真・恋姫無双 二次創作小説 明命√
『 舞い踊る季節の中で 』 -寿春城編-
第51話 ~ 舞う花を、散らす想いに耽る華 ~
(はじめに)
キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助
かります。
この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。
北郷一刀:
姓 :北郷 名 :一刀 字 :なし 真名:なし(敢えて言うなら"一刀")
武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇
:鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋
得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)
気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)
神の手のマッサージ(若い女性には危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術
最近の悩み:某日、某屋敷にて
甘く、心休まる匂いに、 下から感じる暖かい柔らかな感触に、 左手を引っ張ら
れるも、掌にちょうど良い大きさの、柔らかな感触に、 そして、頭と下半身を包み
込むように固定された感覚に、 俺は、母親に抱かれた赤子のような心地良さを感じな
がら、意識が深い眠りから、浮上するのを感じる。
そうだ、昨日は、また翡翠に見っとも無くも、泣きついて、喚いてしまったんだ。 そ
うか、そのまま俺寝てしまったのか、そう思い出し、目を開けると、
「・・・・・・・・・・っ!」 とんでもない事態になっていた。 俺の顔を包む柔らかなものの
正体は、翡翠の胸とお腹で、左手は何故か明命の胸に手を当てていた。 ・・・・なんで?
と思う反面、その感触と、彼女達の匂いに、頭が沸騰しそうになる。 とにかく二人が
目を覚ます前に抜け出さねば、 と思ったのだが、びくともしない。 頭は翡翠の両手
で抑えられ、 左手は、明命の手によって、胸に押し付けられていた。 そして絶望的
なのが、下半身を、明命に何時かの抱き枕のように、足を絡ませられ固定されていた。
・・・・ど、どうしよう?(汗
そ、そうだ、開いている右手で、なんとか気づかれないように、抜け出すだけの隙間を
作ってやれば、 まずは翡翠の腕を、力の支点を逸らすように、良し、この調子なら、
グイッ 「へ?」 何とか、隙間を広げて頭を抜け出すだけの空間を作った所に、突然
翡翠の腕が、俺の頭を引き寄せ、その慎ましい胸に俺の頭を押し付ける。 俺の頬に、
翡翠のそれの感触が、確かに伝わる。 そして、その柔らかさの中に、かすかに感じる
堅い突起物の正体は、・・・・・・・・・・駄目だ考えるなっ、 思考を虫のようにするんだっ。
考えたら敗北するぞっ
(今後順序公開)
華琳視点:
袁術との交渉の後、用意された席には、
孫策の使者と今回の料理を作ったと言う調理人の二人の女性がいた。
あの男、北郷が居ないのは残念だったけれど、それは仕方ない事。
それに、使者の方は諸葛瑾と名乗っていた。
あの孔明の姉で、その才は妹には及ばないまでも、呉の内政を支える重臣の一人、
彼女の器を見る機会があっただけでも、残った甲斐があると言うものね。
それにしても、妹の孔明と違って、落ち着いた雰囲気の娘ね。
仕草や話し方は控えめだけど、洗練された美しさがある。
地味だけど、私好みの娘だわ。
それに、何より自分の魅せ方をよく分かっている
ああいう幼さが残る娘は、自分を無理に大人に見せようとするけど、
それは、己の魅力を半減させてしまうだけの行為。
本来持つ魅力を、自信を持って引き出せば、大人びた雰囲気など、自然に内から滲み出るもの。
諸葛瑾、この娘は、その事を良く理解しているわ。
施した化粧や、見た事も無い手法の装飾からも、その事がよく読み取れる。
そして、それ以上に気を惹くのは、
今回の調理人である、大喬と名乗った娘。
これだけの美しい娘は、この大陸に何人もいないわ。
女性にしては、やや背が高い方だけど、その美しさを損なう様なものではなく、
逆にそれを活かして、自分を魅せている。
そう、魅せている。
仕草の一つ一つが、純潔な乙女のように清楚かと思えば、
時折見せる、ほのかに漂う妖艶な色香、
そして鈴のような声と、聞いていて心地良い話し方、
先程の諸葛瑾も、それなりの高みにはあったけど、
彼女は格が違う。
計算しなければ、あんな真似など出来ないはず。
なのに、それを微塵も感じさせない。
そんな彼女の魅力に、
袁家の老人達も、彼女に目を奪われているのが分かる。
だと言うのに、諸葛瑾が掠れて見えないのは、
大喬が、彼女の魅力を損なわせ無い様に、要所要所で控えるからなのでしょうね。
あれだけの物を持ちながら、目上の者を立てる心遣い。
美貌の持ち主だけなら、興味は無いけど、あれ程気が回るなら、興味が出てきたわ。
机上に並ぶ様々な料理とお菓子は、袁術の好物の蜂蜜を使ったものだと言う。
確かに、見た事も無いような料理が多いわ。
肝心なのは味だけど、少なくとも見た目と香りは合格ね。
それにしても、袁家の老人達には呆れたわ。
孫策は自分の所の客将とは言え、隙あればその喉笛に喰らいつこうとする豪傑。
その孫策が送って来た料理人の料理を、毒味もせずに、己が主に口にさせるなんて、呆れ果てたわ。
無論孫策は、そのような下劣な手段を嫌う高潔な人物。
だけど、謀略や暗殺が、日常茶飯時な袁家において、彼等が、そんな物を当てにする訳が無いわ。
大方、それならそれで、江東の地を攻める良い口実、とでも考えているのでしょうけど、
あの地に住む一族達は、そんな容易く治めれるような土地ではないわ。
それに、袁術が死んでも、替えは効くと思っているかも知れないけど、
袁術の母親と姉が亡くなっている今、袁家の正当な血筋は、袁術ただ一人、
袁家の血筋を掲げて、袁術を君主と言う御輿にした貴方達には、今袁術が死んでしまったら後が無いのよ。
どうせ袁術の事も、子と金を産む道具、としか映っていないのでしょうけど、
それまでは、貴方達は、何があっても、あの娘を守らないといけないと言うのに、
この愚劣な老人達は、自分達が、如何に贅沢する事しか考えていないようね。
麗羽は、そんな袁家の腐った体質を何とかしたいと、頑張っているようだけど、
どうしようもなく腐った患部は、斬り捨てなければ助からないって、気がついていない。
もっとも、その腐った患部は、体の末端ではなく、体の中心なのだから、運命は決まっているのだけどね。
まぁ、そんな訳で、孫策が毒殺なんて手を使ってこないと確信している私は、遠慮なく見た事もない料理に、手を延ばす事にした。
驚いたわ。
香りと見た目から、期待はしていたけど、ここまでとは正直思わなかった。
どれも此れも美味しいのは、言うに及ばずだけど、流琉や私が作るものより、遥かに美味しい。
腕前だけなら、宮廷お抱えの特級厨士並み、だけど思考が素晴らしいわ。
蜂蜜を使ったと言うからには、最初は、べたべた過剰に使ったものばかりかと思ったけど、
そんなものは、一つや二つしかない。
後は逆に、蜂蜜を僅かに使うだけに抑える事で、逆にその存在感を主張させている。
また、そのおかげで、素材の味も蜂蜜の強い香気と味に殺される事なく、双方がお互いを引き出しあっている。
そして何より、驚いたのが、味付けの仕方、
私が今まで求めてきたのは、遥か高みの美食を極める事。
その考え自体は間違っているとは思わないけど、どうしても高級志向に偏ってしまう。
逆に流琉が季衣とかに作ってあげるのは、大衆向けの味付けで、
流琉自信も、どちらかと言えば、そちらの味付けを好む。
だけど、この料理は、その両方だ。
普通、こういう料理は、中途半端になるものだけど、
これは絶妙な均衡で、本来なら持ち得ない二つを兼ね備えている。
水と油のような関係の二つが、見事に融合し、
この料理を作った者が、私が考えている物より、遥か高みを目指している事が理解できる。
こんなやり方が、あっただなんてね・・・・・・・・・・、
使われている手法に、深い感銘を受けるも、此れは本当に危うい手法だと言う事も、同時に理解できた。
温度や手順を僅かでも間違えれば、この均衡は成り立たなくなり、後に残るのは中途半端な料理だけ。
言わば、賭けのような料理だ。
・・・・・・とても、毎回成功させる事など、出来るようなものではない。
少なくても、今の私や流琉では、とうてい無理と言わざる得ないわね。
ふわぁ
料理の味付けと調理方に、思考を巡らせていた私に、
柔らかな茶の香りが、漂ってきた。
「失礼いたします」
と、静かに私の前に茶器を置く大喬、
その仕草一つ一つが、本当に魅せてくれて、私の目を楽しませてくれる。
あれだけの料理と菓子を作れるのなら、分野は違えど、茶も期待できるわね。
そう思い、私は早速茶を楽しむ事にする。
「・・・・・・・・・・・はっ」
鮮烈だけど優しい香りに全身を包まれ、その心地良さに、意識を暫し朦朧とさせてしまった。
・・・・・・・・期待はしていたけど、まさかこれ程とはね。
茶酔い
最高級の茶と技術を持ってしても、難しいとされている。
私も、片手で数えられるぐらいしか、淹れる事が出来たためしがない。
それを、今、茶を飲んでいる全員に体験させるだなんて・・・・・・、
彼女、欲しいわね。
見る者を飽きさせない、美貌と仕草、
心地良く、よく透き通った声と話し方、
目上の者を立て、それで居て、それを心地良く感じさせる心遣い。
特級厨師並みか、それ以上の腕を持ちながら、更なる高みを目指す高潔な魂、
そして、此れだけの茶を淹れる事が出来る。
傍に居たら、どれだけ、心地良い日々を過ごせるだろうか、
そして、そのおかげで、執務もさぞ捗るに違いない。
それに、閨も、さぞ楽しめそうね・・・・・・、
ふふふっ、こんな人材にお目にかかれるだなんて、残った甲斐があったわ。
早速彼女に、声をかけようと思っていた所に、
「お許し頂けるのなら、袁術様のために、舞を披露したいと思っております」
「うむ、妾は今、機嫌が良いのじゃ、一つ楽しい舞を所望いたすぞよ」
そんな彼女と袁術の会話が聞こえてくる。
この上に、このような場で、お披露目出来るだけの舞まで踊れると言うの?
何処まで、私を楽しませてくれるのかしら、
りんっ
りんっ
彼女の手首足首に着けた小さな鈴が、心地良い音を響かせる。
大きく動かす手が、地を踏む足が、鈴を鳴らす。
だけど一度たりとも、無駄に鳴ったりはしない。
幾ら手を早く動かそうとも、
足を激しく蹴ろうとも、
不用意に鳴る事はなかった。
この目で見るのは初めてだけど、そういう技術があるのは知っていた。
でも驚くべきなのは、そんな物ではなかった。
そんな驚嘆すべき技も、文字通り技でしかなかった。
私達を、彼女が作る舞の世界に引き込むための、
世界を作るための、小手先の技でしかなかった事。
彼女の握る長い布が、滑らかに宙を漂う。
それは、川、
細かく、小さくなる鈴の音は、川のせせらぎ、
彼女の視線は、川の持つ優しさ。
緩やかに、そして、時折大きな、足の運びは、川辺近くの大地の暖かさだろうか、
そう、これは川辺で戯れる在りし日の光景、
楽しかった、あの日の情景が、心に奥底から浮かび上がる。
細かく左右に動く布、
乱雑のようで、流れに沿った足運び、
それはまるで、町の雑踏、
だけど、響く鈴の音は楽しげに聞こえる。
まるでお祭りの日に、揃って町を歩く親子のように、
楽しかった、あの日の情景を思い起こさせる。
忘れてしまった。
でも忘れたくは無かった、あの日の想い。
ただ、居るだけで楽しかった日々
やがて、舞が終わると共に、幻視から開放されるものの、
私はその余韻に浸っていた。
私は瞳に涙を溜めてはいたが、それを流す事は無かった。
流してしまえば、あの時の想い出が、もう失ったものだと、認めてしまいそうだったから。
私の魂が、あの時の想いを、涙で穢したくは無いと、涙を押し留めていた。
楽しかった想い出、そして、今も余韻のおかげか、あの時の楽しさが心に残っていた。
たとえ、それが錯覚でしかないと分かっていても、それに浸って居たかった。
だけど、此処は私の城ではない。
いつまでも余韻に浸っている訳には行かなかった。
周りを見回す余裕を強引に取り戻した私が、見たのは、
今の舞を、ただの素晴らしい舞いとしか映らなかった、下劣な老人達、
私のように、必死に涙を押し留めている諸葛瑾、
そして、呆然と、だけどその瞳に郷愁の想いをのせて、涙を流す袁術と張勲の姿だった。
・・・・・・・・・・この二人は、魂まで腐ってはいなかった、と言う訳ね。
今だけは、素直に涙を流せる二人を、羨ましく思うわ。
そう素直に感想を浮かべていると、
意外にも早く立ち直った袁術が、
「大喬とやら、素晴らしい舞いじゃったぞ。 妾は深く感動したのじゃ
暫し我が城に逗留して、妾を楽しませてはくれぬか」
「有り難きお言葉にございます。 ですが、私めには、旅をせねばならない訳がございます。
どうかお許しくださいませ」
「なんと、妾の願いを断るとは、それだけの理由であるのであろうな?」
「はい、私めには小喬という妹がございます。 黄巾の騒ぎの時に、生き別れてしまいました。
こうして、舞を続けながら旅を続ければ、いつか噂を知った妹と再会できると思っております。
袁術様のお顔を潰す訳では御座いませぬが、私を憐れとお思いならば、どうかお許しのほどを」
彼女の言葉に、袁術は、肩を落とし、
「そうか、生き別れた妹を探して居るのか、では、無理は言えぬな」
そう、惜しむように言葉を紡ぐ、
そうね、それが正解よ。
袁術のために、あれだけの舞いを披露した相手に対して、妹をその足で探したいと言う願いを断れば、情無き王として、陰口を叩かれかねない。 幾ら影口悪評の多い袁家にとっても、こういった公の場で、ましてや私や諸葛瑾と言う外部の人間が居る場で、それをする訳にはいかない。
もっとも、もし愚かにも、それをするようならば、私が黙ってはいなかったけどね。
「そういう事情ならば致し方あるまい。
じゃが、今だけは妾のために、舞ってほしいぞよ」
「はい、それならば喜んで」
「うむ、ならば、今度は妾も混ざりたいのじゃ
妾の歌と、七乃の音に合わせて、舞ってくれぬか」
まったく、これだから子供は、
あれだけの舞に混ざろうだなんて、身の程も知りなさい。
そう思っていたのだけれど、その予想は少しだけ裏切られる事になった。
三人の共演は、先程の彼女だけの舞に比べたら、かなり程度の低いものでしかなかった。
だけど、それは、比べたらにすぎない。
張勲の奏でるの旋律は、それなりの一定水準に達していたし、
技術的には稚拙だけど、袁術の澄んだ声は、
声に乗せた想いは、聞く者の心に訴える物があった。
彼女の後でなければ、二人だけでも、十分に楽しめるものであったでしょうね。
そして、彼女の舞は、奏でる鈴の音は、
未熟な二人に合わせるだけではなく、二人に負担が掛からない範囲で、二人の未熟な腕を引き上げる。
二人は、彼女の舞に、自然と自分の力量以上の高みに、駆け上がる。
何より、その舞は、それぞれが作り出す世界を、
三人の魂を一つにまとめ、見る者達をその世界に誘う。
少なくても、十二分に人を惹き付ける物になっていた。
まぁ、これなら、先程の舞の後でも、我慢できるわね。
そんな強がりを、浮かべつつ、
先程の舞とは別に、今度は、純粋に舞いそのものを楽しめる事ができる。
二人の未熟な腕が、刺激の強すぎる舞を、適度に引き下げたためでしょうね。
「これだけの舞を踊れる者が、他にも居たとはね」
本当に楽しそうに、共演をする三人を眺めながら、そう感想を呟く。
それに、孫策が、これほどの者達を知っているのも意外だったわ。
周瑜は音楽家としても有名だけど、孫策は、そう言う物に、執着する人間ではないと思っていたもの。
北郷と大喬、おそらく二人は、同じくらい高みに居るのでしょうね。
そして、そんな人間を、二人も知っていながら、今まで噂も聞かなかっただなんて、うちの細作は何をしていたのかしら。
・・・・・・・・・・まちなさいっ。
あれだけの舞を舞える人間が二人もいて、噂にならない訳が無いわ。
しかも、今日来ている諸葛瑾は、北郷と顔見知り、なら、大喬と北郷も顔見知りと考えた方が自然。
だけど、桂花の報告には、そんな事は一言も書かれてはいなかった。
桂花が、徹底的な調査を指示したにも関わらずによ。
ふと、私の脳裏に、ある考えが浮かぶ
馬鹿馬鹿しい。
幾らなんでも、それはありえない。
私は、すぐにその考えを否定するけど、
一度浮かんだ考えは、次々その考えを肯定する材料を見つけ出す。
他人では、到底たどり着けない高みの域の舞、
美味しいと評判の茶館主と、今日の料理と茶、
片方は、孫策の軍師で、只者ではない人物で、諸葛瑾と同じ家に住んでいる。
そして、今ここに居る彼女は、孫策の使者として、諸葛瑾と共に訪れている。
孫策の目的は、連合で活躍しすぎた事と、
私が探らせた事で、注意を引いてしまった袁術へ、恭順の意を見せてみせる事が目的のはず。
あわよくば、袁術や老人達の腹を探りたい、と思って来ているはず。
そして、孫策の所には、自分を隠し、人を見る才に優れた北郷と言う人間がいる。
そう言えば、踊りの世界には、女形と言って、
伝承や人手不足のために、女性の様に振る舞って舞う事がある、と書物で呼んだ事があるわ。
なら、信じられなくても、それが真実。
同じ能力、それに、同じくらいの背の高さと、同じ黒髪、
違うのは、性別だけ、
だけどそんな物は、女装すれば済む事。
むしろ同一人物と考える方が自然よ。
私が、今だこの考えを否定しているのは、
男である北郷が、あれだけの容姿と、女らしさを出している事の二点のみ。
そしてそれは、どちらかと言えば、私の女としての自尊心が、そうさせているに過ぎない。
なら、答えはもう出ているも当然。
信じたくは無いけど、彼女は北郷と言う事になる。
「ふっ、ふふふふふっ」
自然と笑みが零れる。
私の出した結論は、私の自尊心を傷つける物ではあったけど、
そんな物は、彼の能力を知る事が出来た喜びの前には、些細な事。
只者ではないとは思ってはいたけど、これだけ多彩な能力を、
高い域で持ち合わせているだなんて、思いもしなかったわ。
人を見る才、そして、連合では無能を装ってはいたけど、あの作戦は彼が考えたと見て良いわ。
周瑜にしろ陸遜にしろ、天才ではあっても、世間の常識から、大きくはみ出る様な考え方はしない。
それに、今日出された料理から見ても、その事が伺えるわ。
彼程の者は、この曹孟徳が使ってこそ、その才を存分に発揮出来るというもの。
なんとしても欲しくなったわ。
正直、彼の女装には、驚いたけど、似合うものなら、それはそれで構わない。
手に入れたなら、その格好で閨を楽しむ事も出来るもの。
では、もう一人は、どうなのかしら、
そう思って、諸葛瑾を探すと、
袁家の老人と三人の協演を眺めながら、他愛無い雑談をしているように見えるけど、
老人の方は、何とかして彼女に触れようと、あの手この手で、手を出そうとしている。
そんな下種な考えの老人を、慣れた様子で避わしながら、しっかりと情報を引き出している。
やるわね、彼女、
でも、そんな下種な老人の光景は、傍から見ていて不愉快なだけ、
「話、いいかしら」
そんな私の言葉と一睨みに、老人は頬を引き攣らせながら、引き下がり、私のために場所を空けてくれる。
だけど、あんな男が居た場所になんて居たく無いし、ここでは彼女とゆっくりと話をできない。
私は、諸葛瑾に視線で壁際に行くよう促す。
「邪魔して悪かったわね」
「いいえ、たいした話は出来ませんでしたから、むしろ良い機会でした」
宴の中心から離れた、静かな場所で、私は小声で彼女に、情報収集の邪魔をした謝罪をする。
そして、そんな私に、あっさりと、その事を認めると受け取れる発言。
なるほど、私相手に誤魔化しても無駄と見抜いて、その事を逆に利用して、私の興味を惹かせた訳ね。
人を見る目と、とっさの機転はあるのね。
なら、こんなのはどうかしら、
「彼女の舞は見事なものね。
彼女、たしか大喬と名乗ったかしら、・・・・・・なら、小柄な貴女は、さしずめ小喬と言った所かしら」
「ふふっ、お褒め頂くのは嬉しいのですが、私は、あんなに美人ではありません。
それに、これでも、彼女より年上ですから」
等と、笑みを浮かべたまま返してくる。
私の言った言葉の意図を、正確に理解していながら、
知られてはいけない事実を、図星されておきながら、
微塵も、動揺を見せずに対処してみせた。
なるほど、確かにこれは政治向きね。
妹の孔明では、こんな芸当はまだ出来ない。
才はあっても、孔明は、まだまだ経験不足と言わざる得ないのだから、
それに、才があれば、必ず使えると言うものでもないわ。
じゃあ、これはどうかしら、
私は、周りに人の気配を探ってから、
「私が今日此処にいるのは、袁術と取引をしに来たの。
神速の張遼を、兵二万と糧食三ヵ月分を代価に取引したわ」
反董卓連合での活躍で、彼女達にとって絶好の機会が揃いつつある中、
彼女達の努力をあざ笑うような、事実を叩きつける。
「それは、袁術様にとって、良いお話だったと思います」
それでも、諸葛瑾は、笑みをたたえたまま、嬉しそうに言ってみせた。
なんの、動揺も見せずに、良い商談だと言って見せた。
・・・・・・・・たいしたものね。
きっと、妹の才を認めるからこそ、自分の持つ才を磨いてきたのでしょうね。
孫策と周瑜が、政治において全幅の信頼を寄せるのも分かるわ。
ふふっ、やっぱり私の目に狂いは無いわ。
「先程の料理と舞のお礼に、もう一つ良い事を教えてあげるわ。
袁術に足元を見られてね、取引には成功したけど、張遼は三ヶ月は、袁術の臣下のまま、
この意味、分かるわよね」
「何のことか分かりませぬが、興味深いお話、お礼申し上げます」
そう小さく頭を下げる。
あくまで雑談のお礼程度に、だけど、その目は、敬意は本物。
やはり、この娘も欲しいわね。
この娘が居れば、桂花が楽になるわ。
今は彼女が一人で頑張っているけど、今のままでは、何時か破綻する時が来る。
この娘が居れば、内政の半分は彼女に任せる事が出来、その分桂花は外へ目を向けることが出来る
無論、この娘自身も、私が可愛がってあげる。
そんな想いを浮かべていると、三人は舞と演奏を終え、
袁術と張勲は、共演の余韻に浸りながら、体を休ませる。
だけど、大喬、いいえ、彼は、その美貌と舞の素晴らしさから、老人達に、下衆な目に晒されていた。
傀儡とは言え、己の主が諦めたと言うのに、彼等は、欲望のまま彼女を手に入れようと、執拗に迫っている。
まぁ、無理も無いと思うけど、アレは私のもの。
そう決めた以上、貴方達のような下衆が、手を触れて良いものでは無いわ。
「袁術、今日は、このような場に誘ってくれた事、厚く礼を言うわ」
「うむ、宴は多い方が楽しいのじゃ、 妾も、これだけ楽しんだのは数年ぶりじゃ」
今だ、余韻を楽しんでいた袁術は、そう楽しそうに言う。
本当に楽しそうに・・・・・・・・・・・・思えば哀れな娘ね。
でも、その境遇に甘んじている時点で、それは貴女の選んだ道、哀れみはしても、同情はしないわ。
「ささやかだけど、お礼として、詩を読ませてもらうわ」
夕霧に霞む銅雀台、
美しき塔の主は、夢を見る。
其処に住まいし姉妹は、美しき美貌の持ち主。
その美貌の前には、月も光を消してしまい、花も恥じらってしまう。
其処に住まうは、素晴らしき舞姫、その舞は荒ぶる者をすら、その心を酔わす。
其処に住まうは、素晴らしき詩姫、その詩は、道に迷う者達を、救い導く、
二喬を侍らせし主、その詩に、その舞に、多くの民を平穏に導いて行く。
二喬を穢せしもの、生まれた事を後悔する事になる。
塔の主は、其処で目を覚ます。
塔の主は、思う。
今のは夢なのか、
それとも、近しき己が運命なのかと、
塔の主は、思う
夢ならば、運命ならば、
己が手で引き寄せて見せると、想いを天に捧げん
「うむ、よく分からぬが、礼を申すぞ」
私の詩に、袁術は目を瞬かせながら、無邪気に言ってくる。
別に、それは構わないわ。
貴女に分からせる為に、詠んだ詩ではないのだから、
でも、袁家の老人達は分かったようね。
銅雀台とは、私の持つ荘園の中にある塔の事、
そして二喬とは、言うまでも無い事。
幾ら、袁家の老人達が欲深でも、私がこう宣言した以上、
それに、手を出すと言う事は、私に喧嘩を売るって事が分かったようね。
そして、冷や水を浴びせられた老人達の隙を突いて、
諸葛瑾達が、袁術に断りを入れて退出していく。
ふふっ、宣言はしたわよ。
貴女達が、十分な力を手に入れるまでは、待ってあげる。
だから、覚悟をしておきなさい。
必ず二人とも、我が手中に収めて見せるから、
つづく
あとがき みたいなもの
こんにちは、うたまるです。
第51話 ~ 舞う花を、散らす想いに耽る華 ~ を此処にお送りしました。
今回は華琳視点のみのお話になりました。
そして見破られてしまった一刀、案の定狙われる羽目に(w
そしてそのとばっちりに翡翠まで、華琳に狙われる事になりました。
華琳と一刀達の決着は、まだまだ先ですが、一刀は、翡翠を守れるのか、
そして、己の貞操も守る事が出来るのか(w
では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。
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『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。
袁術と謁見を果たす一刀達、その様子を華琳はどう眺めているのか、
拙い文ですが、面白いと思ってくれた方、一言でもコメントをいただけたら僥倖です。
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