城門から出てしばらく経つと大勢の集団が現れた。その数およそ5000。前方に広がる集団がこちらをぎらついた目で見ている。
「本隊から伝令!!早急に鶴翼の陣を敷き賊どもを迎え討てとのことです!!」
本隊からの指示でいよいよ戦の開始が近づく。
俺たちも割り振られた位置につく。姉さん、愛紗、鈴々は前線へ。京も弓兵として前線への援護として向かっている。そして俺、桃香は後方で戦局を見守ることになった。
こちらの陣形が整うと同時に一斉に賊どもが怒声を上げながらに押し寄せてきた。
「こっちの兵数は約3000。兵数では負けているが、あんな陣形もなにもない賊どもなんて策の必要もないな…」
「そうだよ♪愛紗ちゃんと鈴々ちゃんたちがみんなやっつけちゃうよ♪」
桃香の言う通り、突っ込んできた賊どもは、京たち弓兵部隊の斉射を受け怯んだところを愛紗たちの部隊に逆に押し込まれていた。
「よし!関羽隊このまま賊どもを押し返せ!!」
「みんな!!鈴々につづくのだ!!」
愛紗たちは兵たちとともに戦局を有利に傾けていた。
そんななか…
「お頭!!敵から1人こちらへ突っ込んでくる者がおります!!」
「バカめ!!たった1人だと!?はやく囲んでヤッちまえ!!」
「ですが先ほどから試みておりますが全く歯が立ちません」
「何だと?そんなバカな話が…」
賊の頭が見た光景はまさに地獄。5000人いるはずの自分の兵たちがまるで紙くずのように1人の人間によって倒されていた。
ふと気がつけばその地獄の中心にいた人物が自分の目の前に立っている。
「お前が賊の頭か?安心しろ。殺しはしない。ちょっと人間テトリスの凸になってもらうだけだ。」
そこからの記憶は曖昧だ。骨を外されたあと、倒された仲間たちが重なってる山に投げ飛ばされ、最後は
「これで全消しだーぁ!!」
と聞こえてたと思うと空中に放り出されていた。
「ば…化けものだぁーーー」
その光景を目の当たりにした残りの賊たちも散り散りになりながら逃げ出した。
敵は総崩れ。まさに完全勝利だった。
意気揚々と兵士たちと引き揚げる中、公孫賛たちと合流する。
「まさに完全勝利!!だったな!!」
そう公孫賛さんが興奮冷めやらぬ様子で話しかけてきた。
「ところであの川神百代という人物はどこにいるんんだ?見るところによるといないようだが」
「姉さんならあっちで兵たちに囲まれていますよ。」
「それはそうでしょうな。あれだけの活躍をしたのなら、兵たちに認められぬはずありませんからな。」
と趙雲さんが兵たちから称賛を浴びている姉さんを見る。
「されどあれほどの武。最初聞いた時は半信半疑でしたが真の御遣いだったのですな。少しでも疑ったご無礼をお許しくだされ。」
と趙雲さんが頭を下げる。
「な!頭をあげてください趙雲さん。別に俺たちは…」
「星とお呼び下され。」
真剣な顔で訴える。
「それって真名ってやつじゃ」
「はい。それがしの真名でございます。」
「こんなに簡単に真名って教えていいものなのか?」
「星がいいと言ってるんだ。お前たちのことを認めたということだろう。素直にここは受け取れ。私の真名は白蓮だ。改めてよろしく。直江大和、椎名京。」
間に入ってきた白蓮も真名を預けてくる。
「わかった。ありがたく受け取るよ。星、白蓮。こちらこそよろしくな。」
その後星たちは兵の輪から帰ってきた姉さん、愛紗と鈴々ともそれぞれ真名を交換しあった。
初陣を大勝利で飾った俺たちは城の一角に住まわせてもらう事になり、白蓮の下に留まっている。
その間も盗賊退治の日々は続き、姉さんや愛紗たちの武名を広めることに成功していた。
そんなある日。
「しかし大和に政(まつりごと)ができたとは驚きだ。それに他の面々も有能な奴らばかりだし…桃香の仲間たちは本当にすごいな。私にもこのような部下たちがいれば随分と助かるのだがな…」
政務室で一緒に仕事をしていると白蓮がそう嘆いた。
「そうそう。わたしも驚いちゃった。大和さんは頭がいいと思ってたけど政もできるなんてすごいよ!!」
共に白蓮の手伝いをしている桃香も素直な俺に対しての評価を述べる。
「もともと政治には少し興味があったからな。でもここまでできるようになったのは白蓮のおかげだよ。それに姉さんたちみたいに戦闘で活躍できるわけじゃないし、俺の仕事は頭使う事だから」
そう言ったはいいが、実のところは国を動かすという事の大変さを身にしみて感じていた。考えるのと実際にやるのでは全然ちがった。それに最初のころは文字を読むのにも苦労した。日本語が通じているのなら文字も…と思っていたがそのようなことはなく、バリバリの漢文だらけだった。授業で習っていたとはいえ、慣れるのには少々時間がかかった。
「それと白蓮。お前にも星って有能な将がついてるじゃないか」
そう。ここには三国志で有名な趙雲がいる。
「確かに星の武はかなりのものだ。だが前にも言ったかもしれないがヤツは客将の身だ。正式な私の家臣ではないのだよ。正式な家臣になってくれれば安心なのだがな。」
「えー?じゃあ星ちゃんはいつか白蓮ちゃんのもとを離れちゃうの?」
「それはアイツ次第だ。なんでも私のところに来る前まで旅をしていたらしくてな。今の世の中で起こっていることを自分の目で確かめていたらしい。その中で自分のできることを探していたようだ。」
政務の傍ら星の話をしていると
「おやおや、賊退治から帰ってきてみれば皆で私の話ですか??」
愛紗と近くの村に現れた賊退退治へと向かった星があらわれた。
「おぉ星!!いやなに、お前がいつまでも客将の身分でなくそろそろ私のk「ただいま帰りました桃香さま!!無事賊どもを懲らしめることができました。」
愛紗も姿をみせ、戦果を報告する。
「おつかれ様。愛紗ちゃん♪怪我とかしなかった??」
「あのような賊どもから傷を受けるなどありません!ご心配なさらず桃香様。それより少し気になることが…」
そう深刻そうな顔で愛紗が答える。
「なんか問題でもあったのか?」
「はい。最近賊が現れる頻度が多くなっているのはご存じだとは思いますが、その賊の集団の中に黄色い布を頭に被った連中が増えてきていると思われます。」
「愛紗が今言った通り。今回の賊もその黄色の布を被った奴らでした。これは賊が組織化してきたのではないかと…」
愛紗と同じく難しい顔で星もつづいた。
「ふむ…やはりそうなのか…。ならば星。みんなを玉座の間へと集めてくれ。緊急で話したいことがある。」
「はっ!」
そう答えると早速星は、みなへと伝えるべく部屋を出て行く。
「白蓮ちゃん。なにか知ってるの??」
「あぁ。実は今朝方に朝廷のほうから書簡が届いてな…詳しくは玉座の間で話す。」
黄巾賊か…ついに本格的に戦乱の世の中になってきたな…これから起こるであろう事とに少し不安になる。キャップたちが巻き込まれないといいけど…
「キャップたちならきっと大丈夫だよ。」
後ろから不意に抱きしめられる。
「うぉ!!なんだ京いたのか」
「うん。ずっと。朝から大和の後ろにくっついてたのに、大和ったら政務に夢中で、私のことかまってくれないんだもん。でも真剣な顔の大和がみれたからいいかな。」
マジか…確かに集中してからな…全然気がつかなかった…
「そういえば今日京は姉さんと鈴々と三人で街の警邏の予定じゃなかったのか?」
姉さんと鈴々だけじゃ真面目に仕事をするはずがないと思い京を付けたんだが…
「今頃二人で食べ歩きの最中なんじゃないかな?というか私じゃあの二人は止められないよ。」
「まぁそうかもしれないが、せめて暴走しないように見張っててくれよ」
「私は大和を見張るほうが大事だもん!!」(ただでさえ女の比率が多いのにそんな中で大和1人になんてさせられない!!!)
「あーはいはい…とりあえず俺たちも玉座の間に行くぞ。」
そうして玉座の間に全員が集まった。
「なぁどうしたんだ大和ぉ。せっかく鈴々とかわいいおねぇちゃんたちとでおいしい屋台を食べ歩きしてたのに、いきなり呼びつけて」
「そうなのだ。鈴々もまだおなかいっぱいになってないのだ!!」
案の定仕事はしていなかったか…。あとでこの二人にはお仕置きだな…
「すまんな急に呼び出してしまって。」
全員が集まった事を確認した白蓮が話し始める。
「実は今朝朝廷からの使者が来て、黄巾賊の討伐命がきた。」
ある日地方太守の悪政に耐えかねた民が、民間宗教の指導者に率いられて武装蜂起し、官庁を襲う事件があった。官軍によって鎮圧されるであろうと思っていたが、逆に反撃にあい官軍が敗退してしまう。これをきっかけに暴徒たちは周辺の村まで襲うようになり、今ではそれが全国へと被害が及んでいる。もはや官軍だけではどうすることもできず、地方軍閥に討伐を命じさせたのだった。
「私はこれに参戦することに決めた。そこで桃香。この機会に独立してはどうだろうか?この討伐で手柄を立てれば、朝廷から恩賞を賜る事になるだろう。桃香たちならきっとそれなりの地位に慣れるはずだ。」
「正直な話、馴染みがあるぶん私は桃香をどの位置に置いたらいいかわからない。国を持つことが目的なら私より上にはやれないし、桃香の仲間たちを私のもとで働かせるのは気が引ける…もちろん出発の準備は協力する。あとは自分たちの力でやってみないか??」
「…わかったよ白蓮ちゃん!!これ以上白蓮ちゃんにも甘えられないし、私たちも独立して黄巾賊をやっつけるよ!!」
こうして俺たちは白蓮から独立することを決めた。
立へ向けて準備をしていく中、俺は白蓮の所に訪れた。
「どうした?大和?なにか足りないものでもあったか??」
「いや、そのことに関しては大丈夫だよ。あとは志願兵が何人集まるかって所。今回は改めて礼を言いに来たんだ。」
「礼?ハハハッ装備品や兵糧のことなんかはこの間散々うけたじゃないか?そもそもあれも礼をうけるようなことじゃないしな。」
「それも十分ありがたかったけど、そのことじゃない。みんなを賊退治に多く行かせたり、警邏を俺たちに任せたのもこのためだったんだろ?」
そう。このおかげで愛紗たちの武名は広く伝わったし、街に出ることによって多くの人々に俺たちのことを認知してもらえた。
「…べ別に人手がたりなかっただけだ…」
「それに俺個人としても白蓮には世話になった。政治のこと知ってはいるつもりだったけど、やり方までは知らなかった。おかげでだいぶ理解できたよ。本当にありがとう。」
「///…と当然のことをしたまでだ。そ…それに桃香の仲間だからな。あいつは人を惹きつける力はあるが基本的に人に支えられてないとダメなやつだ。お前たちであいつを支えてやってくれ。」
「もちろんだ。」
「他の天の御遣いたちもはやく見つかるといいな。もし私もその者たちに出会ったらすぐ知らせるようにする。」
「あぁ。ありがとう。やっぱり白蓮っていいやつだな!」
「////もう話は済んだだろ?まだ他の奴らは準備しているはずだお前も早く行け!///」
「そうだな。あんまりこうしてると姉さんや京に怒られる。それじゃな白蓮」
そう言い終わると俺は独立の準備で忙しいみんなのもとへと駆け出した。
大和が出て行った後タイミングを見計らったかのように、星が白蓮の部屋へと現れた。
「どうやら白蓮殿のおせっかいは見透かされていたようですな。」
「星!…あぁ。そうみたいだな。」
「まったくあなたは人が良すぎますぞ!?」
「わかってる。でも桃香たちならそのおせっかいも無駄ではないと思うんだ…」
「フフフ何をこれから死ぬみたいなことをおっしゃっているのか?白蓮殿もこれから頑張らねばなりますまい。」
「そうだな。ところで星もそろそろ出ていく。とか言わないのか?」
「なんと!?私に出て行けと申されるのか??」
「いや!!そうじゃない。できればお前はずっと私のもとで働いてほしいくらいだ。しかしお前が私の客将になってからしばらくたつ。いい機会だし桃香たちのようにここから離れていくのかと思ってな。」
「ご安心くだされ。まだ私は白蓮殿の下を離れるつもりはありませぬ。桃香さまたちが抜けてしまえばまた白蓮殿の負担も増えますし、それにまだ白蓮殿から受けた恩を返し切れてはおりませんしな。」
「そうか。ならこれからもよろしく頼む。星。」
「はっ!常山の上り龍と謳われたこの趙子龍!!桃香さまたちが抜けた分まで活躍して見せましょうぞ!!」
その後劉備のもとで五虎将軍の1人までなる趙雲だが、まだこの時は公孫賛とともに黄巾賊討伐に力を注ぐのであった。
あとがき
最後まで読んでいただきありがとございます。
今回は百代無双でしたね…今回みたいなバトルシーンの百代はこれから少ないと思います。合戦で例えザコたちが何千人いようがあの人なら関係ないと思うので…ただ黄巾賊など主だった武将が少ない時はしょうがないとお思いください。多分これからはマジ恋の川神大戦のような立ち回りで兵たちを率いるのではなく、単独での恋姫たちとの一騎打ちがメインになるかと…
さてココでまたお知らせ。
前回のお知らせにも書きましたが反董卓連合編の話の前に、他の風間ファミリーの拠点ルートを書きたいと思います。(もちろん大和たちでもおk)
そこでアンケートを取りたいと思います。書き進んでいるうちに意外と黄巾編が早く終わりそうなので、取るだけとってしまいたいと思います。
ただ一つ注意があります。前回二つ書くと発表しましたが。アンケートで決めるのは一つだけになりました。すいません。
一つ確定なのが『ワン子、源さん』のお話です。なぜかと言われれば内緒と答えたいのですが、バレバレだと思うのでバラしちゃいます。
そう。ご察しのとおりこの二人は董卓の陣営にいます。なので反董卓連合の話を書く前にやっときたいんです。
え?なぜこの二人を董卓側に置いたかって?…それは作者がワン子と詠ちゃんが好きだからだよ!!声優ネタがやりたかったとかそういうんじゃないからね!!
え?つまりあれか?お前は青山ゆかりファンなのかって??…べ別にファンとかじゃないよ!ただカワイイと思ったキャラの声がたまたま青山ゆかり様がやってることが多いだけだよ?
脱線しましたね…すいません。ということで『ワン子、源さん』ルート以外のこちらからお選びください!!!そんなに選ぶものないけどね…
①『モロ、ガクト』
②『キャップ、まゆっち(松風)』
③『クリス』
④『大和、百代、京』
⑤『?????』
え?なんでクリスだけ単独なのかって?………気にしないっ!♪気にしない♪
ではまた次回「門出~黄巾賊討伐」でお会いしましょう♪
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初陣~独立まで。
これで見習い卒業かな。