少年は涙する・・・・・・
愛しい人たちに逢えた喜びを胸に・・・・・・
最高の夜を迎えていた・・・・・・
が・・・・・・
「いつまで抱きついてんのよッ!!!!」
ドガッ!!
「いってえぇーーー!!!!」
少しの間おとなしく抱きしめられていた桂花だったが、我に返るなり一刀を蹴飛ばした
「急に蹴るなよッ」
「うるッさいわね!!あんたがいつまでも抱きついてるからでしょッ!!この全身精液孕ませ男ッ!!あぁ~気持ち悪い!!」
そう言うと背を向け、どこかに行ってしまった・・・
その背中を見つめ、一刀は痛いはずなのに顔には笑みが浮かんでしまう・・・
「(まぁ・・でも、桂花らしいか)」
と思いながら・・・
「一刀」
地面に座り込んでいると、背中に華琳から声がかかった
「華琳?どうかしたのか?」
「どうかしたのかって・・・はぁ~あなたねぇ・・・」
呆れたように華琳は息を吐く
「いつまでもここにいる必要はないでしょう?それに町に帰って、あなたの帰還を知らせてあげないといけないのよ?」
「・・・それもそうか・・。・・・というか、今更なんだけど・・・ここって洛陽近くの森だよな?」
「えぇ、その通りよ」
「そうだよな~。じゃあ、もう一個あるんだけどいいか?」
「?・・・何かしら?」
「何で蜀と呉の人たちがいるの?」
「平和記念祭?」
「えぇ。3国同盟が成立した日に、毎年洛陽で行っているのよ。」
町に帰る途中、一刀は今のこの世界の状況について華琳から説明を受けていた
「へぇ~、じゃあ蜀と呉の人たちがいるのって・・・」
「えぇ、主要な将たちは洛陽に来てるのよ(まさかここまでついてくるとは思わなかったけど・・・)」
華琳は少し俯いて、はぁ~とため息をついた
「そっかぁ~。でも良かったよ・・・華琳が孫策さんや劉備さんと仲良くしてるみたいで」
「・・・・・・」
「・・?・・どうかしたか」
「・・・あの娘たちにはね、大きな”借り”があるのよ・・・」
「”借り”?」
「えぇ、そうよ」
華琳は一刀の目をしっかりと見つめ、答えを返す・・・
「・・・あの娘たちにはね・・・あなたがいなくなった後の魏を支えてもらったのよ・・・」
「・・・魏を・・・」
「平和記念祭もね、あの娘たちが洛陽ですることで進めていたことなのよ」
「・・・・・・」
「・・・あなたがいなくなった後の魏を見かねてね・・・。本当は最終決戦のあった成都でやるはずだったものを洛陽に変えたのよ・・・」
表向きの理由は、戦勝国である魏の都でした方が3国や周辺の諸侯への体裁が良いから・・・
しかし本当の理由は単純だった・・・
------洛陽の人たちに少しでも元気を出してほしい------
桃香や雪蓮が魏へ視察に来たときに、こう感じたからだ
「開催地とだけあって民たちも盛り上がざるをえなかったわ・・・」
そこまで説明して、ふっ、と突然華琳は笑った
「駄目押しは雪蓮の一言だったわね」
「孫策さんの?」
「えぇ、そうよ。・・雪蓮はね・・・洛陽の民に向かって言ったのよ」
雪蓮は気づいていた・・・
祭りの準備をしながらも、どこか元気のない表情を見せる洛陽の民に・・・
そして・・・
その”原因”に・・・
だから言った・・・
------そんな顔で”北郷一刀”がもたらした平和を祝うつもりか------
と・・・
「民だけでなく・・・私たちも気づかされたわ・・・。あなたが”存在”をかけて平和を与えてくれたというのに・・・いつまでいじいじしてるのか、ってね・・・」
華琳は顔に笑顔を浮かばせて言った
「・・・そっか・・・。・・・じゃあ後で、蜀と呉の人にもちゃんと挨拶に行かなくちゃな・・・」
一刀は思う・・・
成都決戦のあの時・・・華琳が示した決断は・・・
“間違いではなかった”、と・・・
「・・・そういえばさ華琳?」
「・・・何かしら一刀?」
「見る限り、魏も呉も蜀も将ってみんないるよな?」
「え、えぇ・・そうね・・。それがどうかs・・・」
華琳は気づく・・・
今は3国あげての祭りの途中・・・
しかし肝心の3国の将はみんなここにいる・・・
・・・しかも・・・
慌しく町を出たところを民に見られている・・・
「・・・祭り中に・・・まずいんじゃないか?」
「うう、うるさいわねっ!!だ、だいたい一刀ッ!あなたが急に帰ってくるから行けないのよッ!!」
「えぇー!?そんなのどうしようもないだろうッ?無茶言うなよッ」
「口答えするなッ!!」
「理不尽ッ!?」
------2人は言い合いをしながらもどこか楽しそうな表情を浮かべ・・・
------周りにいた将たちも頬を緩ませながら・・・感じる・・・
------この些細な言い合いすらも・・・
------“幸せ”なのだ------
と・・・
~洛陽周辺~
「・・・やっぱり騒がしいな・・・」
「・・・・・・えぇ」
洛陽の町の周りには、たいまつを持った兵たちが慌しく動いていた
その内の何人かが将たちに気づき、血相を変えて走りよってくる
「曹操様ッ!孫策様も劉備様も!ご無事でしたかッ!?」
魏の親衛隊と思わしき鎧を着た男が息を整えぬままに華琳の前に跪き、3国の王や将の身を案じる
「えぇ、私たちは大丈夫よ。・・・ごめんなさいね、不安にさせてしまったみたいで」
華琳も先ほどまで一刀たちと話していたときのような表情ではなく、”覇王”として答える
「いえ、ご無事ならそれで良いのですが・・・何かあったのですか?」
当然の質問を親衛隊の男は返す
3国の”英傑”といわれる人物たちが慌しく出て行ったのだ・・・
特に自分たちの主たちのあんなに必死な表情を見たら・・・
普通は”何かあった”と思うだろう・・・・・・
だから華琳は安心させるように優しく答える
「・・・えぇ・・・長い間探していたものが見つかってね」
華琳はそういって場所を空ける
「・・・探しもn」
兵士は二の句を告げれなくなる・・・
「やぁ」
そこに・・・3年前と変わらない笑顔で・・・
まるで少しの間出かけていたといわんばかりの態度で・・・
天の御遣い・・・北郷一刀が目の前に姿を現したから・・・
「ほっ、北郷様ッ!?」
「「「「「「!?」」」」」」
王の前であるにも関わらず、兵は声を荒げてしまう
その兵の声を・・・発した名前を聞き、他の兵も集まってくる
「「「「「「北郷様ッ!!」」」」」」
「あはは・・・えっと~久しぶり?」
兵の勢いに圧倒されながらも、一刀も3年前に見たことのある懐かしい顔ぶれに頬をゆるます
「北郷様ッ、帰ってらっしゃったのですかッ!?」
「うん、さっきね・・・・・・って、顔近いッ、近いッ!!」
「貴様らぁー!!華琳様の御前d「春蘭」・・・か、華琳様!?」
春蘭は華琳の前で騒ぎ出す兵たちを叱責しようとしたが、華琳に制された
「春蘭・・・・・・今はいいわ」
華琳はそういって優しく微笑む
魏に生きている者ならば・・・この反応は頷けるから・・・
しばらく兵士たちは一刀との再会を喜んでいたが、華琳たちの前であることに気づき、慌てて跪き頭を垂れた・・・
「も、申し訳ありませんッ!!そ、曹操様の御前でこのようなふるまいを・・・」
「かまわないわ。今は気分がいいのよ。・・・それより町の様子はどうかしら?」
“ありがとうございますッ!!”と、さらに深く頭を下げ、1人の兵士が華琳からの質問に答える
「はッ!洛陽の民は各隊の副官の方々がどうにか落ち着かせています!混乱に紛れての犯罪の報告なども受けてはおりません!」
「そう・・・ならばいいわ。・・・それと先に町に帰って伝えておいてくれないかしら」
そう言って華琳は一刀の方をちらっと見た
「はッ!畏まりました!」
「天和たちにもしっかりとお願いね」
“はッ!”と答え、兵士たちは町に戻っていく・・・
魏の者全てが・・・
帰ってくることを望んだ・・・
“北郷一刀”が帰還したことを・・・
少しでも早く知らせるために・・・
~洛陽~
「おいおい大丈夫なのかよ?」
「さっきの将軍様たちだよな?」
「あんなに血相を変えて・・・・・・も、もしかして、また戦争か?」
民たちは騒ぎこそ落ち着いたものの言いようのない不安に駆られていた・・・
平和な世になってから、将軍たちのあんなに必死な表情を見たことはなかった・・・
ただ怖い・・・
最悪な想像ばかりをしてしまう・・・
民たちが嫌な想像に駆られていると、将軍たちを探していた兵士たちが慌てて町に駆け込んでくる
「伝令ッ、伝令!!」
その中から、1人の兵が民たちの前で声を張り上げる
「曹操様、劉備様、孫策様および各将軍方はご無事である!!」
「「「「「「「!!」」」」」」」
3国の王と将軍方が無事だと聞いて、緊張していた空気が一気に緩んでいく
「それと、もう1つ伝えることがある!!」
「「「「「「「ッ!?」」」」」」」
胸を撫で下ろしたのも束の間・・・
伝令の兵の意味深な言い方に再び空気が張り詰めていく・・・
しかし・・・・・・
そんな民とは逆に、兵は普段の無愛想な表情を引っ込め、笑顔で先ほどよりも大きな声で伝える
------「”天の御遣い”・・・・・・北郷一刀様がご帰還された!!!!」------
「「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」」
一瞬の静寂・・・・・・
民たちは黙って驚きの表情を浮かべる・・・
しかし・・・徐々に理解する
表情もみるみるうちに笑顔に変わる
そして・・・
「「「「「「「わあぁぁぁああああああああ!!!!!!」」」」」」」
魏の・・・洛陽の民を中心に歓喜の渦が広がる
「ほ、ほほほほ北郷様が帰られたのかッッ!!!!」
「本当かッ!?嘘じゃないんだよなッ!?」
「た、隊長さんがッ!?ど、どどどこにいるんだいッ!?」
民たちはそろって一刀の姿を探す・・・
民たちの想いは一つ・・・
------早く・・・
------早く自分の目で確かめたい・・・
------あの優しかった”隊長さん”を見て・・・
------あの気さくな笑顔を見て・・・
------安心したい------
そして、城門から声が響く・・・
「曹操様、劉備様、孫策様および将軍方、ご帰還!!!!」
~一刀~
「う~緊張するな~」
城門前に着くと一刀は弱音を吐いた
「胸を張りなさい、一刀」
横にいた華琳が強張った顔の一刀に声をかける
「魏の民が・・・あなたを待っているわよ」
華琳のその言葉を聞いて、一刀は自分の頬をはたき、”よしッ!”と気合を入れる
「あぁ・・・せっかく帰ってこれたんだ・・・。情けない姿は見せたくないしな」
そう言って、微笑を浮かべる華琳に笑顔を向ける
「曹操様、劉備様、孫策様および将軍方、ご帰還!!!!」
兵士の声が響き渡る・・・
少しずつ民の元に近づく・・・
------どんな反応をされるだろうか・・・
------歓迎してくれるだろうか・・・
------笑ってくれるだろうか・・・
------それとも・・・・・・
覚悟を決めて、一刀は周りを見渡す・・・
---民たちは・・・・・・
「うぅ・・・ぐす・・・ぐす・・・」
------泣いていた・・・------
「・・・・・・」
一瞬、一刀は何が起こっているのか分からなかった
しかし・・・
民たちの気持ちが・・・
“想い”が・・・
言葉となって・・・耳に届く・・・
「・・・うぁ・・よ・・よかった・・・・あぁぁ・・・」
「・・ほんごうさまだ・・・ほんごうさまがおる・・・うぅ・・」
「・・・かえってきて・・うぅ・・・くださった・・・うぁぁ・・・」
「たいちょ・・うさん・・・うわぁぁぁぁ!!」
「ッ・・・ッ・・・ほんごう・・さま・・・ッ・・・おかえりなさい・・・うぅあぁ・・・」
「「「「「「「「「「おかえりなさい、北郷様!!!!」」」」」」」」」」
「・・・みん・・・な・・・」
それぞれの想いが胸に届く・・・・・・
自分のために涙を流してもらえる・・・
“おかえりなさい”と言ってもらえる・・・
「くぅ・・・うぅ・・・うぁ・・・」
自然と涙がこぼれる・・・
------嬉しい・・・
------何も言わずに消えた自分のことを・・・
------こんなに温かくまた迎えてもらえる・・・
「(・・・・・・誰が何と言おうと・・・・・・)」
------(俺は・・・”世界一”の幸せものだ)------
「(・・・一刀・・・分かったでしょ?)」
華琳は涙を流す一刀を横で見守り思う・・・
「(・・・あなたが魏を愛しているように・・・)」
目じりに涙を浮かべ・・・優しく笑う・・・
------「(”魏”も・・・あなたを愛しているのよ・・・)」------
華琳と一刀の後ろにいた魏の将も呉の将も蜀の将も・・・・・・
全員が目じりに涙を浮かべ、黙って見守る・・・・・・
国と・・・
たった1人の男の・・・
”絆”の深さを・・・・・・感じながら・・・・・・
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遅くなって申し訳ないです。
今回は洛陽への帰還です。蜀と呉の絡みは次回以降になっちゃいましたm(__)m
主に、民の想い中心です。
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