黄巾の乱は一刀達の予想を超えるほど大陸を混乱に陥れる。
賊の策略とファンの暴走により乱の首謀者にされてしまった天和達は官軍に追われる身となってしまった。
各地の村を転々と旅しながら官軍の追撃を逃れるのだが時々賊に襲われてしまう。
その度に一刀と元黄巾党(数え役萬ファンクラブ)リーダーのアニキを中心なって天和達を守った。
しかしその一刀の腰では太平要術の書が怪しい気を放っていた。
それは突然起こる。
銅鑼の音が各地で鳴らされた。戦闘開始の合図。
連戦を前線で戦い続け、疲労が溜まっている一刀はまだ目覚めない。
「敵襲――っ!」
味方の兵士が大声で危機を知らせる。慌てて迎撃の準備を
「北郷様は何処だ!?」
「知らん! それよりも天和様達は!?」
「先に安全な場所に避難してもらっている!」
「何をフザケタ事を言ってるんだ。戦場に安全な場所なんかあるのかよ!?」
「北郷様の寝室だ!」
「なるほど……って場所知ってんじゃねーかよ!!」
「あ」
「『あ』じゃねーよ!!」
イマイチ緊張感にかける開戦となった。
「……て! ……きて……とっ!」
「ぅん……?」
熟睡をしていた一刀の脳がゆっくりと覚醒をはじめる。重い瞼を開けようとするがなかなか開かない。
それでも無理矢理こじあけようとすると目の前に人らしきものの輪郭が朧気に写った。
一刀の覚醒と比例して輪郭が少しずつはっきりとし、それは張三姉妹の三女、人和だった。
「一刀! 起きてすぐで悪いんだけど大変な事が起きたの。賊が攻めてきたわ」
人和の言葉は一刀の脳を一気に覚醒させるのに十分な威力を秘めていた。
慌てて身体を起こし状況を瞬時に把握する。
「皆は?」
「アニキさん達は先に戦の準備してる。姉さんたちは……」
人和はちらっと横を向く。一刀も同じ方向を向くとそこでは長女、天和、次女、地和が爆睡していた。
一刀は呆れたが自分も今まで寝ていた事を思うと強く言えなかった。この娘達と同じだと思うと少し憂鬱になった。
「俺も出るよ。人和、刀を……っと?」
一刀は立ち上がろうとするが足に力が入らず布団の上に座り込んでしまった。人和は咄嗟に手を出すが空振る。
「大丈夫一刀!?」
「ん。ちょっと疲れてるのかも、でも大丈夫」
もう一度立ち上がる。今度は座り込む事はなかった。
ほっと息を吐き安心する様子の人和。
一刀は手と足に微妙な痺れが残っているのを感じたが大した事はないだろうと判断した。
壁にかけてあった自分の刀を取る。
「それじゃあ人和。天和達起こした後、戦場の様子を見ながら安全な場所に避難して」
「分かったわ」
「行ってくる」
そういうと一刀は天幕を出て駆けだした。
遅れた一刀は指揮をとっていたアニキの所に着く。
アニキは前を戦場を見たまま一刀に言葉をかける。
「やっと来たか」
「ごめん。どうなってる?」
「こんなに簡単な戦があっていいのかってぐらい圧勝だな」
アニキの言葉を受けて戦場を見るとなるほど、確かにこれまでのどの戦よりも優勢に進んでいるみたいだ。
「数が少なかったの?」
「いや、数はいつもの如く負けていた」
「策?」
一刀は自分で言っておきながらこれはないなと思った。策が決まったとしてもここまで圧倒的になるものだろうか。
「違うな。俺の勘だとこいつらは既に敗走してたんじゃないかと睨んでる」
アニキの言葉を受け、戦場を改めて見てみる。敵の士気は低く指揮を出す人物が明らかに少ない。倒れてる敵も短時間でやられたとは思えないほどボロボロで敗走してたと言われれば十分納得ができる。
「そうするとこいつらを撃退した相手が近くにいる事になる」
「となると相手は義勇軍か官軍だな」
「この辺の義勇軍となると最近名が売れてる劉備軍、官軍だと曹操軍が有力な所か……」
「劉備軍はともかく曹操軍だとマズイな」
どこの軍が撃退したにしろこれだけ多くの賊が敗走しているとなると追撃に出ている可能性は高い。
こっちは賊を撃退しているので捕まる事はないだろうが黄巾の乱の原因とされている張三姉妹がいる。万が一彼女たちの正体が分かってしまったら死罪は免れない。なので接触は控えたかった。
「早く終わらせて逃げよう」
「決まりだな。戦況は見ての通りだが敵の数が多い。全軍の指揮はやってやる。お前は遊撃で残ってる指揮官をやれ」
「分かった」
この戦は時間が勝負。
一刀は腰につけていた刀を抜き指揮官らしき人物がいる方へと全力で駆けて行った。
「はぁはぁ」
目の前で男が一人倒れている。
男は敵の指揮官。刀で綺麗に斬られた跡がある事から一刀が斬った事が分かる。
斬った一刀の表情はとても厳しい。原因は人を斬った罪悪感もあるがそれよりも身体が思うように動かない事にある。
朝から痺れが微妙にあったが普通に動くので気にしていなかったが刀を扱う時の感覚が微妙に狂い、戦闘の際、危ない場面がいくつもあった。
それが何度も続き疲労もいつもの数倍溜まってしまっている。さらに時間に制限があり焦れば焦るほど敵を倒すのが遅れまた焦る悪循環。
そんな最悪な状況でも一刀は懸命に敵の指揮官を倒し続ける。そしてその数が二桁を超えた頃。
「もう何人倒したか覚えてないや……」
こんなに調子が悪いのは記憶してる限りで初めてだった。手足の痺れに加え段々と頭もボーっとしてきた。最早一刀は冷静な判断が下せる状態ではなくなってしまっている。
戦場はそれでも一刀が何とか指揮官を全滅させていたので決着がほぼ着いていた。
一刀も周りを見てそれに気付き安堵し刀を地面に刺す。大の字に寝っ転がり青い空を見上げる。疲れた。
そして横になったことで一刀は気付いた。
地面が揺れている事に。
周りの味方は勝ち鬨を既にあげていて気付いていない。
一刀は身体に鞭打ち上半身だけ起こす。
そして顔に絶望の色が浮かんだ。
久しぶりの投稿です。
上に書いてある通り就活に卒研に忙しいですがマイペースで頑張っていこうと思います。
卒研と言えば卒研ではデジタル教材(電子黒板とか電子教科書とかipodとか)について調べるのですがそういえば近くの高校ipod使った授業してるよ~とかあれば教えてくれると凄くうれしいです。
それではまた次回お会いしましょう。
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気づいたら結構時が経っていますね。
就職活動に卒研に忙しいですがのんびり頑張ります。