ただいま、と彼は帰ってきた。
自分のいるべき場所、美神除霊事務所に。
よ、じゃない。少女を伴って。
なんかまた厄介ごとに巻き込まれたみたいなんですけど、と。
「んのあほぉおおおおおお?!」
「どぼぁぁああああああ?!」
果たして、彼は重力に逆らった。
主に水平な感じに。
壁がなかったらきっと、新記録樹立だったことだろう。
なんの?
道具も魔力も霊力も使わない、滞空時間の。
ギネスだって取り上げてないだろうけれど、宗教家なら咽喉から手が出そうな実績だ。
その分勢い余って人工幽霊壱号の柔肌(壁)は観るも無残な感じですが。
「なななにするんですかぁああ美神さんっ?!」
「それはこっちの科白よ?!あんた馬鹿でしょ」
あぁあそうだ馬鹿なのは知ってるのよそこは今更だったわね!
勢いのよい、これもまた謝罪というのだろうか?
偉そう、というより、もう間違いなく真上から物事を見ている発言。
「え、えーと……」
「巻き込まれたもなにも自分から持ってきてるじゃないの?!
どこら辺が巻き込まれたって話なのよこのぉおお」
「ぎゃのぉおすぅううう」
なにか発言しようとする少女など、おそらく彼女には眼中にない。
多分途中から、自分でも何に怒っているのか理解してはおるまい。そういう人だ。
勿論オロオロしているのは少女だけで、このシュチュエーションに見慣れた他の人々は落ち着いたものだ。
「えーと、なのはちゃんでしたっけ?
この様子だと20分くらいですから、少し、お茶でもどうですか?」
「あの、私御迷惑なんじゃ……」
殴られているのはかの青年でも、その原因が自分であることくらいのことがわからない少女ではない。
自分がやりあうならともかく、一方的にいじめられている?人を放っておける性格もしていない。
だがとても人のよさそうな、そうと申し出てくれた女の人は「その"迷惑分"は横島さんが引き受けてくれてるから大丈夫ですよ」となぞなぞのようなことを言った。
果たして。
奥の部屋で自分の家である喫茶店にも負けない紅茶でもてなされていた少女は、連れ立ってそこに顔を出した二人を見て、素直に納得した。
「さっきの、幻術だったんですね」
「へ?あ、うん。現実だけど」
果たして微妙にずれたニュアンスに彼らが気づくことは無く、はにゃりとした笑顔とへにゃりとした笑顔がかわされる。
それを視て、聞き間違えることがなかった女性は多分お互いの精神衛生上黙っていたほうがいいのだろうと判断して、全ての言い分を小さなため息一つで押し流す。
「とりあえずあんたたち、いきさつと……状況は、なんとなくわかるけど」
「あの、あなたは」
「本当にそっちにある情報は文珠だけなのね。
しかも遣したのが見事な女子ども。姑息って言葉がちらつくわ」
後半の呟きは少女には届かなかった。
誰に届けるつもりなかったが、彼女はそれでも感情を落ち着かせるために音にしたのだ。
実際、うまい選択だといわざるを得ないのだ。
女性なら、ぶっちゃけ話が通じない。
ナンパに走るから。
男性なら話をしない。
興味をもたないから。
「しょうらいゆうぼうなびしょうじょ」なら、自ら目線を合わせて会話する。
この傍らでさっきのダメージをものともせず(実際すでに残ってもいないだろう)男はそういう生き物だと彼女は知っていた。
もっとも、この少女の申し出があまりにも直球過ぎて当初会話もなにもなくいきなり逃げたとは想像もできないだろう。普通。
あと、彼女が派遣された理由が、そんな在る意味かわいいものじゃない、とか、その辺り。
「とにかく。私は美神令子。この除霊事務所の所長で、この男の飼い主」
「ふぇ?」
「せめて雇い主くらいに言ってくれませんか?美神さん」
「お手」
「わん」
・・・・・・・・・
「で?」
「犬でいいです」
いっそすがすがしく、血の涙を流しながら彼が自分の立場を肯定した。
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どんどん方向性が謎になっていくんですけどどうしたら
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果たしてこの話がどこに行こうとしているのかが微妙に謎
GS×なのは話 無意識管理局アンチテイスト