No.145932

恋姫無双 3人の誓い 第二十四話「大切な人」

お米さん

番外編と予告しておりましたが、内容が本編に近いものになったので、本編にしたいと思います。楽しみにしていたみなさん、本当にすいません・・・。
それでは第二十四話目となります。

2010-05-27 22:46:04 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:1156   閲覧ユーザー数:1098

今日も何度も生と死の境を彷徨いながらも、なんとか修行を終えた俺と一刀は、掻いた汗を流すために近くの川へと向かっていた。

「だいぶ・・・この修行にも慣れてきたもんだ・・・」

「ホント・・・慣れって凄いんだね・・・」

修行を始めてけっこう経って色々と慣れてきたが、この疲労感はどうにも慣れない。

 

 

 

 

「けど、修行を始める以前に比べると、徐々にだけど強くなってきたのを感じるよ。」

「ああ。なんていうか・・・こう・・・引き締まった感じがするよな。あと、動きも鋭くなったと思う。」

「それ分かるよ・・・本当に龍玄さんには感謝しなくちゃね。」

そんな風に話しているうちに、川へと着いた。川に月が映りこみ、そこからくる淡い光がなんとも幻想的な雰囲気を作り出している。

 

 

 

 

そしてその川には、すでに先客が小石だらけの地べたに座り込み、月を肴に酒をチビリと飲んでいた。

「おっさん・・・?どうしたんだ、こんなところに一人で。」

「・・・おお、お前らか。いやなに、月があまりにも綺麗でな。こうして月見酒を堪能していたところさ・・・ほれ、お前らも付き合え。」

 

 

 

 

「あ、はい。それじゃ失礼して・・・」

「よっと・・・」

小石が少し痛いが、俺達は地べたへと腰を下ろした。そこから見える月はこれまで見たことがないくらい美しかった。

「どうだ・・・修行にはもう慣れたか?」

 

「ああ。けど・・・この疲労感はどうにも慣れなくてね。」

「ハッハッハ!疲れなんて寝れば取れるもんだ。慣れなんてもんはないよ。」

愉快に笑いながら龍玄は、俺の背中をバシバシと叩く。・・・少し酔ってやがんな。

「そういえば・・・龍玄に聞いてみたいことがあるんですが・・・」

 

 

 

「どうした青年?恋の悩みかい?モテル男はツライねぇ~!」

一刀の質問に、龍玄は茶化すように返事をする。

「違いますよ!ただなんで龍玄さんはそんなに強いんだろうなって・・・」

「なんで強いかって?そんなの必死に努力したからに決まっているだろ。おかしなことを言うヤツだな~」

「それなら分かっていますよ。例えば・・・目標にしていた人がいたとか。」

 

 

 

 

「目標にしていた人ねぇ~・・・いたにはいたな。口うるさいヤツだったよ・・・」

龍玄はそう呟くと、フッと目に哀愁を漂わせ、酒を一口飲み込む。

「そうだな・・・あれは俺がまだ二十くらいの時だから、もう十年以上前のことだな。俺がまだ戦いに命を燃やす若い頃だった_______________________。」

そして語り始める。

 

「さて、今日も元気に賊退治といきますかぁ!」

俺は、漢中のひっそりとした村で義勇軍をやっていてな。まぁ、軍っつても三十人くらいしかいない、小隊のようなものだよ。賊も今と変わらず大勢が闊歩していた時代さ。

「全く・・・一人ででしゃばるんじゃない!お前の勝手な行動が、軍を危険に晒すんだぞ。」

こいつは詠春(えいしゅん)。俺の昔からの付き合いで、女ながら軍の隊長をしていたんだが、こいつがうるさいヤツでな~。

 

 

 

 

耳にタコができるんじゃないかってぐらい注意してくるんだ・・・。

「あぁー!うっせ、うっせ!それくらい分かっているよーだ!」

「ふぅ・・・その態度と性格、どうにかならないものか・・・」

「(ボソッ)まず、お前のその口うるさい性格をどうにかした方が良いと思うぞー・・・」

「り、龍玄っ!聞こえているぞ!せっかく人が注意してやっているというのに、それを口うるさいとはなんだ!」

 

 

 

 

こんな風に、俺が少しでも反発するとすぐ斬りかかってくるんだぜ・・・たまったもんじゃない・・・。

しかも、周りの仲間達は痴話ゲンカって言って茶化したりして、その度に周りのヤツらも斬りかかれたりするんだよな。

けど、実力は周りで一番だったよ。近くの村々でも有名になるくらいだった。その評判を聞いて、弟子入りしたいヤツも少なくはなかったな。

 

 

 

 

俺もその弟子の一人だったんだが、俺の場合あいつに強制的に弟子入りさせられてな。毎日にキツイ特訓の日々に明け暮れてたよ。

しかし今思うと、あいつ自身もキツかったんじゃないかって思う。稽古の師匠をしたり、軍の指揮をしたりと休む暇がないくらいだった・・・。

けど、昔の俺はそのことに理解できず、迷惑ばかり掛けていたよ。

 

そんなある日、俺は前線の隊長になってな。賊との戦いの最中、張り切りすぎて前に出すぎた俺は、敵の矢が刺さっちまってよ。まぁ、急所を外していたから、こうして生きているわけなんだがな。

その戦いが終わった後の夜、俺は詠春に頬を思いっきり叩かれたよ。

「・・・っ!?な、なにすんだよ!」

 

 

 

 

「なにすんだじゃないわよ!あなた、急所を外していたからいいものの、一歩間違えれば死んでいたのよ。もう少し自分の命を大切にしたらどうなの!」

「・・・う、うるせぇよ。俺の命は俺のもんだ。どこで死のうが勝手だろ・・・」

「お前ってヤツは・・・!」

俺はまた叩かれるんじゃないかと思って目を瞑ったが、来たのは、あいつの腕が俺の身体を包み込む優しい感触だった。

 

 

 

 

 

「なっ!?き、急になにすんだよ!」

「心配なのよ・・・」

「え・・・・・」

抱きしめてきたあいつは、急に目に涙を浮かべて、しおらしくなっちまってよ。そんな見せたこともないあいつの一面に言葉が詰まっちまった。

 

 

 

 

「心配なんだよ・・・お前が死んでしまうんじゃないかって・・・お前が、私の前からいなくなるんじゃないかって・・・」

「詠春・・・・・」

「・・・龍玄。戦に死は付き物だ・・・絶対死ぬなとは言わない。けど、無駄死にだけはするな・・・死ぬなら、大切な誰かを守った後に死ね。」

涙を拭き、いつもの注意する顔で詠春は言った。そのあと、俺が返した言葉は、自分でも信じられないようなクサイ台詞だったよ。ハハッ。

 

「・・・じゃあ俺は、お前を守った後に死んでやるよ。」

「・・・!///」

返ってきた言葉に、あいつは顔を真っ赤にしながらも微笑んで、こう言った。

「・・・なら私は、お前を守った後に死ぬとしよう。」

そう誓い合った後、俺達はお互いの真名を交換し、握手を交わしたな。

 

 

 

 

今でもその光景は鮮明に覚えているよ。とても優しい手だった。

だけどその一ヶ月後、俺の人生を変える大きな戦いが起きた。

それは、今まで少しずつ討伐してきた賊達が、今までにないくらい大きな集団となって攻めてきたことだ。

しかし幸いなことに、これまでの賊との戦いの功績と詠春の活躍によって、義勇軍の数も前とは比べ物にならないくらい増えた。戦力的には五分五分だった。

 

 

 

 

そこで採った作戦は左翼と右翼とに別れて、横撃する作戦だ。

その作戦を考えたのもあいつだった。全く・・・末恐ろしいヤツだよ。

そして戦の当日、俺とあいつは左翼を担当することになった。

作戦は見事に成功した。俺とあいつで、敵隊長を各個撃破していったことが大きな要因になったらしい。

隊長が倒させてしまい、周りの敵は一部混乱状態に陥った。

 

 

 

 

これならいけると思った俺は、次に目を付けた敵隊長と戦闘になった。

しかし、この時の隊長が今までのヤツと一味違ってな、周りに目をやる暇がなかった。

その隙を突いて、背後から敵弓兵が俺に向けて矢を放った。

「・・・ちぃっ!」

さすがの俺も、あの時は本気で死ぬと思った。いや、なにより先に思い浮かんだのは、あいつとの誓いを守れなかったことを後悔する気持ちだったな。

 

けど、

「龍玄っ!!」

俺の背後に影が現れてな、その影の正体に俺は息を呑んだよ。

「ゴフッ・・・!まった・・・く、周りの・・・見えない・・・ヤツだ・・・」

胸を矢に射されて、口元に血を流しながら倒れていく詠春の姿だった。

 

 

 

 

「悠花っ!!」

俺は詠春の真名を叫びながら、敵隊長を斬り伏せ、すぐにあいつの元に向かった。

「悠花・・・っ!お前、どうして・・・!」

そう聞くと、あいつはフッと微笑みながらこう答えた。

「忘れたか・・・?お前を・・・守った後に・・・死ぬと・・・誓いは・・・果たしたぞ。」

 

 

 

 

「なに言ってんだよ!俺の誓いはどうなるんだよっ!お前を守ると誓ったんだぞ・・・!死ぬんじゃ、ねぇよぉ・・・!」

その時、俺の目から止め処なく涙が溢れた。あんなに泣いたのは生まれて初めてだったよ。

「フッ・・・私の為に・・・泣いてくれている・・・のか?」

「当たり前だろっ!お前は俺にとって、かけがえのない大切な人なんだよっ!」

 

 

 

 

「・・・その言葉・・・聞けて・・・良かった・・・これで安心して・・・逝ける・・・」

「逝くなぁっ!ゆうかあああ!」

俺は精一杯声を張り上げ、あいつの手を強く握り締めた。その手には、すでに微かな温もりしか感じられなかった。そして・・・。

 

 

 

 

 

           「私もな・・・お前の・・・ことが__________________________________________。」

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の言葉を言わないまま、あいつは静かに逝っちまった。

 

 

 

 

        「うわあああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

 

 

 

 

 

悲痛な叫び声が戦場に駆け巡っていった。

 

「そして、戦いに勝利して・・・・と、こんな風な経歴を経て、現在の俺がいるというわけさ・・・ちょっと話しすぎたかね。」

ひとしきり話し終わった龍玄は、グビッと酒を一気に飲み干す。

「「・・・・・」」

「ん?どうしたお前ら、そんな黙り込んで・・・」

 

 

 

 

 

「いや・・・あんたにそんなことがあったなんて・・・」

「同情するなっての!恥ずかしいから・・・」

と、ポリポリと頬を掻きながら答える。

「そ、そんなことよりだ!強くなったからって、油断したり、慢心したりすんじゃねぇぞ。俺みたいになりたくなかったらな。」

 

 

 

 

「「はい・・・」」

俺達はこの話を自分達に置き換えた上で、静かに返事をした。

大切な人達を、守ってやらなくちゃならないんだ。これまで守られてきた分以上に。

月はそんな二人を、静かに見守るように鈍く照らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※どうもお米です。今回の話は、自分が書いてきた中で最高傑作な気がしてきました。書いている最中、ホロリとしてきた私は少し涙腺がゆるいのだろう・・・。

龍玄から自分の過去が話され、再び決意を新たにした蒼介と一刀。なんか燃える展開になってきました!それでは次回で、失礼します~。


 
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