No.145802

デートの日、雨の日

木梨子優さん

雨が嫌いな男子高校生。年上の彼女とのデートに前日からドキドキして期待に胸を膨らませ、不安を抱いて明日のことについて考える。雨の日のデートは雨であるにも関わらず少年の心は晴れ晴としていた。

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2010-05-27 03:18:19 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:599   閲覧ユーザー数:597

 
 

「明日のデート、大丈夫かな」少年は明日のことを考えて眠れず、ベットにあおむけになって天井を見つめていた。

 

 デートの相手は3つ年上の女子大生の彼女。友人のお姉さんで、友人の家にいったとき知り合って、普段から愚痴を聞いてもらったり勉強を教えてもらったりして、好きなっていく少年が告白し付き合うことになった。

 

 彼女との初デート。

 

少年は期待と不安を抱きながら今までのことを考えながら、また明日のことについて考えていた。

 明日はデートプランを立てた通りに進める。そう誓っていたが、うまくいくかが不安だった。

 

「眠れないよ…」

 

少年は考えすぎて眠れなくなっていた。体をベットの上で横に転がりながら自分の気持ちを抑え込めずにいた。きっとこんな気持ちは小学生の時の遠足以来だなんて少年はおかしなことを思っていた。

 

 こうやって眠れないのも同じ。

 

少年は目を閉じて眠ろうとするも眠れず、ただ体がムズムズするだけだった。

 

ただ明日のことを考えるだけで胸が高鳴った。不安と期待が混ざった想いの中で少年は布団に潜りなんとか寝ようとする。

 

しばらく寝れずにいた少年はただじたばたとしながらやがて眠りについた。

 

翌朝、少年は窓の外を見て愕然とした。外は雨がふりそうなくもり空だった。少年の心にもどこか晴れていた心を醒ますような雲が覆ったようなすこし憂鬱な気持ちがこみ上げてきた。

 

テレビをつけて、朝の天気予報がやっていた。気象予報士のお姉さんが、大きな画面を指し棒で指しながら説明していた。

 

「低気圧が接近しており―  」

雨という予報を聞いて少年はすごく残念そうな顔になった。

 

「今日、デートなのに…」

 

少し怒ったように額にしわを寄せてリモコンの電源ボタンを押すとベットの上にリモコンを投げ捨てた。

 

でもデートに変わりはないと気持ちを切り替え、朝ごはんを自分で支度し、食べると誰もいない家に  「いってきます」 と挨拶してから家を出た。

 

彼女の家までは歩いて10分ほどのところだった。今日はなぜか歩いてそこまでいきたかった。

 

傘を持った人たちをよけながら、ふと自分は傘を持ってくるのを忘れたことに気づく。

 

そして、そんなことを考えている矢先、雲の中から雨粒が落ちてきた。

 

「このままじゃびしょ濡れだよ」

 

独り言を空をみつめこぼしながら不安な気持ちを忘れるように待ち合わせの場所まで走る。

 

 

傘をさす人たちをよけて、少年は必死に走っていた。

 

心が踊るようにトクントクンと波打つ、走っているからか、デートの期待からかは少年は話からかったが、雨の中でも少年の心は晴れ晴れとしていた。

 

雨が頬に伝い、汗と混じる。

 

きっと雨にぬれていても今が一番幸せなんだと少年は感じていた。

 

 

小さな教会の前。その待ち合わせの場所に彼女はいた。

 

まだ待ち合わせの時間まであるというのにと少年は思う。しかし、彼女はやはり年上で自分から見たらすごく大人らしいと思った。

 

少年は彼女に向かって走った。びしょ濡れで彼女に向かって走った。

 

今は先のことなんて考えられなかった。今が幸せだから…。少年は雨の中でも早いまま鼓動を感じていた。吐く息が白いことがこの雨での寒さを伝えていた。

 

笑顔で少年は彼女に照れながら言った。

 

「おまたせ。ごめんね。初デートでこんなにずぶ濡れで」

 

彼女は微笑んで

 

「大丈夫?服着替える?」と言って、少年のほうにみて首を傾げる。

 

少年は彼女の家へいこう というと彼女は微笑んで同意した。

 

僕にとってすごく幸せな時間。

 

気がつけば、雨はやみ、重い雲の隙間から、光が差し込んでいた。

 

二人は晴れだした空を見つめて歩く。

 

彼女は何も言わずほほ笑んで少年の目を見つめて、すぐに歩いている方へ向き直した。

 

そんな彼女の横顔を見て少年は心の中で思う。

 

僕、好きだ。 きっと明日も明後日も 

 

たぶん ずっと、ずっと。

 
 

 
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