「チョコあり。クッキーどぞ」
「thx」
「(≧ω≦)」
そこはインターネットが使える漫画喫茶の、いつもの席だった。
敷居で隔てられている隣の席には、いつもの娘がいる。
学校の同じクラスの娘である。しかし未だ教室で話掛けた事はなかった。
何故か先月チョコと携帯のメアドを貰ったので、本日お返しをする事になったのだ。
俺はメールの遣り取りを挟み、小袋を敷居の上から向こう側の相手に手渡した。
小袋の中身は、昨夜用意した手作りのクッキーだ。
俺達はどうも口下手過ぎる。
先月は動揺して機会を逃したものの、今日こそ動かねばなるまい。
今度の週末は暇だろうか。動かなくては。今日こそ。今日こそ。
そう思っていると携帯がメールの着信を伝えてきた。
内容は隣の娘からの週末のお誘いだった。
先月も思ったけれど、彼女は引っ込み思案なのか、積極的なのか、どっちなのだろう。
とりあえず、俺は口頭で伝える為に席を立つ事にした―――
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超短編。ホワイトデーというお題で書いた代物。