「タオルもらいにきたぞ!」
周囲にそのセリフが響き渡る。
隣人との最初の会話がそれだった
いや、俺も引越しは今以外でも何回かしたことはあるしその度色々な隣人がいた、いたんだ、しかし・・
最初の発言でタオルをせがむ隣人には一度も会ったことはない。
「え・・あ・・あぁ、丁度渡しに行こうと思ってた所ですよ」
少し動揺しながらも俺は片手に持っていたタオルを差し出した。
「ヒャッハー!タオルだぁー!」
世紀末で生きるモヒカンが叫びそうな台詞を言い放ち、めちゃくちゃ喜んでいた。
と、思い出したように
「そうだ、俺は五十嵐 嵐 お前は?」
唐突に自己紹介を始めやがった。
「・・凡田 平一です」
「じゃあ「ぼっさん」だな!」
2秒もかからずにあだ名が付いた
「じゃあ嵐さんで」
「普通だな!けどいいぞ!」
ぼっさんも大概だと思うが言葉には出なかった
「じゃあぼっさん!引越しの準備を手伝ってあげよう!そしてお茶もいただこう!」
何か語尾に頂くとか言ってたけど聞かなかったことにした。
その日は結局嵐さんに手伝ってもらい、お茶もいただかれた。
このマンション「花畑」にはかなり多くの部屋がある。
高さは4階 屋上には何故か一軒家が建っているが、調べるのははまた今度にするとして
広さはだいたいで言うと小学校の校舎、グラウンドを合わせた感じになっている。
1階には公園や駐車場、マンション内の1階にはレクリエーションルーム、プール等、様々な娯楽施設もある、これで家賃6万ならかなりの大盤振る舞いだと思えてきた。
しばらくして部屋の片付けも終わりに近付き、食器などを整理してる時ふと嵐さんがつぶやいた。
「そういやどうしてこの町に来たんだ?」
誰もが思うだろう、しかし誰もがほぼ同じ理由であるだろう、そんな質問を投げかけてくる。
少し間が開き・・
「自分の生き方を変えるためですよ」
そう、俺がこの町に越してきた第一の理由は
平凡な自分の人生を変えるためである。
俺の家系は何事にも前に出ず、ただただ「普通」を貫いてきた家系だった。
平一という名前も「平凡に、一つも面倒なことに巻き込まれないように」という理由で名づけられた。
物心がついたころからこの生き方に不満を感じていた。
何もかも平凡、自分からは何もしない、俺が何かしようとする度に親族からの反発を受ける。
俺はそんな自分の家に嫌気が差し、この町「天道町」に越してきたのだ。
「そうか、色々あるのねー」
嵐さんはそれほどのリアクションはせず、食器を棚に入れていた。
まぁ他人の目的や意思を聞いてもどう反応すればいいのか迷うのもわからないこともない
「嵐さんは何故この町に?」
聞かれただけじゃ割に合わない、先の言葉をそのまま嵐さんに投げ掛けた
返答はすぐ帰って来た。
「復讐」
風が止む
「え?」
「うへへ、じょーだんじょーだん!一攫千金目当てだよ!」
荷物の整理も終わり、俺は晩飯の買出しに行くと言って嵐さんと別れた
マンションから離れてもその言葉は脳裏に残っていた。
嵐さんが言葉にした「復讐」
俺はその内容まで本人の口から聞くことはできなかった・・。
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マンション「花畑」に引っ越してきた主人公平一にいきなりタオルをせがんできた隣人「五十嵐 嵐」 それなりに仲良くなった2人は互いにある質問をする・・。