No.144854

『舞い踊る季節の中で』 第46話

うたまるさん

『真・恋姫無双』の二次創作のSSです。
明命√の作品となります。

一刀達が無事凱旋してから、一月が経とうとしていた。
そんな中、一刀の二人への想いに変化の兆しが見え始める。

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2010-05-23 01:25:52 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:18835   閲覧ユーザー数:13541

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -寿春城編-

   第46話 ~ 想いを胸に、誤りし道を舞い踊る ~

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

        神の手のマッサージ(若い女性には危険です)

  最近の悩み:某日、某天幕、深夜にて、

        ・・・・・・・・昨日は、酷い目に遭った。 まぁおかげで、助かったと言えば助かったのだけ

        ど、毎回ああいう目には遭いたくはない。 常識はずれの力を持つ、この世界の将達、

        次ぎにあんな事があれば、同じ用に助かるとはとても思えない。 かと言って添い寝を

        断ろうにも、今の明命は聞いてくれそうもない。 下手すれば泣かれる。いや実際泣き

        はしないが、目に涙を浮かべそうになる。 あんな顔をされて、俺に断れる訳が無い。

        うーん、どうしたらいいだろうか? 本当の事なんて流石に言えないし、寝相を理由に

        したとしたら、きっと明命の事だ、自分を縛ってでも、添い寝を敢行するに違いない。

        隠密である彼女に、少しぐらい縛った所で、大して意味があるとは思えないが、それは

        それで、色々不味い。 彼女のような魅力的な女の娘が、縛られて俺の横に居る等、及

        川じゃないが、そういう性癖が無くても、そういう気にさせられそうで不味い。

        一体どうしたら・・・・・・・・・・、

        

  (今後順序公開)

一刀視点:

 

 

反董卓連合から、この街に戻ってきてから、もう一月が過ぎようとしていた。

そして、慌しい日々は過ぎるのは早く、俺がこの世界に来て、いつの間にか、一年をとっくに過ぎていた事に気がつく。

思い返せば、ただ必死に、駆け足で駆けていた様な気がする。

元の世界に比べたら、文字通り動乱の人生を、歩んでいると言っても良いだろう。

まぁ、あれはあれで普通とは言いがたいが、今の生活に比べたら普通とさえ言える。

悪友の事ある毎に引き起こす、とんでもない騒ぎも、今思えば、良い思い出と言えよう。

(無論、毎回きっちりお仕置きはしたが、それで懲りるような悪友ではない)

 

かと言って、今の生活に不満があるかと言えば、不満は無い。

右も左も分からない世界に放り込まれ、それでも、今があるのは、二人のおかげだ。

二人の為なら、血塗られた道だろうと、構わない。

こんな世界だ、そうしなければ生きていけないのも分かる。

そんな道しかない事が悔しくは在っても、後悔は無い。

どんなに、苦しくとも、彼等の想いを背負う事は、それなりに意味が有る事だと思えるからだ。

 

それに、そんな俺を、二人は一生懸命支えてくれた。

守るつもりで、支えられているのだから、本当に情けない話だよな。

でも、そんな二人の想いに答える為にも、俺は強くならなければいけない。

心も、体も、人のままで、高みを目指さなければ行けない。

そして、平和な時代を共に作らなければならない。

そうしなければ、逝ってしまった者達に、

そのために、犠牲にしてきた者達に、

顔向けが出来ないのだから、

 

明命そして翡翠、

俺にとって、大切な恩人、

何が在っても、守り通したい二人、

義妹であり、義姉である二人、

暖かな、もう一つの俺の家族、

 

でも、そんな俺の想いに、最近揺らぎが出始めてきた。

義妹で義姉・・・・・・・・・・・・、この想いが、揺らぐ事がある。

外見的年齢はともかく、あれだけ魅力的な二人だから、無理も無いかもしれないと思いつつ、俺の情けない欲望だと言い聞かせている。

二人は、家族として俺を向かえ、俺を見守り、支えてくれているのだと、

二人の家族として心配する想いを、翡翠を穢そうとしたあいつ等のように、下種な思いを浮かべる訳には行かない。

 

だけど、洛陽での明命に引っ叩かれた一件は、あの時見せた明命の涙と瞳は、

二人は、もしかして、家族以外の目で、俺を見ているのかも等と、邪念を浮かばせてしまった。

最近妙に、積極的な二人の態度も、その邪念を助長させている原因になっている。

本当に情けない、あれだけ世話になっていながら、迷惑をかけていながら、・・・・そして救われておきながら、

そんな、考えが思い浮かぶ等と・・・・・・・・、しっかりしろ、北郷一刀、二人は恩人なんだぞ。

 

とまぁ、シリアスに、今の自分を見詰め直してみたのだが、なんで、今更そんな事をやっているかと言えば、それなりに理由がある。

俺の青少年の純真な部分を、弄ぶ如く刺激する、桃色の髪の悪魔がいるからだっ!

 

 

 

 

「だあぁぁぁ、分かったから抱きつくな、離れろっ! この酔っ払いがっ」

 

俺はそう言って、人の腕に抱きつき、酒の御代わりを要求する孫策を引き剥がす。

この桃色の悪魔は、元々そういう気はあったが、最近俺の青少年の部分や、純真な男心を玩具にして、俺を翻弄する。

本人曰く、実力行使で適わないから、と言う事らしいが、本当に性質が悪い。

少しは恥じらいと言うものを持って欲しい。 おかげで、最近妙な考えが浮かんでしょうがない。

それに、そう言う事された時の二人の視線が、痛い事痛い事、俺に罪は無いはずなのだが、何故か罪悪感に襲われる。 まぁ不覚にも、あの感触が気持ち良いと思ってしまった辺り、同じ女性である二人には、女の敵に見えるのかもしれない。

 

俺は、とにかく孫策を引き剥がし、この間作った堀炬燵から抜け出し、御代りの酒を取りに行く。

そもそも、なんで孫策が、我が家で夕食を取る羽目になっているかと言えば、

翡翠が、時折自室でお酒を飲んでいるのを知っている為、

それなりに好きなのだろうと、俺の持っている知識から、記憶と勘を頼りに、数ヶ月前に米と芋、そして桃から、酒を試しに大甕に一つづつ仕込んでみたのだが、初めて作った割りに、それなりに上手く言ったようだ。

一部は其処から蒸留して、別の甕に寝かせてあるのだが、・・・・・・・・・・これが、ばれた。

 

元々翡翠に用があって来たらしいのだが、俺には関係ない事なので、一応客という事で、茶と菓子を出して放っておいて、屋敷奥の物置で、出来具合の確認をしていたのだが、孫策の気配が近づいてくるのを感じて、隠そうとしたが、そんな暇も無く駆けつけて来たため見つかってしまった。

本人曰く勘らしいが、俺は意地汚さだと思っている。

まぁ、そんな訳で試飲させろと煩い孫策を、翡翠の執成しもあって、夕食時に酒用の小さな壺に一壺づつと言う約束で、黙らせたのだが、・・・・・・・・その約束の量を飲み干し、先程の様な事態になった訳だ。

 

まぁ孫策はともかく、二人とも、美味しいと言ってくれたので、作った甲斐もあった。

二人とも、酒に頬を染めながらも、鍋を突きながら、食事を楽しんでくれている。

二人は炬燵の暖かさも手伝ってか、二人とも頬を緩め、それとなしに色気を醸し出しているから、それはそれで、少し困った事ではあるが、其処は俺が気にならない様に、他事をすれば良いだけの事。

 

 

 

 

「それにしても、この炬燵と言うのは、気持ち良いです」

「そうねぇ、ねぇ一刀、私の執務室にも作ってくれないかしら」

「そんなもの、城に出入りしている職人にでも作らせろよ」

「駄目ですよ。

 こんな物があっては、只でさえ遅れがちになる雪蓮様のお仕事に、差し障りが出ます」

「う゛ぅ~~、翡翠の意地悪~」

 

再び、酒を強請ろうとする孫策を、今度は明命と翡翠の背中に隠れる事でやり過ごし(我ながら情け無いが、ああいう行動に、屈しない青少年はいないと思うぞ)、俺の作った酒を使った食後のデザートを食べ終え、食後の余韻を炬燵の中で満喫していた。

炬燵を囲いながら、美人三人に囲まれている姿は、及川辺りが知ったら、次元の壁を乗り越えて乱入してきそうだが、今の所そんな気配は無い。 まぁ、当たり前か、

 

「でも良かったわ、一刀が思ったより早く復活して」

「なんなんだよ、藪から棒に、まるで今まで、俺が死んでたみたいな言い方じゃないか」

「それ、言い得て妙ね」

 

俺の言葉に、何故か納得する孫策に、横で頷く二人、

まぁ、二人には心配かけた自覚はあるし、孫策達にも、それなりに気を使わせた事は分かる。

あれから、城に呼び出される事も無かったのも、その表れなのだろう。

まぁ他にも理由はあったりするのだが、その思いに嘘は無い。

だから、孫策の心配したと言う気持ちは分かるが、死人と同義されるとは、偉い言われ得ようだ。

 

「さてと、余り遅くなってもなんだし、城まで送るよ」

 

別に孫策を追い出す訳では無いが、余り遅くなっても冥琳達が心配するだろうと、俺は孫策に声をかける。

 

「いいわよ、これくらいの酔いなら一人でも帰れるわよ」

「酔いが浅かろうが、陽も落ちているのに、女の娘を一人で帰す訳には行かないっての」

 

俺の言葉に、孫策はまだ酔いが相当残っているのか、頬を赤くさせ、ジト目で此方を睨みつけ、

 

「・・・・・・そんな事ばかり言っていると、そのうち背中から刺されるわよ」

 

やっぱり、酔っているようだ。

当たり前の事を言っているだけなのに、そんな事を言ってくる。

・・・・・・・・でも、なんで、二人も其処で頷くんでしょうか?

俺、間違った事は言ってないつもりですよ。

 

「それに、暴漢くらいなら、逆に叩きのめせるわよ」

「俺は、その哀れな暴漢の身を心配しているの」

 

孫策達は、肌寒いというのに、相変わらずの露出のある格好だ。

本人達曰く、気合だそうだが、何故其処まで無意味に気合を入れるかが、俺には理解不能だ。

(そう言えば、クラスの女子達も、寒いと言いつつも、何故かスカートを短く折り畳んでいたよな)

とにかく、そんな無意味な露出に惑わされて、善良な民が、酔った勢いで被害に遭うのは可哀想だ。

無論、本当の暴漢には同情の余地は無いが、何せ孫策が相手では、反省と後悔をするまでも無く、あの世逝きになりかねない。

それはあんまりだし、そういう下劣な人間を、簡単に楽にさせるべきではない。

状況が許すならば、きっちり、己が罪を償わせるべきである。

まぁ、そう言うのを抜いても、孫策も魅力的な女性である事には違いない。

女子供を送るのは、男として当然の行為。

・・・・そう思っての事なのだが、何故か孫策は、御機嫌斜めな顔で、

 

「・・・・・・一刀、私をなんだと思っているのよ。

 まったく其処まで言うなら、勝手になさい」

「はいはい、孫策は、何処までも王様発言なんだな」

「・・・・私、王様なんだけど」

「あっ、そう言えばそうだったな、孫策と話していると、つい忘れちまう」

「覚えていなさい。 いつかぎゃふんと言わせてあげるんだから」

 

ついつい、不貞腐れる孫策と軽口を叩き合ってしまう。

 

 

 

 

で、孫策を城に送っていく道中

 

「で、一刀の手に持っているのは何かなぁ?」

 

と、目を輝かせて、中身などお見通しの癖に、そんな事を言ってくる。

 

「孫策のじゃないぞ、これは黄蓋さんの分。

 言って置くけど、黄蓋さんのだと言って門兵に渡して置くから、くれぐれも無茶を言わないように、門兵

 が可哀想だから」

「う゛~、一刀の意地悪~っ」

 

やっぱり、無茶を言うつもりだったか、

なんにしろ、孫策にばれた以上、黄蓋さんにばれるのも時間の問題、なら此方から、早々に渡して置くのが、最も被害を少なくする方法、と思って用意したものだ。

門兵も二人を相手に、忠誠と職務遂行の板挟みになって可哀想だが、其処は仕事と思って耐えてもらいたい。

まぁ、孫策も、こうやって釘を刺しておけば、余り無茶な事を言わないだろう。

それに、其処まで気に入ってくれたなら、俺としては嬉しいし、来年は、もう少し多めに作ってみるかな。

 

「で、用件ってなんなの?」

「あっ、やっぱり分かった?」

「あのね、一刀の心遣いを疑う気は無いけど、幾ら私でも、それくらいは気が付くわよ」

「夜道の女の娘を、心配して送るって気持ちに、嘘はないよ」

「まったく、優しくしすぎるのも問題だって、翡翠に御説教喰らったの忘れたの?」

 

歩いているうちに酔いがまた回ってきたのか、顔を少し赤くさせて、呆れたように言ってくる孫策、

ちなみに、孫策が言っているのは、この街に戻って半月くらい経ってからの出来事、

俺が、夜、あまり魘される事が無くなってきた辺りを見計らって、翡翠に孫策同席で、

前回の戦での俺の秘密裏の作戦実行や、明命からの報告による翡翠の妹、諸葛亮、つまり朱里に対しての接し方に対する、長~いお説教だった。

まぁ、俺の独断専行はある程度覚悟していたので仕方ないと思っていたが、朱里に関しては、正直、寝耳に水だった。

まぁ曰く

 

『 一刀君、優しくしすぎるのも、相手を傷つける事になる事を、よ~く覚えておいてくださいね 』

 

等と、丁寧で優しい口調で言ってはいたが、その目は決して笑っては居らず。

体からゆらりと湧き出ている黒い靄と相まって、正直、じっちゃんより遥かに怖かった。

そんな翡翠の様子に、後ろに居た明命は震えており、孫策も冷や汗を垂らしていた。

まぁ、それでも、朱里の暴走を止めた事は感謝されたし、女の娘に手を上げた事も許してくれた。

でも、分からないのは、独断専行のお説教の100倍は迫力が在った事だ。

やっておいてなんだけど、そちらの方が、よっぽど重要だと思うのだが・・・・・・・・・・、うーん謎だ。

そんな訳で、孫策の言いたい事は分かる。 でも、

 

「少なくとも今回は、間違えた事はしていないよ」

「・・・・・・はぁ~、やっぱ直る訳無いか」

 

等と俺の言葉に、訳の分からない、失礼な言葉が返ってきただけだった。

 

 

 

 

「用というのは、頼みたい事があるんだけど」

「まぁ、一刀の言う事だから、出来る限りは考慮してあげるけど、余り無茶は駄目よ」

「それほど無茶って訳じゃないよ。

 一度袁術の城に行きたいんだ。 できれば直接話が出来ると良いんだけど」

 

俺の言葉に、孫策は予想通り、厳しい顔付に戻る。

孫策の言いたい事は分かる。

今まで内緒にしてきた俺の存在を、なんで明らかにするような真似を、と思っているのだと思う。

でも、俺はすでに軍師として、存在は明らかになっている。

まぁそれなりに、手を打って、お飾りに見せてみたが、なかなか思い通りには行かないようだ。

 

「孫策も気がついていると思うけど、此処一月、俺への監視の目が増えた」

「そうね、今日もその事で翡翠と話し合った所よ」

 

そう、この一月、俺の周りに、細作らしき人物をよく見かけるようになった。

今も、遠くから、俺達の後を尾行している。

まぁ、小さな話声までは、聞こえない距離では在るけどね。

でもそれは・・・・・・、

 

「でも変なのよね。 袁術が警戒したにしては、私達の周りは、そう変わっていないのよ」

 

やっぱり、

 

「で、明命に調べさせてみたんだけど、確信は持てないけど、どうやら袁術の手の者じゃないようなのよね」

「だろうね。 今までの人達に比べて、実力の格が違うよ。

 どうやら、二つの勢力から、来ていると見た方が良い」

「せっかく、一刀が見事な負けっぷりを装ったり、情けない所を見せたりしたと言うのに、それを見破った

 奴が居るって事ね」

 

情けない所は、地だから、好きで見せた訳じゃないだけどな・・・・・・、

 

「でもなんで二つだと思うの?」

「ああ、錬度に明らかに差があるからさ、袁術の所に比べて、一つの勢力らしき人達は、優秀な密偵達、

 そしてもう一つの人達は、より優秀な人達って分かるからかな、そうだな、上は明命の部下と、そう変わ

 らないかな」

 

まぁ、大体何処の人達か予想は付くんだけど、今の段階で決め付けるには危険なんだよな。

でも、おそらく危険は無い。 一つはただの素性の確認だろうし、もう一つは、探るだけが目的のはず。

 

「・・・・・・相変わらず、とんでもない事を、更って言うわね。

 でも、私の勘と、冥琳の判断、そして翡翠や穏の意見とも一致しているわね

 どちらにしろ、厄介よね。 下手に動くわけにはいかないし、袁術の目も、この事には気がついているだ

 ろうし、予定を早める事も、考えなければいけないわね・・・・・・・・、なるほど、一刀は確実にする為にも、

 袁術の所に行って、袁術の腹と将の気性を確認したいって訳ね」

「ま、それだけじゃないんだけどね」

 

俺の言葉に、孫策は少し考え込み、やがて

 

「条件があるわ。

 一つは、手段は任せるけど、正体を隠しておく事、

 一つは、翡翠も行かせるから、翡翠に随行し、その指示には従う事」

 

まぁ、それくらいは読めていた。

それに、正体不明の密偵まで、付いて来られては困るし、袁術にこれ以上、目をつけられる訳には行かないって所だろう。

まぁ、翡翠に関しては、実際の使者役と、俺へのお目付け役って事だろう。

 

「そして、最後は、」

 

ん、まだあるのか?

 

「そのお酒の製造法を教える事」

「だぁっ、なんなんだ、それは!」

 

呆れる俺に、孫策は自尊心を傷つけられたのか、口を尖らせ、

(だから、そういう顔をするなって、美人にそういう可愛い仕草をされると、色々困る)

 

「べつに、お酒欲しさに言っている訳じゃないわよ。

 無論それもあるけど、あれは特産品に出来るって思ったのよ」

「ああ、なるほど、孫策も王様らしい事考えるんだな。

 だけど、あれは試しに作っただけで、未完成もいい所だぞ」

「一言余計よ。

 それに、あれ以上は杜氏の仕事よ。 一刀の仕事じゃないわ」

「悪かった。 その条件呑むよ。

 それと、正体を隠すなら、そうだな口実は、袁術の好物の蜂蜜を使った、一風変わったお菓子を献上する

 ってのはどうだ?」

「そうね、そんな所ね。 袁術に手紙を出すから、調整も含めて七日は待って頂戴」

 

孫策は俺の提案に乗ってくれた。

連合の軍議の時から気になっていた事、

そして、洛陽の街で、その想いが強くなった事、

確認が取れるかどうか分からないが、その機会を得る事が出来た。

 

 

 

 

「それと、細作とは別に、気になる話があるの」

 

ん? 細作以外に、今の俺の回りに、そんな気になるような事あったかなぁ?

 

「まぁ、たいした話じゃないんだけど、以前一刀が書いてくれた医術書の事なんだけど」

 

医術書か・・・・・・そうまで、大げさなものじゃないんだけどな。

所詮は、俺の世界の一般常識と、本家に出入りしていた医者達に、叩き込まれた知識でしかない。

あと、俺の所の裏の流派に伝わる技術や知識も交えていはいるが、近代医学の前には、医術書なんて言葉は使えない程度の物だ。

 

「その一部を、少しづつ息の掛かった医者に流していたんだけど、何処で嗅ぎ付けたのか、その出元を探って

 いる奴がいるのよ」

「どこかの細作か?」

「違うわ、どうやら旅の医者らしいんだけど、何しろ熱心すぎる奴らしくて、その熱心さの余りに口を割った

 阿呆が居るのよね。 で、とうとうウチの所まで嗅ぎ付けたらしいわ。

 翡翠にも気をつけるように言ったから、一応一刀も気をつけておいて頂戴」

「了解、特徴とかは分かるか?」

「赤髪の若い青年って事らしいわ」

 

俺は孫策の話す男の特徴を覚えておく、孫策の口調から、そう害はなさそうだが、熱心すぎる人間ってのは、どういう行動に奔るか分かった物じゃない。

もし翡翠や明命に、害を与えそうなら(・・・・・・・・まぁ返り討ちに遭うのが関の山だろうけど)、排除しておく必要がある。

 

 

 

通常視点:

 

 

「ほーっ、ほっほっほっほっ、斗詩さん軍を出しますから、早急に準備なさい」

 

「えっ、えーーーっ、今、冬ですよ。

 こんな時に動いても、兵の動きが悪くなりますし、寒さで体を壊す兵も続出するだけですよ。

 それに暖を取る為の薪代も馬鹿になりませんし、不経済ですよ」

 

「何を言っているのですか、貴女は?

 こんな時だからこそ効果があるのです。 所詮は軍師も居らず、自分の領地を統治するのに、必死な白蓮

 さんには、私の高貴なる考えを読めるはずもありません。 数で押してしまえば、問題ありませんわ」

 

「大丈夫だぜ斗詩、体を動かせば、寒さなんて関係ないって」

 

「それは文ちゃんだけだよ」

 

「分かったら、二人とも準備に当たりなさい。 ほーっ、ほっほっほっほっ」

 

 

 

明命視点:

 

 

「ぽかぽかです」

 

一刀さんが行火の理屈を応用して作った、炬燵は最高です。

少ない炭火で、効率よく熱を逃さずに、温まる事が出来ます。

 

「ふにゃ~~~」

 

この心地良さは、お猫様になったような気分にさせられます。

一刀さんは

 

『 猫は炬燵で丸くなる 』

 

なんて言葉が在ると言っていましたが、そのお猫様の気分がよく分かります。

でも、一刀さんは、

 

『 でも酸欠になるから、絶対猫を入れては駄目だよ 』

 

と、前言を否定するような事を言います。

どうやら天の国の炬燵は、炭で暖める訳ではないようです。

足の下の方に、柵と陶器製の大きな箱がありますが、そのおかげで火傷もしません。

心ゆくまま、ぬくぬくと出来ます。

そして一刀さんの作った、炬燵の温もりに浸りながら、この一月を思い起こします。

 

一刀さんは、予想以上に早く笑顔を取り戻してくれました。

相変わらず魘される一刀さんを、慰めるのは翡翠様でしたが、それは仕方ない事だと、割り切れるようにはなって来ました。

その代わり、昼間は私が、一刀さんを元気付けるように振り回しました。

祭様曰く、

 

『 策殿を見習って、振り回すぐらいが、ちょうど良いと思うぞぉ 』

 

と助言を下さったので、お猫様の監視に付き合ってもらったり、色々お話したりしました。

そんな私を一刀さんは、苦笑を浮かべながら、私に付き合ってくれました。

そして少しづつ、笑顔を取り戻されていきます。

無論、私や翡翠様だけではありません。

雪蓮様も相変わらず、一刀さんを振り回しているようですし、

蓮華様や祭様、そして穏さんも、暇を見て一刀さんのお店に顔を出しているようです。

 

それでも、一刀さんと私の仲は特に進展はしませんでした。

一刀さんは、相変わらず私と翡翠様の気持ちに気が付く事も無く、無自覚に私達の心を掻き乱します。

誰にでも優しい所も相変わらずです。

翡翠様にあれだけお説教を喰らったと言うのに、本人は多少は気にしているようですが、殆ど変わりありません。

でも、一刀さんらしいと言えば、一刀さんらしいです。

 

それに、一刀さんの無自覚ぶりに、気を落として帰られる女性の方々を見て、

申し訳ないと思う反面、安心出来るようになりました。

一刀さんが本当に気を許しているのは、相変わらず私達三人だけのようです。

雪蓮様にしたって、私と翡翠様を応援しているようですし、今の所問題ありません。

 

どうやったら、一刀さんは振り向いてくれるのでしょうか?

私の方から、一刀さんに夜伽を迫るような真似は、翡翠様に硬く禁じられています。

あくまで、一刀さんが振り向くようにしなければ、いけないと言う事です。

その理由も、納得いくものでした。

それに、誘惑する分には、問題無い様です。

・・・・・・・・・・・・でも、鈍感な一刀さん相手に、それは難しい要求です。

 

やはり、小さいのがいけないんでしょうか?

でも、一刀さんは、私や翡翠様でも、時折恥ずかしそうに、顔を赤くされています。

今のままでも、決して効果が無い訳ではないようです。

本当に、どうしたら・

 

「ふわぁ~~」

 

いけません、眠くなって来てしまいました。

此処で寝てはいけない、と言われていますが、これはもはや、炬燵の魔力と言えます。

・・・・抗い難いです。

・・・・・・・・少しだけ・・・・・・少しだけです・・・・・・・・、

 

「・・・・・・すぅ・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです。

 第46話 ~ 想いを胸に、誤りし道を舞い踊る ~ を此処にお送りしました。

 

前話で、予兆を見せたとおり、思いっきり、時間軸を飛ばしました。

無論、時間軸が無茶苦茶な私の作品なだけあって、視点を変えて、巻き戻る事もありますが、

それはそれとして、寿春城編の本編へと突入しそうな感じを見せてみました。

そして、冒頭で語ったように一刀の歪んでしまった想い。 その想いに気が付いていながら、何も手を打つ事が出来ない翡翠。 そして、ただひたすら健気に、一刀を真っ直ぐに想う明命。

三人の歩む道は、どのように絡まっていくのか? そしてその行き先は?

どちらにしろ、この寿春城編は、この三人にとって大きな転換期となります。

まだ出て来ていない、孫呉の恋姫ヒロイン達の行方も明らかになって行きます。

 

次回は、このまま続きをするか、未処理のプロットを題材にするかは、まだ決まっておりませんが、

頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PS:最後の明命のお話は、炬燵と言う事で、猫(明命)と炬燵の組み合わせで、なんとなく勢いで書いてしまいました


 
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