「あの世でわが父に詫びなさい!甘興覇!」
その言葉と共に咲耶ちゃんのフランベルジェが思春に向けて振り下ろされた。
くそっ!間に合わない!このままじゃ思春が・・・。
と、突如何かが飛んできて咲耶ちゃんのフランベルジェを弾き飛ばした。
「なっ!?」
咲耶ちゃんは自分の武器を弾き飛ばしたものを見て驚愕した。
なぜならそれは
「鉄扇!?」
そう、それはすべて鉄でできた鉄扇だった。しかも扇の骨の一本一本の長さは1メートルはある。
こんなものを扱えるのは
「あらあら、このような町中で乱闘騒ぎはいけませんわよ?」
と、後ろから声が聞こえたので振り向くとそこには水色の髪を一つに束ねた和服姿の女性、六花さんがにこやかな笑顔で立っていた。ただ目が笑ってなかったが。
「て、程普様!?」
「おや?なぜ私の名前を・・・咲耶!」
咲耶ちゃんの姿を見た六花さんは驚いた顔をして咲耶ちゃんに駆け寄った。
「久しぶりですわね、いつ戻ったんですの?」
「つい先程です!でも、いざお屋敷に行こうとしたら空腹で倒れてしまって・・・。
そこを御使い様と天将様に助けていただいたのです!」
咲耶ちゃんの言葉を聞いた六花さんは微笑みながら俺達の方を向いた。
「まあ、ありがとうございますわ、一刀さん、関平。この子は私と祭の戦友の忘れ形見で、私にとってもわが子も同然なのです。私も礼を言わせていただきますわ」
「い、いや、困ったときはお互い様って言うし・・・」
「そうです、相手が困っているのなら助けるのが当然、何でもありません」
俺達は頭を下げた六花さんにそう返す。
まあ俺達は別にそこまで凄いことをやったわけではないし。
俺達の言葉を聞いた六花さんは頭を上げた。
「ふふ、しかし何もしないわけにはいきませんからお礼は後ほど。
それにしても咲耶、なにゆえ街中で剣など振り回していたのですか」
俺達に礼を言った六花さんは、突如咲耶ちゃんに向かって厳しい表情で睨み付けた。
その言葉を聞いた咲耶ちゃんは
「私は、私は父の仇を討とうとしていただけです!」
「凌操殿の仇?」
咲耶ちゃんの言葉に六花さんは怪訝な顔をする。
咲耶ちゃんは怒りに満ちた顔で思春を指差し、睨み付ける。
「そうです!この江賊が!私の、私の父を卑怯にも後ろから騙まし討ちにして殺したのです!お願いです程普様!邪魔をしないでください!」
咲耶ちゃんはそう言って落ちていた剣を拾って構える。
一方の思春は自分の武器を拾いに行かないどころか、そこから動こうともしない。
まるで、自ら殺されるのを望んでいるかのような・・・。
一方の六花さんは困った顔をしている。
いや、六花さん、困ってないで止めてよ。このままじゃ決闘始まるよ!?
さながらギャレン対ピーコックアンデッドのような仇討ちが始まってバーニングザヨゴが炸裂するよ!?・・・なんか自分でも何いってんのか分かんなくなってきた。
てか朔也違いだっての。さっき愛紗に言ったけど・・・。
「甘寧・・・貴様だけは・・・貴様だけはこの私が倒す!!」
「・・・・・」
ちょっと待て~!!倒しちゃだめだって!ていうかその台詞そのまんまダディのじゃん!!くそ!ここで思春を死なせるわけには・・・。
「待ちなさい、咲耶」
と、突如六花さんが咲耶ちゃんの前に立ちはだかった。
その手には、もう一つの鉄扇が握られている。
「どいてください!程普様!仇を、仇を討たせてください!」
「それは、私の一存では決められません」
「程普様!あんな悪人なぜ庇うんです!」
・・・なんかまんまダディの台詞また言ってるし。
まあオンドゥルで無いだけ違うといえば違うけど。
「なぜか・・・それは彼女が、孫呉の将だからです」
「なっ・・・・・」
咲耶ちゃんは六花さんの言葉に驚いて絶句した。
まあそりゃそうだろう。
ようやく見つけた仇が自分の主君に仕えているんだから。
「そんな・・・なぜです!」
「それは・・・「それは私から話すわ、六花」・・・策様」
と、突如後ろから声が聞こえたので振り向くと、そこには酒瓶をもった雪蓮が立っていた。
「策様・・・またさぼったんですか?」
「う、うるさいわね~六花、まあそれはそれとして・・・久しぶりね咲耶」
「そ、孫策様!」
突如現れた孫家の主に咲耶ちゃんは土下座する。それを見た雪蓮は苦笑する。
「まあまあ頭上げなさいって。それに私は雪蓮でいいわよ」
「そ、そんな、もったいないお言葉です~!!」
雪蓮の言葉に咲耶ちゃんはさらに恐縮したのかさらに深々と土下座する。
側に自分の父の仇が居るにもかかわらず、だ。
「それでね咲耶、思春の事なんだけど・・・」
「はっ!そうです!孫策様・・「雪蓮」・・・雪蓮様!なぜこの女を臣下にしたのですか!
この者は、私の父をはじめ、多くの兵や将を闇討ちにしたのですよ!そんな者をなぜ臣下などに・・・」
雪蓮の言葉を聞いた咲耶ちゃんは再び激昂して雪蓮に思春を臣下にした理由を問い詰めた。雪蓮は頭をかきながら説明を始めた。
「まあ、確かに思春はもともと黄祖の臣下で、さらに、凌操さんも含んだ私達の将兵も多く討ち取ったわ。そのせいで彼女が臣下に加わろうとしたら結構反対を食らったわ。
やれ、実は黄祖の刺客だの、すぐに裏切るだの、てね・・・」
まあ、確かに自軍の将を討ち取った敵将が臣下に加えてくれ、なんて言ったら怪しむわな。
「そ、それではなぜ・・・・」
「蓮華がね、ぜひ自分の護衛に付けてくれって言ってね。
あの子の眼力は確かだし、まあ任せてみようかなって。
まあそれでも反対はあったけど。あの子ったら何かあったら自分が責任をとる、だなんていったからね」
雪蓮は苦笑しながらそう言った。まあ史実でも甘寧は孫権にその能力を認められて臣下になったんだよな。
しかし自分が責任を取るって・・。こっちの蓮華も意外に頑固なところがあるんだな。
「そ、孫権様が・・・?」
「そ、それから思春は蓮華の元で一生懸命働いたわ。で、ある時、蓮華が刺客に襲われて、思春はそれを傷を負いながら撃退したことがあってね。
それから彼女は呉の将として認められるようになったのよ」
雪蓮は思春に視線を向けながらそう言った。相変わらず思春はだんまりだったけど。
「そのようなことが・・・。し、しかし!それでもこやつは父を!」
「そうなのよね~、あなたの気持ちも分からないわけじゃないのよね~・・・」
咲耶ちゃんの言葉に雪蓮は少し考えるような表情をしていた。そしてしばらくすると再び咲耶ちゃんに目を向けた。
「とりあえず咲耶、その仇討ち、ちょっと待ってもらえるかしら?」
「なっ!?父の仇を見逃せというのですか!?」
「そうはいってないわよ~。でも思春は孫家の家臣だからね、そう簡単に討たせるわけにはいかないのよ、いくらあなたの仇でも、あなたが孫家に仕えるのならなおさらね」
「そ、そんな・・・」
雪蓮の言葉に、咲耶ちゃんはがっくりと俯いた。
まあようやく見つけた仇を討てないなんていわれたらな・・・。
雪蓮もどこかバツの悪そうな顔をしていた。
「まあ思春が別にいいって言うなら私は何も言わないけど・・・「かまいません」・・・
って思春!?」
と、突如今まで黙っていた思春が突如口を開いた。
「凌統、確かに私はお前の父を討った。それについては言い訳をするつもりは無い。
お前が私を討ちたいと思うのも当然だろう」
「何をいまさら・・・」
「故にもし仇討ちをしたいのならいつでも来るがいい。
いつでも受けてたとう。尤もやすやすと討たれはしないがな」
「!・・・望むところです!では今すぐにでも・・・」
「待ちなさい、咲耶、思春、こんな人通りで斬り合いなどしないで下さい。
それにもし仇討ちを行ったら確実にどちらかが死にますわ。
策様、分かっていらっしゃいますの?」
と、六花さんは咲耶ちゃんと思春を諌め、雪蓮を嗜める。
「う~ん・・・そんなこといわれてもね~・・・
親殺された気持ち、分からないわけじゃないし・・・」
雪蓮もそう言って悩んでいる。親を殺されたもの同士、共感できる所があるんだろう。
「はあ・・・では、咲耶・・・。仇討ちはしばらく保留にしてもらえますか?」
「ええ!?」
六花さんの言葉に咲耶ちゃんは驚愕している。そりゃあいきなり仇討ち保留なんて言われたらな・・・。
「別に仇討ちをしてはならないと言っている訳ではありません。
ですが思春は我が軍の将、咲耶も私達に仕えるのならば二人とも、もしくは二人の内どちらかが死ぬのは大きな損失になります。特に孫呉の独立を目指す今ならなおさらです。
ですので仇討ちを行うのならばせめて孫呉の独立がなった後にしていただきたいのです」
「・・・・・」
六花さんの言葉に咲耶ちゃんは迷っているようだった。けどしばらくするとゆっくりと頷いた。
「・・・わかりました、六花様。しかし孫呉の独立が成ったその時にはそこの甘寧の首、貰い受けます」
「ふん・・・それまでしっかり鍛錬しておけ。せいぜい返り討ちにならないようにな」
「なっ!甘寧、貴様~!!」
思春は挑発でおこった咲耶を無視して、城に戻って行った。
「さて、と。でね一刀、関平」
「ん?」
「なんでしょう?」
なんか、雪蓮の顔がいたずらを思いついた子供みたいな顔してるけど。
なんか嫌な予感がするな・・。
「いやね、咲耶をあなた達の部下にしようとおもってね」
「・・・は?」
なんでまた俺達?
「いや~、だって咲耶もあなた達のこと気に入っているみたいだし。
それに関平なら咲耶に兵の統率法とか教えられるでしょ?」
「なるほどね」
つまり雪蓮は愛紗に咲耶ちゃんの特訓を頼みたいわけか。
それでいつかは孫呉の将にしたいと・・・。
「と、いうわけで、咲耶!咲耶~!」
「へ?は、はい!」
と、雪蓮は咲耶ちゃんに呼びかける。
ちなみに咲耶ちゃんは六花さんに押さえつけられていた。
自分を挑発した思春を追いかけようとしていたからまあしかたない。
「これから一刀と関平の下で働いてもらうことになったからね、いいかしら?」
「え!?み、御使い様と天将様の下で!?な、なんと恐れ多い~!!」
雪蓮の話を聞いた咲耶ちゃんは驚いて腰を抜かしてしまった。
「あれ?もしかして嫌だった?」
「と、とんでもございません!私のようなものが恐れ多くも御使い様の下で働かせて頂くことに、ただただ恐れ多くて・・・」
やれやれ、そこまでガチガチにならなくてもいいのに・・・。
「まあとにかく、これからよろしくね、咲耶ちゃん」
「は、はい!よろしくお願いします!御使い様!天将様!」
「あ、俺の呼び方、普通に一刀でいいよ、どうもその御使い様というのはちょっとこそばゆくてね」
「私も関平でいい。正直天将という呼び名は恥ずかしくてな・・・」
「はい!ありがとうございます!一刀様!関平様!
未熟者ですが、どうぞよろしくお願いします!」
と、咲耶ちゃんは頭を思いっきり下げる。
こうして、新しく俺達の仲間が加わった・・・・が、これが後々色々な騒動で俺の神経を磨り減らしていく事はまだ予想できなかった。
あとがき
なんか急いで書いたので後半部分がボドボドに・・・。
なんだかんだで一ヶ月ぶりの更新になります。
前書きにも書きましたが本当はGW中に更新する予定だったのですが、
結局書く時間がなくて長い間放置してしまいました。本当にすいません。
次回で董卓編に入りますのでどうぞご期待ください!
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え~長い間お待たせして申し訳ありません!
本当はGW中に更新したかったんですけど旅行行ったり何したりで忙しくて・・・。
まあとにかく久しぶりの更新になりますのでどうぞお楽しみを!