泰も前程警戒する色は見せなくなってきた。

やがて、時間にして二刻も過ぎ、昼近くになった頃、役場にあたる建物を出て、大通りに出た処に、なにやら人だかりができ、罵声と、嫌な肉を叩くような聞き慣れた音が聞こえてきた。

 

「このっ、人様の物に手を付けて、どうなるか解ってるんだろうなっ!」

 

そんな、怒声と共に、再び肉を叩く鈍い音が聞こえる。

しかも、同時に幾つも聞こえる。 これはっ

俺は、人垣を慣れた様子で、掻き分け前に出ると、

まだ少年と言える男の子が、数人の警邏の兵と一人の町人によって、一方的に袋叩きにされていた。

少年は、もう逆らう意識など無くしているのか、虚ろな目と、与えられる苦痛を嘆く目を交互に繰り返しながら、ただ暴行が終えるのを待っていた。

俺は、自体を察知し、すぐ近くにいる周泰に

 

「すぐ止めさせて、君なら出来るはずだよね」

「えっ、しかし」

「いいから、すぐにっ!」

「はっ、はい」

 

俺に言葉に、戸惑う周泰に、俺は更に強い意志を籠めてお願い・いや、命令をした。

周泰は、俺の言葉に一瞬怪訝な顔をするものの、俺の言葉が本気だと分かったのか、暴行を続ける男達に近づき、暴行を止めさせる。

そして、暴行された少年は、逆らう意識など残っているはずも無く、警邏の兵達に引きずられるように連れて行かれる。

 

「どういうつもりじゃ?」

 

俺の背中に、黄蓋の冷たい声が掛かる。

とっさとは言え、ろくに説明も無しに、他国の事に口を出したんだ。

黄蓋が怒るのも無理ない事を俺はした。

だが、後悔する気も無ければ、間違った事をしたとは思わない。

ただ、時間が無かっただけ、

そして、黄蓋は聞く時間を今こうやってくれるだけ、俺は運が良いのだろう。

もっとも、他国の重鎮の俺を、請われて来た俺を、理由も聞かずに蔑ろにする訳には行かない、と思ってはいたけどね。

 

「此処では何だから、昼食がてらに何処か入ろうか」

 

 

 

 

「まずは幼平さん、命令みたいな真似をして申し訳なかった。 この通り謝るよ。

 そして、俺の願いを聞いてくれた事に、お礼を言わせてもらうよ」

 

俺は席を立って、そう周泰に頭を下げる。

だが、予想通り、二人は俺が頭を下げた事に驚くものの、厳しい眼で俺を睨む。

ただ、救いなのが、二人とも俺の次の言葉を、理由を待っていてくれる事だ。

つまり、そう言う事、

彼女達は、彼女達の誇りと想いがあって、動いている。 それを俺は真っ向から否定するような真似をしたんだ。 その理由に納得いくなら許すが、納得いかな方場合は許す気は無いと言う事だろう。

 

「幼平さんが、最初俺の言葉に戸惑ったと言う事は、ああいった見せしめは日常的にある事、ちがう?」

「はい、あまり感心しませんが、抑止力になるのは事実です」

「悪い事をすれば、それ相応の報いを受ける。 当たり前の事じゃろうて」

 

俺の言葉に、二人は当たり前の事の様に答えるが、どうやら二人とも、一瞬嫌な顔をした事から、自らやるタイプでは無いようだ。 よかった、これなら話になる。

俺はそう心の中で安堵の息を付くと

 

「そうだね、その意見そのものは、俺も同意見だよ。 だけど、それは警邏の兵の仕事じゃない。

 あんな事を許していたら、街は一時的には良くなっても、長続きはしない、むしろ民に不安や不満を募らせ

 るだけだよ」

「どういうことじゃ? ああやって、悪を許さぬ姿勢は、民を安心させるものではないのか」

「それは制御され、公正なものであればの話だよ。 だけど、現場の雰囲気に流されやすい警邏の兵や、被害

 者が行っては、ただの暴走とも映りかねない。

 ねぇ、知らない街で、事情を知らない人が、何も考えずに街の彼方此方で、暴力が振舞われているのを見た

 らどう思う?」

「「  っ!  」」

「つまりそう言う事、それに、力の無い民からしたら、例え悪さをした人に対してでも、暴行が彼方此方で起

 きてたら、安心なんてできやしない、暴行による制裁は、あくまで暴力でしかないからね。

 罪には、その罪に相応しい罰だけでなければいけない。 違う?」

 

俺の言葉に、二人は理解はできるものの、納得できないと言った感じだ。

それはそうかもしれない、この二年、彼女達にとって、妨害に遭いながらも、街を良くしようと奔走してきたからだ。 そして、その手段の一つとして、ああいった事も目を瞑ってきたのだろう。

だけど、

 

「本来であれば、あれ位の罪なら、鞭打ち三回辺りが妥当じゃないのかな、たぶん裁判でも似た様な結果が出

 ると思うけど、暴行を受けた分、あの子は警邏の兵を、この国を恨むだろうし、もしかしたらそれに耐えら

 れるだけの体力も、無くなっているかも知れない」

 

バンッ!

 

「そのような甘い事で、悪事を働く民が無くなると思っているのですかっ」

 

俺の言葉に、今まで黙って聞いていた周泰が、机を叩き、俺に怒鳴りつけてきた。

真っ直ぐと、心の其処から、怒りをぶつけてきた。

だけど、その表情は、その瞳は、怒りの色を示すも、どこか悲しげだった。

それは、きっと彼女の後悔の念なのかもしれない。

 

 

 

 

俺の言う事を認めれば、今まで目を瞑ってきた事が、間違いであると、ただ、民を無為に傷つける事に目を瞑ったのだと言う事になってしまうからだ。 そしてそれは、彼女の民を思う気持に他ならない。

だけど、この街を始め、この国の警邏の事を相談された以上、俺ははっきりと言わなければいけない。

 

「甘い、甘くないの話じゃ無いよ。

 そうしなければ良くならないと言っているだけ、 少なくても、俺はそうして来たし、この国でもそう進言

 するつもりだよ。

 それに、君達がやってきた事が無意味とは言うつもりは無いよ。 冥琳の話では、主な反抗勢力は、力で持

 って抑えたんだよね。 なら、これからは押さえつけるのではなく、公正な立場で民を守護し導いて行くべ

 きじゃないのかな」

「ずいぶん甘い理想を持っているようじゃが、それで本当に悪事を働くものが減るのか?

 減らねばただの妄言でしかならぬぞ」

 

今度は、黄蓋が茶を一口啜ってから、そう言ってくる。

あれ? ふと、違和感を感じるが、今は話に集中しなければと、違和感を振り払い。

 

「昨日の今日で、まだ目を通してもらっていないのも無理はないけど、俺が冥琳に渡した本にも書いてあるけ

 ど、犯罪を取り締まるより、犯罪を起こさせにくい街作りをしていくべきなんだ。

 取り締まるだけでは、イタチごっこなるし、犯罪が減らなければ、いずれ破綻を迎えてしまう。 必要なの

 は、犯罪をしにくい環境を作っていく事なんだ。 そのためには、見せしめの暴行は絶対してはいけない。

 暴行を日常茶飯事にしては、その空気が民に伝染していくからね。 取り締まる場合において、警邏の兵に

 必要なのは、迅速に相手にも、そして民にも不要な血を流させない事、無論警邏の兵も含めてね。

 ・・・・・・人間、血を見れば、多かれ少なかれ興奮してしまうものだからね」

 

「一刀様の仰られる事は、分かります。

 民達とて、暴力を見なくてすむなら、そう願うでしょう・・・・・・・・私達だって、力は振るいたくありません。

 ですが、そういう平穏を望む者達だけではありません。 我らがそう言う甘い事を言っていては、彼等を抑

 える事なんて出来やしないんです。

 ・・・・・・だから私だって、必要とあれば、力を振るう事を厭わないでやってきたんです」

 

そう、俺に意見に反論する周泰の姿は、苦悩の色に染められていた。 だけどその目は、己の行動を想いを悩まぬように強い光を、その瞳の奥に灯している。

その姿に、俺は

 

「ふふっ」

「な、何がおかしいんですかっ」

 

俺が思わず笑みを浮かべてしまった事に、真面目な話を、俺の笑いで腰を折られてしまった事に、馬鹿にされたと思った事に、周泰は、怒声をあげる。

 

「ごめん、ごめん、君の想いを笑ったわけじゃないんだ。 それは許して欲しい、ただ」

「ただ?」

「うん、凪の最初の頃を思い出してね。 真面目で、そして心優しい姿が似ているなと思って」

「凪様に? それが今の話と何の関係があるのですか」

「まぁ、糞が付くくらい、真面目なところは、よく似通っておるのは確かじゃのぉ」

「さ・祭様っ」

「凪も最初は似たような事を言って、かっぱらいや食い逃げを、"氣弾"で店毎吹っ飛ばしてたなぁと思って」

「あははっはっ、なんと、そのような豪快な事をしておったかっ、なんとも賑やかな街だったのじゃのう」

 

俺の話に、黄蓋は先程までの険悪な空気が無かったかのように豪快に笑い出す。

そして、俺はそんな黄蓋に乗るように、

 

「後始末させられる俺としては、笑い事じゃなかったよ。 幸いたいした怪我人が出る事は無かったけど、騒

 ぎの沈静、"氣弾"で散らばった店の後片付けと弁償、無駄な経費だと桂花には嫌味を散々言われるわ、華琳

 達には遣り過ぎだってお小言を食らうわ、しばらく街の住人達には、目が合わ無いように避けられるわ、大

 変だったんだから」

「凪ちゃんも、そんな頃があったんですね~」

「若さ故の過ちって奴だぜ」

「こらこら宝譿、凪ちゃんは今も若いですから、そんな事を言っては失礼ですよ~」

「それは良い事を聞いた。 今度あやつめに会ったら其の事で、是非からこうてやろう。 

 楽しみが増えたわい」

「そこそこで勘弁してやってよ、でないと後で俺が恨まれるんだから」

「其処はほれ、迂闊に口を滑らせた、お主の口を恨むのだな」

 

軽口を、叩き合う俺と黄蓋をよそに、周泰は、ぷるぷる震え、やがて、

 

「わわわ・私は、其処までやった事なんてありませんっ!」

 

そう、顔を真っ赤にして否定の声を挙げる周泰、

だけどそこには、先程まであったような苦悩の色は無かった。

きっと、それは黄蓋の力だと思う。 そして、今だけはあの頃の凪の暴走に感謝する(・・・・・・今だけね)

 

「まぁ、そう怒るでない。北郷殿の言いたい事も、目指すものも分かったであろう。 そしてその先にあった のが、今の許昌を始めとする、幾つかの街であろう事は、其の目で見てきたであろう。 北郷殿が、我等の

 やってきた事を、蔑ろにしている訳では無いと分かれば、十分じゃろうてぇ」

「あっ・・・・」

 

黄蓋に、言葉に周泰は、落ち着きを取り戻し、

 

「す・すみません、大声を出してしまって」

 

そんな自分を恥じるように、縮こまる周泰を俺は優しく見つめ、

 

「元はと言えば、俺に原因があるんだ。 幼平さんに非は無いよ。

 そして、これからは、まずこの街を良くする為に力を貸して欲しい。

 街の皆が笑って過ごせるようになるためにね」

「は、はい。 此方こそよろしくお願いします」

 

握手をするために手を伸ばし、周泰もそれに応え様と手を伸ばしてくれた。

そこへ、

 

「おぉぉぉ、こうやってお兄さんは、また一つ毒牙にかけていくのですね」

「ひっ」

 

風の一言で、再び一瞬で後ろに跳びすざる周泰。

そんな様子に、黄蓋は腹を抱えて笑い出し、

風は悪戯が成功した事に、笑みを浮かべ、

そんな、なんでもない平穏な空気の中、

 

「風ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」

 

俺の悲痛の叫び声が、お店の外にまで響き渡るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです。

  第18話 ~ 天の御遣い呉の現状を知る -後編- ~ を、此処におおくりしました。

 

お忘れの人もいるかもしれませんが、久々の投稿になります。

今回は、明命にその視点を当ててみました。

らしくもなく噂(?)に踊らされる明命。 だけど、その影には、魏の皆の企みと、悪戯が大きく影響しているんでしょうね(w まぁ、一刀の女性関係を見れば否定は出来ないですし(w

一刀は、無事明命の信を得る事が出来るのでしょうか(w

 

それと実を言うとこの話、発表したものと比べると、4月の頭には殆ど完成しており、その時点の物に15行程加えただけなのですよね(汗

まぁ実際には、今回の倍くらいの内容量まで書き上げた事もあったのですが、納得行かず抜粋。

頭が冷えるのを待ってからの、今回の投稿になりました。

お待ちになっていた読者の皆様大変申し訳ありませんでした。

 

 

頑張って、執筆いたしますので、どうか温かい目で見守りください。


 
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